鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

新川直司「四月は君の嘘」Codaほか

四月は君の嘘」にすっかり魅了され、アニメ本編は3~4周、原作マンガも1~2読しましたが、番外編的な「Coda」も買ってみました。

マンガ「四月は君の嘘」Coda

元々はテレビアニメのセル版Blu-rayの特典として付けられた書き下ろし短編を単行本化したもののようで、次の5篇が収録されています。

Coda①「夏の夕暮れ」:紘子の手ほどきでピアノを習い、初めての発表会に向け練習する公生。譜面どおりに弾くのは苦手でレッスンを嫌がっていたが、大好きな祖母を亡くし落ち込む椿を元気付けたい一心でおとなしくレッスン受けるようになり、発表会を迎える・・・。

Coda②「夏の幻」:「夏の夕暮れ」の続き。5歳の公生が臨んだ初めてのピアノ発表会、椿のことを想って弾いたピアノは、技術的には未熟なところもあったが、とてもカラフル。公生の母は演奏を聴き、この才能をきちんと世に出す、と決意する。本編を見ていた時は、何で5歳の時の演奏がそんなにカラフルなのか不思議なところもありましたが、ただ自由に弾いたということではなくて、本編で描かれた公生の演奏と同じように、誰かに届けたいという思いが、演奏をカラフルにしていたんだなあ、と腑に落ちました。

Coda③「秘密結社KKE」:絵見は、学校では、本編で見せる情熱的で気分屋な姿とは違い、何でも器用にこなし、にこやかに振る舞い、男子生徒の人気を集めている。そんな男子生徒が集まる「秘密結社KKE」を描く。このお話はちょっとコメディっぽい。

Coda④「2年後」:本編の2年後、中学3年になった凪や三池が通う胡桃ヶ丘中学校の学園祭で三池の伴奏を務めることになった1年生チャボのお話。本編で描かれた2年前の凪の姿と重なります。背も伸び、大人びてきた凪や三池は精神的にも成長していて、音楽家の道に進む覚悟のようなものを感じます。音楽に真摯に向かう三池の姿は2年前の公生を思わせるところがあります。2人とも公生に魅了されているのに面と向かうと小競合いするところはちょっと面白い。

Coda⑤「夏のなごり」:飽きっぽかった5歳のかをりが、ピアノ発表会での公生の演奏に心打たれ、ヴァイオリン転向を決意する。母親が示した(子どもには)厳しい条件をクリアしようと努力を重ねるかをり、その熱意に根負けした両親はヴァイオリンを買ってあげる。何をやっても長続きしなかったかをりがここまで熱心に努力したのも、公生の演奏がそれだけ魅力的だったことの現れなのですね。

いずれも、本編では描かれなかった背景・伏線のような部分が描かれていて、本編の見え方も少し変わってくるような気がします。

このCodaもアニメ化されているようですが、これもセル版の特典のようで、配信されていないのは残念です。

加えて、CDも借りて聴いてみました。

CD「四月は君の嘘 僕と君との音楽帳」

四月は君の嘘 僕と君との音楽帳

四月は君の嘘 僕と君との音楽帳

 
  1. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 <月光> 第3楽章
  2. ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 <クロイツェル> 第1楽章
  3. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
  4. ショパンエチュード 嬰ハ短調 作品10-4
  5. ショパンエチュード イ短調 作品25-11 <木枯らしのエチュード>
  6. ショパンエチュード ホ短調 作品25-5
  7. クライスラー:愛の悲しみ
  8. クライスラーラフマニノフ編:愛の悲しみ (ピアノ独奏版)
  9. スクリャービンエチュード 嬰ニ短調 作品8-12
  10. ドビュッシー:月の光
  11. ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
  12. チャイコフスキー:“眠りの森の美女”より「ワルツ」 (ピアノ連弾版)
  13. ショパンエチュード ハ短調 作品10-12 <革命のエチュード>
  14. ショパン:バラード第1番 ト短調 作品23

テレビアニメの劇中で使われたクラシックの曲を収録したアルバム。アニメで実際に使われた音源を演奏した篠原悠那(Vn)、阪田知樹(Pf)などによる録音ですが、もちろんアニメのように途中で中断したりはしていませんし、そうでない曲もアニメで使われたものとは別テイクのようです。

1は回想シーンでトラウマに襲われる直前の11歳の公生が弾いていた曲。

2は藤和音楽コンクールでかをりも弾いた一次予選の課題曲、3はその二次予選でかをりと公生が弾いた曲。

4は毎報音楽コンクールの一次予選で武士が弾いた曲、5は絵見が、6は公生が同じ予選で弾いた曲。

7は藤和音楽コンクールのガラ・コンサートでかをりと公生が弾くはずだった曲、8はかをりの入院でそのコンサートで1人で出ることになった公生が弾いたピアノソロ編曲版。

9は毎報音楽コンクールの二次予選や東日本ピアノコンクールで絵見が弾いた曲。

10は椿がフラれた時、月夜の学校で椿の隣で公生が弾いた曲。

11は夜の帰り道、どこかの家で弾いているのが耳に入り公生がかをりの死の不安に襲われる曲。

12は胡桃ヶ丘中学校の学園祭で凪と公生が連弾した曲。学園祭ではワルツの前に「薔薇のアダージョ」も演奏していましたが、本盤には収録されていません。

13は東日本ピアノコンクールで武士が弾いた曲、14は同じコンクールで公生が弾いて、かをりに別れを告げる曲。

細部は少しずつ違いますが、聴いていると、自然とその音楽が流れていたアニメの場面が頭の中に浮かんできます。8や14など、アニメ本編で涙したシーンの曲は、聴いているだけで涙が出ました。

なお、このほか、マンガ単行本11巻の限定特典で付いていたオリジナルアニメもあるようで、これも配信はされていないみたいですが、一度見てみたい気がします。