鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部 貴族院の自称図書委員Ⅴ」

香月美夜の小説「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第四部「貴族院の自称図書委員Ⅴ」を読みました。

ローゼマインが貴族院に進んでからを描く第4部の第5巻。第4巻、番外編の「貴族院外伝 一年生」に続いて読んでみました。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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エーレンフェストの下町を美しい街へと生まれ変わらせたローゼマインは、他領への影響力を強めるため、さらなる発展を目指す。そのためには、民の協力が欠かせない。貴族との壁を壊すため、彼女は自ら活発に動き回る。直轄地の印刷工房の視察や、染め物コンペの開催による職人の発掘、図書館建設計画の妄想(?)などなど。

複雑な領地問題が絡む兄の結婚式では、不穏な旧ヴェローニカ派への警戒も必要に。領地内の派閥争いは激しさを増していく。季節が冬の到来を告げる頃、貴族院では二年生が始まるのだった。

ついに5周年!騒動続きで忙しすぎるビブリア・ファンタジー最新刊!

書き下ろしSS×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた18節からなり、紹介文では2本となっていますが、巻末に番外編が3編、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

プロローグ

ギーベ(地方の領主)・ゲルラッハのグラオザムのもとに、ギーベ・ヴィクトルのシドニウスから長男フロイデンとアーレンスバッハ(順位6位の大領地)のベティーナとの結婚が許可されたと知らせが届く。グラオザムの末息子マティアス(中級騎士見習い4年生)は、アーレンスバッハのおかげ、と喜ぶ家族たちに違和感を覚える。家族とお祝いにヴィクトルを訪れたマティアスに、シドニウスの2番目の息子ラウレンツ(中級騎士見習い3年生)が声をかける。2人は、結婚が行われる星結びの儀式で旧ヴェローニカ(エーレンフェストの領主・ジルヴェスターの母で現在は幽閉中)派の父たちが何か企んでいるのではないかと疑い、対応を考える。

見習い達と神殿

領主会議の報告などが終わって自室に戻ったローゼマイン(主人公でエーレンフェストの領主候補生1年生)は、ハンネローネ(ダンケルフェルガーの領主候補生1年生)からの手紙と貸してくれた本を読む。領主から同行の許可が出て、ローゼマインは側近たちを神殿に連れていく。

下町との話し合い

側近たちが神殿に出入りするようになって3日後、ギルベルタ商会(服飾品を扱う商会)、プランタン商会(印刷関係を扱う商会)とギルド長との約束の日がやってくる。同行する側近は孤児院長室の家具の格がローゼマインに合っていないと買い替えを勧めるが、ローゼマインはその話を煙に巻く。会合の場で、イタリアンレストランの話をするギルド長たちに、ハルトムート(側近の上級文官見習い6年生)は直接的な要望が過ぎると口を挟むが、ローゼマインはその鼻をへし折る。プランタン商会のベンノにはグレッシェルにグーテンベルク(印刷業に関わるローゼマインの専属職人たち)を派遣する相談を、ギルベルタ商会とは髪飾りなどの商談をして、神殿長室に戻ったローゼマインは、ハンネローネから借りた本をフィリーネ(側近の下級文官見習い1年生)と一緒に写本し、ハルトムートに平民との連携の重要性を諭す。

イタリアンレストランへ行こう

側近たちを連れて神官長室に手伝いに向かったローゼマインは、神官長・フェルディナンド(ジルヴェスターの異母弟でローゼマインの後見人)からイタリアンレストランに同行すると告げられる。夏物の服を仕立てるためにギルベルタ商会を呼んだローゼマインは、妙な流行を作り出さないか立ち会ったエルヴィーラ(貴族としてのローゼマインの母)たちと話し合って染色コンペを城で開催することになり、ローゼマインはそれを知らせるためにギルド長やギルベルタ商会などに手紙を書き、フリーダ(ギルド長の孫娘)にはフェルディナンドの好みなど質問があった事項に返事を書く。5日後、ローゼマインはフェルディナンドたちとともにイタリアンレストランを訪れる。

進化した料理

イタリアンレストランの料理は、イルゼ(フリーダの家の専属料理人)たちの試行錯誤で進化していた。ローゼマインは、2年間イタリアンレストランを守ってくれたフリーダへのご褒美としてゼラチンの製法を売ることにするが、フェルディナンドの助言でギルベルタ商会にも相応の褒美を与えることにし、フェルディナンドにはフーゴ(ローゼマインの専属料理人)が知っているレシピを教えることにする。

グレッシェルへの来訪と星結びの儀式

夏の洗礼式を終え、ローゼマインは実家に帰るブリュンヒルデ(側近の上級文官見習い4年生)グーテンベルクを連れてグレッシェルを訪れる。ローゼマインがグーテンベルクを連れて工房に向かうと、これまでの上級貴族と全く違うやり方に、ヘンリック(ローゼマインの側近の下級騎士・ダームエルの兄)たちグレッシェルの下級文官は驚く。エーレンフェスト(順位10位の中領地)に戻ったローゼマインは、フーゴとエラ(ローゼマインの専属料理人)の星結びの儀式を行う。

ランプレヒト兄様の結婚

貴族街の星結びの儀式の翌日、ランプレヒト(貴族としてのローゼマインの実兄)から、花嫁について話がしたいと面会依頼が届く。家族会議として開かれることになり、ローゼマインはカルステッド(エルヴィーラの夫・貴族としてのローゼマインの父でエーレンフェストの騎士団長)の家に里帰りする。花嫁はアウブ(領主)・アーレンスバッハの弟の第三夫人の娘のアウレーリアで、エルヴィーラは2人のなれそめなどをランプレヒトから聞き出す。旧ヴェローニカ派がアウレーリアに近づくことを警戒するエルヴィーラはローゼマインに、アウレーリアに接触しないよう指示する。次の日のお茶会で、エルヴィーラはダームエルの相手を探すのが難しい理由をローゼマインに話す。

境界線上の結婚式

ランプレヒトとアウレーリア、フロイデンとベティーナの結婚式が、アーレンスバッハとエーレンフェストそれぞれの領主一族も参加して、境界線上で行われる。これまでアーレンスバッハ出身の領主夫人ガブリエーレの娘ヴェローニカの派閥が最大の力を誇ってきたが、ジルヴェスター(エーレンフェストの領主でローゼマインの養父)が前神殿長とヴェローニカの犯した罪を断罪したことで、アーレンスバッハから距離を取ろうとしているエーレンフェストを牽制するのが狙いだろうと、フェルディナンドは結婚の事情をローゼマインに話す。レッサーバス(ローゼマインが使う乗り込み型の騎獣)で境界線に移動したローゼマインは、神殿長として、星結びの儀式で新郎新婦に祝福を与える。

染色コンペの打ち合わせ

星結びの儀式を終えたローゼマインは、旧ヴェローニカ派の子供たちの奮闘で、襲撃が未然に防がれていたことを知り、功に報い、子供たちを取り込むために、契約魔術を変更して魔力圧縮方法を教えることができないか、フェルディナンドに要望する。エルヴィーラやブリュンヒルデも同席して、ギルベルタ商会と染色コンペの打ち合わせを行ったローゼマインは、参加する職人の一覧表の中にエーファ(ローゼマインの本当の母親)の名前を見つけ、テンションが上がる。話し合いの結果、染色関係の称号が「ルネッサンス」に決まる。話し合いの後、エルヴィーラはローゼマインとフェルディナンドに、アウレーリアから聞いたアーレンスバッハの領主候補が激減した事情を話す。

染色コンペ

夏の成人式と秋の洗礼式を終えたローゼマインは、染色コンペのため城に移動する。エーレンフェストになじむつもりがないように見える、とエルヴィーラに言われても、目が吊り気味できつい顔立ちのために誤解されることを恐れて、ヴェールを脱ごうとしないアウレーリアに、ローゼマインは、染色コンペで気に入った布を選んで新しくヴェールを作ることを提案する。お茶会が始まり、アウレーリアの話でアーレンスバッハでは魚が食べられること、魚を時を止める魔術具に入れて持ってきていることを聞いたローゼマインは、魚が食べられると内心大興奮し、捨てないよう約束を取り付ける。並べられた布からエーファが作った布を探すローゼマインだったが、3つの候補に絞り込んだものの、専属のルネッサンスを選ぶことができないまま、コンペは終了する。

染色コンペの後と収穫祭

翌日、ローゼマインは衣装の採寸と発注のためギルベルタ商会を呼び、3つの候補の中からブリュンヒルデが選んだ布で衣装を作ることにするが、その布がエーファが作ったものだと知り、自分の目で選べなかったことにガッカリする。神殿に戻って、フェルディナンドに魚で新しい料理を作りたいと直訴するが、却下される。不在の間の側近たちの仕事を見繕って指示し、ローゼマインは収穫祭に出発する。最初に着いたハッセでの収穫祭の後、ローゼマインは護衛についているギュンター(ローゼマインの本当の父親)たち兵士から、下町の変化について話を聞く。

収穫祭とグレッシェル

各地を回って神殿に戻ったローゼマインは、エルヴィーラに連絡をとり、準備を整えてグレッシェルに向かうが、広場の人の少なさに収穫祭を街全体で祝う他の領地との違いを感じる。洗礼式で子供たちに祝福を与え、儀式を終えたローゼマインは、グーテンベルクたちから印刷業と製紙業の進展状況について話を聞く。

グレッシェルの貴族と印刷業

ギーベとの夕食の後、文官たちから印刷業と製紙業についての報告が行われる。その内容がグーテンベルクからの報告とずいぶん違うことにローゼマインは気づき、脇にいたハルトムートはグーテンベルクの報告内容を簡潔に話す。ギーベが平民は無能なのかと不快そうに顔をしかめるが、ローゼマインは貴族と平民の中を取り持とうと、平民を擁護し、オブラートに包みながら問題点が平民のせいでないことを話す。終わった後、文官の報告の方が重用されるべきではと疑問を口にするブリュンヒルデに、それがグレッシェル貴族の平均的な考え方であれば、印刷業を取り入れない方が良かったかもしれないとローゼマインが話すと、ブリュンヒルデは、成功させなければとの焦りから、真剣にアドバイスを求め、ローゼマインは下町に目を向けず、知ろうともしないのでは失敗すると率直に話す。翌日、説得されたのか、ギーベ・グレッシェルは鍛冶職人をエーレンフェストに派遣することを申し出る。

図書館計画と衣装の完成

神殿に戻ったローゼマインは、グレッシェルの印刷業が軌道に乗ったら、図書館を建設したいとハルトムートやフィリーネに話す。熱く野望を語るが、フェルディナンドの許可が必要、との言葉に冷静になり、許可をもぎとるための図書館計画を練り始めるが、報告を受けたフェルディナンドに現実味がないとばっさり切り捨てられる。リーゼレータ(側近の中級側仕え見習い5年生)たちが持ってきたシュバルツとヴァイス(図書館の魔術具)の衣装を、ローゼマインはフェルディナンドに見せ、合格を得る。その3日後、シュバルツたちの衣装が完成する。

冬の社交界の始まり(二年生)

数日後、ギルベルタ商会が、完成した髪飾りと図書委員の腕章を持ってくる。図書委員の腕章に嬉々とするローゼマインだったが、魔力が溢れ出そうになり、ハルトムートに止められる。冬の社交界が近づき、ローゼマインは城に戻り、冬の社交界の始まりの洗礼式とお披露目を迎える。

貴族院へ出発

冬の社交界が始まり、子供部屋で過ごすようになったローゼマインは、領主候補生がいなくなった時の子供部屋の学習計画について話し合いをしたりして時間を過ごし、保護者との夕食では、将来の客層の開発のため印刷した騎士物語や恋物語などを貴族院に持ち込む許可をもらい、旧ヴェローニカ派の子供たちが魔力圧縮方法を教わるには領主一族に名を捧げることを条件にしたことを聞かされる。そして貴族院への出発の日がやってくる。

入寮と忠誠

貴族院のエーレンフェスト寮に着いたローゼマインは、2年生の調合に必要な素材を採取し、翌日の新入生の歓迎について話し合う。翌日、新入生もやってきて、ローゼマインは旧ヴェローニカ派の生徒を会議室に集め、襲撃の可能性を知らせてくれたことに対し労いの言葉をかける。ローデリヒ(中級騎士見習い2年生)は、魔力圧縮方法を教わるため、ローゼマインに名を捧げると立ち上がるが、ローゼマイン、そしてマティアスが勢いで決めて良いことではないと説得する。

ヒルシュールの来訪と進級式

ハルトムートたち側近や、ヴィルフリート(ローゼマインの義兄で同じ領主候補生2年生)シャルロッテ(ローゼマインの義妹で領主候補生1年生)から、名を捧げることについて話を聞くローゼマインは、受け入れるのは自分には少し難しいと思う。翌日、寮にいない寮監のヒルシュールがやってきて、新入生に寮のことなどを説明する。ヒルシュールの求めでシュバルツたちの衣装を見せている間、ローゼマインは図書館の司書のソランジュに連絡をとり、衣装を持っていく時期を確認する。進級式と親睦会の日、ヴィルフリートたちと講堂に向かったローゼマインは、王族が座る席に小さい人影が座っているのを見る。

親睦会(二年生)

その人影は、洗礼式を終えたばかりのヒルデブラント(中央の第三王子)だった。貴族院には必ず王族が在籍しなければならず、卒業したばかりのアナスタージウス(中央の第二王子)が忙しいため、入学前のヒルデブラントが派遣されたのだという。文官からの説明の後、ローゼマインたちは王子や他領の領主候補生に挨拶に回る。ヒルデブラントに祝福を与え、ハンネローネには本を貸してくれたお礼を言うが、順位が近い領地では、14位から10位に上がったエーレンフェストを警戒しているのを感じる。

エピローグ

両親の指示で、貴族院に滞在することになったヒルデブラントは、未知の場所に行くことに好奇心を持って貴族院に向かう。筆頭側仕えのアルトゥールの補佐を受け、頭が真っ白になったときのためにテーブルの下に文官のダンクマールが隠れて、ヒルデブラントは親睦会に臨む。クラッセンブルク、ダンケルフェルガー、ドレヴァンヒェルと上位の領地から順に、領主候補生の挨拶を受けていくが、小さいローゼマインとそれより身長の高いシャルロッテを取り違えたことに気づかないまま、親睦会を終える。

 

ここまでが本編。その後に、番外編の書き下ろしが3編。

城でのお留守番

境界線での結婚式の前日、城でお留守番をするフィリーネは、同じくローゼマインの側近のブリュンヒルデ、ユーディット(中級騎士見習い3年生)、リーゼレータ、ダームエルと過ごす。そこにローデリヒが手紙を渡しにやってくる。それは、襲撃計画を知らせるものだった。それを見せると、ダームエルは手紙を握り部屋を飛び出していくが、事なきを得て戻ってくる。手紙が恋文でなかったことを慰めるダームエルに、ダームエルに恋しているフィリーネは、自分が成人するまで恋人も結婚もできなければいい、と思いをぶつけるが、ダームエルにはその意味が全く通じない。

分かれ道

ランプレヒトと結婚したアウレーリア。かつてアーレンスバッハからエーレンフェストに嫁いだガブリエーレが謀をしている時の顔にそっくりだと言われ、ヴェールが手放せなくなっていた。ランプレヒトは今の主流である母エルヴィーラの派閥に入る方が生きやすいと考えるが、選べる状況ならば自分で選んだ方が良い、と温かい言葉をかける。エルヴィーラからの誘いで染色コンペに参加したアウレーリアは、エルヴィーラの派閥に入ることを選ぶ。

専属への道

染色コンペが行われることを聞いたエーファは、マイン(貴族になる前のローゼマインの本名)に自力で会えるようになるのではと、専属の職人となるために新しい染め方を使ってマインに一番合う布を作ろうと、トゥーリ(エーファの娘でマインの姉。ローゼマインの専属の髪飾り職人)の協力も得ながら、工房の同僚職人と競い合い、染色コンペに布を出す。最終選考に残り、冬の衣装の服として注文を受けたものの、専属の称号をもらうことはできなかったエーファだったが、次こそは選ばれてみせると決意する。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「恋バナ希望」「本以外の会話」「聖女とは」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

前巻のエピローグの記述から、何かフェルディナンドをめぐって大きな展開があるのだろうと思って読みましたが、そういう面では何も起こらず、グラッシェルでの印刷業の進展、ランプレヒトの結婚、染色コンペ、2年生に向けた準備、といったあたりが中心の、比較的起伏の少ない展開でしたが、最後に第三王子のヒルデブラントも登場して、次巻以降、意外な展開があるのかもしれません。