鷺の停車場

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竹宮ゆゆこ「砕け散るところを見せてあげる」

竹宮ゆゆこさんの小説「砕け散るところを見せてあげる」を読みました。

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)
 

そういえば同タイトルの映画のチラシを見たなあと思って、たまたま手にした作品。

文庫本の背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。

 

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大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本坡瑠からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて坡瑠の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

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作品は、数字で区切られた8章で構成されています。各章のおおまかなあらすじは次のとおりです。

受験を間近に控えた、高校3年生の濱田清澄。父親は18年前に川に転落した車の乗員を助けて亡くなっており、母子家庭の清澄は、県内最難関の国立大学を目指していた。

生徒集会で1年生の女の子が紙くずをぶつけられいじめられているのを目撃した清澄は、それを止めに入るが、女の子から激しく拒絶される。クラスメイトの尾崎の話から、彼女が学年一の嫌われ者の1年A組の蔵本坡瑠だと知る。

それから、坡瑠が気になる清澄は、いたずらで隠される彼女の上履きを探して回収する毎日を送り、1年生たちからひそかに「ヒマセン」と呼ばれるようになっていた。そんなある日、清澄は駅と学校の間にある運動場のトイレに坡瑠が閉じ込められているのを見つける。

坡瑠を救出した清澄は、水をかけられてずぶ濡れになった彼女の服をなじみのクリーニング店で乾かしてもらうよう頼み、それを待つ間、すぐ近くの自宅で坡瑠と話をする。母親が出て行き、父親と二人暮らしの坡瑠は、強くなってUFOを撃ち落としたいと話す。

次の月曜日、清澄は母親に渡されたおはぎをあげるため、登校する坡瑠を待ち伏せする。坡瑠の雰囲気はこれまでと違って明るくなっていたが、学校ではまたいじめに遭う。止めに入った清澄は保健室に行く破目になる。いじめは坡瑠を直接傷つけることは慎重に避けているのに、坡瑠の身体に痣があるというクリーニング屋のおばちゃんの言葉を思い出し、清澄はUFOの影の気配を感じる。

坡瑠へのいじめはクラスの問題として取り上げられて、事態は好転する。痣の原因が父親だと疑う清澄は、父親が帰る時間を見計らって、母親の車で坡瑠を家に送り、父親と会う。母親は坡瑠がいると言っていたおばあさんの話をすると、坡瑠の顔は引きつる。父親は、義母が市立病院にいると話すが、別れた後、市立病院で看護師として働く母親は清澄に、市立病院に入院しているおばあさんはいないと言う。

翌日から、坡瑠は清澄を避けるようになる。清澄は坡瑠を捕まえるが、もう関わりたくない、大嫌い、と拒否し、清澄を突き飛ばして走り去ってしまう。清澄は、トイレから助け出したとき、坡瑠が自分を信じてくれたことを思い出し、坡瑠が呼ぶ声に応えたいと思うのだった。

翌日、清澄が終業式を終えて家に帰り、窓を開けると、通りに立っている黒い人影を見つける。それは坡瑠だった。家に招き入れると、坡瑠は、危険が迫っている、UFOが攻撃してくる、逃げてください、と訴える。坡瑠には父親から激しい暴力を受けた痕があった。坡瑠の話を聞いた清澄は、7時に坡瑠の父親が帰ってくる前に父親の弱味を暴く証拠を手に入れようと動くが叶わず、父親にゴルフクラブで殴られて死ぬと思った時、あることが起きる。

(ここまで)

 

謎めいた存在の坡瑠に魅かれていく清澄と、自分に手を差し伸べてくれた清澄をヒーロー視していく坡瑠とのちょっと変わったラブストーリー。終盤になって大きく物語が動き、予想外の展開になっていく流れは印象的ではありましたが、私にはちょっと響きませんでした。

なお、本作を原作に実写映画化した映画は、4月9日から劇場公開予定です。試写を観た人の評価はそれほど悪くないようですが、本作を読んだ限りでは微妙な感じです。実際に公開が始まってからの口コミなどを見て考えることになるだろうと思います。