鷺の停車場

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シャイー/ゲヴァントハウス管「マタイ受難曲」

先日に続いて、ゲヴァントハウス管のCDをもう1つ。

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J.S.バッハマタイ受難曲BWV244

ヨハネス・クム(T:福音史家)/ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(B:イエス)/クリスティーナ・ラントシャマー(S)/マリー=クロード・シャピュイ(A)/マクシミリアン・シュミット(T)/トーマス・クヴァストホフ(B)/クラウス・ヘーガー(B:ピラト、ペテロ、ユダ)

テルツ少年合唱団(合唱指揮:ゲルハルト・シュミット=ガーデン)/ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団(合唱指揮:ゲオルク・クリストフ・ビラー)

リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

(録音:2009年4月2・3日、ライプツィヒ

2005年、ブロムシュテットの後任でゲヴァントハウス管のカペルマイスター(首席指揮者)に就任したシャイーによる、最近では少ない普通の(モダン楽器による)オケによるマタイ受難曲

カペルマイスター就任前、コンセルトヘボウ管の常任指揮者を務めていた頃までのシャイーは、おおむね一般的(伝統的)な演奏スタイルに沿いつつ、若々しく緻密な演奏をするという印象でしたが、カペルマイスター就任後のゲヴァントハウスとの録音では、作曲当時の奏法など(の研究成果)による古楽器オケの演奏スタイルも採り混ぜた意欲的(斬新)な解釈が一つの特色になっているよう。

ベートーヴェン交響曲はその一例ですが、私は未聴ですが、ブラームス交響曲でも同様のようです。演奏としての成否の評価は大きく分かれるでしょうが、取組そのものは評価されていいと思います。

この録音も、かつては広くベスト盤と言われていたリヒター盤をはじめ、モダン楽器による演奏に多いロマン派以降の作品と同様の奏法・表情付けとは一線を画して、小編成のオケで、ビブラート少なめの古楽的な奏法を基本に、速めのテンポで編み上げた感じ。全体の演奏時間は2時間40分弱で、手元にあるレオンハルト指揮の古楽器オケの録音と比べても10分以上短い。

といっても、イントネーションやアクセントなど、細部の表現にも気が配られていて、拙速な印象は全くありません。機能性に優れたモダン楽器のおかげか、古楽器オケの演奏よりもキビキビした印象で、強弱のメリハリも効いています。

この曲の録音を何種類も聴き比べたわけではないので相対的な評価は控えますが、1つのあり得る演奏スタイルとして一聴に値する録音だと思います。