鷺の停車場

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映画「ワンダフルライフ」

是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭のパルム・ドームを受賞して話題となっています。6/2・3には先行上映が、6/8から本格公開が始まり、話題性もあって興行的にも上々の滑り出しのようです。

私自身は、映画館に観に行こうかまだ迷っているのですが、それはさておき、是枝監督の長編第2作となる「ワンダフルライフ」(1999年4月17日(土)公開)をDVDを借りて観てみました。 

ワンダフルライフ [Blu-ray]

ワンダフルライフ [Blu-ray]

 

この映画は、1999年の公開時に映画館に観に行って印象に残っていたのですが、その後はビデオなどで観ることはなかったので、およそ19年ぶり。

映画の後半は、渡辺と望月が物語の中心になります。

渡辺の妻の京子は、実は望月が亡くなる前の許嫁で、毎年望月の命日に墓参りに行っていました。最後に京子と外出し公園のベンチに並んで座ったときの思い出を選んだ渡辺は、何気ない会話から望月の死んだ日を知って京子の元許嫁だったことに気付いて、手紙を残します。

しおりが既に亡くなっている京子が撮影したフィルムを探し出すと、そこには望月との最後のデートでベンチに並んで座った京子の思い出がありました。

これまで思い出を選ぶことができなかった望月は、彼女との思い出を選ぶことを決心し、渡辺が思い出を撮影したベンチのセットに座り撮影します。職員とともにその試写を見た望月は天国に姿を消します。

翌週には思い出を選ぶことを拒んだ1人(伊勢谷友介)が職員として加わり、またいつも通り、死者に思い出を選んでもらう仕事が始まります。

 

物語は亡くなって天国に行くまでの一週間で一番大切な思い出を選ぶというファンタジックなもの。職員はみな思い出を選ばなかった(選べなかった)死者という設定で、その職員たちが分担して22人からそれぞれ思い出を聞き出し、思い出を選ぶ手助けをしていきます。伊勢谷友介由利徹など俳優もいれば、一般の方もいて、その様子はドキュメンタリーのインタビューのよう。ファンタジックな舞台設定の上で、ドキュメンタリー風の面談や職員たちの人間ドラマが、BGMもほとんどなく、静かな中にバランスよく描かれています。若い頃の青春の思い出、バリバリ働く壮年の思い出、満ち足りた晩年の穏やかな思い出、と思い出は人それぞれですが、自分だったら何を選ぶのだろう、と考えてしまいます(3番目の幸せな境地には至っていませんが)。

近年の是枝監督の作品とは風合いは違いますが、改めて観ても、印象に残るいい映画でした。