鷺の停車場

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映画「ももへの手紙」

総選挙の日の夜、テレビが選挙特番ばかりなので、子どもも楽しめるものをと、「ももへの手紙」(2012年4月21日(土)公開)を借りて観てみました。

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ももへの手紙 [DVD]

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ネタバレですが、あらすじです。

ある夏の日、宮浦ももは瀬戸内海を行くフェリーの上で「ももへ」とだけ書かれた便箋を見ていた。ももは母のいく子と汐島に向かっていた。そこに空から3つの水の玉のようなものが落ちてきて、ももの頭に当たる。島に着いた2人はいく子のおじさんの家に向かうが、3つの水玉も付いてくる。2人はかつて子どもの頃のいく子が喘息の養生で暮らしたあるおじさんの家で暮らすことにしたのだ。着いておじさん夫婦と話していると、いく子の昔なじみで郵便局に勤める幸一が配達にやってくる。
その夜、ももは父との最後の会話を思い起こす。「もういい!お父さんなんか大嫌い!もう帰って来なくていいよ!」と叫び、父の部屋を飛び出していったもも。結婚記念日に、両親が結婚前に一緒に行った思い出の「ウィーン少年合唱団」のコンサートに3人で行こうと父に内緒でチケットを用意していたのに、その日大事な調査が入って行けなくなったと謝る父に怒りをぶつけたのだ。仲直りしないまま、父が乗り込んだ調査船は沈没し、本当に父は帰らぬ人になってしまう。死後、ももは、父の机の引出しから「ももへ」とだけ書き残した便箋を見つけ、大事に持っていた。
ある日いく子はヘルパーの講習会に行くためフェリーで今治に出かける。母が不在の家で、いろいろな経緯の末、ももは小さなマメ、河童のようなカワ、四角い大きい頭のイワ、3人の妖怪と遭遇し、折り合いながら暮らすことになり、屋根裏部屋に転がり込んだ3人の妖怪と日々を過ごしていく中で、次第に慣れて親近感を抱くようになっていく。
妖怪たちの役目は見守り隊としてももといく子の様子を空に報告することだったが、あるとき、イワは間違ってももの大事にしていた父の便箋に報告を書いて空に送ってしまう。
その後、カワがいく子が亡くなった夫に買ってもらい大事にしている手鏡を持っていると、ももがそれを見つけ、手鏡を奪おうとすると、ひょんなことでカワにぶつかり、手鏡が落ちて割れてしまう。そこにいく子が駆け付けるが、妖怪が見えないいく子は、床に落ちている野菜や果物は妖怪が持ってきたと言うももを信じられず、いく子はももの頬を叩く。ももは「お父さんが死んでから、お母さん、私のことなんて全然分かってないじゃん!」と訴え、出ていく。
心配したいく子はももを探しに出るが、喘息の発作が起き倒れてしまう。知らせを聞いて家に戻ったももは、また仲直りできないまま母が死んでしまってはと、開通間近の橋を渡って医者を呼ぼうと向かう。幸市がももをバイクに乗せ橋を渡ろうとすると、妖怪3人が大勢の仲間を連れて駆けつけ、その助けで無事渡ることができる。
いく子は助かり、妖怪たちも見守りの役目を終える。ももは父への手紙を3人に託し、3人は水玉となり空へ上がっていく。
祭りの夜、2人は島の人たちが火を灯した藁船を海に流すのを眺め、帰ろうとしたその時、1艘の藁船がももの元に来る。そこにはももが大事にしていた便箋と、そして、もう1枚の便箋があった。その便箋を見てみると、文字はすぐに消えてしまったが、ももには「頑張ったな。お母さんをよろしく頼むぞ 父より」と書いてあるのが読めた。

(ここまで)

期待どおり、家族でほのぼのと見ることができ、最後はホロっとしてしまう、なかなかいい映画でした。

妖怪たちは、見た目もユーモラスで、振舞いも、ももがいない隙にプリンを食べ尽くしたり、野菜や果物を近所の畑から盗んでムシャムシャ食べてしまったりと、いろいろ悪さはするが憎めないキャラクターとして描いたのが生きています。亡くなった父への最後の会話を悔やみ、島での生活になかなか馴染めないももの内面の描写とうまくバランスが取れて、全体がシリアスになりすぎず、子どもも楽しんで見られる映画になっています。大人の目で見ると、途中の猪からの逃走の場面などやや冗長に感じる部分や、ここまで説明しなくてもと思う部分もありましたが、子ども向けには、コメディ的な部分を織り交ぜたり、丁寧めに説明することがプラスになっている面もあるでしょうし、全体の印象を損ねるほどの問題ではないと思いました。

また、映像もきれいです。新海誠監督の作品のような、まるで実際の映像と勘違いしそうな緻密な風景描写とはまた違いますが、自然の風景の美しさをはじめ、いい意味で見栄えよく、バランスのとれた美しい映像は良かったです。

沖浦啓之監督はこの映画で初めて知りましたが、ジブリ映画を含め、様々なアニメ作品に参加されている方だそうです。そのほかのスタッフも、ジブリの映画にも携わった方が多く参加しているそうで、舞台が近いポニョをはじめ、ジブリ映画に似た雰囲気を感じる部分が時々あったのはそのせいなのかもしれません。