鷺の停車場

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バッハ「ヨハネ受難曲」

かなり久しぶりですが、クラシックのCDを。

J.S.バッハヨハネ受難曲 BWV245
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団
ニック・プリッチャード(テノール:福音史家)
ウィリアム・トーマス(バス:イエス
アレックス・アッシュワース(バス・バリトン:ピラト、バス・アリア)
ジュリア・ドイル(ソプラノ:アリア)
アレクサンダー・チャンス(カウンターテノール:アルト・アリア)
ピーター・ダヴォレン(テノール:アリア)
マイケル・ラファティバリトン:ペテロ)
アリソン・ポンスフォード=ヒル(ソプラノ:下女)
ガレス・トレセダー(テノール:下僕Ⅰ)
ジョナサン・ハンレー(テノール:下僕Ⅱ)
(録音:2021年4月2日 オックスフォード、シェルドニアン・シアター)

 

バッハの宗教曲といえば、なんといっても「マタイ受難曲」が名曲として名高いですが、それに次いで有名な曲だろうと思います。1727年に初演されたマタイ受難曲に先立つこと3年、1724年にライプツィヒで初演されています。ということは、作曲されてほぼ300年ということになります。

全体は、第1曲~第14曲が第1部、第15曲~第40曲が第2部とされていますが、CDのブックレット(解説)によれば、ガーディナーは、第1曲~第5曲を「プロローグ:ゲッセマネの園」、第6曲~第14曲を「第1場:最高法院の試練(大祭司の前に立つイエス)」、第16曲~第23曲を「第2場:ローマ総督府での試練(ピラトの前のイエス)」、第24曲~第40曲を「第3場:ゴルゴダの丘におけるイエス磔刑、死と埋葬」と区分しています。

手元に、古典的名盤ともいうべきカール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団・合唱団のCDもあるのですが、そのブックレットでは、第1曲~第7曲を「裏切と捕縛」、第8曲~第14曲を「否認」、第15曲~第20曲を「審問と鞭打」、第21曲~第26曲を「判決と十字架」、第27曲~第32曲を「イエスの死」、第33曲~第40曲を「埋葬」と区分しています。

なお、ガーディナーのCDは1974年に出版された新バッハ全集版、リヒターのCDは1863年に出版された旧バッハ全集版をベースに演奏されているようです。

J.S.バッハヨハネ受難曲 BWV245
カール・リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団ミュンヘン・バッハ合唱団
エルンスト・ヘフリガー(テノール:福音史家、下役、アリア)
ヘルマン・プライバリトン:イエス
イヴリン・リアー(ソプラノ:下女、アリア)
ヘルタ・テッパー(アルト:アリア)
キート・エンゲン(バス:ペテロ、ピラト、アリア)
(録音:1964年2月 ミュンヘンヘラクレスザール)

 

何より、第1曲のコラール「主、われらを統べ治め」(Herr,unser Herrscher)の開始が衝撃的で、いきなり試練の場に放り込まれたような感覚を覚えます。その直後、すぐにイエスの捕縛の場面に移っていきます。これは、捕縛に至るまでのエピソードを順を追って展開している「マタイ受難曲」とは大きく異なるところです。これは、受難曲の基となっている、新約聖書における「マタイによる福音書」と「ヨハネによる福音書」の違いも関係しているのかもしれません。最後の2つのコラール「憩え、安らけく」「ああ主よ、汝の御使いに命じ」も心に響く印象的な曲。

ガーディナーのCDは、1986年、2003年に続いて3回目の録音。ブックレットに掲載されている演奏時の写真を見ると、新型コロナウィルス感染防止対策の観点でしょう、オーケストラ、合唱を含め、少なくとも2mほどのソーシャル・ディスタンスを保って配置されています。そのためか、全体のバランス、ハーモニーといったあたりは、必ずしも十分でない部分があるように感じられます。こうした点については、私自身は未聴ですが、以前の録音の方が完成度は高いのかもしれません。ただ、その若干粗削りなことで、かえって切迫感を高めているようにも感じられました。

リヒターのCDは、彼自身としては唯一の録音。かなり久しぶりに再聴しました。テンポはガーディナー盤よりも全体にゆったりしていますが、合唱の切迫感など、ピンと張った緊張度が感じられる演奏でした。