鷺の停車場

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ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団「ディオニソスの祭り」ほか

再び吹奏楽のCDを紹介します。

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トッカータとフーガ《栄光のパリ・ギャルド
1. J.S.バッハ/ブラン編:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
2. リスト/ブラン編:ハンガリー狂詩曲 第2番
3. ロッシーニ/リシャール編:歌劇「盗むかささぎ」序曲
4. スッペ/リシャール編:喜歌劇「詩人と農夫」序曲
5. ドビュッシー/デュポン編:牧神の午後への前奏曲
6. F.シュミット:ディオニソスの祭り
フランソワ=ジュリアン・ブラン指揮ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽
(録音 1967年10月[1~4]、1961年11月・杉並公会堂[5~7])

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◯軍艦行進曲~ギャルド名行進曲集
1.瀬戸口藤吉:軍艦行進曲
2.レイモンド服部:コバルトの空
3.大沼哲:立派な青年
4.吉本光蔵:君が代行進曲
5.須磨洋朔:大空
6.團伊玖磨:祝典行進曲
7.ブランケット/ラウスキ編:サンプル・エ・ムーズ連隊
8.ガンヌ/デュポン編:ロレーヌ行進曲
9.プティ:第85連隊に敬礼
10.ドニゼッティ/ルース編:連隊の娘
11.スーザ:星条旗よ永遠なれ
12.バーグレイ:ナショナル・エンブレム・マーチ(国民の象徴)
14.スーザ:エル・カピタン
15.スーザ:士官候補生
16.スーザ:雷神
レイモン・リシャール[1~6]、フランソワ=ジュリアン・ブラン[7~16]指揮ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽
(録音 1961年11月・杉並公会堂[1~5]、1964年[7,8,10?]、?[9]1953年[11~16]※9,11~16はモノラル)
吹奏楽としては古典的な名演奏といえる録音。
ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団は、フランス国家憲兵隊の共和国親衛隊(Garde républicaine)に所属している音楽隊だそうなので、先に紹介した自衛隊音楽隊と同様に、いわゆる軍楽隊というカテゴリーに入るわけですが、世界でも最高レベルの吹奏楽団としばしば言われるほど、いい意味で軍楽隊というイメージからほど遠い優れた演奏をする楽団で、来日公演も何度となく行っています。 
2枚のCDともに、1961年に杉並公会堂で録音された曲が含まれていますが、これは、同楽団の初来日時にセッション録音されたもの、CDの解説によれば、嵐のようなワン・テイクだったそうです。
 
現在の同楽団は、日本の一般的な吹奏楽団とほぼ同様の楽器構成(ただし編成はより大規模)になっているようですが、この当時は、金管楽器として、現在も用いられているトランペット(コルネット)、ホルン、トロンボーンなどの楽器のほかに、ビューグル、アルト、バリトンなどのサクソルン属の楽器(サクソフォーンを考案したアドルフ・サックスが考案した金管楽器。詳しくはWikipediaをご覧ください)も用いられいて、より柔らかい、オルガンを思わせるような音色が印象的です。
例えば、1枚目の1曲目の「トッカータとフーガ」は、原曲がオルガンということもあって、その特長を十分に味わうことができますし、同じく5曲目の「牧神の午後への前奏曲」など、一般には吹奏楽には向かないと思われる静かな曲ですが、柔らかい響きで、ちょっと聞いただけでは吹奏楽と分からないのではないかと思うくらい、違和感がありません。
2枚目の行進曲のCDでも、例えば、1曲目に収録されている「軍艦行進曲」なども、ある意味では、最も芸術的な軍艦マーチの録音といってもいいような、先に紹介した自衛隊音楽隊の演奏とはかなり雰囲気の違ったふくよかな響きです。ちなみに、1~6曲目が日本の行進曲、7~10曲目がフランスの行進曲、11~16曲目がアメリカ(ほとんどはスーザ)の行進曲ですが、フランスの行進曲では、一般的な行進曲集のCDで聴く演奏とはちょっと違って、ビューグルなどによるファンファーレの間に行進曲の主部が挟まる形に編曲されています(これがフランスのマーチの伝統的なスタイルだと聞いたことがあります)。
 
これらの収録曲の中でちょっと異色なのは、行進曲以外では唯一、吹奏楽オリジナルの作品である「ディオニソスの祭り」。フランスの作曲家フローラン・シュミット(1870~1958)がギャルドのために作曲し、1925年に初演された作品。したがって、楽器編成は、当時のギャルドの編成を前提に(さらに拡大)したものになっています。
具体的な編成をスコアの記載順に書き出してみると、次のとおりです。なお、※を付した楽器は、スコアで省略可(ad lib.)とされているものです。
 
(サクソフォーン)
  • アルトサクソフォーン2[or4]
  • テナーサクソフォーン2[or4]
  • バリトンサクソフォーン2[or4]
  • バスサクソフォーン1[or2]※
(パーカッション)
(サクソルン等)
  • E♭ビューグル1[or2]※
  • B♭ビューグル(現在のフリューゲルホルンにほぼ相当)2+2[or4+4]
  • アルト(現在のアルトホルンにほぼ相当)3
  • バリトン(現在のバリトンホルンにほぼ相当)2
  • バス(現在のユーフォニアムにほぼ相当)6
  • コントラバス(現在のテューバにほぼ相当)6
  • ストリングバス2[or4]※
スコアの指定に従えば、基本で80人以上(省略可の楽器を省いても70人以上)、最大では約120人に上る大編成ということになります。
上記のスコアの記載順でもうかがえるように、トランペット~トロンボーン金管群と、ビューグル~コントラバスのサクソルン群は別のグループとして扱われています。実際、両グループが掛け合いで奏するなど、両者を対比して用いているところも少なくありません。
 
この曲は、今も演奏される機会は珍しくありませんが、日本の一般の吹奏楽団、また現在のギャルドでも、サクソルン属を含まない編成になっているので、現在ではほとんど聴くことができない、スコアの指定にほぼ従った編成による同曲の演奏として貴重な録音になっています。(なお、現在演奏される場合は、一般的な楽器編成向けに編曲されて演奏されているようです。)
これらのCDはいずれも廃盤になってしまっているようです。時代を感じさせる録音ではありますが、また再発されるといいなと思います。