鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

片山恭一「世界の中心で、愛をさけぶ」

片山恭一さんの小説「世界の中心で、愛をさけぶ」を読みました。そのあらすじと感想です。

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

  • 作者:片山 恭一
  • 発売日: 2006/07/06
  • メディア: 文庫
 

2004年に映画化された実写映画を最近観て、原作も読んでみようと手にした作品。

もとは2001年4月に単行本が刊行された作品ですが、一大ブームとなった2004年の実写映画化の後、単行本も320万部を超える大ヒットとなり、2006年には文庫本が刊行されています。

 

作品は次の5章から構成されており、エピローグ的な第5章を除いて各章の中は数字の見出しで区切られています。なお、各章ごとの副題・章名はありません。

第一章

  1. 朔太郎は、アキの両親と一緒に、空港から飛行機でケアンズに向かう。オーストラリアは、4ヵ月前、アキを残して修学旅行で来た場所だった。朔太郎は死で世界から消えてしまったアキのことを思う。

  2. 中学2年生の時、朔太郎は、アキと同じクラスとなり、ともに学級委員に任命されることで、話をするようになる。

  3. 学級委員として過不足のない関係を続ける朔太郎とアキだったが、アキと一緒にいることで男子生徒に嫉妬され、嫌がらせされていることに気づく。その年のクリスマス・イブ、朔太郎は、アキが好んで聴いているラジオ番組に、白血病の彼女のため、と架空の話を葉書に書いてリクエストし、見事に番組で紹介されるが、翌日、アキに咎められる。

  4. 中学3年生になり、アキと別のクラスになった朔太郎だが、同じ学級委員として、また、勉強にしに行く図書館で、顔を合わせて話をする。2学期になって、アキは、朔太郎を交換日記に誘う。その年のクリスマス、アキのクラス担任だった先生が亡くなり、その告別式で弔辞を読むアキの姿を遠目に見て、その美しさを初めて意識する。

  5. 高校で再び同じクラスになった2人は、仲のいいカップルとして周囲からも見られるようになり、学校が終われば、いつも一緒に帰宅するようになっていた。

  6. 祖父は、マンションに遊びに来た朔太郎に、自分がかつて好きな人がいたが一緒になれなかったこと、そして、その続きを話す。

  7. 翌日、祖父がした話をアキに話す朔太郎。好きな人とあの世で一緒になろうと誓い合った祖父の頼みを引き受けるようアキは勧める。

  8. 祖父の頼みを引き受けた朔太郎は、祖父に連れられ好きだった人の墓を暴くのを手伝う。骨壺に納められた骨を少しだけ取って帰った祖父は、自分が死んだら自分の骨とその骨と一緒に撒いてくれと朔太郎に頼む。

  9. 翌日、朔太郎はアキを会おうと呼び出す。神社の境内でアキに会った朔太郎は、前日の出来事を話す。帰る間際、2人はキスをする。

第二章

  1. アキの両親とオーストラリアのホテルを出た朔太郎は、バスに乗って岩山に向かう。修学旅行のお土産をアキに渡した時のことを回想する朔太郎。

  2. 5月の連休、動物園に行った2人。その帰り、通りかかったホテルに入ろうとアキを誘うが、やんわり拒絶され気まずい雰囲気になる。

  3. 夏休みに入っても、アキとの関係にこれといった進展はない朔太郎に、友人の大木は、早くやっちまえ、とけしかける。

  4. 大木は、レジャー施設の開発途上で頓挫した小さな島に船で行く計画を立てる。

  5. 朔太郎はキャンプに行くという名目でアキを連れ出し、大木が出した船で島に向かう。大木は事前の打ち合わせどおり、急用ができたと帰っていくが、アキには計画を見破られてしまう。

  6. 夜になり、ホテルの1室で抱き合ったまま横になる2人。夜中に目が覚めた2人は、窓の外に蛍の群れを目にする。

第三章

  1. 修学旅行から帰ってきたころ、アキには「再生不良性貧血」の病名で入院しており、念入りに滅菌消毒をしないと病室に入れないようになっていた。毎日のように病院に会いに行く朔太郎。

  2. アキの状態に疑問を持ち医学辞典を調べた朔太郎は、アキが白血病であると疑う。髪の毛が抜け始め、丸刈りのように髪を短くしたアキは、朔太郎とアボリジニの話をする。アキは、アボリジニの生き方や世界観や生き方に、自分をそこに重ね合わせたいと思う理想を見て、病気のなかで生きる意味を見出していたのた。

  3. 朔太郎は、アキの母親から、アキが白血病であることを告げられ、医師とも相談し、一時的に良くなって退院したら修学旅行で行けなかったオーストラリアに一緒に行こうと言われる。朔太郎は、夜眠りに就くとき、心のなかで祈るようになっていた。

  4. 病気が一進一退をつづけるアキは、弱気な言葉を漏らすようになる。治療に疲れた、2人で病気のない国へ行きたいと言うアキに、朔太郎は2人でオーストラリアに行こうと話し、アキも頷く。

  5. 日ごとに弱っていくアキを見て、朔太郎は、真剣にオーストラリア行きを考え始め、祖父にお金を借りようと相談する。事情を察した祖父は、郵便局の通帳を朔太郎に渡す。朔太郎はアキと計画を話し合い、アキの誕生日の12月17日に出発することを決め、アキの部屋に忍び込んでパスポートを手に入れる。

  6. 出発の日、病院を抜け出したアキと落ち合い、空港に向かう朔太郎。しかし、空港に向かうアキは、鼻血が出て具合が悪くなり、朔太郎が空港のカウンターに搭乗手続に向かうところで、アキは崩れ落ちて意識を失ってしまう。

  7. 病院に運び込まれたアキは、死が近いことを悟って、朔太郎に別れの言葉をかける。あの日の夏を覚えてる?とのアキの言葉に、朔太郎の頭の中いっぱいに真っ青な夏の海が広がる。

  8. 2人で小さい島に行った帰りの思い出。迎えに来た大木の船に乗って帰る3人だったが、船のエンジンが故障してしまい、通りかかった漁船に助けてもらう。鮮やかな海の景色が輝く。

第四章

  1. 12月末に行われたアキの葬儀の日、遺体が焼かれる煙を目で追う朔太郎は、自分の心の中がすっかり空っぽになってしまったような気になる。年が改まり、新学期が始まっても、空っぽのままの朔太郎だったが、時々不意にアキとの思い出に襲われる。

  2. 年が明けてしばらくして、祖父の家に行った朔太郎は、あるきっかけで祖父と「あの世」について話をする。祖父と話しているうちに、朔太郎の中で何かが変わっていく。

  3. アキの両親とアボリジニの聖地に向かう朔太郎。車の中で、ガイドはアボリジニについて話をする。着いた両親と朔太郎は、3人でアキの遺灰を撒く。

  4. オーストラリアから帰ってきて、学年末テストも終わった3月半ば、朔太郎は大木に頼んであの島に連れて行ってもらう。海を眺めながらアキとのことを考える朔太郎。アキの遺灰を海に撒くつもりで来たのだったが、考え直した朔太郎は遺灰が入った小瓶をポケットにしまう。

第五章

かなり年が経って、彼女と故郷の街にやってきた朔太郎。久しぶりにかつてアキと通った中学校を訪れた朔太郎が校庭の満開の桜の花に目をやると、不意にアキの声が蘇る。朔太郎は、ずっと肌身離さず持ち歩いているつもりだったアキの遺灰の入った小瓶を上着のポケットから取り出し、桜の花びらが散る校庭にその白い灰を撒くのだった。

(ここまで) 

 

こうして読むと、確かに、以前に観た実写版の映画と、細部はかなり違っています。

大人になった朔太郎が故郷を訪れ当時の思い出を回想するという映画版の基本設定がオリジナルなのは映画版を観た時点で知っていましたが、高校生時代の部分だけを見ても、

同学年の朔太郎とアキは付き合うようになる

友人の手助けで朔太郎はアキを小さな島に船で連れて行き、2人で一晩を過ごす

アキが白血病になり、次第に悪化してオーストラリアへの修学旅行に行けなくなる

朔太郎はアキを病院から連れ出しオーストラリアに連れていこうとするがアキは空港で倒れてしまう

再び入院したアキはその後朔太郎と会うことを拒むようにして亡くなる

朔太郎はアキの遺灰をオーストラリアで撒く(時期・一緒に行った人は違う)

という物語の大きなポイントは共通するものの、それ以外の細部は映画化に際して自由にアレンジされている印象。

これだけアレンジされると、良い方・悪い方のどちらに感じたかはともかく、著者としては、映画は自分の作品とは違うもののように思えたのではないでしょうか。

それはさておき、原作小説を読むと、行間のイメージが自由に膨らむので、映画版とはまた違った魅力を感じます。シンボリックな演出もあった映画版と比べると、淡々とした筆致のような印象ですが、個人的にはむしろこういう方が好ましく思えました。主人公たちの年代からはだいぶ歳をとってしまっていることが大きいのか、深く感動することはありませんでしたが、大ヒットした作品であることは十分に伺えました。

蒙古タンメン中本 柏店

柏駅前にある蒙古タンメン中本でお昼を食べました。

f:id:Reiherbahnhof:20200611132041j:plain
柏駅東口を出てすぐ右手にあるアーケード街の柏二番街に入ってすぐのビルの地下にあります。

f:id:Reiherbahnhof:20200611132148j:plain
階段を下りてお店へ。

お店はカウンターのみの16席。入口の食券機で食券を買って並びます。店内には4人ほど並んでいましたが、回転が比較的早くて、5分ほど待ったところで座れました。

f:id:Reiherbahnhof:20200611132545j:plain
カウンターにあったメニュー。看板メニューの蒙古タンメンは820円、味噌タンメンが800円、より辛い北極ラーメンが850円です。 

f:id:Reiherbahnhof:20200611132814j:plain
私が買った食券は、半蒙古丼・半ラーメンセット(900円)。座って5分ほどで、まず半蒙古丼が来ました。具はタンメンの煮込み野菜と辛子麻婆豆腐、辛子肉、ゆでたまごが乗っているので、五目蒙古タンメン(900円)の具と共通する感じです。なお、単品の半蒙古丼は520円、普通の蒙古丼は850円です。

f:id:Reiherbahnhof:20200611133648j:plain
さほど時間差なく、半ラーメンが来ました。半ラーメンは味噌タンメン、蒙古タンメン北極ラーメン、冷し味噌ラーメンの4種類から選べますが、看板メニューの蒙古タンメンにしました。なお、単品の半ラーメンは400円なので、半蒙古丼とのセットで20円割引になっています。

メニューによれば、蒙古タンメンは辛さ5ということですが、さほど辛い感じではありません。辛子肉が乗っている蒙古丼の方がけっこう辛い感じでした。

次は麻婆豆腐が乗っていないメニューも食べてみたいと思いました。

 

蒙古タンメン中本 柏店
千葉県柏市柏1-2-35 共同ビルサンシャB1-F02(Tel:04-7163-1223)
営業時間:11:00~21:00
定休日:月曜日

初野晴「初恋ソムリエ」

初野晴さんの小説「初恋ソムリエ」を読んでみました。 その紹介と感想です。

初恋ソムリエ (角川文庫)

初恋ソムリエ (角川文庫)

  • 作者:初野 晴
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫
 

テレビアニメ「ハルチカハルタとチカは青春する~」の原作となる〈ハルチカ〉シリーズの「退出ゲーム」に続く第2作。

角川文庫サイトには、次のような紹介文が掲載されています。

【ワインにソムリエがいるように、初恋にもソムリエがいる?! 初恋の定義、そして恋のメカニズムとは……お馴染みハルタとチカの迷推理が冴える、大人気青春ミステリ第2弾!】

 

作品は、次の4編から構成されています。各編のおおまかなあらすじを紹介します。

 

スプリングラフィ

春休み、吹奏楽部員が職員室から取って開けるはずの音楽室の鍵がなくなっている日があることを不審に思ったチカたちは、その謎を解き明かそうとする。それは、クラリネットでプロを目指す芹澤直子のある事情から生まれたことだった。

本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第6話「スプリングラフィ」に当たる部分になっています。

周波数は77.4MHz

ローカルFM局のトーク番組に興味を抱くハルタとチカは、生徒会長の日野原から、地学研究会の部長・麻生美里を捕まえるよう頼まれる。麻生は、7人の引きこもり生徒を説得して、部活動という形で再び学校に通わせ、綿密な計画で貴重な鉱石を発掘する手柄を挙げていた。ハルタたちはそこに秘められた謎を解こうとする。

本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第7話「周波数は77.4MHz」に当たる部分になっています。

アスモデウスの視線

私立藤が咲高校の吹奏楽部の顧問である堺先生は、あることをかばって自宅謹慎となりっていた。そこには、あるクラスで起きた奇妙な席替えが関係していた。ハルタたちはその謎を解き明かすが、堺先生は深い気遣いから、真実を隠し、自宅謹慎を受け入れていたのだった。

本編は、テレビアニメ版「ハルチカ」の第9話「アスモデウスの視線」に当たる部分になっています。

初恋ソムリエ

生徒会長の日野原と同じクラスで、「初恋研究会」の代表で、初恋を思い出させる匂いを嗅がせる「初恋ソムリエ」を名乗る朝霧が、芹澤の伯母の依頼を受け、その初恋の内容を聞き取る。学生時代の伯母が初恋の人と作ったおにぎりを再現する朝霧だが、伯母は、あのときのおにぎりとは違う、と言い、何かに気づいて嗚咽し、出て行ってしまう。そこにはある真実が隠されていた。

本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第8話「初恋ソムリエ」に当たる部分になっています。

 

(ここまで)

文庫版の表紙のイラストは、フルートを吹く女子高生なので、チカこと穂村千夏ですね。

シリーズ第1作の「退出ゲーム」と同様、ノリのいい会話などテンポのいい文体で、ラノベっぽくもある青春ミステリー。単なる謎解き部分だけでなく、それに直接には関係しないチカたちの日常風景が織り込まれていますが、その描写も鮮やかで、それがこのシリーズの一つの特徴になっているように思います。「周波数は77.4MHz」や「初恋ソムリエ」は謎の設定が分かりにくい感じもありましたが、「アスモデウスの視線」はとても良かった。

また続きを読んでみようと思います。