鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部 貴族院の自称図書委員Ⅵ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第四部「貴族院の自称図書委員Ⅵ」を読みました。

ローゼマインが貴族院に進んでからを描く第4部の第6巻。第5巻に続いて読んでみました。

 

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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進級式と親睦会を終えた貴族院で、ローゼマインの新たな一年が本格化する。早速始まった講義では、エーレンフェストの二年生の「全員一発合格」を目指したり、図書委員の仲間探しに奔走!昨年以上に次々と騒動を巻き起こす中、院内の教師や上位領地の領主候補生、中央の第三王子とも接触が増え、領地間の均衡に目を配る保護者の頭を悩ませる。

だが、我が道を突き進むローゼマインは止まらない!夢中で駆け抜けながら、エーレンフェストの採取場所に出現した魔獣ターニスベファレンの討伐に挑むのだった。

本当は読書したいだけなのに、厄介事が止まらないビブリア・ファンタジー最新刊!

書き下ろしSS×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた19節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に番外編が2編、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

プロローグ

貴族院に来たシャルロッテ(ローゼマインの義妹の領主候補生1年生)。親睦会を終えて寮に戻ると、筆頭側仕えのヴァネッサ、側近のマリアンネ(上級文官見習い3年生)が出迎える。実兄ヴィルフリート(領主候補生2年生)の側近のイグナーツ(上級文官見習い3年生)と義姉のローゼマイン(領主候補生2年生)の側近のハルトムート(上級文官見習い6年生)が書いた報告書を見て、ローゼマイン(主人公で領主候補生2年生)と自分との違いをヒシヒシと感じるシャルロッテは、兄や姉と比べて恥ずかしくないよう努力しなければと気合を入れる。

講義の始まり

講義が始まり、エーレンフェスト(ローゼマインたちが暮らす順位10位の中領地)の2年生たちは、全員一発合格を高得点で、との目標達成に向けて、歴史、法律と次々に合格する。ドレヴァンヒェル(順位3位の大領地)も全員合格し、ヴィルフリートは仲良くなったオルトヴィーン(ドレヴァンヒェルの領主候補生2年生)と互いの健闘を称え合う。午後の実技、調合の基礎で求婚用の魔石を作製するが、女の子たちの目の輝きに、恋物語の潜在顧客数を見てとったローゼマインは喜ぶ。

図書委員GET!

次の日の座学も、算術、神学、魔術と全員合格を果たし、午後の音楽の実技で、ローゼマインは、音楽の教師パウリーネからお茶会に誘われる。ハンネローネ(順位2位の大領地・ダンケルフェルガーの領主候補生2年生)からシュバルツとヴァイス(図書館の魔術具)をめぐる騒動について謝罪されたローゼマインは、ハンネローネを図書委員に誘い、ロジー(ローゼマインの専属楽師)が弾く曲をハンネローネの楽師に聞かせるため、お茶会を開くことになる。

図書館登録と魔力供給

昼休み、ローゼマインは1年生の図書館登録に図書館に向かい、シュバルツとヴァイスに魔力供給を行うと、シュバルツたちに閲覧室の奥に案内され、言われるままに英知の女神メスティオノーラの石像をなでると、大量の魔力が一度に吸い出される。シュバルツたちは、「じじさま、よろこぶ」と言い、じじさまは「ふるくてえらい」と話す。ソランジュ(図書館司書の中級貴族)にハンネローネが一緒に図書委員をする予定と話すと、3人でお茶会をすることになる。

シュタープの変形

午後の実技、シュタープを武器と楯に変形させる課題が出されるが、ローゼマインは、神殿に飾られている神具の楯が円形だったため、見本として示された四角い楯を作るのに苦労するが、変形させた神具の楯で合格する。武器も神具の槍を出して合格するが、自分の身を守る武器に何がいいか考えていると、シュタープは水鉄砲に変形する。

武器の強化

ローゼマインが出した武器に期待する教師ルーフェン(ダンケルフェルガーの寮監)は、水鉄砲を打たせるが、水が飛び出すだけなのにがっかりする。寮に戻ったローゼマインは、自室の寝台で水鉄砲を強化できないか考えていると、撃ったら矢が飛んでいく鉄砲になって、寝台の天蓋を穴だらけにしてしまう。翌朝、その武器を披露するためエーレンフェストの採取場所に行き、魔獣に向けて水鉄砲を撃つと、飛び出した液体が矢の形に変わり、魔獣に命中するが、怪我をさせただけに終わる。

初日全員合格

次の座学で、文学、社会学の試験に臨むエーレンフェストの2年生たち。社会学の試験では、ローゼマインを何かと目の敵にしている教師フラウレルム(順位6位の大領地・アーレンスバッハの寮監)が、エーレンフェストの初日全員合格を阻むために、前年の講義内容にはなかった内容を試験に出すが、昔の講義内容も参照して参考書を作って勉強していたエーレンフェストは全員合格を果たすが、オルトヴィーンからお茶会に招く姉・アドルフィー(ドレヴァンヒェルの領主候補生6年生)からの伝言を伝えられる。

調合・回復薬

午後の実技で、回復薬の調合を行うローゼマインは、フェルディナンド(神官長)から教えてもらっていた時間短縮の魔法陣を使って回復薬を作り、教師ヒルシュール(エーレンフェストの寮監)から合格をもらう。夕食後、領主候補生とその側近が集まり、ドレヴァンヒェル対策を始め、社交に関する質問状を作成し、手分けしてエーレンフェストに送る。

ローデリヒの願い

翌日、午前の実技を終えたローゼマインは、午後、フィリーネ(側近で下級文官見習い2年生)とローデリヒ(中級文官見習い2年生)の3人で文官コースの予習を始める。ローデリヒから話がある、時間をいただけないか、と言われたローゼマインは、個室で、ローデリヒがローゼマインに名を捧げたいと思うようになった経緯などの話を聞き、その願いを受けたいと思うと答え、家族と離れることを望むローデリヒに、冬の社交界で情報を得てから判断するように伝える。

奉納舞とオルドナンツの調合

翌日の休日、側仕えたちの集まりから帰ってきた側近のブリュンヒルデ(上級側仕え見習い4年生)とリーゼレータ(中級側仕え見習い5年生)から、音楽の教師からのお茶会の招待状を渡される。シャルロッテのために社交にも力を注ぐことを決意したローゼマインは、側仕えたちとお茶会に向けた打ち合わせを始める。翌日、領主候補生が全学年集まる奉納舞の稽古に行ったローゼマインは、休憩時間にアドルフィーネに声をかけられ、その後にはディートリンデ(アーレンスバッハの領主候補生5年生)にも声をかけられ、今年も従姉弟同士でお茶会を開きたいと誘われる。翌日の午後、オルドナンツの調合の実技で、ヒルシュールから本で釣られたローゼマインは、助手を務める。

音楽のお茶会と講義終了

音楽の先生方とのお茶会で、ローゼマインは、シャルロッテに言われたとおり、自分が作った曲が中央で広がっているのかを尋ねると、アナスタージウス王子(中央の第二王子)がエグランティー(順位1位の大領地・クラッセンブルクの領主一族)を射止めた曲として、2人の恋物語と共に流行していること、アナスタージウス王子が王位よりもエグランティーヌを求め、2人で王族としてジギスヴァルド王子を支えていくと公言したこと、ジギスヴァルド王子の第一夫人の座にアドルフィーネが就くことが決まったこと、中央の神殿の聖典原理主義者が代替わりに反対していることを教えられる。午後の実技で、ローゼマインは求婚に使う魔石の作製を終え、講義を終了する。

図書委員活動をしたい

翌日、ローゼマインは早速図書館に行こうと意気込むが、お供する側近が揃わないため1日本を読んで過ごすことになる。翌日、ようやく図書館に行ったローゼマインは、シュバルツとヴァイスの着替えの日取りやお茶会についてソランジュに相談し、図書館に必要になる魔術具について質問する。メスティオノーラの石像は、シュバルツとヴァイスよりも古い魔術具らしいこと、図書館には数多くの魔術具があるが、上級貴族がいなくなって引継ぎが完全には行えていないことを聞くと、そこに第三王子のヒルデブラントがやってくる。

ヒルシュール先生の研究室

図書館の魔術具について話を聞くため、ローゼマインはヒルシュールの研究室を訪問すると、フェルディナンドに続くヒルシュールの弟子のライムントがいた。アーレンスバッハの中級文官見習い3年生を弟子にしていることに驚くローゼマインだったが、魔力を節約するために魔法陣を改良するライムントの能力は確かだった。ヒルシュールはエーレンフェストの紙と勘合紙を売ってほしいとローゼマインに懇願するが、ローゼマインはしつこいとシュバルツたちの着替えにお招きしませんよ、と断る。

ヒルシュール先生の弟子

寮に戻ったローゼマインは、ヒルシュールの弟子がアーレンスバッハの文官見習いであることをフェルディナンドに緊急の手紙で報告すると、翌日にフェルディナンドが貴族院に来ることになる。やってきて報告を受けたフェルディナンドは、ライムントと交流を持ちつつ、アーレンスバッハの情報収集のために活用することを決める。フェルディナンドは、夕食を取りながら、ライムントの扱いについてヒルシュールと話す。夕食後、ハルトムートはローデリヒの名を受けるのがいつになるか尋ね、自分が卒業した後の文官見習いを育てる必要があると焦りの色を浮かべる。

シュバルツとヴァイスの着替え

翌日、ローゼマインたちがシュバルツとヴァイスの着替えのために図書館に行くと、ヒルデブラント王子がシュバルツとヴァイスを見にやってくる。ローゼマインはヒルデブラントと会話を交わすが、ヒルデブラントシャルロッテとローゼマインを取り違えていた。ヒルデブラントの側近は、王族の遺物であるシュバルツたちはヒルデブラントが管理すべきと主張するが、ローゼマインが覚悟が必要と語ると、ヒルデブラントは怯み、魔力の供給者として登録することになる。

魔石採集

本好きのお茶会の予定が決定し、招待状を書いて図書館に向かう。ほぼ図書館に日参しているヒルデブラント王子と挨拶し、ソランジュに招待状を渡すと、ソランジュの提案で、協力者となったヒルデブラント王子も招待することになる。図書館を出ると、ライムントがやってきて、フェルディナンドの質問状に回答を送ると、新しい研究課題を出して添削してくれるようになったと嬉しそうに話す。質問状はアーレンスバッハの状況を問うもので、なかなか集まらないアーレンスバッハの情報があっさり入手できたことにハルトムートは驚く。休日の土の日、ローデリヒと旧ヴェローニカ派を中心とした騎士見習いたちが魔石を入手するため採集場所に魔獣狩りに出かける。ローデリヒたちを見送ったローゼマインたちは、ヒルデブラント王子をお茶会に誘ったことについてたくさん届いたエーレンフェストからの質問状に回答を書く。そこに、怪我をしたローデリヒが強い魔獣が出たと帰ってきて、ヴィルフリートが騎士見習いたちを率いて救援に向かう。ローデリヒの情報から、魔力で成長する魔獣ターニスベファレンだと気づいたローゼマインは、倒すために必要な闇の神の祝詞で祝福を与えるため、側近のコルネリウス(上級護衛騎士見習い6年生)たちを連れて現地に向かう。

ターニスベファレンの討伐

現地に到着すると、ターニスベファレンは攻撃された魔力でさらに大きくなっていた。ヴィルフリートたちと合流して話を聞くと、トラウゴット(上級騎士見習い4年生)が全力で攻撃して、ターニスベファレンを巨大化させたことがわかる。ローゼマインは、ヴィルフリートたちに闇の神の祝福を得るための祝詞を教え、魔物に関する書物を読み込み特性に詳しい側近のレオノーレ(上級護衛騎士見習い5年生)に指揮をさせてターニスベファレンに立ち向かい、最後はコルネリウスたちの一撃で討伐に成功する。魔獣から素材を採取する中、ローゼマインは、魔力が奪われた採集場所を癒して回復させようと考える。

癒しと救援

採集場所の癒しに向かったローゼマインは、シュタープを癒しに使うフリュートレーネの杖に変化させ、祝詞を唱えて魔力を込めると、緑の光が地面を走り始め、緑に光る魔法陣が出現する。更に魔力を流し込むと、魔法陣が浮かび上がり、その上昇に合わせたように植物が伸びていく。木々がほとんど元通りになると、魔法陣は採集場所の一番上に到達し、一度強い光を放って消え失せる。予想外に魔力を使って無理をしたローゼマインは体調を崩し、寮に戻ろうとすると、そこにルーフェンが中央騎士団を連れてやってくる。ルーフェンは闇の神の祝福を得た武器を使えないはずの学生たちでなぜ倒せたのか疑い、さらに、土地が癒されて草木が完全に元に戻っていることに驚愕するが、ローゼマインは、神殿長として祝福を与えたと説明する。戻ったローゼマインは寝込むが、その間にエーレンフェストに報告がされ、ローゼマインには、王族とのお茶会が終わったらすぐに戻るよう帰還命令が出る。

本好きのお茶会

体調を回復させ、本好きのお茶会の日を迎えたローゼマイン。ロジーナにフェシュピールを弾かせてハンネローネの楽師に聴かせながら、ハンネローネを協力者として登録し、ソランジュ、ヒルデブラントとも会話を楽しむ。借りていたダンケルフェルガーの歴史書を現代語訳したものを確認してもらうためハンネローネに渡し、ハンネローネと本を交換し、ソランジュからは以前の司書が書いた仕事の報告書を貸してもらい、ヒルデブラント王子も何かお帰りの本を用意したいと側仕えのアルトゥールに話すが、アルトゥールが王宮図書館に招待した方が喜ばれるのでは、と答えたところで、ローゼマインは喜びのあまり昏倒する。

帰還

ローゼマインが気がついたら、自分の寝台にいた。再び主催のお茶会で倒れたことに血の気が引くが、ヴィルフリートとシャルロッテヒルデブラントたちをなだめたり説明したりして事後処理をしてくれたことを聞かされる。ライムントとヒルシュールから面会を求められたローゼマインは、翌日に魔力供給に行く図書館で会うことにし、各所へのお詫びと帰還準備に追われる。翌日、図書館に行ったローゼマインはソランジュやヒルデブラントにお詫びし、ヒルシュールとライムントから研究成果の資料などを受け取る。面会を終えたローゼマインは、エーレンフェストに向かう。

エピローグ

ジルヴェスター(エーレンフェストの領主、ジルヴェスターとシャルロッテの実父、ローゼマインの養父)は、毎日届く貴族院からの報告書を側近たちを排してカルステッド(エーレンフェストの騎士団長で、貴族としてのローゼマインの父)、フェルディナンド(ジルヴェスターの異母弟)と読んでいた。貴族院が始まるまでは平穏だった報告書が、講義が始まると、様々な騒動が報告されるようになる。ついにヒルデブラントとの接触が報告され、頭を抱える。ターニスベファレン討伐の報告を受けて、ローゼマインに帰還命令を出すが、王族とのお茶会の報告を受けて、エーレンフェストに滞在させる期間を奉納式が終わるまで延長することにする。ジルヴェスターは、なぜローゼマインはここまで問題を起こせるのだ?と嘆く。

 

ここまでが本編。その後に、番外編の書き下ろしが2編。

譲れない決意

ローゼマインから名捧げを受け入れてくれることになり、ローデリヒの胸の内に安堵と感動が広がる。コルネリウスは考え直してはどうかと言うが、ハルトムートは、自分の卒業後の側近の文官見習いの人材育成が必要だと受け入れる。ハルトムートの助言で、マティアス(中級騎士見習い4年生)やラウレンツ(中級騎士見習い3年生)など旧ヴェローニカ派の護衛騎士見習いを誘って魔石採集に向かう。

旧ベルケシュトック寮の探索

ローゼマインたちがターニスベファレンを討伐した後、廃された大領地の旧ベルケシュトックに生息する魔獣であることから、王の許可を得て、中央騎士団の立会いの下、旧ベルケシュトック寮を探索することになる。ルーフェンがヒルシュールと寮に向かうと、フラウレルムがヴァッシェン(洗浄の魔術)を使って揉め事になっていた。ヒルシュールと組になって寮を探索するルーフェンは、ターニスベファレンの出現はエーレンフェストに恨みを持つ者の犯行ではないかとヒルシュールから聞かされる。探索終了後、ルーフェンは、共に探索したグンドルフ(ドレヴァンヒェルの寮監で文官コースの教師)から、転移陣に使用された痕跡があった、ローゼマインの尋問会には王の側近に出席いたたいた方がいいと聞かされる。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「さわるな危険」「愛の大喜利」「優秀」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

ローゼマインが、ハンネローネやヒルデブラント王子を図書委員に巻き込み、保護者たちを悩ませる騒動事が増えていきます。闇の神の祝福を得るための祝詞を唱えてターニスベファレンを討伐したローゼマインでしたが、学生の使用が禁じられた黒の武器を使ったことで、尋問会が行われることになってしまいます。次巻以降、さらに騒動が大きくなりそうな感じです。