鷺の停車場

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ラフマニノフ「交響的舞曲」

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ラフマニノフ交響曲第3番 op.44[1936]
 交響的舞曲 op.45[1940]
マリス・ヤンソンス指揮サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
(録音:1992年9月、サンクト・ペテルブルク)

前回の「晩禱」でもちょっと紹介した「交響的舞曲」と交響曲第3番、ラフマニノフの最後の2作品が収められたCDです。
「交響的舞曲」は、個人的にとても思い出深い曲です。
「舞曲」というタイトルに違わず、基本的に明確にリズムを刻む曲調でありながら、全体に短調が支配的で、物憂げな、何といったらいいのか、輝いていた昔を、哀しみをもって思い浮かべるような感じがする曲です。
そういう面で、何となく、この数年後に作曲されることになる、リヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」に似た雰囲気を感じます。
ただ、この曲が作られたのは1940年、第二次世界大戦は始っていたとはいえ、ドイツのソ連侵攻はまだ始まってませんし、ラフマニノフは既に亡命していたわけですから、1945年のリヒャルト・シュトラウスのように、祖国の崩壊に思いをはせていたというのではなく、むしろ個人的な感情・思いが背景にあったのでしょう。
基本的に3管編成ですが、1楽章の中間部にアルト・サクソフォンソリスト的に使われているのが異色です。

1楽章は4/4。タタ・・タタ・・タタタタ…とヴァイオリンの弱音の刻みで始まり、木管が主題の断片を奏すると、突然弦楽がタ・タ・タ・タ・タタタ・タ・とリズムを強奏し、主部に入ります。

ちなみに、ショスタコーヴィチ交響曲15番の4楽章の第2主題の前に弦楽器がピチカートで奏するリズムが、この強奏のリズムと良く似ているのですが、ロシア民謡などの由来があるとか、何か関連があるのでしょうか。

前半部の終わりから、木管ソロの掛け合いがサックスのソロを導きます(これは楽器を変えながら、サックスのソロの伴奏として続いていきます)。とても好きな部分です。

2楽章は3/4のワルツ。ラフマニノフは当初副題として付けていたという「黄昏」がしっくりきます。

3楽章は 9/8が主体ですがところどころ6/8が入り混じるアレグロ。要所要所で、彼が良く引用するグレゴリオ聖歌「怒りの日」のモチーフが、最後には「晩禱」の9曲目の「アリルイヤ」の旋律が現れ、神への祈りを暗示するように終わります。

交響曲第3番もリズミカルな部分が多く共通性を感じますが、比べると場面転換がより多く、目まぐるしく場面が変わっていく感じが面白い。
冒頭盛り上がる場面は、個人的には、映画音楽のような感じもします。

演奏は、ヤンソンス指揮のサンクト・ペテルブルク・フィル。
今でこそ、キーロフなどが有名で、ロシアの数あるオケの1つでしかないイメージですが、まだソ連の崩壊直後。現場ではいろいろ混乱もあったのでしょうが、まだかつてのレニングラード・フィルの名声が残っていて、まだ旧ソ連のオケでは最高峰とされていたころ。
録音もあるのか、くすんだ音色ですが、弦楽器のアンサンブルの精緻さなど、今では失われてしまったかもしれない、このオケの持ち味が良く引き出された演奏ではないでしょうか。

 現役盤はこちら。

ラフマニノフ:交響曲第3番

ラフマニノフ:交響曲第3番