劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝―永遠と自動手記人形―」(9月6日(金)公開)を観て、本編となるテレビアニメ版も見たくなりました。レンタルDVDがあればと思って行きやすいお店を数店回ったのですが、どこにも置いていません。内容を知らずにセル版のBlu-rayやDVDを買うのは勇気が要るので、ネット配信で見てみることにしました。
劇場版の「外伝」では、成長した後のヴァイオレットが、他の人たちの気持ちを変えていく、というのがメインで、ヴァイオレット自身の成長や変化という要素は前面には出ていませんでした。
時系列的にその前に当たるテレビアニメ版では、上官ギルベルトの道具として戦うだけの少年兵だったヴァイオレットが、両腕を失って義手となり軍を離れ、手紙の代筆を行う「自動手記人形」として仕事をしていく中で、それまで理解できなかった人間の、そして自分の感情が分かるようになっていく過程を描いています。
先に観た外伝と同様、描写の美しさは特筆ものです。毎週のテレビアニメでこれだけのクオリティを維持できるのは凄いです。
出てくる武器や飛行機、ライデンシャフトリヒという国名からすると、第一次世界大戦ごろのドイツあたりがモデルになっているのだと思いますが、街の雰囲気や風景の描写も手を抜いた感じが全くなく、クラシック音楽風のBGMもあいまって、何ともいえない独特の空気感を漂わせています。ストーリーも、客観的には劇的な大きな出来事が起きるということではないのですが、ヴァイオレットをはじめそれぞれの人物の心の動きが繊細に表現されていて、心に響きます。劇場版の「外伝」に続いて、すっかりやられてしまい、1~2日で一気に最後まで見て、その後もちょこちょこ繰り返して見ています。劇場版の「外伝」を観て心動かされた人であれば、これは絶対に見るべき作品だと思います。
ネタバレになりますが、各話のあらすじのアウトラインは次のような感じです。
第1話:「愛してる」と自動手記人形
少年兵としてギルベルト小佐【浪川大輔】に仕えていたヴァイオレット【石川由依】、両腕を失って入院していた病院に、元中佐のホッジンズ【子安武人】が、ギルベルトに託されたと身元引受けにやってくる。ライデンにあるホッジンズの郵便社で配達人として働き始めたヴァイオレットだったが、ギルベルトが最後に残した「愛してる」の意味を知るため、手紙を代筆する「自動手記人形」(ドール)になりたいとホッジンズに直訴する。
第2話:「戻ってこない」
先輩のカトレア【遠藤綾】の指導でドールになるための訓練を始めるヴァイオレット。カトレアの不在中に飛び込んだ恋文の依頼を引き受け代筆するが、人間の感情がよく理解できていないヴァイオレットは事務連絡のような手紙しか書けず、失恋したと依頼人が怒鳴り込んでくる。同僚のアイリス【戸松遥】はドールを辞めさせることを進言するが、ヴァイオレットの思いを知った同僚のエリカ【茅原実里】が庇い、カトレアはドールの育成学校に行くことを勧める。
第3話:「あなたが、良き自動手記人形になりますように」
育成学校に入ったヴァイオレットは、学課では優秀な成績を修めるが、依頼人の思いを汲み取った手紙が書けず、合格できない。しかし、クラスメイトのルクリア【田所あずさ】から、戦争で両親を失ったことで自らを責め、酒浸りとなってしまった兄スペンサー【木村昴】への思いを打ち明けられたヴァイオレットは、それを手紙に綴ってスペンサーに渡す。その手紙が評価され、卒業の証であるブローチを授与される。
第4話:「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」
同僚のアイリスが初めての指名を故郷の町から受けるが、喜ぶあまり手をケガしてしまい、ヴァイオレットが同行することになる。依頼はアイリスの結婚を願う両親からの誕生パーティーの招待状だったが、パーティーにかつて振られたエイモン【稲垣拓哉】も姿を表したことに立腹したアイリスは、衝動的に部屋にこもってしまう。反省するアイリスは招待客への詫び状をヴァイオレットに依頼するが、両親への手紙を勧められ、手紙で両親と和解する。
第5話:「人を結ぶ手紙を書くのか?」
ドロッセル王国のシャルロッテ王女【中島愛】のもとに来たヴァイオレットは、政略結婚の相手であるダミアン王子【津田健次郎】との公開恋文を代筆する。シャルロッテから、10歳の誕生パーティーの時に優しく声をかけてくれたダミアンに恋し、心から彼との結婚を願っていること、そして不安で彼の本心が知りたいと打ち明けられたヴァイオレットは、ダミアン側のドールと交渉し、自筆の恋文でやり取りするよう差配する。恋文のやり取りを重ね、シャルロッテは月下の庭園でダミアンから求婚される。結婚式の日、ヴァイオレットはダミアン側のドールだったカトレアとライデンに戻る。
第6話:「どこかの空の下で」
保存状態の悪い大量の文献の写本のため、多数のドールが天文台に集められ、解読する天文台の職員とタイプするドールがペアを組んで作業が始まる。ヴァイオレットと組んだリオン【上村祐翔】は、行方不明になった父親を追って母親が家を出て行ってしまった過去から、女性が嫌いだったが、ヴァイオレットの仕事ぶりと共に親族がいない似た境遇にひかれるようになる。200年に一度の彗星の観察に誘ったリオンは、ヴァイオレットと語り合う。作業が終わって帰るヴァイオレットに、リオンは自分も文献収集の旅に出る決意を伝える。
第7話:「 」
ヴァイオレットは、酒浸りの戯曲家オスカー【滝知史】のもとを訪れ、新作の戯曲を代筆する任務に当たる。病気で亡くした娘に語り聞かせた物語を書き上げようとするオスカーだが、終盤で筆が止まってしまう。しかし、戯曲の主人公に共感するヴァイオレットの協力で戯曲を書き上げる。ライデンに戻る列車の中で、ヴァイオレットは兵士として人の命を奪ってきた罪悪感にかられる。ライデンに戻ったヴァイオレットはエヴァーガーデン夫人【沢田敏子】と再会し、ギルベルトが亡くなっていると聞かされる。
第8話:
ギルベルトの死を信じることができないヴァイオレットはギルベルトの屋敷を訪ねるが、案内されたのは彼の墓だった。彼との日々を回想するヴァイオレット。4年前、ギルベルトは兄ディートフリート【木内秀信】から孤児で武器としての能力しかない彼女を引き取り、ヴァイオレットと名付け、読み書きなどを教え、部下として使ってきたのだ。感謝祭の日、エメラルドのブローチにギルベルトの瞳と同じ美しさを感じ魅入るヴァイオレットに、彼はそのブローチを贈る。インテンス奪還作戦の前夜、ギルベルトを訪ねてきたホッジンズは、戦争が終わったら会社を興そうと考えている、ヴァイオレットも雇うことにするか、と話すと、ギルベルトは、いいかもしれない、と答える。それを耳にしたヴァイオレットは、私は不要ですか?処分される結果ホッジンズ中佐の下に移されるのですか?と問うが、ギルベルトは、君は悪くない、と答える。そして迎えた作戦で、目の前でギルベルトが銃撃される。
第9話:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
ヴァイオレットは銃撃を受けたギルベルトを連れて逃げようとするが、ヴァイオレットも両腕を失う。ギルベルトは彼女に、「生きて、自由になりなさい。心から、愛してる」と言葉を残す。敵軍が撤退に際して砲撃したことにより、ギルベルトは生死不明になってしまっていた。その総本部跡を訪れたヴァイオレットをホッジンズが見付け、会社に戻ろう、ギルベルトに君を託されたんだ、と説得し連れ帰る。ヴァイオレットは、多くの命を奪ったその手で人を結ぶ手紙を書くのか、と自責の念にとらわれ自室に閉じこもるが、アイリスとエリカから手紙が届く。その手紙を読み、仕事に戻る。自動手記人形として生きていていいのでしょうか?とヴァイオレットに問われたホッジンズは、してきたことは消せない、でも、自動手記人形としてやってきたことも消えないんだ、と励ます。
第10話:「愛する人は ずっと見守っている」
病気の母クラーラ【川澄綾子】と暮らすアン【諸星すみれ】のもとに、ヴァイオレットがやって来る。クラーラはヴァイオレットと手紙の作成に打ち込み、アンは母と過ごす時間を奪うヴァイオレットに反感を抱くが、次第に慕うようになる。ある日、アンは体調を崩しても手紙の作成を止めようとしない母に怒りをぶつけるが、涙を流す母の姿に、母を苦しめてしまった自分を責めるアンをヴァイオレットは優しく慰める。手紙の代筆を終えたヴァイオレットは、ライデンに帰っていく。代筆していた手紙は、死が近いことを知ったクラーラが、死後50年間アンの誕生日に届けるためのものだった。手紙を読んで母の愛を知るアン。郵便社に帰ってきたヴァイオレットはアンの家で我慢していた涙を流す。
第11話:「もう、誰も死なせたくない」
メナス基地から代筆の依頼が入る。内戦状態にある危険な場所のため、ホッジンスは断ることにするが、ホッジンズとカトレアがその件の話をするのを耳にしたヴァイオレットは独断で現地に向かい、殺されそうになっていた依頼者のエイダン【浅沼晋太郎】を見つけ救出する。瀕死の重傷を負っていたエイダンは、死が近いことを悟り、両親と幼なじみで恋人のマリア【須藤祐実】への手紙を口述し、息絶える。ヴァイオレットは、帰る途中にエイダンの両親を訪れ、両親とマリアに彼からの手紙を渡す。死を悲しみ泣きながらも礼を述べる両親たちに、ヴァイオレットはエイダンの命までは救えなかった自分の非力さを詫びる。
第12話:
ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が和平を結び、その象徴として特使が大陸縦断鉄道でガルダリク帝国に向かうことになり、和平反対勢力の襲撃を阻止すべく、ディートフリートはその護衛任務の命を受ける。条約文書を代筆するカトレアと護衛のベネディクト【内山昴輝】が特使に同行する。エイダンの手紙を届けた帰りの飛行機で和平反対勢力の動きを察知したヴァイオレットはカトレアたちが乗る列車に乗り移るが、ヴァイオレットに複雑な思いを抱くディートフリートは彼女に厳しい言葉をぶつける。人を失う悲しみを知ったヴァイオレットは、もう誰も殺したくないのです、と相手兵も殺さないよう列車の屋根で戦い、ディートフリートを襲う銃弾を義手で守る。
第13話:自動手記人形と「愛してる」
ヴァイオレットが義手を犠牲にして橋に仕掛けられた爆弾を外し、列車の破壊を阻止したことで、和平条約は無事に調印され、平和が戻る。飛行機で空から手紙が飛ばされる航空祭が開かれることになり、ヴァイオレットたちはその手紙の代筆で忙しくなる。郵便社のメンバーもそれぞれ手紙を書き、ヴァイオレットもギルベルト宛ての手紙を書こうとするが、なかなか書けない。代筆の仕事が一段落した非番の日、ディートフリートが訪れ、ヴァイオレットを彼とギルベルトの母のもとに連れていく。ギルベルトの母はヴァイオレットに、ギルベルトは心の中に生きている、だから決して忘れない、と温かい言葉をかける。その帰り、ディートフリートは、あいつの分も生きろ、生きて生きて、そして死ね、それが俺からの最後の命令だ、と言うが、ヴァイオレットは、もう、命令は要りません、と答え、一礼して去る。戻ったヴァイオレットは、手紙にギルベルトへの思いを綴り、今は「愛してる」も、少しは分かるのです、と記す。
どの回も心に響く話ですが、とりわけ第5話、第7話、第10話あたりは、何度見返しても涙してしまう(個人的には)感動的な物語。当初は来年1月10日の公開予定だった本編の劇場版は、あの事件の影響で鋭意制作中(公開延期)になってしまいましたが、気を長くして待ちたいと思います。