鷺の停車場

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映画「雲のむこう、約束の場所」

新海誠監督の第2作、初の長編作品である「雲のむこう、約束の場所」(2004年11年20日(土)公開)をDVDで観ました。

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キネマ旬報で7~8月に新海誠監督作品の特集が組まれていましたが、上映された作品のうち、この作品だけは未見のままだったので、ふと気になって借りてきたのです。

以下、大まかなあらすじです。

大人になった浩紀は、かつての思い出が詰まった、廃駅の地に一人たたずむ。そこに、中学生時代の思い出の佐由理が現れ、そして消える・・・

津軽に住む中学生の浩紀と拓也は、津軽海峡で分断され「ユニオン」に支配されたエゾ(北海道)に立つ巨大な塔に憧れ、飛行機で塔まで飛ぼうと、廃駅の格納庫で秘密裡に小型飛行機を製作している。浩紀は憧れていたクラスメートの佐由理にうっかり口を滑らせてしまうが、佐由理は関心を持ち、3人は、飛行機が完成したら佐由理を塔まで連れていくと約束する。しかし、佐由理はある日、突然浩紀たちの前から姿を消す。

3年後。拓也は、青森の高校に通いながら、塔の破壊を企てる組織に内通し、指導教官の富澤の下、在日米軍の研究施設で塔の秘密を探っている。
浩紀は、塔が見えるところから逃れようと、青森を離れ、東京で1人暮らしをしながら都内の高校に通っている。孤独に苛まれる浩紀は、どこか冷たい場所にいる佐由理を必死で探す夢を時々見るが、いつも佐由理の姿を見つけることができない。

そんなある日、浩紀に佐由理が3年前に書いた手紙が届く。佐由理は原因不明の眠り病で東京の病院に入院したという。手紙を読んだ浩紀は病院に駆けつけるが、佐由理は1週間ほど前に他の病院に転院していた。しかし、佐由理のいた病室に入った浩紀は、夢で佐由理に邂逅し、塔まで飛ぶ約束を実行することを誓う。
その瞬間、富澤は、監視下に置いていた佐由理の意識レベルが一時的に上昇し、それとともに平行宇宙の侵食が拡大するのを目の当たりにする。富澤は、塔の捉えた平行宇宙の情報は、この宇宙を侵食する代わりに佐由理の夢に流れ込んでおり、もし佐由理が目覚めれば、この宇宙は平行宇宙に飲み込まれると推測する。

浩紀は青森に戻って拓也に再会し、佐由理を目覚めさせるため、飛行機に乗せて塔に連れていく約束を果たそうと、協力を求める。佐由理の目覚めがこの宇宙の消失につながることを知る拓也は、一度は拒むが、最終的に2人は団結し、佐由理を監視下にあった病院から連れ出して飛行機の完成を急ぐ。
間もなくアメリカがユニオンに宣戦を布告して戦争が始まり、その混乱に乗じ、浩紀は佐由理を乗せ、約束の場所である塔に向かう。塔に向かう飛行機の中、佐由理は、目覚めたら夢の世界で気付いた、浩紀への特別な想いだけは消えてしまわないようにと祈るが、目が覚めるとその想いはやはり消えてしまう。一方、目覚めとともに、平行宇宙の侵食は急激に拡大するが、浩紀は託された爆弾を投下し、塔を壊して宇宙の消失を食い止める・・・。

主人公を始め、キャラクターの描き方は、今となって見るとちょっと粗い感じがありますが、風景の描写の緻密さは、テレビの画面で見ても、魅かれるものがあります。やはりこれは新海監督の優れた持ち味だと思います。最終盤、飛行機が塔に向かっていく場面、竜飛岬近くにある階段国道国道339号線)の青い看板(いわゆる「おにぎり」)が出てくるところは、やられた、という感じです。

日本が津軽海峡を境に南北に分断されている、中学生がプログラミングも駆使して飛行機を作れる、佐由理の眠りと平行宇宙の侵食がリンクしている、といったやや突飛な設定があること、約束の場所である塔に連れていくことで(宇宙の消失を防ぎつつ)佐由理を眠りから救う、というエンディングなど、中にしっくりこない部分はありますが、今になって観ると、「君の名は。」の源流を感じる部分もありますし、全体に漂うちょっと儚い雰囲気は、その後の新海監督の作品にも共通する部分で、万人受けはしないかもしれませんが、個人的には気に入りました。