鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

テレビアニメ「色づく世界の明日から」③

テレビアニメ「色づく世界の明日から」の続きです。

色づく世界の明日から Blu-ray BOX 3

色づく世界の明日から Blu-ray BOX 3

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2019/04/02
  • メディア: Blu-ray
 

これまでと同じく、公式サイト(http://www.iroduku.jp/)に掲載されているストーリーを交えながら、各話のあらすじを簡単に紹介します。(<   >内は、公式サイトに掲載されているストーリーです。)

 

第9話:さまよう言葉

<写真の腕を上げるため、部長の将にアドバイスを求めた瞳美。ふたりは次の休日、一緒に撮影に出かける約束を交わす。そうしてやってきた約束の日。カメラを手にし、各地に足を運ぶ瞳美と将。充実した一日を過ごしたふたりだが、その帰り際、緊張しながらも将が瞳美を呼び止める。>

 

写真の腕を上げようと将にアドバイスを求めた瞳美は、誘われて休日に2人で撮影に出かけることになるが、あさぎの将への思いを察する琥珀は複雑な気分になる。撮影した帰り、将から付き合ってほしいと告白された瞳美は、突然のことに戸惑って逃げ出してしまう。

翌日、学校に行った瞳美は戸惑いから将を避けてしまう。部活を休んで瞳美と一緒に帰る琥珀は、どうしたって断られれば傷つく、それでもちゃんと答えがほしいんだと思う、瞳美がその人をどう思っているのか、どうして応えられないのか伝えないと、とアドバイスする。一方、あさぎは、暗室での将の言葉に不安を感じる。

翌日の放課後、悩んでいる瞳美にあさぎが声をかける。アドバイスを求めた瞳美に、将から告白されたことを察したあさぎは、告白できないけどずっと好きな人がいると語り、瞳美にその人のことをどう思っているのか尋ねる。そういうことを考えたことがない、私には好きになってもらう資格も好きになる資格もないから、と語る瞳美に、考えないとダメ、その人が可哀そうだから、と言って部活に行くために去っていく。

その翌日、瞳美は将に、あの日逃げたことを謝り、自分の気持ちを素直に話し、まだこの気持ちが本物か分からないけど気になる人がいる、と伝える。あさぎに会おうとした瞳美は、部活を休んで帰っていったあさぎに追いつくが、あさぎは自分が将のことを好きだったと告げて走り去る。(ここまで)

 

あさぎは、自分に自信がなくて告白することができないけれど、幼い頃から自分を引っ張ってくれた将のことがずっと好きで、将の気持ちが瞳美に向いていることを知って、瞳美に嫉妬の感情を抱くことになります。

最後まで将はあさぎの気持ちには見事なまでに鈍感ですが、ずっと妹のように接してきただけに、あさぎを恋愛対象として見ることができないという設定なのでしょう。

 

第10話:モノクロのクレヨン

<瞳美に自分の本心を語ったあさぎ。互いの本当の気持ちを知ったふたりの間に、気まずい空気が流れる。あさぎともう一度仲直りしたい瞳美は、勇気を振り絞り彼女に声をかけ……。一方、魔法写真美術部では文化祭に向けて、準備が進行中。琥珀は魔法部として「絵の中に入る魔法」を文化祭で披露することを思い立つ。絵に入った一同は様々なものを目にするが、唯翔にはある出会いがあり……。>

 

将が好きな自分の気持ちを瞳美に伝えたあさぎは、嫉妬から瞳美を避けるようになるが、ばかみたい私、瞳美が悪いわけじゃないのに、と自省する。瞳美は、避けるように外に撮影に出たあさぎを追いかけ、こっちに来て初めてできた大切な友だちだから話をしたい、と呼び止める。互いの気持ちを伝えあった2人は仲直りし、琥珀と胡桃を誘ってカラオケで盛り上がる。

文化祭に向けて準備を進める魔法写真美術部は、琥珀の提案で魔法で絵の中に入るイベントを開催することを決め、部員たちの要望を踏まえて唯翔が絵を描くことになる。瞳美は紙飛行機を使って絵の中に入る魔法の練習に励む。その頃、琥珀は時間魔法に使う星砂時計を作ってもらうよう手配を進めていた。

イベントの絵が完成し、試しに琥珀と瞳美の魔法で絵の中に入った部員たちは絵の世界に興奮するが、瞳美と唯翔の前に再び金色の魚が現れる。それを追った唯翔は、暗い部屋の中でひとりで同じ絵を何枚も描く幼い瞳美を見つける。それらの絵はどれも、黒い川で分断されたお姫様と女王様を描いたもので、会えないの、という瞳美に、唯翔が川に船や橋の絵を重ねて、渡れるよ、と促しても、幼い瞳美はいらない、と拒むのだった。

元の世界に戻ると、瞳美の目から涙が流れ落ちていた。唯翔が絵の世界で見たことを瞳美に話すと、瞳美は、母親は代々続く月白家で初めて魔法が使えなかった、私は使えたが、母親は突然家を出て行ってしまった、理由は分からないが、きっと、魔法を使えることに浮かれて、母の気持ちに気づけなかった自分への罰だと思うと語る。小さい子どもにそんなの無理だ、瞳美が責任を感じる必要はない、と言う唯翔を、瞳美は強い言葉で遮り、わたしのバカ!と後悔の気持ちを露わにして涙を流す。

唯翔と別れた瞳美は、私は何をしにここに来たのだろう、と自分がここに来た意味を考えるのだった。(ここまで)

 

未来での瞳美の家族については、第1話での祖母の琥珀以外は登場せず、その後も触れられることはありませんでしたが、本話で初めて、母親が家を出て行ってしまったことが明かされます。その時のトラウマが、瞳美が色を見ることができなくなった原因であることは間違いありません(ただし、本作中では、母親の家出と色が見えなくなった時期との先後関係は触れられていません。)。その後悔と心の傷が、絵の世界で唯翔が見た幼い瞳美の描く絵やその振る舞いになっているのですね。

なお、本話の後も、瞳美の家族についてはほとんど触れられませんが、最終話の未来に帰った後の描写から、母親がどこにいるのかは分からないこと、瞳美は父親と一緒に琥珀とは別の家で暮らしていること、琥珀の夫(瞳美の祖父)が健在であることが分かります。

話題が逸れますが、登場する月白家の魔法使いはすべて女性なので、琥珀の祖母の柚葉から琥珀の娘となる瞳美の母親までの4代にわたって、結婚した男性は代々みんな姓を変えて月白家に入った、いわば婿入りということになります。実際はめったにないことですが、男性を交えないことには何か意図があったのでしょうか。

 

第11話:欠けていく月

<魔法写真美術部の面々は、文化祭の用意で大忙し。胡桃、将、あさぎら写真部は展示の準備を、唯翔は魔法部が使う「絵」を描き進め、琥珀と瞳美はイベントを成立させる魔法の練習に余念がない。しかしそんな中、暗室に入った瞳美が突然姿を消すというアクシデントが発生。すぐに見つかったものの、琥珀はこの出来事が、瞳美が時の間(あわい)に引き込まれる―その危険な兆しであることに気付く。>

 

文化祭が近づき、準備に励む魔法写真美術部の部員たち。そんな中、瞳美を追ってあさぎが暗室に入ると、先に入ったはずの瞳美の姿が消えていた。すぐに瞳美は同じ場所で見つかるが、一瞬時間が飛んじゃったみたい、と語る瞳美に不安を感じた琥珀が留学先のイギリスで学んだ先生にメールで相談すると、瞳美が時の間(あわい)に引き込まれているとの返事が帰ってくる。琥珀は、早く瞳美を返さなければいけないと、星砂時計の製作を急ぐようお願いする。突然未来へ戻る心の準備をしておくよう伝えられた瞳美は困惑する。

台風が接近して部活が中止となり雨の中唯翔と下校する瞳美だったが、唯翔さんのことを忘れない、と言った瞬間に姿を消してしまう。心配する部員たちに琥珀は、瞳美にかけられた時間魔法はほころび始めている、早くしないと瞳美は二度と戻って来れなくなってしまうかもしれないと語る。

同じ場所で見つかったもののずっと眠っている瞳美を心配して瞳美のベッドに付き添う琥珀に、祖母の柚葉は、琥珀が倒れたら一体誰が瞳美を未来に返すの、未来の琥珀が任せたということは必ず何か確信があるはず、瞳美を助けたい人たちの力を借りればきっと大きな魔法を成し遂げられる、と励ます。

琥珀は、部員たちに、瞳美を未来に返す時が来たと告げ、時間魔法に必要な星砂を集めるのを手伝ってほしいとお願いする。星砂の力を最大限に活かせるのは新月の夜、次の新月に間に合わせないといけないと語る琥珀。それは2日後の文化祭の後夜祭の夜だった。突然のことに動揺する部員たち。

その夜、砂浜で星砂を集める部員たちを遠くから見つめる瞳美は、まだどうしたらいいのか分からない、新月がこなければいいのに、と思うのだった。

帰宅後、瞳美は唯翔に向けて魔法の紙飛行機を飛ばす。紙飛行機が瞳美からのものだと気づいた唯翔は瞳美に会うために家を飛び出す。瞳美はもう1度紙飛行機を飛ばすが、紙飛行機が逸れていくのを見て家を飛び出して走る。紙飛行機は走る唯翔に向かっていき、ぶつかる。そこに走ってきた瞳美は唯翔の胸に飛び込み、2人は抱き合う。(ここまで)

 

この回くらいから、いよいよ最後のクライマックスに向かい始める感じがします。下校中に突然瞳美が姿を消してしまうシーン、瞳美が魔法の紙飛行機を追って走るシーンなど、とても印象的です。

 

第12話:光る光る この一日が光る

<瞳美が元の時間に戻る、新月の夜まであと2日。突然訪れた別れの時に向けて、不安と寂しさが入り混じる中、文化祭が幕を開ける。魔法写真美術部による“マジカルアートイリュージョン”が評判を呼ぶ一方で、あさぎは自分の写真を楽しんでくれる人の姿に喜び、唯翔は誰かのために絵を描く楽しさを知る。そして訪れた文化祭2日目。最後の時を惜しむように、一緒に校内を回る瞳美と唯翔だったが…。>

 

唯翔の胸に飛び込んだ夜、瞳美は、帰りたくない、ごめんなさい、もし私が魔法使いでなかったら、こんなこと…と言うが、唯翔は、そしたら会えなかった、瞳美が魔法使いで良かったと言うのだった。翌朝、瞳美は、残された時間は少ない、でも、自分がここに来た意味をちゃんと見つけたいと願うのだった。

そして文化祭が始まる。魔法写真美術部のイベント、マジカルアートイリュージョンをはじめ、魔法写真美術部の展示は人気を博し、部員たちは手ごたえを感じる。魔法の才能があると琥珀に褒められ、瞳美も少し自信をつける。個展のお土産のお返しに差し入れを持ってやってきた朝川先輩は、たくさんの人に喜んでもらうのは嬉しいと語る唯翔に、誰かのために絵を描くのはすごくいいこと、これから唯翔の絵にきっといい影響を与えてくれる、と言葉をかける。

その夜、月白家では、瞳美の最後の夜に、ごちそうを振る舞う。時間魔法をかけられるか不安になる琥珀を柚葉は励ます。その頃、唯翔は、今自分にできることをと、絵を描き始める。一方、荷物の整理をする瞳美は、部員たちと撮った写真を見て複雑な思いにとらわれる。

文化祭の2日目、魔法写真美術部の部員たちは、あさぎの提案で、少しでも幸せになってもらおうと、瞳美と唯翔の2人で文化祭を回るよう送り出し、2人はお化け屋敷などでつかの間の時間を過ごす。柚葉たち琥珀の家族も文化祭に顔を出し、瞳美と別れの言葉を交わす。

後夜祭が始まり、学校の屋上に集まった魔法写真美術部の部員たち。瞳美と琥珀の2人は魔法で花火を打ち上げる。その花火を見上げ、みんなの役に立てて嬉しいと語る瞳美に色とりどりの花火が見える。みんなと一緒に花火を見ることができて嬉しいと涙を流す瞳美。花火が終わると再び色が見えなくなってしまった瞳美、未来へ帰る時間は近づくが、ひとつだけ、唯翔への恋が心残りになっていることを感じていた。(ここまで)

 

瞳美が魔法の能力が飛躍的に高くなったことは、前の回の唯翔に向かって飛んでいく紙飛行機もそうですが、本話の花火の魔法にも表れています。

文化祭の1日目の夜、唯翔が家で描き始めた絵が何だったのかは直接には明かされませんが、おそらく、最終話で出てくる絵本の初稿なのでしょう。

 

第13話:色づく世界の明日から

<いよいよ別れの時がやって来た。後夜祭のあと、近くの公園に集まった瞳美と琥珀、そして写真美術部の一同。部員たちは、未来に旅立つ瞳美に向け、それぞれ胸に抱いた思いを伝える。そして大切な友人たちからの言葉に、瞳美が感謝の気持ちを話そうとしたその時、時間魔法の鍵を握る星砂時計に異変が……。瞳美を助けようとした唯翔とともに、ふたりは忽然と姿を消してしまう。>

 

ひとりで絵を描くのが好きだった唯翔を変えたのは、自分の絵を特別だと言ってくれた瞳美だった。

後夜祭が終わり、ついに瞳美を未来に帰す時がやってくる。琥珀は部員たちの協力も得て、時間魔法の準備を始める。魔法写真美術部のメンバーは1人ずつ瞳美に言葉をかけ、別れを告げるが、唯翔は未来に帰っていく瞳美を慮って、本当の気持ちは心の内に秘めていた。

そして、みんなに別れの言葉を伝える瞳美が、今までありがとう、初めは心細かったけど、みんながいてくれて、忘れられないたくさんの気持ちをもらえた、それまで私は自分から閉じていた、勝手な思い込みで自分を追い詰めるのはやめよう、きっと、気持ち一つで世界を…と言ったその時、星砂が異常な光を放ち始め、琥珀も制御できず、瞳美と瞳美に手を伸ばした唯翔が光にのみこまれてしまう。

気がつくと、唯翔は瞳美の心の中に入っていた。唯翔は、あのときに小さな瞳美に伝えたかったのは、自分を閉じ込めないでほしかった、あきらめないでほしかったということ、それは自分も同じではないのか、自分の気持ちを無理やり閉じ込めていたと気づく。そこに現れた金色の魚に導かれて瞳美を見つけた唯翔は、瞳美のもとに駆け寄る。瞳美は唯翔に自分の本当の気持ちを伝え、唯翔が私のこれからに魔法をかけてくれた、と言うと、唯翔も、自分を閉じ込めていたのは自分も同じ、瞳美が自分の絵に光を差してくれた、未来でも笑っていてと話し、瞳美を抱きしめる。2人が互いを好きな気持ちを伝え合うと、瞳美にかかっていた魔法が解け、世界に色が戻ってくる。唯翔が、俺たちはお互いの未来に色を取り戻すために出会ったんだと言うと、異常な光は消えて、元の世界が戻る。

そして、部員たちが見守る中、琥珀が時間魔法の最後の呪文を唱えると、瞳美の姿は消え、未来へ戻っていく。琥珀は、瞳美を未来に返したのは自分の時間魔法じゃない、瞳美の無意識の魔法が解けることが旅のタイムリミットだったのだと感じていた。

瞳美が未来に戻ると、花火は色とりどりに色づいていた。そこに60年後の琥珀が声をかける。瞳美は、いろいろな気持ちになった、でも幸せだった、と琥珀を抱きしめる。琥珀は、自分の願いは魔法で人を幸せにすること、でも一番近しい人たちを幸せにできなかった、と謝るが、瞳美はそれを否定して、私の方こそ琥珀が私をどれだけ大切に思ってくれていたか気づかなくてごめんなさい、琥珀と一緒にお母さんを探して会いに行きたい、と言うと、琥珀は涙ぐむ。

家に戻った琥珀は、魔法写真美術部の部員たちと埋めたタイムカプセルを掘り返し、部員たちが作った当時のアルバムを瞳美に見せる。そして琥珀が渡したのは、瞳美が幼い頃に読んでいた絵本だった。その絵本だけ色が付いて見えたのは、母親と一緒に読んでいたからだと思っていたが、それは唯翔が描いた絵本だったのだ。それを読む瞳美に、魔法写真美術部の部員たちとの思い出が去来し、涙を流す。

未来に戻った瞳美は変わり、クラスメートに自分から声をかけるようになり、魔法にも向き合うようになっていた。高台から景色を眺める瞳美は、海が青くて良かった、空が青くて良かった、あなたがくれた色、私の明日にはたくさんの色がある、と思うのだった。(ここまで)

 

未来に帰った後、琥珀に渡されて唯翔が描いた絵本を読むシーンは、個人的には一番心に響くシーンで、何度見返しても涙しました。絵本のストーリー自体は殊更に感動的というわけではないのですが、そこで流れる部員たちとの思い出を回想の映像によって、自分も、それまで見てきた瞳美の経験を追体験するような気持ちになることが大きいのだろうと思います。

最後のエンディングテーマが流れる背景では、瞳美が墓参りに行って涙ぐむ描写や、瞳美が高校で未来の写真美術部の部室を訪れ、再び「魔法写真美術部」になったと思わせる描写が出てきます。墓参りのシーンは、誰のお墓かは描かれませんが、せいぜいアラフィフであろうお母さんが亡くなっているのは不自然ですし、琥珀が一緒におらず瞳美だけであることも考えると、唯翔のお墓でなのでしょう。唯翔が生きていたとしたら、会いに行きたくなるはずですし、エンディングテーマの後の「あなたがくれた色…」という瞳美の想いも、もうこの世にはいないと考えた方が符合します。

 

魔法使いが主人公のタイムトラベルもの、と聞いて、期待外れの不安もあったのですが、叙情的な優れた作画もあって、高校生が幼い頃のトラウマを克服して成長していく物語としてうまく描写されていて、何度も見返したくなるいい作品でした。