鷺の停車場

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劇場版アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観る

アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(2017年8月18日(金)公開)を観ました。 

1995年に公開された岩井俊二監督・脚本の同名映画をアニメ映画化したもので、同氏も参画しているようです。主要スタッフは、総監督:新房昭之、監督:武内宣之、脚本:大根仁など。

もとの実写版は以前観たことがあります。

reiherbahnhof.hatenablog.com

典道(菅田将暉)と祐介(宮野真守)は仲のいい友達で、ともに同級生のなずな(広瀬すず)に好意を抱いている。一方、なずなの方は、両親が離婚し、母親(松たか子)に引き取られて2学期から転校することになる。花火大会の日、プールでクロールで競争しようとする典道と佑介を見たなずなは、自分も競争に加わり、私が勝ったら何でも言うこと聞いて、と賭けをする。競争はなずなが勝ち、典道はターンの時に足ぶつけて怪我をしてしまい、祐介が2位になる。なずなは祐介に一緒に花火大会に行こうと約束する。ちょうどその頃、クラスの男友達の間では打ち上げ花火を横から見たら丸いか平べったいかで議論になる。それを実際に確かめるため、灯台に登ってみることになり、典道と佑介も一緒に行こうと誘われるが・・・というもの。

原作の実写版の映画では、プールでの勝負から先は、2つのバージョンが並列で示され、最初のバージョンは、プールでの勝負は祐介が勝ってなずなに誘われるが、佑介は男友達との約束を優先してなずなを置き去りにし、なずなは母親に捕まえられ、連れ去られてしまう。怒りから典道は佑介を殴り、自分が勝っていればと後悔する。ここで次のバージョンに切り替わり、プールでの勝負は典道が勝ってなずなに誘われ、男友達と一緒に行こうと家にやって来た佑介を撒いてなずなと走り、バスに乗って駅に行く。最初は電車に乗って駆け落ちする勢いだったなずなだが、時間が経って再びバスに乗って戻り、学校のプールで典道と水遊びした後、二学期にまた会おうと言って去っていく・・・という展開でした。

アニメ版では、2つのバージョンの切り替えではなく、冒頭になずなが海岸で見つけて拾った直径5~6cmほどの水晶玉のような綺麗な球体(ここでは仮にタイムリープ玉と呼んでおきましょう)が時間を戻すキーになっていて、実写版の1つめのバージョンの最後に当たる場面で、典道が残されたなずなの荷物の中にあったタイムリープ玉を投げつけると、プール競争の場面に時間が戻る、という設定になっています。実写版の2つめのバージョンに当たる部分も、駅で電車に乗った2人は車で追いかけてきたなずなの母とその再婚相手に次の駅で捕まえられてなずなが連れ去られてしまうという、実写版と異なる展開になります。その後典道は男友達と合流して灯台から花火を見るが、それはなぜか平べったかった。自分がなずなを取り戻す、と典道がタイムリープ玉を投げつけると、時間が駅の場面まで戻り、今度は親をかわして電車に乗るが、途中の踏切で男友達に見つかり、なずなと奇妙な形の花火を見ているところで、追いかけてきた祐介に突き飛ばされる。灯台から落ちる典道がタイムリープ玉を投げると、電車の中の場面に時間が戻り、男友達に見つからないようになずなをシートに押し倒して姿を隠し、電車は分岐して海の上のレールを走っていく・・・というように、後半は実写版とかなり異なる展開になります。タイムリープ玉も、最後は酔っ払った花火師によって海岸で空に打ち上げられ、砕け散ります。その海で泳ぐなずなと典道はキスし、なずなは「次はどの世界で会えるかな」と言って消えていき、その後の学校では先生が出席をとると、典道の姿はなかった・・・というところで終わります。

この終わり方もそうですし、3回目~4回目あたりの、現実とは違うどこか歪んだ景色の見え方もそうですが、何かのメタファーで、すべてを説明しないで観客の想像に委ねようという狙いなのでしょうけど、いろんな解釈があり得る描写であるために、結局何だったのだろう?と謎が解けないまま終わってしまった感じがありました。作品の雰囲気、空気感は個人的には良かったのですが・・・