鷺の停車場

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アニメ「月がきれい」を見る①第1話~第4話

dアニメストアで「月がきれい」を見ました。

「月がきれい」Blu-ray Disc BOX(初回生産限定版)

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これまで見てきた作品のページの末尾におすすめ表示されて見てみた作品で、2017年春にTOKYO MXなどで放映されたオリジナルアニメのようです。主要スタッフは、監督:岸誠二、構成・脚本:柿原優子、アニメーション製作:feel.など。

月がきれい」とは、確か夏目漱石が"I love you"をそう訳した逸話があったはずです。それを意識してのタイトルなのでしょう、各話のタイトルも、有名な文学作品になぞらえて付けられています。

一声で言えば、中学3年生の甘酸っぱい恋の物語。

ともに奥手な小太郎と茜が、同じクラスになったのをきっかけに知り合い、自分でも言葉に表現できない恋の感情に突き動かされ、戸惑いつつも、少しずつ距離が近付いていく、もどかしく、ソワソワする展開は巧みで、見入ってしまいました。

もう数十年前、自分が十代の頃は、もっとウブで、中学生ではこんな恋愛はあまりなかったように思います。自分の子どもなどを見ている限り、実は、今の中学生でも、こういう恋愛に憧れることはあっても、実際に体験する人はかなり稀なのでは、という気もしますが・・・

画の雰囲気は、キャラクターの輪郭が白抜きされているところが、劇場版アニメの「きみの声をとどけたい」や、昨年の「宇宙よりも遠い場所」と似ています。本作の方が白抜きの程度が強いですし、製作スタッフも共通していないので、たまたまなのでしょうけど、どこか水彩画を思わせる画調もあって、みずみずしい雰囲気。

すれ違いがあったり、からかう子はいても、恨んだり、嫌がらせしたりする子が出てこないのは、ある種のメルヘンですが、群像劇にせず2人の関係に焦点を当てた思い切った構成、印象的な場面で恋にまつわる名曲がBGMとして挿入される(いずれも歌は涼子先生役の東山奈央さん)のも効果的で、しぐさや風景などセリフや表情以外の要素を効果的にいかした演出も、作品をいっそう余韻深くしているように思います。

 

 

 

以下、アニメテレビ公式サイトに掲載されているストーリーに触れつつ、各話の内容を紹介したいと思います。ネタバレになるので、実際に見るまでは知りたくないという方は、パスしてください。(以下<  >内は公式サイトの記載です。)

 

 

 

第1話:春と修羅

<小説家志望の文芸部員、小太郎。茜は陸上部で短距離走専門。中学3年になり、初めて知り合った2人。家族と食事に出かけたファミレスで出くわしたり、運動会の用具係で一緒に作業したりが続き、互いを意識し始める。>

タイトルは宮沢賢治の詩集(大正13(1924)年)。これは読んだことがあります。「永訣の朝」など、印象深い詩も数多くあります。

中学3年生の春、水野茜(小原好美)が新しいクラスの教室に行くと、教室には山科ろまん(筆村栄心)、小笠原大地(金子誠)と談笑する安曇小太郎(千葉翔也)がいた。小太郎は出版社に応募しようと小説を書き、茜は陸上部の練習に打ち込む。
その日の夜、茜が家族でファミレスに夕食に行くと、偶然にも隣のテーブルで家族と夕食を食べに来ていた小太郎が茜に気付いて目を合わせる。親同士は挨拶を交わすが、茜は恥ずかしさから、学校では言わないで、と小太郎に口止めする。互いに意識するようになる2人。
運動会が近づき、茜と小太郎はともに陸上部中心で構成される用具係になる。用具係の集まりで、茜は小太郎の寝ぐせがハネているのに気づき、ひそかに「ハネテル君」と名付ける。茜は係のグループLINEを作るためメンバーのIDを集めるが、小太郎だけはうまく話しかけることができずIDを入手できない。しかし、係の連絡が回らず係の仕事に参加しなかった小太郎が先生に仕事を命ぜられたのを見かけた茜は、小太郎を追いかけ、自分のIDを書いたメモを小太郎に渡す。汚れた制服の背中をはたいて落としてくれる茜にキュンとする小太郎。その夜、小太郎はグループLINEに参加し、茜の歓迎のメッセージを見て自室の蛍光灯の紐でシャドーボクシングしながら、太宰治の「斜陽」の一節が頭に浮かぶのだった。

この話に限らず、要所要所で、「太宰は言った。・・・・と。」という感じで、小太郎のモノローグで太宰治の作品の一節が出てきます。太宰治が好きな文学少年、という設定なのですね。

第2話:一握の砂

<中学最後の運動会。小太郎はくじ運悪く出走した競走で転倒、保健室で茜の親友・千夏の治療を受ける。千夏の奔放さに気圧されて用具係の仕事に戻ると、最終種目のリレー出走直前だというのに、茜の様子がおかしい。>

タイトルは石川啄木の詩集(明治43(1910)年)。これは未読。

迎えた運動会、作家を目指し小説の執筆に打ち込む小太郎は寝不足気味だったが、200メートル走で1位となる茜の姿に見とれる。同じく200メートル走に出場する小太郎の頭に太宰治の「HUMAN LOST」の一節が浮かぶ。転んで最下位になってしまった小太郎は、手を擦りむいて保健室に行き、たまたまいた茜の親友で同じく陸上部の西尾千夏(村上梨衣)に手当てを受ける。
昼食後、茜は用具係の打合せの最中に、いつも持ち歩いている芋のマスコットを落としてしまう。それに気付いて不安になる茜は、マスコットを探すが見つからず、用具係の仕事でもミスをしてしまう。茜がマスコットを探しているのを知った小太郎はそのマスコットを探し始める。一方、茜は最後の競技、組対抗リレーに出場するが、バトンを落とすミスをしてしまう。
運動会が終わり、落ち込んで帰ろうとする茜に、小太郎は見つけ出したマスコットを茜に渡す。喜んで、「これがないと緊張して・・・人に見られるの苦手なんだ、ほんと恥ずいんだけど・・・」と言う茜に、小太郎は「恥ずかしくない。水野さんは・・・そのままでいいと思う」と声をかけるのだった。
その夜、茜からLINEでお礼のメッセージが入り、2人はLINEで会話する。

本編エンディングの後には、次のショートエピソードが挿入されています。

●節子と永原

佐藤節子(鈴木美園)が彼氏の永原翔(広瀬裕也)がどんな子かクラスメートに聞かれる。彼はいちゃつきたい時だけいい顔してラブホテルに入るチャラ男だった。

●涼子先生とろまん(1)

小太郎らの担任の園田涼子(東山奈央)が、家でワインを飲みながら運動会のビデオを見返す。借り物競争で訳も分からずろまんに連れていかれた涼子だったが、ろまんの借り物は「好きな人」だった。「生徒なのに・・・」と嘆く涼子。

●涼子先生とろまん(2)

ろまんの「好き」が、先生として好き、だということが分かって、家で落胆する涼子。

●心咲とカネコ

宮本心咲(石見舞菜香)が金子翼(熊谷健太郎)に「オレと付き合え」と高飛車に言われ、顔を赤くする。

第3話:月に吠える

<運動会が終わると次は修学旅行。中3の初夏は浮ついた空気の中、過ぎていく。LINEで連絡を取り合うようになった茜と小太郎。陸上競技会で自己ベストを記録した茜は、喜びに任せて小太郎のいる神社へに報告に行く。>

タイトルは萩原朔太郎の詩集(大正6(1917)年)。これも未読。

学校では中間試験が始まる。元気のない小太郎をろまんと大地がからかう。文芸誌の新人賞に応募したが、入選できず落ち込んでいた小太郎だったが、学校では話ができない茜とLINEで会話を交わし勇気付けられる。
中間試験が終わり、陸上部の練習に向かう茜たち。千夏は小太郎を見かけて「ハネテル君~」と声をかける。千夏と滝沢葵(白石晴香)は茜に、部長を務める比良拓海(田丸篤志)と付き合っちゃえば、比良は告られて好きな人がいるって断ったんだよ、とけしかける。比良も茜に告っちゃえばいいのに、と話す千夏たちの話を小太郎は耳にする。LINEが増えた茜に、彼氏?とからかう姉の彩音前川涼子)。小太郎は、茜の好きな人が誰かがとても気になるが、直接聞くことはできない。。
次の日曜日、茜は陸上大会に出場する。出場を前にする茜に励ましの言葉をかける比良。川越まつりのお囃子の稽古に熊野神社に行った小太郎は、500円をお賽銭に入れて祈り、稽古に打ち込むが、茜の結果が気になって仕方がない。
夜、稽古が終わった小太郎の前に茜が姿を見せる。茜は大会で自己ベストを更新したことを報告する。スマホの充電が切れてしまい、帰りに神社にいるかなと来たのだという。境内に並んで座る2人。茜の横顔に見とれる小太郎。何か変な気持ちと思う茜。池に映る満月に、"I love you"を「月がきれいですね」と訳したのは太宰だったか夏目漱石だったか、と脳裏をよぎった小太郎は「つき・・・」と言葉を発して逡巡する。茜は「月?」と空を見上げ「ほんと、月、きれい」と笑顔を向ける。そんな茜に小太郎は「つき・・・あって」と告白する。

第4話:通り雨

<「少し待って、返事。」 戸惑いのままに迎えた京都への修学旅行。小太郎も2人きりになれる機会を作ろうとLINEで待ち合せの連絡を入れるが、茜の返事を待たずにスマホを没収されてしまう。翌日、雨の中待つ茜は…>

タイトルはプロレタリア文学・共産活動家の宮本百合子(1899~1951)の「通り雨」ということのようです(これはネットでも読むことができます)が、これは小説や随筆、詩集ではなく日記・手記のたぐいのようなので、他の回のタイトルの作品とはかなり異質です。実際には、似た意味の吉行淳之介の短編小説「驟雨」(昭和29(1954)年。こちらは未読)あたりが念頭にあったのでは?と想像しますが、どうなのでしょう。

京都への修学旅行の出発の日を迎えた2人。神社での夜、小太郎の告白に戸惑う茜は「付き合うって、よくわかんないし・・・返事、少し待って」と答えていた。それから修学旅行までの間、2人はほとんど話していなかった。生徒たちは、持ち物検査をくぐり抜けて禁止のスマホを持っていこうと工夫を凝らす。
京都で、茜は千夏に誘われ部活へのお土産を探す。小太郎を見掛けた千夏は、小太郎を呼び止めどんなお土産がいいかアドバイスを求める。その様子を遠巻きに眺め複雑な気分になる茜。
その夜、小太郎は翌日の自由行動で12時に百貨店の前で待ち合わせようと茜にLINEを送るが、送った直後、先生に見つかってスマホを没収されてしまう。
次の日、茜は小太郎と連絡が付かず、同じクラスの心咲と美羽に誘われるがまま一緒に行動するが、小太郎が気になって仕方がない。ソワソワする茜を見かねた心咲の気遣いもあって、茜は1人で百貨店に向かう。雨が降り出す中、百貨店の前に着いた茜だが、小太郎は見当たらない。一方、必死に茜を探す小太郎は、たまたま見かけた千夏に思い切って頼み、茜に電話してもらって茜と落ち合う。茜は「遅いし、勝手に待ち合わせ決めて、行ったらいないし、雨降るし、携帯つながらないし・・・」と連絡が付かない小太郎を責めるが、「わかんないけど、全然話せないし・・・もっと・・・喋りたい、安曇くんと」と告白の返事を伝える。

本編エンディングの後には、次のショートエピソードが挿入されています。

●涼子先生とろまん(3)~京都編~

女子生徒と舞妓を見かけるが、興味薄の涼子。しかし、それがろまんが扮した姿と知ったとたんに興味津々となる。

●節子と永原(2)~京都旅情編~

修学旅行に来ても、ラブホテルに連れ込もうとする永原にあきれる節子。

●節子と永原(3)~京都追憶編~

しかもお金がなくてラブホテル代を節子に出してもらおうとするのだった。

 

 

エンドロールの途中、背景にその後の2人のLINEの会話と思しきスマホ画面の画が映るのですが、その画面に映る会話の相手の名称は、第1話では「彼氏さん」、第2話では「よめ」、第3話と第4話では「彼女さん」になっています。「よめ」と名付けるということは、最後は結婚するという設定なのでしょう。

続きはまた改めて。