鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「バケモノの子」

細田守監督の映画「バケモノの子」(2015年7月11日(土)公開)を借りて観ました。 

f:id:Reiherbahnhof:20171120223951j:plain

細田監督の作品としては先に観た「おおかみこどもの雨と雪」の次、長編オリジナル作品としては4作目だそうです。

両親が離婚し母と2人で暮らしていた9歳の蓮は、母を亡くし、親戚に引き取られることを拒否して、渋谷の街をさまよっているところで、クマのバケモノである熊徹に出会い、ついてこないかと誘われます。いったんは別れますが、その後警察官の職務質問に遭い、逃げる蓮は、熊徹たちの後を追ってバケモノが棲む世界に迷いこみ、熊鉄の弟子として暮らすことになります。
熊鉄に名前を明かすことを拒んだ蓮は、その歳から、九太と呼ばれることになり、熊徹の下で、格闘技や剣術の修行を重ねます。
17歳に成長した九太は、ある日、熊徹と口論して外に飛び出します。逃げ込んだ狭い路地裏を歩いていると、人間の世界である渋谷の街に戻り、女子高生の楓に出会い、また、父親と再会することになります。
その後、熊徹は、バケモノたちを束ねる長老「宗師」の座を賭けて、猪王山と闘うことになります。熊徹は猪王山を倒しますが、敗北を認められなかった猪王山の息子の一郎彦は、心の闇に取り込まれ、念動力を使って刀で熊鉄を刺します。実は、一郎彦も人間で、猪王山に拾われて子として育てられましたが、弟と違って父親に似てこないことに心の闇を抱いていたのでした。
九太は、人間の世界で一郎彦と闘います。熊徹は、自ら九十九の神となって、刀に姿を変え、九太(蓮)の心に入り込みます。熊鉄の助力もあって、一郎彦を倒した蓮は、父親と暮らし、大学進学を目指す道を選択して、映画は終わります。

ウェブなどで作品の紹介を見ていると、どちらかというと冒険活劇のような印象だったので、観ようかどうしようか迷いもあったのですが、実際に作品を観てみると、確かに、前作の「おおかみこどもの雨と雪」のようなしみじみしたトーンではないものの、成長と選択を描いた人間ドラマになっていて、いい意味で裏切られました。

成長とは、バケモノの世界で味方がいない熊鉄を母親を亡くして孤独な自分に重ね合わせて、その弟子になった蓮が、熊鉄の下で修業を重ねて成長するというだけでなく、味方がおらず天涯孤独、自己流だった熊鉄が、蓮を弟子にすることで成長していくという2つの面があったように思います。

選択という点でいえば、バケモノの世界で熊鉄の弟子として暮らすことを選択する蓮、猪王山に勝ったものの一郎彦に刺され、刀に姿を変えて九太の心の中に入ることを選択する熊鉄、さらに、一郎彦に勝った後に人間の世界で父とともに生きることを選択する蓮という、いくつかの場面がありました。

画調は、これまでの細田監督の作品と共通する部分が多く、独特な画調に最初はちょっと戸惑いを感じなくもないのですが、少し見始めると、作品の展開に引き込まれて、全く気になりませんでした。

最終盤の展開は、ちょっとうまく行き過ぎの感じもありましたが、全体の構成やストーリーの流れがよく、十分満足しました。