鷺の停車場

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NHK「戦慄の記録インパール」

NHK終戦記念日関連の特番の1つ、NHKスペシャル「戦慄の記録インパール」を視ました。

www6.nhk.or.jp

第二次世界大戦における日本軍の無謀な作戦の代表格ともいえる「インパール作戦」。中国軍への補給路となっていた「援蒋ルート」の遮断を狙い、イギリス軍拠点の攻略を目指したこの作戦、合理的な思考を欠いた精神論が、いかに悲惨な結果をもたらしたが、文献資料や当時を知る現地住民への聞き取りを含む現地取材によって明らかにされていきます。

2~3年前にやはり終戦特番で「狂気の戦場 ペリリュー~"忘れられた島"の記録~」を視ましたが、補給もなく、投降はもちろん玉砕も禁じられて飢えに苦しみながら、やがてゲリラ的な奇襲しかできなくなっていく日本軍と、それに苦戦し残忍さを増していき、戦略的価値が失われてもなお壊滅を続けるアメリカ軍の、異様な戦いをあらわにして、これも胸が押し潰されそうになる番組でした。
多くの兵士が、否応なしに極限的な状況に直面させられ、飢えや傷病に苦しみ、そして命を落としていったという点では、今回の番組のインパールも同じかもしれません。
ただ、ペリリューでは、拠点防衛という受身の戦いの中で、アメリカ軍の被害拡大・足止めを図るという狙いについては(その狙い自体、あるいはその実行過程での種々の判断の是非の問題はともかくとして)一定の成果はあったともいえるわけですが、インパールでは、自ら攻略戦を仕掛けながら、成果らしい成果もなく、ただ自軍の兵力・戦力を消耗した結果が残っただけで、なおさら、救いのない、やりきれない気持ちになりました。
兵站(補給)の専門家だった参謀の冷静な進言を精神論で一喝し、左遷させて開始したとか、作戦が難航する中、続行に異を唱える師団長を全てすげ替えてまで進攻を続けたとか見ると、実際には本人だけの責任ではないのかもしれませんが、司令官の判断能力の欠如が招いた悲劇であることは間違いない。
でも、支社長が部下の冷静な指摘に耳を貸さずに大方針を打ち出し、精神論で鼓舞してもうまく回らず、現場はみるみる疲弊していく……といった状況を思い浮かべると、こうした事態は、現代でも無縁ではないなぁとか、いろいろ考えさせられる番組でした。