鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

小山田いく「すくらっぷ・ブック」

今さら何だと言われてしまいそうですが、しばらく前、1年半ほど前に漫画家の小山田いくさんが亡くなられていたことを初めて知りました。

小山田いく作品との出会いは、たぶん35年くらい前の少年の頃、初めて新幹線に乗って家族旅行に出かけたときに、新幹線車内での暇つぶし用ということだったのでしょう、たまたま親がホームのKIOSKの端にあった本コーナーから「すくらっぷ・ブック」の第5巻(たぶん)を買ってくれたのが初めてでした。
よくよく考えてみると、飲み物やお菓子なども売っている昔ながらのKIOSKだったはずで、コミックもせいぜい10冊あるかどうかという中に置いてあったのでしょうから、当時は人気マンガの一翼を担っていたのでしょう。

私自身はその当時、「少年ジャンプ」をときどき立ち読み/回し読みする程度で、小山田さんが執筆されていた「少年チャンピオン」は読んでなかったので(その後も読むことはほとんどありませんでした)、そのような人気がある作品とは全く知りませんでしたが、マンガ本を買ってもらえる機会がそれほどなかったこともあって、繰り返し読んでいるうちに魅了されていき、大きくなって小遣いに少しずつ余裕が出てきてから、古本屋で「すくらっぷ・ブック」全巻を買い揃えて読んだように覚えています。 

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主要な登場人物である中学校のクラスメートはみな、短所はそれぞれあっても根はいい人で、悪人は誰一人としていない青春群像劇。いろいろ醜いところもある大人の世界を知ってしまった後となって、青春時代を懐かしんで(実際の姿よりも美化して)振り返って思い浮かべたときに見える姿に近いかもしれません。悪く言えば青臭い世界ということになるのでしょうが、衒いなくそういう世界を正面から描いていることに、他の漫画家の作品にはない新鮮な印象を受けたのだと思います。

そのあとも、「星空のローカス」、「ぶるうピーター」、「ウッド・ノート」あたりまでの、高校生前後の若者の葛藤と成長を描いた作品は、単行本を中古or新刊ですべて揃えて読みましたが、小山田さんご自身が年齢、そして経験を重ねられて、青春ものを脱却して社会派的な作品に変わっていった頃からは、私自身もまた年齢を重ねてそもそも少年漫画を読まなくなったこともあって、入った喫茶店や食堂でたまたま置いてあった少年チャンピオンで「マリオネット師」をお見かけする程度で、接する機会はほとんどなくなりました。進学やら就職やらで引越しを重ねるうちに、昔集めた単行本も(もはや古本屋に売ったのか捨てたのかすら覚えていませんが)すっかりなくなってしまいました。

前述のようなことで、だいぶ遅れてから亡くなられたことを聞いて、小山田さんの作品、とりわけ何度も読み返した「すくらっぷ・ブック」を懐かしく思い出しました。今やチャンピオンの発行元の秋田書店では文庫版などの復刻を含め販売はありませんが、復刊ドットコムから全4巻に再構成され、オンデマンドで1巻3000円前後で購入できるようです。

すくらっぷ・ブック1巻 (小山田いく選集3)

すくらっぷ・ブック1巻 (小山田いく選集3)

 

シミ・汚れなどの品質を気にしなければ、中古本の単行本11巻セットも(ネットでざっと見る限り)安いもので2000円台から、多くは4~5000円台で入手可能なようです。 

久しぶりに読んでみたくなりました。