鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「窓辺にて」

休日の夕方、TOHOシネマズ柏に行きました。


休日とはいえ、夕方17時ごろの時間帯ですが、けっこうお客さんがいました。


この日の上映スケジュール。夕方なので残りの上映回は少ないですが、公開2週目の「すずめの戸締まり」はまだあと5回も上映がありました。既に上映が終わったものも含めると、この日は12作品・15種類の上映、「すずめの戸締まり」が1日14回の上映ということもあって、上映作品数は通常よりもかなり少なめです。

この日観るのは「窓辺にて」(11月4日(金)公開)。全国165館ほどと中規模での公開。映画情報サイトなどの口コミ評価もおおむね高いようなので、行きたいとは思っていましたが、より小規模な公開の他の作品などを優先しているうちに公開3週目となり、1日1回の上映となった映画館が多くなったので、そろそろ行かないと機会を逸してしまうと思い、観に行くことにしました。


上映はこの映画館では一番小さい72+2席のスクリーン7。MX4D上映用のスクリーンですが、キャパが小さいということで、この作品が割り当てられたのでしょう。お客さんは7~8人という感じ。本来は、映画に合わせて揺れたり風が吹いたりするシートなので、通常のシートとは座り心地が違って、最初は違和感があったのですが、じきに気にならなくなりました。


チラシの表裏。

男女の恋愛を描いた映画を数多く撮っている今泉力哉監督の、自身の脚本によるオリジナルラブストーリー。今泉監督としては17本目となる作品だそうですが、私自身は、自宅で観た作品を含めると、「パンとバスと2度目のハツコイ」、「愛がなんだ」、「アイネクライネナハトムジーク」、「街の上で」に続いて5本目となります。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 


フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と…。

 

・・・というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されているキャストは、

  • 市川 茂巳【稲垣 吾郎】:主人公。かつて小説を1冊出したが、それで小説を書くのは止め、以来フリーライターをしている。

  • 市川 紗衣【中村 ゆり】:茂巳の妻で編集者。編集を担当している小説家・荒川円とと浮気している。

  • 久保 留亜【玉城ティナ】:茂巳が文学賞の授賞式で出会った高校生作家。父親はテレビ関係の仕事をしていたが、メンタルにダメージを受け、失踪してしまった。

  • 有坂 正嗣【若葉 竜也】:茂巳の友人。アスリート(おそらくサッカー選手)だが、足の調子が戻らず、引退も考えている。

  • 有坂 ゆきの【志田 未来】:正嗣の妻。幼い娘がいる。

  • 荒川 円【佐々木 詩音】:紗衣が編集を担当している小説家。売れっ子だが、自分の作品に納得できていない。

  • 水木 優二【倉 悠貴】:留亜の彼氏。バイク整備の仕事をしている。

  • 藤沢 なつ【穂志 もえか】:正嗣の浮気相手の若手女性タレント。

  • カワナベ【斉藤 陽一郎】:留亜の父親の兄。テレビ関係の仕事をしていたが、退職して自然の中で暮らしている。

  • 三輪 ハル【松金 よね子】:紗衣の実母。一人暮らしで、茂巳が時々顔を出している。

というもの。(登場人物の説明は加筆しました)

 

ネタばれになりますが、記憶の範囲でもう少し詳しくあらすじを記すと、

 

茂巳は、かつて以前の恋人を書いた「STANDARDS」という小説を出したが、それ以降は小説を書くのをやめ、フリーライターをしていた。
そんな中、取材で訪れた文学賞の授賞式で受賞者の高校生作家・久保留亜の記者会見で、受賞作「ラ・フランス」に惹かれていた茂巳は、その内容について鋭い質問をすると、自分の作品をちゃんと読んだ上での質問だとわかった留亜は、茂巳をホテルの自室に招き入れ、小説のモデルに会いたくないか尋ねる。
会わせてほしいと答えた茂巳を、留亜は、まず彼氏の水木優二に会わせ、さらに伯父のカワナベに会わせる。カワナベの話から、留亜が特殊な家族事情を抱えていることを知る茂巳。茂巳は、カワナベに自分の悩み、妻が編集を担当している荒川と浮気していることを知っているが、妻に怒りが湧かなかったこと、怒りを感じない自分に強くショックを受けたことを話し、自分はどうしたらいいか相談しようとするが、カワナベは、恋愛から逃げた自分にする話ではない、とかわす。
その頃、紗衣に本気で想いを寄せ、また、自分の小説に行き詰まりを感じている荒川は、紗衣にそれらの思いをぶつけ、紗衣は優しく荒川を抱きしめる。
一方、茂巳は、カワナベに相談しかけた話を、友人の有坂正嗣とその妻・ゆきのに相談する。正嗣は直接話してみてはどうかとアドバイスするが、ゆきのは怒りを感じない茂巳に腹を立て、もうお帰りください、と茂巳を追い出す。
茂巳は、紗衣と直接話す機会を作ろうと、仕事が落ち着いたら温泉に行こうと誘うが、紗衣は考えておく、と曖昧な返事をする。
その頃、正嗣も藤沢なつと不倫をしていた。それを知ったゆきのは、茂巳と紗衣のところに相談にやってくる。
荒川の新作が発刊され、紗衣はSNSでの評価を検索する。あまり気にしない方がいいと茂巳が声をかけると、紗衣は茂巳の評価を聞く。茂巳は、自分には必要のない小説だった、と正直な感想を口にすると、紗衣は、荒川が行き詰まり感を抱いていること、自分は彼のためにどうしたらいいのか分からないと悩みを口にする。それをきっかけに、茂巳は、自分の思いを正直に紗衣に話す。
そんなある日、たまたま乗ったタクシーの運転手が、パチンコは一番贅沢、時は金なりと言うが、パチンコは時間とお金を一緒に使うから、と話すのを聞いた茂巳は、初めてパチンコをやってみると、ビギナーズラックで大当たりする。そこに、留亜から呼び出しの電話が入ってくる。留亜は彼氏から別れ話を切り出されて、とても動揺していた。茂巳は求められるままに一晩を一緒に過ごし、留亜の気持ちを落ち着ける。
翌朝、茂巳に荒川から電話が入る。荒川に会うと、荒川は、紗衣は茂巳に自分のことを
小説に書いてほしかったのだと思うと話し、茂巳に小説の原稿を差し出す。それは紗衣を書いた小説だった。そして、荒川は、書いてみて茂巳が小説を書かなかった理由がわかった、書いてしまうと過去の人になってしまう、紗衣が過去の人になってしまったのがとても悲しいと語る。
荒川の小説は出版され、高い評価を得る。紗衣と離婚した茂巳は、水木から呼び出されて喫茶店で会う。水木は、久々に留亜から連絡が入って、これを読めと渡されたと荒川の小説を出す。茂巳がその感想を聞くと、水木は、茂巳をモデルにした登場人物のことを、目の前の茂巳が本人とは知らずに散々に貶し、留亜がこれを読ませたのは、よりを戻す気があるからかと茂巳に尋ねる。茂巳がそうではないかと答えると、水木は喜んで留亜に電話をかけようと店の外に出る。

 

・・・というもの。

 

不倫が重要な要素になっていますが、修羅場が訪れるわけではなく、淡々と静かに時間が流れていく不思議な作品。ところどころに挿入される留亜の小説の一節の朗読や光を効果的に使った映像も印象的でした。

映画の大部分は、正嗣と茂巳、留亜と茂巳、正嗣となつ、紗衣と茂巳、荒川と紗衣、荒川と茂巳、水木と茂巳といったように、喫茶店やホテル、家などでの2人の会話となっていて、その会話のシーンが積み重なって作品を織り上げている会話劇ともいえます。本編で140分を超える上映時間で、長回しのシーンもあったりして、退屈に思う人も確実にいると思いますが、私自身は、この静かで不思議な空気感に引き込まれ、上映時間の長さを感じませんでした。