週末にキネマ旬報シアターに行きました。
この日のラインナップと上映時間。
観たのは、「浜の朝日の嘘つきどもと」(9月10日(金)公開)。
上映は136席のスクリーン3。この映画館では、緊急事態宣言の解除後も1席ずつ間隔を開けての販売を継続していましたが、一番前の2列ほどを除いてほぼほぼ埋まっていたので、50人以上は入っていたと思います。
1923(大正12)年に開館し、東日本大震災が発生した1991年に閉館した、福島県南相馬市に実際にあった「朝日座」を舞台に描いた作品。福島中央テレビ開局50周年記念作品として昨年10月に同テレビでドラマ版が放送された作品の劇場版だそうで、監督・脚本はタナダユキ。
公式サイトのストーリーによれば、
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福島県・南相馬に実在する映画館「朝日座」。
100年近い歴史を持ち、主に旧作映画を上映する名画座として地元住民に愛されていたが、近年はシネコンと呼ばれる複数のスクリーンを持つ複合映画館の台頭によって厳しい経営状況だ。
支配人の森田保造(柳家喬太郎)はサイレント映画『東への道』をスクリーンに流しながら、意を決する。
35mmフィルムを一斗缶に放り込んで火を着けた瞬間、森田の背後から水をかけて邪魔をする女性(高畑充希)が現れた。経営が傾いた「朝日座」を立て直すために東京からやってきたという彼女は、自分の名前を「茂木莉子」と名乗る。
しかし、「朝日座」はすでに閉館が決まっており、森田も「打つ手がない」と決意を変えるつもりはない。「ここが潰れたら本当に困る!」と主張する莉子は、この町に住んでなんとかするという。それは、「ある人との約束」が理由だった。
莉子が高校一年の時、東日本大震災が起きた。タクシー会社で働いていた父(光石研)は除染作業員の送迎を担当したが、やがて莫大な利益をあげたと噂をされるようになり、莉子は友だちが一人もいなくなってしまう。
そんな高校二年の折、立ち入り禁止の屋上にいるところを数学教師の田中茉莉子(大久保佳代子)に見つかり、視聴覚準備室に連れていかれる。茉莉子先生と一緒に映画『青空娘』のDVDを鑑賞した莉子は、映画の魅力を知るのだった。
その後、家族で東京に移住するが、高三の一学期でドロップアウトしてしまう莉子。家に居場所がない莉子は、郡山にある茉莉子先生の家を訪ねて二人の同居生活が始まる。茉莉子先生との楽しい毎日は長くは続かなかったが、莉子が実家に戻るまで、二人の時間にはいつも映画があった。
2019年、映画の配給会社に勤めていた莉子のもとに、茉莉子先生が病に倒れたという連絡が届く。8年ぶりに茉莉子先生と再会すると、「お願いがある」と言われるのだった。
「南相馬にある朝日座という映画館を立て直してほしい」と。
先生との約束を果たすために映画館を守ろうと奔走する莉子と、積年の思いを断ち切り閉館を決めた支配人・森田。果たして「朝日座」の運命やいかに……
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主な登場人物は、
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茂木莉子【高畑充希】:本名は浜野あさひ。高校中退後、高卒認定を得て大学に進み、映画配給会社に勤めるが、会社がつぶれ、恩師との約束を果たそうと、朝日座を立て直しにやってくる。
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森田保造【柳家喬太郎】:南相馬にある映画館「朝日座」の支配人。経営難から、一度は閉館し、健康センターを作ろうとする会社に売却を決めるが、莉子にほだされて再開を目指す。
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田中茉莉子【大久保佳代子】:あさひが高校2年生まで通っていた郡山の高校の数学教師。
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岡本貞雄【甲本雅裕】:朝日座の売買契約を仲介した町の不動産屋。保造の同級生で、再開に動き出した保造に協力する。
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チャン・グオック・パオ【佐野弘樹】:ベトナムから来た技能実習生。生活苦から放火しようとしたところを田中に止められたことをきっかけに親密になり、最後は田中と結婚する。
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浜野巳喜男【光石研】:あさひの父。震災後に除染作業員の送迎を行い成功を収めた浜野あさひ交通の社長。
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松山秀子【吉行和子】:再開に動き出す保造を応援する老婦人(テレビドラマ版では資産家の未亡人との設定のようです)。
など。
監督・脚本のタナダユキの作品というと、昨年の初めに「ロマンスドール」を観ましたが、それとは全く異なる雰囲気、展開なのは意外でした。ところどころにクスっとさせる演出、現在の描写と回想シーンを交えながら、心地よい後味が残る作品に仕上がっていました。