鷺の停車場

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アニメ映画「星を追う子ども」を観る

新海誠監督の「星を追う子ども」(2011年5月7日(土)公開)をDVDで観ました。

劇場アニメーション『星を追う子ども』 [Blu-ray]
 

この作品は、昨年夏のキネマ旬報シアターでの新海誠特集で初めて観たのですが、また観てみたくなって&家族にも見せようと借りてきました。

小学生の女の子が主人公であることもあって、「君の名は。」を含め、新海作品に共通する思春期の主人公たちによる叙情的なドラマというのではなく、独自の叙情性を交えつつ、冒険の旅で成長する少女、そして亡くなった妻との日々を再び甦らせようと共に旅する男が否応なしに直面する現実の冷酷さを描きます。

以前も書いたように、ジブリ宮崎駿作品の影響が強いことは確か。特に「ハウルの動く城」や「天空の城ラピュタ」を思わせるシーンがいくつもあります。一方で、宮崎駿作品では自由にファンタジーの世界に飛び立っていく感じがありますが、この作品では、より現実世界に近いところで描かれている印象です。日常の中の繊細な心の描写といった新海監督の特長を生かしにくいテーマで、どこか他人の土俵で相撲を取っているような。おそらく、それまでの作品の殻を破って、より広い観客に受け入れられる作品を作ろうと試行錯誤した作品なのだろうと(勝手な推測ながら)思います。

ラピュタにおけるムスカのような、決定的な悪役は出てこないといった点は、設定上の1つの工夫なのでしょう。特長が生かしにくいテーマとはいえ、ところどころににじみ出る新海作品特有の叙情性などはやはり魅力的で、家族の評価も結構良かった。発展途上の感じはありますが、新鮮な印象を受ける部分もあって、なかなかの佳作だと思います。