鷺の停車場

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「この世界の片隅に」@丸の内ピカデリー爆音映画祭

この世界の片隅に」がついに公開1年を迎えました。観客動員数や興行収入では大ヒット作品と規模が一桁違いますが、1年経ってまだ途切れず上映が続いているのは凄いこと。

さて、それよりちょっと前になりますが、丸の内ピカデリーで開かれている爆音映画祭で「この世界の片隅に」を観てきました。

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日曜日の朝、有楽町駅すぐの有楽町マリオンへ。
最初、マリオン本館の1階にある切符売場に並んだものの、窓口スタッフにピカデリー3は新館ですと言われるまでピカデリー1・2のみの売場であることに気付かず、改めて新館の方に。

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エレベーターで5階に上がります。

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エレベーターを降りてみると、意外にこじんまりしています。昔ならこれでも広いロビーだったのでしょうが、シネコンに慣れてしまった身には手狭に感じます。

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この日の上映スケジュール。「ブレードランナー2049」は連日のようですが、そのほかの上映作品は日替わりということもあってか、館内には「ブレードランナー」以外の作品の紹介は見当たりません。「この世界の片隅に」も、この上映時間の案内のみで、チラシの掲示も見当たりません。

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座席表も見た目どこか時代を感じさせます。ピカデリーでは一番小さいスクリーンですが、それでも540席。普通のシネコンだと最大スクリーンでもこれだけの席があるかどうかという感じだと思います。

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スクリーン最後部の入口から見た館内。昔ながらの傾斜が少なく見上げるスタイル。スクリーンサイズは14.2m×6.0mです。 上の写真では暗くてよく分かりませんが、スクリーンの両脇には、爆音映画祭のために増設したらしい、ライブコンサートなどで見るようなスピーカーが積まれています。

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入口を入った中央部には、音響調整のための機器が設置されていました。親切に、立入禁止だけど撮影可との表示がありました。

座ったのは、前後のほぼ中央に当たるJ列。ちょうど緩やかな傾斜が始まるあたりで、これより前の列はほぼ水平になっています。

普通の映画館だと、上映時間前にも、いろいろ宣伝の映像やら音声が流れていることが多い気がしますが、それも全くなく、画面も暗く、静かなままで上映時間を迎えます。

事前にインターネットでチケットを予約した際には、前の方の席はかなり埋まっていた気がしたのですが、実際に上映時間になると、思ったより空席が多いように見えます。朝早く、天気も悪かったので、寝坊したり、外出をやめた方もおられたのでしょうか。
館内の明かりが落ち、スクリーンへの映写が始まると、いきなりカクテルグラスを乾杯する(配給の)東京テアトルの映像が流れ、すぐに本編の上映が始まりました。予告編はもちろん、館内マナーや撮影禁止を呼び掛けるお知らせもなく上映開始とは。
もともとピカデリーの流儀なのか、爆音映画祭というイベントでの上映のせいなのか、初めてなので分かりませんが、前述のロビー内の様子も含め、商売っ気のなさはかなり意表を突かれました。

さて、本編が始まると、増設された両脇のスピーカーから、これまで観た上映ではメインの登場人物のセリフなどに埋もれてよく聞き取れなかった、雑踏音などの背景音がよく聞こえてきます。
例えば、映画の最初の方でいうと、
バケモノが背中のカゴに周作とすずさんを入れて相生橋(現在の原爆ドームである広島県産業奨励館の脇に掛かる橋)を渡るシーンで、すれ違う女の子がバケモノを指さし「お母ちゃん、変なのおりんさる」と脇にいるお母さんに話していたり、
その夜、すずさんが家でキャラメルの箱に鼻を近付けて匂いを嗅ぐシーンで、お兄さん(要一)が咳き込んでいたり、
すずさんが学校で鉛筆をナイフで削るシーンで、教室内で男の子たちの(鉛筆かサイコロを転がして?遊ぶ)野球ゲームで三塁打が出ていたり、
と、これまで全く気付かなかった音声がくっきり聞こえてきて、こんな音もあったんだ、ここまで丹念に音を作って拾ってたんだ、と気付かされることが多々ありました。
なお、帰ってから、自宅のテレビで改めてBlu-rayを観直してみたのですが、上に書いたような音は、けっこう大音量にした上で、メインのセリフなどを無視してそちらに意識を集中しないと聞き取れない程度に入っているだけだったので、通常上映版と比較して、背景の音の方にかなりフォーカスを当てたバランスといえます。
その反面、主要人物のセリフがちょっとエコーがかったように聞こえたり、主要人物が横に移動しながらしゃべるシーンなどでは、画面の中央にいてセンターから聞こえるセリフよりも、画面から外れてサイドから聞こえるセリフの方が大きく聞こえる場合もあったりして、全体のバランスとしては、けっこう不自然な感じもありました。

ただ、この映画祭での最初の上映前には、片渕監督ご自身も、音響調整に立ち会われたとのことですので、映画祭の趣旨から、おそらく、何度も観ておられる方向けのセッティングという前提で、全体の音響バランスは多少犠牲にしても、通常ではあまり聞こえない音や、砲台や爆撃などの重低音を際立たせるセッティングをしたのだろうと思います。後日の上映での片渕監督の舞台挨拶でも、背景の音声を際立たせるセッティングにした旨のことをおっしゃっていたようです。
その分、砲台や軍艦の砲撃音、機銃掃射の音などは、すごい迫力で響いていました。
一番身に迫ったのは、すずさんが右手を失った後、布団から起き上がって、右手を眺める回想シーン。背景の障子や庭の絵が左手で描いた絵のように(実際に左手で描いたという話も聞きました)歪んでいく中、すずさんが右手を回想する言葉が、通常ではセンターの声しか聞き取れないものが、右からも左からも言葉が押し寄せてきて、本当に凄かった。内に秘めた心の歪みを突き付けられたような気がしました。 

この映画をこの公開からの上映期間中にスクリーンで観るのは、現実的にはあと1~2回あるかどうかだろうと思います。1つの映画を、様々な音響のスクリーンで観ることができたのは貴重な、また愉しい経験でもありました。
個人的には、柏のキネマ旬報シアターで観たガルパンの音感上映の迫力が凄かったので、この映画の音感上映(4/29~5/19・7/22~8/18の過去2回の上映時は通常音声でした)も観てみたかった気がします。キネマ旬報シアターでは来年(以降)1月に再々上映予定とのこと、期待したいと思います。