鷺の停車場

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲

再びバッハのチェンバロ曲を。 

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J.S.バッハゴルトベルク変奏曲 BWV988 [1741]
マハン・エスファハニ(チェンバロ
(録音:2016年4月、ケルン)  

バッハ:ゴールドベルグ変奏曲

バッハ:ゴールドベルグ変奏曲

 

ヨハン・セバスチャン・バッハの「クラヴィーア練習曲集」の第4巻、原題は「2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏」だそうで、「ゴルトベルク変奏曲」の通称は、バッハが音楽を教えたヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクが不眠に悩む伯爵のためにこの曲を演奏したとの逸話によるもののようです。

曲は主題のアリアを冒頭と末尾に、その間に30の変奏曲を置く、全32曲からなります。変奏曲は3曲ごとに最初の旋律と同じ音形の旋律が後から追いかけるカノンが出てきますが、最初の第3変奏は同度(同じ音程)、次の第6変奏は2度(全音=1音違う)、その次の第9変奏は3度と、1度ずつ間隔が広がっていき、最後に出てくる第27変奏では9度(1オクターブ+1音)のカノンとなっています。

作曲技法のことはよくわかりませんが、その構成もあって、華やかな要素は少な目で、渋いというか、しみじみ聴く感じといったらいいのか。先の逸話が出てくるのもわかります。私も落ち着きたい時に聴くことが多いです。

かつては、グレン・グールドのピアノによる録音が決定盤のように言われていたような印象がありますが、グールドによる演奏もこの曲が広く知られるようになるのに貢献したのでしょう。 

J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲(81年デジタル録音)

J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲(81年デジタル録音)

 

私も昔CDで聴いたことがありますが、その頃はさほどバッハの曲になじんでなかったので、今となってはほとんど印象が残っていません……。

さて、聴いたのはエスファハニのチェンバロによる録音。

1984テヘラン生まれのイラン系アメリカ人、まだ30代前半ですが、ドイチェ・グラモフォン(アルヒーフ)のこの曲の録音は1980年のトレバー・ピノック盤以来ということですから、それだけ注文されている存在なのでしょう。

ヨハン・ハインリッヒ・ハラスのモデル[1710頃、グロスブライテンバッハ(テューリンゲン)]に基づくヒュー・サンダース作[2013年]のチェンバロを使用、ピッチはa'=415Hzだそうです。モダン楽器のピアノやオーケストラでは、a'=440Hzや442Hzが一般的ですから、おおよそ半音ほど低く、ド(C)が、モダン楽器で演奏した場合のシ(BまたはH)とほぼ同じ音程になる勘定になります。

解説書によると、楽譜の繰返しをすべて行っている一方で、音色を変えたり、装飾音を入れたりと、変化を付けておいるとのこと。楽譜を見ていないので正確にはわかりませんが、確かに、繰返し後の2回目だけでなく、1回目も含め、必ずしも楽譜どおりの演奏というわけではないようで、最初のアリアなど、1回目は音符を少し省いて楽譜よりもむしろシンプルに、2回目の方はより楽譜に忠実な演奏。変奏曲では、細かい音符が増えるので、アリアほどの崩し方はしていないようですが、全体を通じて、自在で伸びやな演奏。響きをほどよく捉えた録音も秀逸。

繰返しをしていることもあって、演奏時間は1時間18分20秒ほどと、CDの収録時間を目いっぱい使っています。

他の演奏も聴き比べてみました。

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J.S.バッハゴルトベルク変奏曲 BWV988 [1741]
ユゲット・ドレフュス(チェンバロ
(録音:1988年11月7~10日、パリ、サン=ピエール教会)

アンリ・エムシュ作[パリ、1754年]のチェンバロハープシコード)が使われており、ピッチはエスファハニとほぼ同じく、a'≒415Hzとなっています。
繰り返しも忠実に行われており、演奏時間はエスファハニよりもほんの少し長く、1時間19分弱となっています。

こちらは、聴いた感じトリルなどの装飾音を加える程度で、基本的に楽譜に忠実な印象。エスファハニの演奏が草書体とすると、ドレフュスはより楷書体っぽい感じ(やや誇張気味)ですが、個人的にはこのくらいの演奏も好き。 

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J.S.バッハゴルトベルク変奏曲 BWV988 [1741]
グスタフ・レオンハルトチェンバロ
(録音:1976年、ハーレム、ドープスヘヅィンデ教会)  

バッハ:ゴルトベルク変奏曲

バッハ:ゴルトベルク変奏曲

 

レオンハルトの3回目、最後の録音だそうです。こちらは、ブランシュのモデル[1730年頃、パリ]によるウィリアム・ダウド作[1975年]のチェンバロを使っているとのこと。ピッチは前の2枚と大差ないと思われます。
前の2枚と比べると、テンポも遅めで、より丁寧で折り目正しい印象。変奏曲での繰返しは行っていないため、演奏時間は47分ちょっとと、大幅に短くなっています。直接音が中心の録音はあまり好みではありませんが、演奏自体は優れていると思います。