鷺の停車場

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ノートルダム大聖堂の火災

先日のパリ・ノートルダム大聖堂の火災のニュースは、尖塔が折れて崩落する映像をはじめ、かなり衝撃的なものがありました。

周辺の文化遺産とともにユネスコ世界遺産にも登録されている観光名所でもある初期ゴシックを代表する建築物の焼失に、フランス国内に限らず、広く支援の声が上がっているようです。

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話が逸れますが、文字のフォント名でも使われている「ゴシック」とは、本来は「ゴート風の」といった意味で、ルネサンス期に、それ以前のものを野蛮なものとして蔑視する趣旨で、古代ゲルマン系の民族名である「ゴート」を使って表現したのが始まりなのだそうです。

西洋建築は石造りというイメージですが、あれだけ激しく燃えたのは、石材だけでは重いのと、雨を防ぎにくいため、屋根や尖塔などには木材も使われていたためだったよう。その火災の原因は、その後の調査で、工事のために使われた電気回路との見方が強まっているようです。

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これだけの歴史的建造物を修復するのには相当の期間を要するのだろうと思います。

できる限り元と同じ姿で、となると、ひとつひとつの部材の素材や形状、場合によってはその製法も含めて確認し、復元していく必要もあるでしょう。設計図に相当する正確な図面が残っていなければ、画像などの資料からそれを復元する作業も必要になるのかもしれません。

外観など人の目に触れる部分だけ元通りにするといったことであれば、比較的短い期間に抑えることも可能なのかもしれませんが、それでは、観光資源あるいは芸術的な建築としての価値はともかくとして、歴史的な文化遺産としての価値は大きく失われることになるでしょう。

ただし、大聖堂はそもそも、12~13世紀に創建された当時の姿をそのまま伝えているわけではないようで、フランス革命後の略奪や破壊で荒廃してしまったものを19世紀に大規模に修復した経緯があり、崩落した尖塔は、その修復時に元の姿に変更を加える形で復元されたものなのだそうです。

そういうこともあってか、尖塔の復元に当たっては、崩落前の姿に限らず、国際コンペも行ってデザインの検討が行われるみたいです。

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修復に当たって、どのようなスタンスがとられ、どのくらいの期間を掛けて修復が行われるのか。個人的には、火災直前と同じでなくても、どこかの時代に実際にあった姿に再建してほしいなあと思いますが、現役の教会と考えれば、建造当時は批判されても今や高く評価されているエッフェル塔のような例もありますから、新たな血を注ぎ込むような形での再建もあるのかもしれません。