鷺の停車場

映画、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いていきます

テレビアニメ版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見る

劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝―永遠と自動手記人形―」(9月6日(金)公開)を観て、本編となるテレビアニメ版も見たくなりました。レンタルDVDがあればと思って生きやすいお店を数店回ったのですが、どこにも置いていません。内容を知らずにセル版のBlu-rayやDVDを買うのは勇気が要るので、ネット配信で見てみることにしました。

劇場版の「外伝」では、成長した後のヴァイオレットが、他の人たちの気持ちを変えていく、というのがメインで、ヴァイオレット自身の成長や変化という要素は前面には出ていませんでした。

時系列的にその前に当たるテレビアニメ版では、上官ギルベルトの道具として戦うだけの少年兵だったヴァイオレットが、両腕を失って義手となり軍を離れ、手紙の代筆を行う「自動手記人形」として仕事をしていく中で、それまで理解できなかった人間の、そして自分の感情が分かるようになっていく過程を描いています。

先に観た外伝と同様、描写の美しさは特筆ものです。毎週のテレビアニメでこれだけのクオリティを維持できるのは凄いです。

出てくる武器や飛行機、ライデンシャフトリヒという国名からすると、第一次世界大戦ごろのドイツあたりがモデルになっているのだと思いますが、街の雰囲気や風景の描写も手を抜いた感じが全くなく、クラシック音楽風のBGMもあいまって、何ともいえない独特の空気感を漂わせています。ストーリーも、客観的には劇的な大きな出来事が起きるということではないのですが、ヴァイオレットをはじめそれぞれの人物の心の動きが繊細に表現されていて、心に響きます。劇場版の「外伝」に続いて、すっかりやられてしまい、1~2日で一気に最後まで見て、その後もちょこちょこ繰り返して見ています。劇場版の「外伝」を観て心動かされた人であれば、これは絶対に見るべき作品だと思います。

 

ネタバレになりますが、各話のあらすじのアウトラインは次のような感じです。

第1話:「愛してる」と自動手記人形

少年兵としてギルベルト小佐【浪川大輔】に仕えていたヴァイオレット【石川由依】、両腕を失って入院していた病院に、元中佐のホッジンズ【子安武人】が、ギルベルトに託されたと身元引受けにやってくる。ライデンにあるホッジンズの郵便社で配達人として働き始めたヴァイオレットだったが、ギルベルトが最後に残した「愛してる」の意味を知るため、手紙を代筆する「自動手記人形」(ドール)になりたいとホッジンズに直訴する。

第2話:「戻ってこない」

先輩のカトレア【遠藤綾】の指導でドールになるための訓練を始めるヴァイオレット。カトレアの不在中に飛び込んだ恋文の依頼を引き受け代筆するが、人間の感情がよく理解できていないヴァイオレットは事務連絡のような手紙しか書けず、失恋したと依頼人が怒鳴り込んでくる。同僚のアイリス【戸松遥】はドールを辞めさせることを進言するが、ヴァイオレットの思いを知った同僚のエリカ【茅原実里】が庇い、カトレアはドールの育成学校に行くことを勧める。

第3話:「あなたが、良き自動手記人形になりますように」

育成学校に入ったヴァイオレットは、学課では優秀な成績を修めるが、依頼人の思いを汲み取った手紙が書けず、合格できない。しかし、クラスメイトのルクリア【田所あずさ】から、戦争で両親を失ったことで自らを責め、酒浸りとなってしまった兄スペンサー【木村昴】への思いを打ち明けられたヴァイオレットは、それを手紙に綴ってスペンサーに渡す。その手紙が評価され、卒業の証であるブローチを授与される。

第4話:「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」

同僚のアイリスが初めての指名を故郷の町から受けるが、喜ぶあまり手をケガしてしまい、ヴァイオレットが同行することになる。依頼はアイリスの結婚を願う両親からの誕生パーティーの招待状だったが、パーティーにかつて振られたエイモン【稲垣拓哉】も姿を表したことに立腹したアイリスは、衝動的に部屋にこもってしまう。反省するアイリスは招待客への詫び状をヴァイオレットに依頼するが、両親への手紙を勧められ、手紙で両親と和解する。

第5話:「人を結ぶ手紙を書くのか?」

ドロッセル王国のシャルロッテ王女【中島愛】のもとに来たヴァイオレットは、政略結婚の相手であるダミアン王子【津田健次郎】との公開恋文を代筆する。シャルロッテから、10歳の誕生パーティーの時に優しく声をかけてくれたダミアンに恋し、心から彼との結婚を願っていること、そして不安で彼の本心が知りたいと打ち明けられたヴァイオレットは、ダミアン側のドールと交渉し、自筆の恋文でやり取りするよう差配する。恋文のやり取りを重ね、シャルロッテは月下の庭園でダミアンから求婚される。結婚式の日、ヴァイオレットはダミアン側のドールだったカトレアとライデンに戻る。

第6話:「どこかの空の下で」

保存状態の悪い大量の文献の写本のため、多数のドールが天文台に集められ、解読する天文台の職員とタイプするドールがペアを組んで作業が始まる。ヴァイオレットと組んだリオン【上村祐翔】は、行方不明になった父親を追って母親が家を出て行ってしまった過去から、女性が嫌いだったが、ヴァイオレットの仕事ぶりと共に親族がいない似た境遇にひかれるようになる。200年に一度の彗星の観察に誘ったリオンは、ヴァイオレットと語り合う。作業が終わって帰るヴァイオレットに、リオンは自分も文献収集の旅に出る決意を伝える。

第7話:「      」

ヴァイオレットは、酒浸りの戯曲家オスカー【滝知史】のもとを訪れ、新作の戯曲を代筆する任務に当たる。病気で亡くした娘に語り聞かせた物語を書き上げようとするオスカーだが、終盤で筆が止まってしまう。しかし、戯曲の主人公に共感するヴァイオレットの協力で戯曲を書き上げる。ライデンに戻る列車の中で、ヴァイオレットは兵士として人の命を奪ってきた罪悪感にかられる。ライデンに戻ったヴァイオレットはエヴァーガーデン夫人【沢田敏子】と再会し、ギルベルトが亡くなっていると聞かされる。

第8話:

ギルベルトの死を信じることができないヴァイオレットはギルベルトの屋敷を訪ねるが、案内されたのは彼の墓だった。彼との日々を回想するヴァイオレット。4年前、ギルベルトは兄ディートフリート【木内秀信】から孤児で武器としての能力しかない彼女を引き取り、ヴァイオレットと名付け、読み書きなどを教え、部下として使ってきたのだ。感謝祭の日、エメラルドのブローチにギルベルトの瞳と同じ美しさを感じ魅入るヴァイオレットに、彼はそのブローチを贈る。インテンス奪還作戦の前夜、ギルベルトを訪ねてきたホッジンズは、戦争が終わったら会社を興そうと考えている、ヴァイオレットも雇うことにするか、と話すと、ギルベルトは、いいかもしれない、と答える。それを耳にしたヴァイオレットは、私は不要ですか?処分される結果ホッジンズ中佐の下に移されるのですか?と問うが、ギルベルトは、君は悪くない、と答える。そして迎えた作戦で、目の前でギルベルトが銃撃される。

第9話:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン

ヴァイオレットは銃撃を受けたギルベルトを連れて逃げようとするが、ヴァイオレットも両腕を失う。ギルベルトは彼女に、「生きて、自由になりなさい。心から、愛してる」と言葉を残す。敵軍が撤退に際して砲撃したことにより、ギルベルトは生死不明になってしまっていた。その総本部跡を訪れたヴァイオレットをホッジンズが見付け、会社に戻ろう、ギルベルトに君を託されたんだ、と説得し連れ帰る。ヴァイオレットは、多くの命を奪ったその手で人を結ぶ手紙を書くのか、と自責の念にとらわれ自室に閉じこもるが、アイリスとエリカから手紙が届く。その手紙を読み、仕事に戻る。自動手記人形として生きていていいのでしょうか?とヴァイオレットに問われたホッジンズは、してきたことは消せない、でも、自動手記人形としてやってきたことも消えないんだ、と励ます。

第10話:「愛する人は ずっと見守っている」

病気の母クラーラ【川澄綾子】と暮らすアン【諸星すみれ】のもとに、ヴァイオレットがやって来る。クラーラはヴァイオレットと手紙の作成に打ち込み、アンは母と過ごす時間を奪うヴァイオレットに反感を抱くが、次第に慕うようになる。ある日、アンは体調を崩しても手紙の作成を止めようとしない母に怒りをぶつけるが、涙を流す母の姿に、母を苦しめてしまった自分を責めるアンをヴァイオレットは優しく慰める。手紙の代筆を終えたヴァイオレットは、ライデンに帰っていく。代筆していた手紙は、死が近いことを知ったクラーラが、死後50年間アンの誕生日に届けるためのものだった。手紙を読んで母の愛を知るアン。郵便社に帰ってきたヴァイオレットはアンの家で我慢していた涙を流す。

第11話:「もう、誰も死なせたくない」

メナス基地から代筆の依頼が入る。内戦状態にある危険な場所のため、ホッジンスは断ることにするが、それを耳にしたヴァイオレットは独断で現地に向かい、殺されそうになっていた依頼者のエイダン【浅沼晋太郎】を見つけ救出する。瀕死の重傷を負っていたエイダンは、死が近いことを悟り、両親と幼なじみで恋人のマリア【須藤祐実】への手紙を口述し、息絶える。ヴァイオレットは、帰る途中にエイダンの両親を訪れ、両親とマリアに彼からの手紙を渡す。死を悲しみ泣きながらも礼を述べる両親たちに、ヴァイオレットはエイダンの命までは救えなかった自分の非力さを詫びる。

第12話:

ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が和平を結び、その象徴として特使が大陸縦断鉄道でガルダリク帝国に向かうことになり、和平反対勢力の襲撃を阻止すべく、ディートフリートはその護衛任務の命を受ける。条約文書を代筆するカトレアと護衛のベネディクト【内山昴輝】が特使に同行する。エイダンの手紙を届けた帰りの飛行機で和平反対勢力の動きを察知したヴァイオレットはカトレアたちが乗る列車に乗り移るが、ヴァイオレットに複雑な思いを抱くディートフリートは彼女に厳しい言葉をぶつける。人を失う悲しみを知ったヴァイオレットは、もう誰も殺したくないのです、と相手兵も殺さないよう列車の屋根で戦い、ディートフリートを襲う銃弾を義手で守る。

第13話:自動手記人形と「愛してる」

ヴァイオレットが義手を犠牲にして橋に仕掛けられた爆弾を外し、列車の破壊を阻止したことで、和平条約は無事に調印され、平和が戻る。飛行機で空から手紙が飛ばされる航空祭が開かれることになり、ヴァイオレットたちはその手紙の代筆で忙しくなる。郵便社のメンバーもそれぞれ手紙を書き、ヴァイオレットもギルベルト宛ての手紙を書こうとするが、なかなか書けない。代筆の仕事が一段落した非番の日、ディートフリートが訪れ、ヴァイオレットを彼とギルベルトの母のもとに連れていく。ギルベルトの母はヴァイオレットに、ギルベルトは心の中に生きている、だから決して忘れない、と温かい言葉をかける。その帰り、ディートフリートは、あいつの分も生きろ、生きて生きて、そして死ね、それが俺からの最後の命令だ、と言うが、ヴァイオレットは、もう、命令は要りません、と答え、一礼して去る。戻ったヴァイオレットは、手紙にギルベルトへの思いを綴り、今は「愛してる」も、少しは分かるのです、と記す。

 

どの回も心に響く話ですが、とりわけ第5話、第7話、第10話あたりは、何度見返しても涙してしまう(個人的には)感動的な物語。当初は来年1月10日の公開予定だった本編の劇場版は、あの事件の影響で鋭意制作中(公開延期)になってしまいましたが、気を長くして待ちたいと思います。

武田綾乃「響け!ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ」を読む

武田綾乃さんの小説「響け!ユーフォニアム」シリーズ、「立華高校マーチングバンドへようこそ」(前編・後編)を読みました。 

響け!ユーフォニアム」の本編の主人公、北宇治高校吹奏楽部でユーフォニアムを吹く黄前久美子の中学校時代に、同じ吹奏楽部の友人だったトロンボーンの佐々木梓が、マーチングバンドの強豪の立華高校に進み、吹奏楽コンクールやマーチングコンテストに向かっていく中で、成長していく姿を描いた作品。「響け!ユーフォニアム」の本編シリーズからするとスピンオフ的な作品。本編シリーズとの時系列的な関係でいうと、「響け!ユーフォニアム」シリーズで主人公久美子の1年生時代を描いたいわゆる1年生編、第3作「北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」までに対応していて、時期的にも、同作といわゆる2年生編の「波乱の第二楽章」の間の2016年8・9月に刊行されています。

まずは前編。

プロローグ

立華高校に進む梓、久美子になぜ北宇治高校に行くことにしたのかを聞く。その話を聞いて、自分も新たなスタートを切ったのだと感じる梓。

一 暴走フォワードマーチ

マーチングコンテストの全国大会の常連である立華高校に進んだ梓。同じトロンボーンパートの1年生、1年生で唯一の初心者の名瀬あみか、演奏技術はあるが運動神経が良くない戸川志保、志保と同じ中学出身で要領はいいが手を抜く癖のある的場太一の3人と、厳しいステップ練習など強豪校の洗礼を浴びるが、完璧主義で努力家の梓は、先輩たちに追い付こうと練習に打ち込む。そんな梓は、先輩から初心者のあみかの指導を任される。
3年生の先輩の高木栞は、同じトロンボーンの3年生の瀬崎未来が初心者で努力を重ねてパートリーダーに選ばれたこと、自分が同じように成長できなかったことに後悔の念を抱いていることを梓に話す。

二 追憶トゥーザリア

中学校の吹奏楽部を招いて行うハッピーコンサートに向けステップ練習に励むトロンボーン1年生の4人。自分の気持ちを吐努力家だがなかなかステップをマスターできない志保は、部活をやめたいと言い出す。志保は梓に、弱さを売りにするあみかが好きになれない、そんなあみかに負けそうになってる自分がいちばん嫌だ、梓に嫉妬している、と打ち明けると、梓は、できるまで一緒にやろう、自分のためにみんなの手助けをしている、頼られる自分が好き、と話す。
2年生の杏奈の協力などもあり、4人ステップをマスターし、ハッピーコンサートを迎える。梓は中学時代に友人だった柊木芹奈との苦い思い出がよみがえる。芹奈は、梓に対し、上から目線で、周囲に優しくする自分に酔っている、自分が不利にならないよう八方美人している、と厳しい言葉を投げたのだ。あみかと帰る電車の中で、久しぶりに芹奈に会った梓は、ちっとも変ってない、と厳しい言葉をかけられる。

三 緊張スライドステップ

吹奏楽コンクールの京都府大会に向けた合宿で、メンバーを決めるオーディションが行われる。その日の朝、パートリーダーの未来は梓に、自分が初心者で栞が熱心に教えてくれたこと、追い抜いているときは追い抜かれる人の気持ちなんて分からなかったけど、今はよくわかる、追われることは怖い、と話し、頼ることは悪くない、梓は甘えるの下手そうだからと伝える。
オーディションで梓は2年生を抑えてコンクールメンバーに選ばれるが、その後も練習の合間にあみかに教えようとする梓に、志保と太一は、自分の練習をしろ、このままではあみかは梓なしにはやっていけなくなる、と忠告する。その夜、あみかは中学時代の過去を話し、その過去と決別するために明るく振る舞っていると梓に話す。迎えたコンクールで、立華高校は関西大会出場を決める。

エピローグ

吹奏楽コンクールの京都府大会で関西大会出場を勝ち取った立華高校、帰りのバスで、あみかは梓に、マーチングコンテストでカラーガードを希望することにした、一人で頑張ってみることにした、だからもう梓がいなくても大丈夫、と伝える。梓はその言葉に衝撃を受ける。

 

次いで後編。 

プロローグ

小学生時代の梓、片親で、夏休みに梓を一人家に残して出掛けるのを不安に思う母親の不安に気付き、それを解消しようと、夏休みにも練習がある金管バンドに入ることを決める。

一 妄想マークタイム

関西大会出場を決めた立華高校吹奏楽部だが、近づくマーチングコンテストに向けた練習が中心になっていく。カラーガードになったあみかは、副部長でカラーガードリーダーの小山桃花からマンツーマンで厳しい指導を受ける。あみかが気になって仕方がない梓は、桃花に抗議しようとするが、志保に止められる。あみかには自分がいないとだめ、と言う梓は志保に平手打ちされ、我に帰り、あみかと距離を置くことにする。中学時代の芹那との出来事を思い出す梓。

二 瞬間パレードレスト

マーチングコンテストに向けた合宿を終え、お盆休みを迎える。桃花は私のためを思ってやってくれているとあみかが桃花を慕っていることを知った梓は、あみかに休み中に遊びに行こうと誘われるが、梓はその誘いをやんわり断る。休み中も個人練習に打ち込んだ梓は、吹奏楽コンクールの関西大会を迎える。
マーチングコンテストがメインでコンクールでの結果を追及しない部の姿勢に納得できず、本番に集中することができなかった梓は、自分が許せず一人泣く。そこに未来がやってきて励ます。吹奏楽以外に何が好き?との質問に、当惑して、じゃがいもとか…と言葉を濁す梓。未来は、明日の休みは完全に吹奏楽から離れてみたら、追い詰められる前に息抜きの方法を見つけるのも大事、と勧める。翌日、未来の勧めに従って自宅で過ごす梓は、中学の修学旅行での芹那との出来事を回想し涙する。
マーチングコンテストの京都府大会の直前、桃花の指導を受けるあみかを見て心が苦しくなる梓に、ドラムメジャーの南は、考えるのをやめてとりあえず馬鹿になってみたら、とアドバイスする。そして迎えた府大会、立華高校は関西大会出場を決める。

三 無意識テンハット

関西大会出場を決め、さらに練習の密度が増す中、梓は志保に呼び出され、あみかから梓とうまくいってないと相談に来たと聞かされ、梓は無意識にあみかを拒絶している、なぜ人間関係がそんなに極端なのか、私は二人に対等な友達でいてほしかっただけ、と指摘されるが、梓は志保の指摘が理解できない。中学時代の芹那との出来事がよみがえる。芹那にも同じようなことを言われ、その後は表面的な関係になったままだった。
大会も近づいた練習後、梓は未来に呼び出され、最初はあみかが梓に依存していると思ったけど、依存しているのは梓の方だった、あみかも梓と同じ目線に立ちたかったんだと思う、でも梓は自分が必要とされなくなるのが嫌だったのでは、と指摘される。先輩の言葉に、蓋をしてきた自分の醜い内心を吐露する梓。未来は何かをしてくれるから梓が好きなわけじゃない、梓はちゃんと必要とされてると励ます。
自分の醜い一面と向き合った梓は、自分からあみかに声をかけ、和解する。そして、迎えた関西大会で、立華高校は全国大会の出場を決める。

四 青春ベルアップ

全国大会に向け練習に励む中、未来が練習中に骨折してしまう。未来は梓には笑顔で接するが、保健室を出た梓の鼓膜に、南と二人きりになった未来のすがるような嗚咽が刺さる。ソロは梓が吹き、未来のポジションには太一が入ることになり、太一も遅くまで練習に打ち込む。
未来のように上手くならねばと追い詰められる梓は、無理がたたって高熱を出し練習中に倒れてしまう。未来は、頼ることは悪くないって言ってたのにどうしてこうなっちゃうかなあ、と嘆いた後、梓は梓、私みたいになろうと思わなくていい、ソロも吹きたいように吹けばいいと諭す。迎えに来た母親に梓は、未来の言葉を思い出し、ハグしてくれるって言ったら引く?と尋ねると、母親は梓を抱きしめる。
翌日、家で休んでいる梓を芹奈が訪ねてくる。電車で会ったあみかに見舞いに行けとうるさく言われたという。二人は互いの本心を打ち明け、和解する。そして2週間が過ぎ、未来は、先輩のためにも金賞を取ると宣言する梓に、私のためになんて考えなくていい、来年再来年に全国に行ける保証はない、これが最後の全国かもしれない、だから自分のためにやった方が絶対いい、と諭す。梓は、今まで自分はしっかりしていると思っていたけど、本当は上手く他人に頼れないだけだった、それに気づけたのは先輩たちのおかげ、と感謝する。そして迎えた全国大会、立華高校は見事金賞を受賞する。

エピローグ

3年生になって引退式を終えた梓。マーチングコンテストは、無事に全国大会金賞を取ることができた。そこに同じ中学出身のパートの1年生の恵里佳がやってくる。恵里佳に、かつて未来と話した自分の姿を見る梓。

 

響け!ユーフォニアム」の本編シリーズは、弱小だった北宇治高校吹奏楽部が、優れた指導者の滝が顧問に着任したことをきっかけに、様々なトラブルを乗り越えて、めきめきと実力をつけていくという、部全体の成長がメインのストーリーになっていて、久美子と秀一、麗奈たちとの関係など、個々の部員の人間関係や成長は、もちろん重要な要素・エピソードであるものの、相対的にはメインストーリーを彩るサブストーリーという感じがしますが、本作は、マーチングの強豪校である立華高校が舞台で、吹奏楽部のスタイルが確立されていることもあって、梓の人間としての成長に焦点を当てて描かれています。物語としては、テーマを絞ったことで、物語としての求心力がより強く、人間関係の交錯が本編よりも数多く織り込まれていて、洗練されているように思います。

それにしても、未来の素晴らしい先輩っぷりは見事すぎます。パートリーダーとしてソロをはじめ演奏面で主導的立場にあるだけでなく、本番メンバーから外れた1年生の成長や人間関係にまで目を配り、ここぞというところで介入し、アドバイスしていきます。父親が不在の梓にとっては、ある意味で父親的な要素を与えているように映りました。実際には、ここまで人間的に完璧な先輩は普通いないだろうと思いますが・・・

そういえば、以前に呼んだ「ホントの話」の第6編「友達の友達は他人」で描かれた芹奈と梓の関係、当時読んだときはさっぱりチンプンカンプンでしたが、本作を読んで、なるほど、こんなに複雑な過去があってのことだったんだなあと得心がいきました。その小品では、梓が芹奈の手帳にマーチングコンテストの日程を書き込んだことになっていましたが、本作にはそのような描写はないので、梓と芹奈が和解した後、おそらく翌年の梓が2年生の時の話だったのでしょうね。

ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」ほか

久しぶりにクラシックのCDを。
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  1. ショスタコーヴィチ交響曲第4番ハ短調 op.43[1936]
  2. ショスタコーヴィチ交響曲第11番ト短調 op.103「1905年」[1957]

アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団
(録音:2017年9~10月(11番)、2018年3~4月(4番);ボストン、シンフォニー・ホール(ライヴ・レコーディング)) 

ショスタコーヴィチ:交響曲第4番&第11番『1905年』

ショスタコーヴィチ:交響曲第4番&第11番『1905年』

 

アンドリス・ネルソンスは、1978年生まれ、ラトヴィア出身の指揮者。2014年からボストン交響楽団音楽監督に就任、2017年にはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスター(首席指揮者)にも就任しています。ボストン交響楽団とは、ショスタコーヴィチ交響曲全集の録音プロジェクトが進行しており、これはその第3弾に当たる録音のようです。

ひとまず、なじみのある11番を聴いてみました。次の4楽章からなりますが、すべての楽章がアタッカで(続けて)演奏されます。曲中のテーマには、当時の革命歌が多く使われているそうです。

第1楽章「宮殿前広場」Adagio 4/4拍子ト短調
冬の宮殿前広場、ゆったりとしたテンポの冬の重苦しい雰囲気、そして悲惨な事件の予兆を感じさせる音楽。

第2楽章「1月9日」Allegro-Adagio-Allegro-Adagio 6/8拍子 ト短調
宮殿前広場で請願行進する民衆に軍隊が発砲し、多数の死傷者が出た、1905年1月9日の「血の日曜日事件」を描いた楽章。低弦の静かに蠢くような動きに始まり、民衆の行進を表すような勇ましい音楽になりますが、宮殿前広場の静寂な音楽が一瞬現れ、弱音器を付けたトランペットが不吉な音を鳴らすと、軍隊の一斉射撃の激しい音楽に一変し、虐殺の光景を描く。射撃が止み、突然静まると、そこに静寂な宮殿前広場の音楽が流れる。

第3楽章「永遠の記憶」Adagio 4/4拍子 ト短調
血の日曜日事件」の犠牲者を悼むレクイエムのように始まりますが、中間部では犠牲者の尊さを讃えるかように高揚します。

第4楽章「警鐘」Allegro non troppo-Allegro-Moderato-Adagio-Allegro 2/4拍子 ロ短調ト短調
金管楽器の決然としたモチーフに始まり、皇帝の抑圧に屈しない民衆の力強さを表すようなクライマックスに至りますが、最後は帝政ロシアに警鐘を鳴らすように激しく終わります。


低音をたっぷりめにとったしっとりした音の響きは、この曲の雰囲気によく合っています。演奏もゆったりめのテンポで歌い上げていく感じ。バランスもよく整っています。ことさらに声高に叫ぶような感じではなく、明晰に描き、音楽そのものに語らせたような感じ。ボストン交響楽団の高い合奏能力が生かされています。
第2楽章、一度アダージョになって第1楽章のモチーフが出てきた後、再びアレグロに戻って軍隊の発砲を思わせる部分、スコアの指定よりもかなり速めのテンポで始まり驚きましたが、音楽が盛り上がっていくとともに腰をどっしりさせていくような展開は、意外と良かった。人によっては悪い意味で模範的な演奏という印象を受けるかもしれませんが、全体としてよく整ったいい演奏だと思いました。

家にある他の演奏も聞いてみました。

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  1. ショスタコーヴィチ交響曲第11番ト短調 op.103「1905年」[1957]
  2. ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第1番[1934]
  3. ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第2番よりワルツ第2番
  4. ショスタコーヴィチタヒチ・トロット op.16[1927]

マリス・ヤンソンス指揮フィラデルフィア管弦楽団
(録音:1996年12月) 

ヤンソンスベルリン・フィルウィーン・フィルバイエルン放送響など様々なオーケストラのショスタコーヴィチ交響曲全集の一環で録音されたもの。10番とこの11番の2枚が、フィラデルフィア管との録音になっています。そういえばヤンソンスもラトヴィア出身ですが、年齢はネルソンスよりも35歳ほど離れています。

こちらも、フィラデルフィア管の高い能力が発揮された優れた演奏。ネルソンスの演奏と比べるとより動きがある印象で、個人的には結構好きです。

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  1. ショスタコーヴィチ交響曲第11番ト短調 op.103「1905年」[1957]
  2. ウストヴォーリスカヤ:子供の組曲

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー管弦楽団
(録音:1959年2月2日;モスクワ(1)、1954年;レニングラード(2))  

ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」 / ウストヴォーリスカヤ:子供の組曲

ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」 / ウストヴォーリスカヤ:子供の組曲

 

初演後間もない時期のスタジオ録音。モノラル録音ですが、音自体は意外と聞きやすい音。ピンと張りつめたような独特の厳しい雰囲気が特徴的で、この演奏を聞くと、他のどの演奏を聞いても生ぬるく感じてしまうところがあります。演奏もこの時代としてはかなり優れていると思います。オケの響きを含め、クセがあるので、好き嫌いは分かれるでしょうが、この曲の歴史的名盤であることは間違いないでしょう。

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ショスタコーヴィチ交響曲第11番ト短調 op.103「1905年」[1957]

アンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送管弦楽団
(録音:1958年5月19日;パリ、サル・ワグラム ) 

ショスタコーヴィチ : 交響曲 第11番 ト短調 作品103「1905年」

ショスタコーヴィチ : 交響曲 第11番 ト短調 作品103「1905年」

 

フランスで、作曲者ショスタコーヴィチの立会いの下で行われた録音。ラヴェルなどフランスものの録音で有名なクリュイタンスですが、このような(当時としては)バリバリの現代曲の録音を行っていたとは意外でした。

演奏自体は、そう悪い演奏ではありませんが、今となっては、上の3枚と比べると、聞き劣りしてしまうのが正直なところ。ただ、初演直後の演奏の歴史的な記録としての意味はあるでしょうし、バスーンが世界的に主流のジャーマン式ではなく、フレンチ式の楽器なのも、ショスタコーヴィチの録音としては貴重だろうと思います。