鷺の停車場

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アニメ映画「時をかける少女」

最近になって、週1枚程度ですが、アニメ映画のDVDやBlu-rayを借りて家族で観ることが増えました。
今回観たのは、「時をかける少女」(2006年7月15日(土)公開)。

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以前に書いた「おおかみこどもの雨と雪」細田守監督の長編アニメ映画第2作。 

時をかける少女 [Blu-ray]

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時をかける少女」というと、まだ子どものころ、大林宣彦監督、原田知世主演の角川映画(1983年)が話題になったなあ(観てはいませんが…)という印象しかありませんでした。以前テレビで放映されたのをちょっと見かけた時も、ちゃんと観てなかったせいもあってあまり印象に残らなかったのですが、その後、やはりテレビで観た「おおかみこどもの雨と雪」や、その前の監督作品である「サマーウォーズ」が印象深かったので、改めて観てみようとDVDを借りてみました。

大林監督の映画は、筒井康隆の小説「時をかける少女」を映画化した作品だそうですが、この作品は、そのアニメ化ということではなく、続編という位置付けになるのでしょうか、その約20年後を舞台に、大林作品の主人公だった和子の姪に当たる真琴とその友人たちの青春物語で、あらすじは次のような感じです。

主人公の真琴は東京の高校2年生。功介と、春に転校してきた千昭の2人の同級生男子が、一緒にグラウンドでキャッチボールやノックしたりして遊ぶ仲間になっている。
夏のある日、真琴は、下校中の下り坂で自転車のブレーキが故障し、暴走して電車の接近する踏切に突入してしまう。気が付くと、真琴は下り坂の途中にいた少し前の時間に戻っていた。
そのことを彼女が「魔女おばさん」と呼ぶおばの和子に話すと、和子はそれが「タイムリープ」であることを伝える。やがて真琴は、自らの意思でタイムリープをすることができるようになり、味を占めた真琴は、タイムリープを繰り返して、テストで好成績を収めたり、カラオケを何時間も続けたりする。
ある日、功介が後輩の果穂から告白され、真琴はその帰り道に千昭から告白される。告白を受け止めることができない真琴は、タイムリープで何度も戻ってやり直し、告白をなかったことにしてしまう。そんな中、トラブルで怪我をしそうになった千昭をタイムリープを使って救うが、そのせいで巻き込まれた友人の友梨が代わりに怪我をしてしまい、それがきっかけで友梨と千昭と交際することになる。
その後、果穂の思いを知った真琴は、功介との仲を取り持とうと、タイムリープできっかけを作ってあげるが、腕に現れる数字を見て、タイムリープが使えるのは残り1回であることに気付く。その直後、千昭と果穂はブレーキの壊れた自転車を借りて行ってしまう。真琴は走って2人を探すが、千昭から携帯電話でタイムリープしていることを指摘され、思わずタイムリープでその会話をなかったことにしてしまい、真琴のタイムリープ能力は失われてしまう。そのとき、真琴の自転車に乗る功介と果穂が通りかかり、目の前でブレーキが故障し、下り坂を暴走してあの踏切に突入していく。
真琴が気付くと、時間は静止しており、千昭がいた。千昭は、自分が未来から来た人間であること、真琴のタイムリープ能力が自分の持っていたものであること、功介たちを助けるために自分の最後のタイムリープ能力を使ったことを告げ、姿を消す。
しかし、真琴はタイムリープが1度だけ可能になっていることに気付く。千昭がタイムリープをしたことで能力が戻ったと察知した真琴は、千昭を助けるため、あの自転車のブレーキが壊れた日へ最後のタイムリープをする。
真琴は功介と果穂の仲を取り持ち、自分の自転車を使わないように伝え、千昭に会いに行く。千昭にタイムリープ能力が残っていることを確認した真琴は、千昭の秘密を知っていると告げる。未来に戻ることになった千昭は去り際、泣きじゃくる真琴に「未来で待ってる」と言葉を残し、真琴は「すぐ行く、走っていく」と伝える。 

(ここまで)

真琴は、自分を少し前の時間に戻すことができるタイムリープの能力を身に付けると、最初のうちは、家の夕食で鉄板焼きを食べたいがために数日前に戻ったり、カラオケボックスの使用時間終了が迫ると来店時に戻って歌い続けるなど、その能力を傍目には下らないささやかな欲望に浪費していくのですが、やがて、それを使える回数が残り少ないことに気付くと、千昭をトラブルから救ったり、功介と果穂の仲を取り持ったり、周囲の人のためにそれを使うようになります。一方、タイムリープで現実を変化させることにより、別の人に思わぬ影響を与えることにもなります。最初は和子にそれを指摘されてもピンとこなかった真琴も、タイムリープでトラブルを避けたがために別のトラブルが発生するのを目の当たりにしたりして、否応なしに気付かされることになります。こうした経験の中で、真琴は、映画冒頭は、ただのお調子者だったのが、内面的には大きく成長することになります。

言い方を変えると、選択が1つのテーマともいえそうです。真琴は、映画冒頭の頃は、将来の進路、文系コースに進むか理系コースに進むかを決められず、千昭から告白されても受けるか断るか決められず、何度もタイムリープを使って選択を迫られる局面を逃れます。告白されることになる帰り道、千昭ととも功介と別れるY字路、そしてそこに立っている道路標識も、その暗喩のように見えます。しかし、成長する中で、それを乗り越えた真琴は、千昭と別れた映画の最後、「私、やること決まったんだ」と功介に語ります。途中でタイムリープで何度もやり直す過程も、別の道を選んでいくという点で共通すると言うこともできます。

主人公をアクティブでどこかお調子者というキャラクターに設定したことは、こうしたテーマを重苦しくさせずに描く狙いもあったのかもしれません。ちょっとした笑いもありつつ、最後はしんみり、甘酸っぱい気持ちになる、そんな映画でした。