鷺の停車場

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映画「おおかみこどもの雨と雪」

漫画版「おおかみこどもの雨と雪」の作者である優さんが急性心不全で亡くなられたとのニュースを聞いて、以前テレビ放映の際に録画したアニメ映画のBlu-rayを引っ張り出して、改めて観てみました。

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www.ookamikodomo.jp

細田守監督の長編アニメ映画としては3作目の作品。5年前の2012年に公開され(2012年7月21日(土)公開)、興行収入が40億円を超えるなど大ヒットしたようですが、私自身は、映画を観に行くことが全く途絶えていた時期だったので、その当時はそんな映画があったことすら知りませんでした。「金曜ロードSHOW!」で放映された際、その当時は毎週録画予約をしていたおかげで、たまたま録画していて、Blu-rayにダビングしていたもの。 

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

 

映画は、女子大生だった花が、オオカミの末裔である男性(おおかみおとこ)と出会い、その後結ばれて2人の子ども(おおかみこども)を産みますが、子どもがまだ幼いうちに夫を亡くし、女手ひとつで子どもを育て、中学生に成長するまでの間を描いた作品。

物語は、母親の花から聞いた回想を娘の雪が語る形で進んでいきます。大学で男性と知り合い、結ばれ、子どもが産まれ、男性が亡くなるまで。そして、小さい頃は仲良く遊んでいた活発な姉の雪とおとなしい弟の雨が、成長していく中で次第に互いの気持ちが離れていき、雪は人間として、雨はオオカミとして生きていく道をそれぞれ選択し、母の花の許から巣立っていくまでが、日常のエピソードを綴って積み重ねていくように描かれています。

普通の女性が人間に姿を変えたオオカミと結ばれその子どもを産むという現実にない設定ですが、wikipediaで紹介されている監督の発言などを見ると、子育てという普遍的なテーマを、観る人が新鮮な感覚で触れるようにすることが狙いだったようです。
舞台となっている街や風景は、現実のままであり、細部のディテールは、冷静に考えると、非現実的な設定と現実的な日常とのつなぎ目のところで疑問になる部分も少なくありませんが、全体の筋、骨格がしっかりしているということなのでしょう、観ていく分にはさほど気にならず、最後まで観進めることになります。だからこそ、最初に書いたように、興行的にも成功したのでしょう。

主人公の花は、都会での(おおかみこどもの)子育てに限界を感じて山あいの農村に引っ越すわけですが、苦難に直面しても、独力で努力を続けていきます。このあたりは、一般的な意味とは違えど、ある種の「理想の母親」像の投影なんでしょうね。普通であれば、やんちゃな子どもたちを怒鳴りつけたり、現実の厳しさに諦めを感じたりして当たり前な状況なのにすごい(現実にはまずいないだろう)なぁと個人的には思いながら観ましたので、人によっては違和感を感じるのかもしれません。

劇的に展開する作品よりも、エピソードが積み重なっていく中で、ほろりとさせられる映画の方が個人的には好きなので、細田監督の前作「サマーウォーズ」もテレビで観ましたが、この作品の方がずっと良かった。

映画館で上映されているうちに知っておけばよかったとほんのちょっと後悔しつつ、思いがけずいい映画を発見できたのは嬉しいです。