第2巻に続いて、あらすじ紹介を兼ねて、時期が明示されている場面を列挙してみます。
(以下は統一暦。小説の登場順)
第一章:ひらけ、ゴマ
1925年05月24日 合州国アーカンソー州のメアリーのもとに父アンソンの死亡通知書が届けられる。
1925年05月 帝国軍参謀本部でゼートゥーア少将・ルーデルドルフ少将が「衝撃と畏怖作戦」を提案、決定される。
1925年05月25日 「衝撃と畏怖作戦」決行。帝国軍V-1投射秘密拠点からターニャたち選抜中隊が搭乗したV-1が発射、共和国ライン方面軍司令部を破壊する。
同日 連合王国 ホワイトホールでの閣議で講和の仲介を決定し、帝国に通知する。
第二章:遅すぎた介入
同日 帝国軍、「衝撃と畏怖作戦」の成功を受け、共和国軍右翼の塹壕陣地を坑道戦術で破壊する「解錠作戦」、そこから進攻した機甲部隊などが共和国軍主力を挟み撃ちにする「回転ドア作戦」を決行。
1925年05月26日 洋上:帝国軍潜水艦発令室、回収されたターニャに開錠作戦の発令が知らされる。
1925年05月27日 潜水艦から出撃した第二〇三航空魔導大隊がドレイク中佐率いる魔導大隊と交戦。
1925年05月28日 共和国軍ライン方面軍司令部隣接施設 連合王国人道支援団体"ピース・ワールド"病院、連合王国の「ジョンおじさん」が、「衝撃と畏怖作戦」の生存者である共和国軍ライン方面軍司令部所属カギール・ケーン大尉から当時の状況を聞き取ろうとするが、有意義な情報は得られない。
1925年06月18日 パリースィイ外縁部上空、第二〇三航空魔導大隊は偵察兼対地襲撃任務に当たる。
1925年06月19日 共和国 フィニステール県、ブレスト軍港、共和国国防次官兼陸軍次官のド・ルーゴ少将が反攻作戦のため南方への撤収作戦を決断する。
第三章:箱舟作戦発動
1925年06月20日 帝国軍参謀本部、ルーデルドルフ少将とゼートゥーア少将が会食。
同日 帝国軍最高統帥府/外交諮問委員会、外務官僚たちが戦後処理について議論。
同日 帝国軍第二〇三航空魔導大隊駐屯地、共和国海軍が南方のブレスト軍港に集結しているとの知らせを受けたターニャは、将来の反攻を確信し、ブレスト軍港を強襲するための出撃を強行しようとするが、参謀本部からの停戦命令により、中止を余儀なくされる。
第四章:勝利の使い方
1925年07月10日 帝国軍、ブレスト軍政管轄区、休暇を与えられたヴァイス中尉以下の第二〇三航空魔導大隊の男性隊員が共和国保養地のビーチでバーベキューパーティー。
同時刻 帝国軍ブレスト基地、ターニャは勝利に浮かれる参謀本部からの通信文に激怒し、ヴィーシャを連れて参謀本部に乗り込み、ゼートゥーア少将に面会しようとするが、ビアホールに外出しているために会えない。
翌朝 帝国軍参謀本部、ターニャはゼートゥーア少将に直談判するが、ゼートゥーア少将までもが勝利の美酒に酔っていると理解したターニャは、自分の懸念は理解されないだろうと、感情を抑えこんで退室。
第五章:内政フェーズ
1925年08月22日 連合王国が旧共和国軍らからなる自由共和国軍に与して参戦、帝国が提案した講和会議を一蹴したとの報道。
同日 合州国、アンソンの娘メアリー・スーが合州国軍の義勇派兵部隊に志願。合州国自由協商連合第一魔導連隊へと配属される。
1925年08月24日 帝国軍参謀本部第一晩餐室、ともに中将に昇進したルーデルドルフとゼートゥーアが南方戦線への対応を協議、第二〇三航空魔導大隊の派遣を決める。
1925年08月29日 帝国軍参謀本部、戦務・作戦合同会議、南方大陸作戦を協議。ゼートゥーアは消耗抑制策を主張。
1925年09年04日 帝都、南方戦線を率いるロメール将軍が、自分の指揮下に入ることになる第二〇三航空魔導大隊の大隊長ターニャと面会。
第六章:南方戦役
1925年09月22日 南方大陸、第二〇三航空魔導大隊はバールバード砂漠の高機動戦に参加。ターニャは第七戦闘団の次席指揮官として部隊を率いる。
同日 自由共和国暫定国防会議、チュルス奪還作戦を審議。ド・ルーゴ少将は作戦に反対する将官を更迭。欺瞞情報で帝国軍を攪乱しての強襲作戦に着手。
1925年10月06日 チュルス軍港郊外、遊牧民族のネットワークを活用した帝国の監視・連絡網などのネットワークを構築した連合王国の「ジョンおじさん」がキャラバンを指揮。
1925年10月12日 帝国軍野営拠点、ターニャがロメール将軍の許可を得て先行偵察を実施、分散進撃との共和国軍情報が偽報であることに気付く。
1925年10月13日早朝 共和国軍野営拠点、偽報で帝国軍を誘引して包囲撃滅する欺瞞作戦の成功を確信したド・ルーゴのもとに、敵魔導部隊急襲の知らせが入る。第二〇三航空魔導大隊に司令部を爆破されるが、ド・ルーゴはドレイク中佐の機転で助かる。
同日 帝国軍野営拠点、ターニャは、なぜこんな戦闘を続けているのかという疑問に襲われる。これ以上の戦線拡大にどのような意義があるのか、どうやって本国の政治家たちはこの戦争を終わらせることができるのかと頭を抱える。
1925年11月01日 連合王国庶民院、首相がラジオで帝国と交戦状態に入ったことを国民に語りかける。
アニメ版でいうと、おおよそ、第9話「前進準備」から第12話「勝利の使い方」まで、さらに劇場版の冒頭部分に対応しています。
副題の"The Finest Hour"とは「最良の時」。第四章あたりで描かれる、共和国軍に勝利して(ぬか)喜びに浮かれた時期を指しているのでしょう。
第2巻でも触れましたが、アニメ版で単なるカットでなくアレンジされ原作と相違している部分がちょこちょこあります。
例えば、上記の1925年05月27日のドレイク中佐率いる部隊との戦闘、アニメ版では、ノース・フィヨルドでの戦闘で撃墜されたアンソン大佐が「存在X」によって一命をとりとめて、この戦闘にも参戦し、そこで命を落とすことになっています。
また、1925年07月10日のヴァイス中尉以下の隊員のバーベキュー、アニメ版では、上記の年表でいうと同年06月10日の停戦命令時に既に行っていて、出撃しようとするターニャが休暇を取り消して呼び戻そうとするシーンが出てきます。
さらに、停戦命令後に参謀本部にターニャが乗り込む場面、アニメ版では、ゼートゥーアたち参謀がビアホールに行ったことを聞いて引き返すターニャをレルゲンが呼び止め、ターニャが忌憚ない意見をレルゲンに話すシーンが追加されています。
第五章・第六章は、アニメ版ではテレビ版と劇場版の狭間で基本的にカットされている部分で、劇場版の冒頭に上記10月13日の共和国軍野営拠点を爆破するシーンが出てくるだけ。
これまではテレビアニメ版でおおよその流れが分かっているので、比較的すんなり読み進められましたが、アニメ版にない部分では、戦闘の展開の様子など、ちゃんとイメージしながら読み進めないと理解が難しいかもしれません。