鷺の停車場

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鴨志田一「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」・「青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない」を読む

アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」がなかなか良かったので、電撃文庫から出ている鴨志田一著の原作小説も読んでみることにしました。最近は、このように、アニメで見て気になった作品の原作本を読むパターンが多くなってきました・・・

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」

青春ブタ野郎シリーズの第1巻。

  • 第一章 先輩はバニーガール
  • 第二章 仲直りの代償
  • 第三章 初デートに波乱は付き物だ
  • 第四章 僕らの想い出
  • 第五章 君だけがいない世界
  • 終章 そして、夜が明けて

という章立て。

テレビアニメ版との関係でいうと、おおむね、

小説第1章「先輩はバニーガール」から第2章「仲直りの代償」の「2」の途中までがアニメ第1話「先輩はバニーガール」に、

小説第2章の「2」の途中から第3章「初デートに波乱は付き物だ」、第4章「僕らの想い出」の「2」までがアニメ第2話「初デートに波乱は付き物」に、

小説第4章の「3」から第5章「君だけがいない世界」までがアニメ第3話「君だけがいない世界」に、終章「そして、夜が明けて」がアニメ第4話「ブタ野郎には明日がない」の冒頭部に、

それぞれ対応しています。

子役時代から芸能界で活躍し、高校入学後活動を休止したが、入学後しばらく仕事で学校に通えなかったためにクラスに溶け込めず、学校では空気のような存在を演じている3年生の桜島麻衣が、だんだん他の人から見えなくなり記憶からも消えていってしまい・・・というあらすじ。

ストーリーの流れはアニメ版と基本的に変わるところはなく、基本的に原作に忠実にアニメ化していたのだと感じました。もっとも、原作小説では、アニメ版では尺の都合などで圧縮されている部分も、丁寧に描かれています。例えば、咲太と麻衣が東海道線で大垣まで行く場面、アニメ第2話では途中の乗り換えは省略されていましたが、小説の第4章では、熱海で19時11分発の島田行き電車に乗り換え、島田、豊橋で乗り換えて大垣まで行くことになっています。ちなみに、今の時刻表でも19時11分熱海発の普通列車はありますが、その後のダイヤ改正で変わったのか、島田の手前の静岡行きになっていて、静岡→浜松→豊橋で乗り換えて、24:30に大垣に着くことになっています。

青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない」

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」に続く青春ブタ野郎シリーズの第2巻。咲太と同じ高校の1年生、古賀朋絵の物語。

  • 第一章 ブタ野郎には明日がない
  • 第二章 明日は明日の風が吹く
  • 第三章 嘘の恋人はじめました
  • 第四章 ありったけの嘘を君に
  • 第五章 ラプラスの小悪魔
  • 終章 君が選んだこの世界

という章立て。

テレビアニメ版との関係でいうと、おおむね、

小説の第1章「ブタ野郎には明日がない」と第2章「明日には明日の風が吹く?」の「3」あたりまでがアニメ第4話「ブタ野郎には明日がない」に、

小説第2章の「4」から第3章「嘘の恋人はじめました」、第4章「ありったけの嘘を君に」の「1」あたりまでがアニメ第5話「ありったけの嘘を君に」に、

小説第4章の「2」あたりから第5章「ラプラスの小悪魔」、終章「君が選んだこの世界」がアニメ第6話「君が選んだこの世界」に、

それぞれ対応しています。

高校入学と同時に福岡から出てきた朋絵は、一人ぼっちになるのは恥ずかしい、と過剰なくらいに周囲の空気を読んで周囲から浮かないよう行動する女の子。そのせいで、本人が望まぬ展開になると、本人も意識せずに同じ日を繰り返してしまい、明日がやってこない、という思春期症候群。それに巻き込まれた咲太は・・・というあらすじ。

第1巻・第2巻とも、1人の女の子に降りかかった思春期症候群に、主人公の高校2年生の梓川咲太が、友人の双葉理央などの助けも借りながら、その原因を探り、心を解きほぐして解決していくという展開。

咲太自身、心に古傷を抱えながら、人に嫌われることも厭わず、空気が読めてもあえて読まない芯の強さ、そして優しさを持った人間は、実際にはなかなかいないと思いますが、だからこそなのでしょう、クセはあるけど魅力あるキャラクターになっています。各巻で中心となる女の子をはじめとする心理描写がスッと腑に落ちるあたりも、描写の巧さを感じます。第1巻・第2巻とも第4章の最後のモノローグなど、特に印象的でした。

思春期症候群という架空の設定ということもあり、見方によっては都合良すぎと思える展開もあって、深みはあまり感じませんが、ライトノベルとしては、難解さも少なく、不安定な思春期の一面をうまく切り取って、時にホロッとさせる、いい青春ファンタジーだと思います。

ただ、どこか扇情的なタイトルやロリコン系のイラストでけっこう損している感じ。このへんもう少し叙情的な雰囲気だと、これだけの中身であればもっと裾野が広がるのでは?と思えて、もったいない気もします。