初野晴さんの小説「千年ジュリエット」を読んでみました。 その紹介と感想です。
テレビアニメ「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」の原作となる〈ハルチカ〉シリーズの「退出ゲーム」、「初恋ソムリエ」、「空想オルガン」に続く第4作。
角川文庫サイトには、次のような紹介文が掲載されています。
【文化祭の季節がやってきた! 吹奏楽部の元気少女チカと、残念系美少年のハルタも準備に忙しい毎日。そんな中、変わった風貌の美女が高校に現れる。しかも、ハルタとチカの憧れの先生と何やら親しげで……。】
作品は、イントロダクションと4編から構成されています。各編のおおまかなあらすじを紹介します。
イントロダクション
吹奏楽コンクールの東海大会を終え、文化祭の準備に取り組むチカが、友人となり、吹奏楽部に入部してくれた芹澤さんとの関係を語る導入部。
エデンの谷
芹澤も入部し、文化祭の発表に向けて練習に励む清水南高校吹奏楽部のメンバーたち。そこに草壁先生の恩師の孫でクラビエッタ奏者の山辺真琴が、草壁を訪ねてやってくる。草壁は、亡くなった祖父が残した貴重なピアノの鍵を探している、祖父はそれを真琴に伝えたと遺言に残しているという。ハルタは、真琴が隠している秘密、そして祖父が残したメッセージを突き止める。
本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第11話「エデンの谷」に当たる部分になっていますが、アニメ版では時期の設定がコンクールの前になっています。
失踪ヘビーロッカ―
あるタクシーの運転手が乗せた長髪を金色に染めた少年は、車を清水南高に走らせる。その日は文化祭の1日目、タクシーに乗った少年はアメリカ民謡クラブの部長でハードロッカーの甲田で、ステージ発表のためにタクシーに乗ったのだったが、学校に着いた甲田は、なぜか降りようとせず、慌ててドアを閉めぐるぐると学校の周りを走らせる。その挙動不審な様子に運転手は不安になり、アメリカ民謡クラブの部員は甲田が間に合うか心配する。甲田には車を降りられないある事情があった。
決闘戯曲
演劇部が準備していた劇の脚本を書いていた生徒が、脚本を最後まで書き上げずに当日の朝に姿を消してしまう。その劇は、右目が見えず、左手が使えない日本人がアメリカやパリで欧米人とピストルで決闘する話で、知恵を絞って決闘に勝ったのだというが、その謎は書き上げた部分には書かれていない。臨時団員として劇を手伝うことになったハルタとチカは、メンバーが残る部分をアドリブで切り抜けようと行った通し稽古に参加しながら、その謎を解き明かそうとする。
千年ジュリエット
病院に長期入院する仲間のカエラ姉さん、シズコさん、ミサトさん、キョウカと一緒に「ジュリエットの秘書・はごろも支部」と称してメールで恋愛相談を受けていた「私」ことトモちゃん。清水南高校の文化祭に訪れた「私」は、サックスを吹く高校生に会おうと、吹奏楽部のステージが目当てに来たのだったのだが、アメリカ民謡クラブのステージなどを見る羽目になったりして、吹奏楽部のステージを見逃してしまうが、翌日、再び文化祭を訪れる。そこにはトモちゃんたちへのある思いがあった。
(ここまで)
文庫版の表紙のイラストは、アルトサックスを持っているので、マレン・セイなのでしょうね。
各編とも、清水南高校の文化祭が舞台になっていることもあるのか、前作の「空想オルガン」と比べても、より躍動感のある文章になっている気がします。「千年ジュリエット」は仕掛けが凝りすぎな感じも受けましたが、「エデンの谷」などは謎解きが鮮やかで爽快な感じでした。
さらに続きを読んでみようと思います。