鷺の停車場

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アニメ「四月は君の嘘」①第1話~第5話

dアニメストアで「宇宙よりも遠い場所」を見終わったところでオススメで表示された「四月は君の嘘」を見ました。

新川直司原作のマンガをテレビアニメ化したもので、2014年秋~2015年春の深夜にフジテレビで放映された作品だそうですが、原作は未読で、オススメで表示されるまでは全く知りませんでした。

ピアノの神童として有名だったが、3年前、厳しい指導者だった母への反抗とその直後の母の死がトラウマとなって表舞台から姿を消した有馬公生(花江夏樹)が、同じ中学に通うヴァイオリニストの宮園かをり(種田梨沙)と出会い、葛藤しながらも、再びピアニストへの道を少しずつ歩き始める物語。

自分にはかなり響いた作品でした。すっかりハマってしまい、アニメを見直した上に、新川直司作の原作マンガも全巻まとめ買いしてしまいました。

ということで、少し詳しめに、公式サイトに掲載されている各話あらすじを引用しながら紹介したいと思います(以下<   >内はTVアニメ公式サイトからの引用です)。

第1話「モノトーン/カラフル」

<11歳の秋、天才ピアニストと呼ばれていた有馬公生は、母の死をきっかけに突然ピアノが弾けなくなってしまう。それ以来、彼の時間は止まったままだった。そんな公生を気に掛ける幼なじみの少女・澤部椿は、公生をダブルデートに誘う。同じく公生の幼なじみの渡亮太がとある女の子に会うことになっていた。気が進まないながらも待ち合わせ場所に向かう公生。彼はそこでピアニカを演奏する少女を目にする。渡のことが好きだという少女の名は、宮園かをり。彼女は、ヴァイオリニストだった!>

原作の第1話「モノトーン」に相当する部分。Blu-ray・DVDの1巻に収録。

友達が「好きな人がいると、全てがカラフルに見えるって」と言ってたと語る椿(佐倉綾音)を見て「椿の目には風景がカラフルに見えてるんだろうな。僕とは違う」と思う公生。しかし、かをりとの出会いが、モノトーンだった公生を変え始めていくことになる。かをりは、子どもと楽しげにピアニカを吹く姿は輝いていたものの、公生を盗撮魔と勘違いし、暴力上等、性格最低、印象最悪……。自分勝手に映るかをりの姿は第2話以降の演奏家としての姿との対比を鮮明にする設定上の仕掛けなのでしょう。最後まで見てから改めて見直すと、印象がかなり違って映ります。

第2話「友人A」

<有馬公生たちを連れて、宮園かをりはコンサートホールへ向かう。そこではヴァイオリン部門のコンクールが行われていた。懐かしい匂いがするホールの空気を味わう公生。天才ピアニストと呼ばれていた公生のことに気づく観客も会場には多くいた。コンクールがはじまり、会場には緊張感が張りつめる。そして4番目にかをりの出番がやってきた。彼女が弾く『クロイツェル』は、ほかの出場者の演奏とは全く違うものだった。楽譜の指示に従わず、曲を自分のものにしてしまう。その彼女の姿は美しかった。演奏を終えたかをりは渡亮太のもとへ駆けていく。その光景はまるで映画のワンシーン。ヒーローとヒロインのラブシーンを横で見つめる、公生はさながら「友人A」の役を務めているような気分を味わうのだった。>

原作の第2話「ヴァイオリニストの恋」に相当する部分。Blu-ray・DVDでは2巻に第3話とともに収録されています。

楽譜の指示に忠実に正確に演奏しなければ高い評価を得られないコンクールの場で、楽譜から自由に自分の音楽を奏でるかをりに心を撃ち抜かれ、「この曲はもうベートーヴェンのものじゃない、この曲はまぎれもなく彼女のもの」と思う公生。演奏が個性的かつ圧倒的であるだけでなく、コンクールの成績を意識せず客に自分の音楽を届けることを選ぶ、かつての自分と対極的なかをりの姿勢に衝撃を受けたのだと思います。この衝撃が、公生がかをりに惹き付けられ、そして彼を大きく変えていくきっかけになります。演奏後に公生に感想を聞くかをりの震える手は、かをりが演奏前に「届くといいな」とのつぶやきの届けたい相手が公生だったことを示しているのでしょう。

私自身、クラシックはオーケストラ曲を中心に良く聴くのですが、この作品で出てくるピアノやヴァイオリンの独奏曲の分野は詳しくないので、演奏される曲は新鮮に感じます。詳しい人が聴けば、楽譜にどのくらい忠実なのかなどもすぐ分かるのでしょうけど、そこまで分からないまでも、中学生でこれだけの演奏ができるのは、相当ハイレベルなことはすぐ分かります。実際の音源はプロが演奏しているのだと思いますが、伴奏とソロがズレてしまった部分は、音楽もきちんとずらして収録されているなど、芸が細かいです。

第3話「春の中」

<学校の帰り道、宮園かをりとばったりと出会った有馬公生は、渡亮太の代役でカフェへ向かう。美味しいワッフルを食べて、大喜びのかをり。そのカフェでは、子どもたちが古びたアップライトピアノで「きらきら星」を弾こうとしていた。かをりは公生に演奏するように命じる。店内に公生が奏でるピアノの音が響き渡る。だが突然、公生は演奏を止めてしまう。公生は集中するとピアノの音が聴こえなくなってしまうのだった。そんな彼を、かをりは自らの伴奏者に任命する。先日のコンクールで聴衆推薦に選ばれたかをりは、二次予選に出場することになっていた。>

原作の第3話「黒猫」・第4話「カラフル」に相当する部分。

かをりの演奏を聴いてから授業も上の空、体育の授業でボールを頭にぶつけ、授業を休んで音楽準備室でボーッとしている公生のもとに、心配した渡(逢坂良太)がやってくる。公生がかをりに魅かれたことを直感した渡は、かをりは渡が好きなんだ、僕には無理だ、と言う公生に、「魅かれた子に好きな人がいるのは当然、恋をしているからその子は輝くんだ、だから人は理不尽に恋に落ちるんだ」「無理かどうかは、女の子が教えてくれるさ」と語る。

カフェのシーンで、ピアノに集中すると、ピアノの音が聞こえなくなって演奏できなくなってしまう公生のトラウマが露見する。正確に、楽譜に忠実に演奏するよう厳しく指導する母に、初めて反抗した直後に母が亡くなり、母に反抗して投げつけた厳しい言葉が最後の会話になってしまったことが、その後の公生の呪縛となっていた。かをりはそれを知ってなお、公生を半ば強引に伴奏者に任命する。「悲しくてもボロボロになってもどん底にいても弾かなきゃダメなの、そうやって私達は生きていく人種なの」と公生を奮い立たせようとするかをり。弾き込みや合奏が十分にできず、当日になっても学校の屋上に隠れる公生に、かをりは、「私の伴奏をしてください、くじけそうになる私を支えてください」と涙ながらに懇願し、コンクール会場に連れていく。

第4話「旅立ち」

<コンクールの二次予選の日。かをりと公生は会場の廊下で出番を待っていた。緊張する公生を見て、宮園かをりは頭突きを一撃。公生と瞳をあわせると、「君ならできるよ。」と励ますのだった。2人の行先の決まっていない、音楽の旅がはじまる。大人しい演奏からスタートしたものの、曲調が変わると同時にかをりは本性を発揮…全身でヴァイオリンを弾きはじめる。公生はかをりに遅れないよう一音も漏らさず正確についていく。だが、公生が演奏に集中するほど、音符が次々と消え、ピアノの音が聴こえなくなっていく…。やがて伴奏は乱れ、公生は演奏を止めてしまう。すると、かをりも演奏を中断。微笑みながら少女は、「アゲイン。」とつぶやく――。>

原作の第5話「暗い海」・第6話「後ろ姿」に相当する部分。Blu-ray・DVDでは3巻に第5話とともに収録されています。

会場に着いた公生は、出番を待つ間、必死に譜面を読み、指を動かす。それを見たかをりは、公生に頭突きを食らわし、「顔を上げて私を見て、下ばかり向いているから五線譜の檻に閉じ込められちゃうんだ、大丈夫、君ならできるよ」と励まし、「さあ、旅に出よう」とステージに向かう。

ステージに上がった公生は、最初こそかをりのヴァイオリンに合わせて正確に弾いていくが、集中するにつれ、楽譜の音符は消えていき、自分の音も聞こえなくなって、深い海の中に溺れたような感覚に襲われ、ついには伴奏を中断してしまう。かをりはしばらく伴奏なしで弾き進めるが、公生が再開できないのを感じて、自分も演奏を中断する。そして、公生の方を振り返り、「アゲイン」と告げて、1人で演奏を再開する。それに突き動かれた公生が、心を奮い立たせて伴奏を再開すると素晴らしい音楽が響きわたり、終了後は観客の歓声に包まれる。

このシーン、ヴァイオリンの演奏はもちろん凄いのですが、まだ中学3年生で、しかも3年ほどピアニストとしての練習からは離れていて、曲は知っていてもほとんどさらってない状態だというのに、その場で楽譜を追いながら個性的なかをりのヴァイオリンに合わせてこれだけの演奏ができる公生は、やはり神童です。このシーンはとても印象的で、とりわけ、演奏を再開したかをりに突き動かされ、覚悟を決めて公生が再び弾き出した瞬間はグッときます。音源自体はそこまで劇的に変化していないのかもしれませんが、画の演出もあって、この変化をよく表現しています。実際のコンクールでは、いくら演奏が素晴らしくても、拍手が盛大になる程度、こんな歓声が上がることはないでしょうが・・・

第5話「どんてんもよう」

<病院の病室へ駆け込む、椿と渡、そして公生の幼なじみトリオ。コンクールの演奏後、かをりは入院していた。演奏を途中で止めたため、公生とかをりはコンクールの本選へ進むことはできなかった。だけど、かをりは公生に対して恨み言をひとつも言わない。そのことが公生には辛かった。ピアノは弾いてる? 君は忘れられるの? かをりの問いかけがいつまでも公生の中に残っていた。数日後、公生は退院して学校にいるかをりを見かける。話しかけようと迷うが、かをりのそばには渡がいた。勘違いするな、と自分に言い聞かせる公生。だが、その日の学校の帰り道に‥公生はまたかをりとばったり出会ってしまう。かをりは公生にピアノのコンクールに出るように頼み込むのだった。>

原作の第7話「曇天模様」・第8話「水面(みなも)」に相当する部分。

前話の最後、かをりが倒れたことが暗示されたとおり、かをりは入院していた。検査入院だと説明するかをりは、椿たちの帰りがけ、公生にピアノ弾いてる?と尋ねる。弾いてないと答える公生に、君は忘れられるの?と尋ねるかをり。僕にはピアノしかないのかと思う公生。かをりは、コンクールの演奏後、死んでも忘れない、と涙を流していた。後になって思えば、自分がこうしたステージに立てるのも最後かもしれない、という覚悟もあったのかもしれません。容赦のない人だ、その真っ直ぐな瞳、その後ろ姿ですら、諦めることを許してくれない、支えられていたのは僕だ、ありがとう、ありがとう、と思う公生なのだった。
そんなある日、公生の前に突然退院したかをりがが現れる。退院のお祝いを用意してなかったことを責め立て、かをりは公生にピアノのコンクールに出ることを約束させる。「君の番だよ、みんな怖いよ、全否定されちゃうかもしれない、それでも、歯を食いしばって舞台に上がる、何かに突き動かされて、私達は演奏するんだ」と語るかをり。「僕は大切な楽譜を投げ捨てた人間だよ、奏者として失格だ」と言う公生に、「そんな演奏家たくさんいる、やってられるかぁ、お前が弾けって、それでもまた拾い上げて、楽譜に向かう、そうやって、最も美しい嘘が生まれる」と語るのだった。

 

第6話以降の続きは改めて。