阿川大樹さんの小説「終電の神様」を読みました。
たまたま図書館で手に取ってみた作品。
ネットで見た著者の阿川大樹さんのインタビュー記事によれば、鉄道がらみの短編ミステリーという依頼が一つのきっかけで書かれた短編集で、JR東日本の書店チェーン・ブックエキスプレスの書店員が選ぶ「エキナカ書店大賞」にも選ばれた作品なのだそうです。
ということで、どんな作品かなあと読んでみました。すべての話がミステリーというわけではなく、タイトルにある「終電」にまつわる話ばかりでもありませんが、人身事故などによる電車の緊急停止が共通の設定で、それをきっかけとした登場人物の心境の変化といったものがモチーフになっています。
あらすじとまではいきませんが、各話の概略を。
第一話 化粧ポーチ
終電で帰る女装趣味の男性とその妻とのエピソード。理解のある奥さんです。
第二話 ブレークポイント
納期に追われる小さなIT企業に勤める男性とその部下たちのエピソード。
第三話 スポーツばか
競輪選手とその恋人の女性とのエピソード。
第四話 閉じない鋏
夫婦で理容店を営む父の危篤の報せに病院に向かう男性と両親とのエピソード。これはじんわりきました。
第五話 高架下のタツ子
イラストレーターの女性とその彼、彼の知り合いの男性とのエピソード。
第六話 赤い絵の具
友人がおらず、絵が好きで美大受験を目指す女子高生と彼女をイジメたと誤解される男子高生とのエピソード。ちょっと切ない。
第七話 ホームドア
かつてホームから転落して助けられ、今はホームの売店で働くシングルマザーと助けた男性とのエピソード。
部分的には響く描写はありましたが、各話の出来は様々な印象で、全体としては、私には今一つな感じでした。最初の第1話で引っ掛かりを感じてしまった影響が大きいのかなあと思います。ミステリー風の叙述トリックのための設定だろうと思いますが、女装趣味の男性が多く出てくるのも引っ掛かりの大きな要因だったかもしれません。
表紙のイラストは第6話の女子高生のイメージなのかもしれませんが、内容は表紙やタイトルで抱いた期待とは違っていて、個人的にはちょっとがっかりでした。