鷺の停車場

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武田綾乃「響け!ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」を読む

武田綾乃さんの小説「響け!ユーフォニアム」シリーズ、「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」に続いて、「響け!ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」を読みました。

本作は、「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」に続く「響け!ユーフォニアム」シリーズの第2巻。2015年3月に刊行されています。

プロローグ

中学3年生の鎧塚みぞれ、前年コンクールの関西大会銀賞から全国大会を目指していたにもかかわらず、予想だにしていなかった京都府大会銀賞で終わってしまい、コンクールってなんなんだろう、と疑問を抱く。

一 フルートの来襲

テレビアニメ版(第2シリーズの「響け!ユーフォニアム2」。以下同じ)でいうと、おおむね第1話「まなつのファンファーレ」に当たります。

京都府大会を突破した北宇治高校吹奏楽部は、関西大会に向けた練習に移る。
ユーフォニアム1年の黄前久美子は、親友でトランペット1年の高坂麗奈から、いつも朝一番に練習に来ているのはオーボエ2年の鎧塚みぞれだと聞き、翌朝麗奈と一緒に朝6時に音楽室に行くとみぞれはもう来て基礎練習に励んでいた。その日の練習後、ユーフォニアム2年の中川夏紀が、1年生の時にやる気のない当時の3年生と対立して吹奏楽部を辞めたフルート2年の傘木希美を副部長でユーフォニアム3年の田中あすかのもとに連れてくる。希美は部活に戻りたいと許しを請うが、あすかはコンクールが終わるまでは認められないと拒絶する。その後も何度も希美はやってくるが、あすかは、この部にプラスにならない、と頑として復帰を認めない。希美はみぞれと同じ南中の出身だった。
花火大会の日、いつもより早く練習が終わった後、久美子が忘れ物を取りに階段を上がると、顔色の悪いみぞれが座り込んでいた。みぞれは、希美が吹くフルートを耳にして聞きたくない、気持ち悪い、吐きそうと、ゆっくり階段を下りていく。花火大会に向かった久美子は麗奈に希美のことについて話す。一度辞めた方が悪い、辞めるのは逃げること、という麗奈の言葉に、久美子は希美は何から逃げたんだろう、と思う。

二 トランペットの本心

テレビアニメ版でいうと、おおむね、第2話「とまどいフルート」、第3話「なやめるノクターン」に当たります。

合宿を目前にしたお盆休みに麗奈たちとプールに来た久美子は、夏紀たちと一緒にプールに来ていた希美に出会う。希美に部活を辞めた理由を尋ねると、練習しない3年生との対立で南中だった1人が辞め、芋づる式に大量離脱事件が起きたと説明する希美。南中出身のみぞれが辞めなかったことについて、みぞれは誰にも誘われなかったと思う、みぞれは唯一のオーボエで1年でもあの子だけはコンクールメンバーだった、と語る希美に対し、久美子の心の中に、本当は嫉妬してたんじゃないですか?という疑問が浮かぶが、口に出すことはできない。そして、練習なんてしなくていいと去年まで平気で言っていた子たちが関西大会に行ったことが悔しいと言う希美に、久美子は、あすかが復帰を拒む理由を調べると約束する。
2泊3日の合宿が始まる。初日の夜、眠れない久美子が自販機コーナーに向かうと、みぞれがいた。コンクールは嫌い、最後は人間の評価で決まる、仕方ないと割り切ることができない、と語るみぞれ。
翌日、臨時コーチの橋本から、ソロが楽譜どおりでつまらない、情熱的に、と注意を受けるみぞれ。その夜、久美子が希美の復帰を認めない理由をあすかに尋ねると、みぞれは希美がトラウマになっている、唯一のオーボエ奏者に影響が出たら困る、と言うのだった。その後、部員たちが花火に興じている間に、橋本に話しかけられた久美子は、口を滑らせてしまった橋本から、顧問の滝先生に奥さんがいたが5年前に死んでいたことを聞かされる。眠れなくなった久美子が再び自販機コーナーに向かうと、みぞれではなく、同じ南中出身でみぞれと仲のいいトランペット2年の吉川優子がいた。優子につかまり話し込んだ久美子は、眠れないまま朝を迎える。

三 オーボエの覚醒

テレビアニメ版でいうと、第4話「めざめるオーボエ」、第5話「きせきのハーモニー」に当たります。

合宿も終わり、関西大会も間近に迫ったある日、希美の復帰がいいことなのか分からなくなった久美子は、一緒に帰ることになった夏紀から復帰を手助けしようとする理由を聞き出す。
関西大会の3日前、久美子は、あすかに会いにやってきた希美から、みぞれがソロで悩んでるって聞いた、みぞれは性格は淡々としてるけど、演奏は感情爆発っていう感じだったから、あの子の力になれればいいんだけど、と聞かされる。
嫌な予感がした久美子だったが、事件は関西大会の前日に起こる。練習後、励ましに来た希美にばったり会って、みぞれは発作的に走って逃げたのだ。優子とともにみぞれを探すことになった久美子は、廃部になった演劇部の部室でうずくまるみぞれを見つける。みぞれは、希美を避ける理由を話す。そこに、優子もやってきて、みぞれに自分の思いをぶつける。ためこんだ思いが爆発したみたいに号泣するみぞれ。落ち着いたみぞれのもとに、あすかの指示で希美がやってくる。話すうちにトラウマが消えていくみぞれ。
迎えた関西大会、久美子は演奏しながら、100回に1回に起こる演奏がこの関西大会という舞台で行われている、これは奇跡だと感じる。演奏後、残る他校の演奏を聞く久美子たちの前で、代表の大本命の1つの秀大附属が自由曲のエスクラリネットの難易度の高いソロでミスをする。その後、トイレに立った久美子は、秀大附属の少女2人を見掛ける。それは、本番前に怪我をして出られなくなった3年生と、その代理でエスクラリネットのソロを吹くことになった後輩だった。嗚咽交じりでミスを繰り返し謝罪する後輩を先輩が優しく慰める光景を目撃して、久美子はベンチに座りこむ。

エピローグ

コンクール関西大会の結果発表、北宇治高校吹奏楽部は代表3校の最後の1校として選ばれ、久美子たちは歓声を上げる。テレビアニメ版の第5話で描かれた場面。

 

関西大会の本番での演奏、本作では課題曲が「三日月の舞」、自由曲が「イーストコーストの風景」ですが、テレビアニメでは自由曲が「三日月の舞」となっていて、課題曲は実際に2015年度の吹奏楽コンクールで課題曲Ⅳだった「プロヴァンスの風」になっています。

アニメ第5話では自由曲の演奏シーンがフルバージョンで流され、全国大会に行っておかしくない素晴らしい演奏なのですが、久美子の内心の声が語られたりはせず、演奏と画だけで見せていくので、「奇跡」だった感じはあまりしませんでした。本作では、関西大会の本番が、実力を遺憾なく発揮した演奏、を超えて、何回に1回もない奇跡のような演奏だったこと、また、大本命と目されていたライバル校に思わぬミスがあったことが描かれることで、北宇治高校が代表に選ばれたこと(そして、その後全国大会で銅賞に終わってしまうこと)がより納得できる形になっています。

既に書いたように、本作はテレビアニメの第2シリーズ13話のうちの最初の5話に対応しているので、その後の8話分で続く第3作を描いていることになります。本作の第1章「フルートの来襲」は全体の3分の1を超える118頁ありますが、アニメでは第1話だけで描いているので、けっこうな駆け足です。次巻で描かれる、あすかをめぐるエピソードにより重点を置いた結果だろうと思いますが、関西大会のシーンは、もう少し原作の要素を拾っても良かったのでは、と思いました。