鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「パリ、テキサス」

週末の午前、キネマ旬報シアターへ。

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この日のラインアップはこんな感じ。

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この日観たのは、ヴィム・ヴェンダースの「パリ、テキサス」(1985年9月7日(土)公開)。ヴェンダース特集の一環で、4/7から4/20までの2週間再上映されています。

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パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]

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学生の頃、とある映画館のヴェンダース特集上映か何かで「ベルリン・天使の詩」を観た記憶はあるのですが、「パリ、テキサス」は観たような観てないような、記憶があいまいです。ロードムービーの傑作として評価が高いのは知っているので、この機会に観てみることにしました。

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週末の朝イチの上映、のんびり出掛けたら、着く頃には上映開始時間になっていました。売場でチケットを買うと「予告編が5分あります」とのことで、助かりました。

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予告編が流れる中、スクリーンに入ってみると、館内には10人ほどの観客。

テキサスの砂漠を男がさまよい歩く。その男、4年前に妻子を捨てて失踪したトラヴィスが行き倒れたという連絡を受けた弟のウォルトは、ロサンゼルスから駆け付け、隙あらば逃げようとしたりするトラヴィスに手こずりながら、車で自宅まで連れてくる。
ラヴィスはウォルトの家で、妻のアン、夫妻に育てられているハンターと再会する。ハンターはトラヴィスとその妻ジェーンの子だが、訳あって夫妻に託され育てられていた。ウォルトはハンターにトラヴィスが実の父だと伝え、交流を促し、最初は避けていたハンターも次第にトラヴィスになじんでいく。
ある日、アンからジェーンがハンターに毎月決まった日に送金してくると聞いたトラヴィスは、送金日に銀行でジェーンに会おうと、中古車を買って銀行があるヒューストンに向かう。それを聞いたハンターも同行することを選ぶ。
ヒューストンで見つけたジェーンは、マジックミラーを隔てて会話する覗き部屋のようなアダルトサービスで勤めていた。トラヴィスは、自分の思いをテープに録音してハンターに別れを告げ、ジェーンに会いに行く。彼女からは姿が見えない個室で、トラヴィスは自分が妻子を捨てるに至るまでを語り始める。ジェーンはやがてマジックミラーの向こうにいるのがトラヴィスであることを悟り、涙ながらにトラヴィスへの想いを告白する。トラヴィスは、自分はもうは会えないと伝えつつ、ハンターに会うことを勧め、ジェーンは、ハンターが待つホテルの部屋を訪れ、ハンターと再会する。
2人の再会を見届けたトラヴィスは、1人で再び旅に出ていく。

以上が大まかなあらすじですが、冒頭砂漠をさまようトラヴィスの姿は、どこか見覚えがありました。やっぱり昔も観たのかなあと思いながら観はじめましたが、その先のシーンは観たことはないような気がします。単に忘れてしまっただけかもしれませんが、もしかすると「ベルリン・天使の詩」を観た際などに予告編だけ観ていたのかもしれません。

というわけで、ほぼ初見のような感覚で観たわけですが、心に傷を負ったトラヴィスの回復、ハンターやジェーンとの絆の再生という点では、心打たれるものがありました。作品中の白眉、個室でトラヴィスがジェーンに語るシーン、そしてジェーンがハンターに再開するシーンは、涙なしでは観れませんでした。

一方で、冷静に考えてみると、ウォルトやアンからすれば、トラヴィスにさんざん引っ掻き回された挙句、4年間我が子のように育ててきたハンターも奪われるというストーリーですから、見方を変えれば、親族を振り回す身勝手な男の話ともいえます。
ハンターも、経緯はあれど結果論は父親失格の実父トラヴィスと、育ての親であるウォルト夫婦との間で、心の葛藤を強いられます。最後、実母ジェーンと再会したハンターが、そのままジェーンと暮らすことになるのか、再びウォルト夫婦の下に戻ることになるのか、劇中では明らかにされませんが、いずれにせよ、実父として慕い始めたトラヴィスに再び捨てられることになったわけですから、まだ10歳にもならないハンターにとっては、精神的にかなりの試練なのは間違いないでしょう。観終わって、その後ハンターが無事に成長していくことを願わずにはいられませんでした。