鷺の停車場

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アニメ映画「茄子 アンダルシアの夏」

映画「茄子 アンダルシアの夏」(2003年7月26日(土)公開)を観ました。 

茄子 アンダルシアの夏 [Blu-ray]

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現在公開中の劇場版「若おかみは小学生!」の高坂希太郎監督の初監督作品。

スペイン1周の自転車ロードレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」を舞台にした作品。ブエルタは、知名度などでいえば、フランス1周の「ツール・ド・フランス」、イタリア1周の「ジロ・デ・イタリア」には及ばないですが、これらと合わせ「グラン・ツール」とされる大規模な自転車レース。

ロードレースチームのアシスト選手のペペ(大泉洋)。兄アンヘル筧利夫)とかつての恋人カルメン小池栄子)の結婚式の日、故郷近くを通るステージに臨むペペは、チームの指示に従い、エースを連れて集団から飛び出し逃げ集団を形成する。結婚式を終えた家族は沿道でペペに声援を送り、さらに表彰台に上がるペペを見ようとゴールの町に車で向かう。その後ペペはさらにアタックするが、他の選手は反応せず、単独で逃げる形となる。逃げ集団でのアクシデントでエースがリタイアしてしまったチームはペペを最後まで逃げ切らせる作戦に変更する。指示に従い逃げ続けるペペに兄や元恋人への複雑な思いが去来する。ペースを上げて追う逃げ集団とその後ろの大集団は、ゴール手前でペペに追い付き、ゴールスプリント勝負になるが、わずかの差でペペが勝利する。・・・というあらすじ。

黒田硫黄の短編漫画を映画化した作品とのことですが、高坂監督はサイクリストなのだそうで、ロードレースの描写の緻密さは特筆もの。集団の先頭交代、風や展開に応じて変化する集団の形状など、テレビで見るツール・ド・フランスなどの実際のレースの様子と比較しても違和感がありません。強いて言えば、実際のレースでは、逃げ選手が集団との差を残り5キロで10数秒差まで詰められてしまうと、普通はゴールまでに集団に吸収されてしまうでしょうし、ゴール手前でスプリント勝負になってしまうと、殊更にスプリンタータイプでないアシスト選手に勝ち目はないと思いますが、元恋人と兄の結婚の日、地元でのレースにペペが火事場の底力を出したということでしょうか。

画調をはじめ全体の雰囲気も、ジブリの諸作品で作画監督などを務められている高坂監督の作品とあって、宮崎駿監督のジブリ作品と共通するところが多く、見慣れた感じで安心して観ることができました。

とある日のレースでペペがゴールするまでという設定なので、大きな展開があるわけではありませんが、その間に去来するペペの様々な思い、周りの人たちとの関係などをテンポよく描き、ちょっとしんみりする佳作でした。