鷺の停車場

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映画「ある町の高い煙突」を観る

映画「ある町の高い煙突」(6月22日(土)公開)を観に行きました。

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行ったのは有楽町スバル座。この映画館に来るのは初めて。入口の看板には、上の写真では小さくて読めませんが、「ロードショー発祥の劇場」と謳い文句が書かれています。昭和21年末に本邦初のロードショー劇場としてオープンしたのが起源だそうですが、本年10月に閉館することが発表されています。

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全国83館で公開された作品、この館がメイン館らしく、公開初日には舞台挨拶も行われたようです。

1階の入口から入り、階段で2階に上がったところにチケット売場があります。

全席自由席で入替制でないのは昔ながらの映画館という感じ。チケットを買って3階にあるスクリーンに上がります。

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スクリーンは270席。

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昔ながらの見上げるタイプのスクリーンですが、シートは当初よりゆったりしたサイズのものに替えられているようです。スクリーンサイズは、縦3.1m、横幅は最大のシネマスコープで7.0mです。

この日はサービスデーとあってか、けっこうな入り。少なくとも6割くらいは入っていたのではないでしょうか。

「~ごゆるりとお楽しみください」とちょっと時代を感じるアナウンスが流れた後、小学校の授業のようなチャイムが鳴って、予告編が始まります。消灯後に前方両端の非常口の緑の灯りが消えずに残っているのも最近では珍しい気がします。

10分ほどの予告編の後、本編が始まります。

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(チラシの表裏)

浅田次郎の同名小説を映画化した作品。私は原作小説は読んでいませんが、その基となった実話は多少知っています。

今の日立市、全国有数の銅山として栄えた日立鉱山で、大正初期、亜硫酸ガスによる煙害を解決するために約150mを超える当時世界一の高さの大煙突を建築し、被害を大きく軽減することに成功したという話。

大煙突は、平成5年に上部の約3分の2が倒壊してしまいましたが、残った下部50mほどは修復されて今も健在です。常磐道で東京方面から北上すると、日立中央インターを越えて2つ目のトンネル(大雄院トンネル)を抜けた左手に、車からでもけっこう間近に見ることができます。


公式サイトの「物語」では、かなり詳しくあらすじが説明されていますが、多少要約して紹介すると、

 

 茨城県久慈郡入四間の裕福な地主の家に生まれ育った関根三郎(井手麻渡)は、煙害と闘ってきた祖父の兵馬(仲代達矢)の遺志を継いで、第一高等学校への進学、そして外交官になる夢を諦め、煙害と闘うことを決意する。

 三郎は、煙害対策のために設立した入四間青年会の会長に、さらに村の煙害対策委員会の委員長に就任し、日立鉱山の庶務課長で煙害対策や補償を担当する加屋淳平(渡辺大)と知り合う。最初は敵対心を抱いていた三郎だったが、社主の木原吉之助(吉川晃司)や加屋の真摯な姿勢に次第に態度を改め、三郎と加屋は立場の違いを越えて信頼関係を結んでいく。ある時、偶然知り合って心を惹かれた女性が、加屋の妹の千穂(小島梨里杏)だとわかり、三人は急速に親しくなっていく。

 そんな中、政府が鉱毒問題の対策として、全国の鉱山に煙突や煙道の建設を命じ、日立鉱山にも煙道が設置されるが、煙道は大失敗に終わる。一度は日立鉱山を信じた三郎は怒りと落胆に、木原を「あなたは冷酷無情な資本家だ」と責めるが、村へ帰ると、村を裏切って企業側についていたと疑われ、激しく非難される。

 責任をとって委員長を辞任し、ますます深刻化していく煙害を、ただ見ていることしかできない三郎。千穂とも会えなくなり、生きる目的を見失った三郎を立ち直らせたのは、美しい故郷を取り戻したいという強い願いだった──。

 

というあらすじ。

関根三郎は入四間(いりしけん)村(今は日立市の内陸部の一部)で煙害に立ち向かった関右馬允(せき うまのじょう。幼名は関三郎)、加屋淳平は日立鉱山の庶務課長として補償や煙害対策に当たった角弥太郎、水力発電所の責任者として登場する大平浪三は日立鉱山発電所の建設などに携わり、後に鉱山の電気部門が独立する形で設立される日立製作所の創設者となる小平浪平、木原吉之助は日立鉱山を開業した久原房之助、という実在の人物がモデルになっているとのこと。

どちらかと言えば地味なテーマを、よく感動的な物語としてまとめたなあ、というのが率直な感想。めったに見ない時代モノで不安もあったのですが、意外にすんなり物語に入っていけて、時にはちょっと気になる演出もありましたが、それに引っ掛かることなく、最後までいい感じで観ることができ、何ヵ所か涙したシーンもありました。

大煙突の建設中の様子や完成後の姿は、実際に立っている場所の映像にCGで再現されているようです。CGと感じさせないくらい処理が巧みだとなお良かったのですが、違和感なく見ることができると思います。

井手麻渡と渡辺大の主演2人は好演。木原吉之助を演じる吉川晃司も、セリフは比較的少ないのですが、しゃべる時はいつもいい場面で、存在感ありました。