鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「海街diary」

万引き家族」のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞を記念してしばらく前にフジテレビ「土曜プレミアム」で放送された「海街diary」(2015年6月13日(土)公開)を録画して観ました。 

吉田秋生の同名のマンガを映画化した作品。あらすじは公式サイトなどを参照いただくとして、鎌倉で一緒に暮らす幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)の3姉妹は、訃報の連絡を受けて向かった家族を捨てて家を出た父の葬儀で、父の再々婚先で暮らす父の再婚時の娘すず(広瀬すず)と出会う。幸の誘いですずも一緒に暮らすことになり、4姉妹の生活が始まる。

しっかり者だけど職場の既婚医師と不倫している看護婦の幸、自由奔放で男と酒が好きな地銀勤めの佳乃、マイペースなスポーツ店に勤める千佳という、かなり性格が違う3姉妹が、同じ屋根の下で仲良く暮らしているというのは、現実にはそうそうないと思えますが、そうしたやや少しメルヘン?的な要素もある設定の上に、影を抱えながらも純真なすずが加わり、最初は遠慮がちだったのが、次第に溶け込み絆を深めていくさまを、サッカーチームの男子との淡い恋模様も交えながら、描いていきます。

片親が欠けた家族というのは、例えば小津作品にも多くありますし、一昨年大ヒットした「君の名は。」もそうであったように、映画ではよくあるように思いますが、両親が欠けた子どもだけの家族で、しかも(少なくとも現在は)不幸な境遇という感じでもなく、普通に暮らしているというのは、珍しい設定。

是枝監督の作品、特に近年のものは、家族の在り方を問うものが多く、この作品もその1つといえますが、例えば、実際にあった子ども置き去り事件を題材にした「誰も知らない」のような重たい設定ではないので、家でも抵抗なく観ることができました。重たい作品、特に家で観る場合には、観るのが辛いシーンもあるので、さぁ観るぞ、と心の準備をして臨まないと、えてして途中で挫折しまうので・・・。

ストーリーも、節目となるのは、すずが幸の誘いで一緒に暮らすのを決心するシーン、再婚して北海道で暮らす3姉妹の実母と法事で再会するシーン、行きつけの食堂のおばさんが佳乃が営業継続のために融資を勧めるのを断って余命が短いことを明かすシーン、幸がすずに「ずっといていいんだよ」と抱きしめるシーンといったような感じで、表面上は劇的な出来事が起きるわけではなく、日々のちょっとした出来事をとらえる中で描かれる4姉妹の心の揺れ動きは、じんわり心に滲みます。

この日の放送は本編ノーカット版とのことでした(エンドロールなどは編集されているようです)が、録画してCMをカットしてから観ても、どうしてもCMが入る部分で多少の間隙が開いてしまうので、いずれDVDなどでも観てみたい気がします。