鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部 女神の化身Ⅶ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第五部「女神の化身Ⅶ」を読みました。

ローゼマインの後見人だったフェルディナンドが結婚のためアーレンスバッハに旅立った後を描く第5部の第7巻で、2022年1月に刊行されています。第6巻に続いて読んでみました。

 

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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フェルディナンドの脳裏に、霧のような不安が濃さを増していく。――嫌な予感がする。
一方、中央への移動準備を続けるローゼマインは冬の支度に追われていた。洗礼式、貴族院四年生の始まり、親睦会と忙しい。奉納式を終え、魔力供給をしている最中、彼女は貴族院から突然姿を消した。
移動した先に出現するのは巨大図書館、始まりの庭、育成の神アーンヴァックス。その力でローゼマインが急成長!身長が伸び、年相応の女性に変貌する。だが、それは急変する事態の始まりに過ぎなかった。
ゲオルギーネとの戦いに備え、エーレンフェストの防衛計画が進められる中、アーレンスバッハで事件が勃発し……。諦めムードの周囲に対して、聖女が下した決断とは?
「何かが起こっても、わたくしが守ります」

書下ろし短編×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた18節からなり、巻末に番外編の短編が3編、著者によるあとがきの後にはイラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

フェルディナンド(ジルヴェスターの異母弟で元神官長。ローゼマインの後見人だったが、王命により、順位6位の大領地・アーレンスバッハの領主候補生ディートリンデの婚約者となった)は、ローゼマイン(主人公。順位8位の中領地・エーレンフェストの領主候補生4年生で神殿長。1年後に王族の養女となることが決まっている)から贈られてきた料理でティーツィア(順位3位の大領地・ドレヴァンヒェルから養子に入ったアーレンスバッハの領主候補生)をもてなし、ランツェナーヴェ(エーレンフェストが属するユルゲンシュミットの隣国)の館でのディートリンデ(アーレンスバッハの領主一族で、ヴィルフリートの従姉)とレオンツィオ(ランツェナーヴェからアーレンスバッハにやってきた使者で、キアッフレード王の孫)の様子を聞き出し、レオンツィオとラオブルート(中央の騎士団長)が親しいことを知る。部屋に戻ってローゼマインからの手紙を読むフェルディナンドは、ローゼマインが何かを隠していると察する。

ディルクとベルトラムの洗礼式

冬支度を進め、貴族院に向かう準備を行う中、孤児院から貴族となるディルクとベルトラムの洗礼式を迎える。

冬の子供部屋と貴族院の始まり

冬の社交界が始まり、未成年の子供たちは子供部屋で過ごすことになる。ローゼマインは、旧ヴェローニカ(ジルヴェスターの母親で、現在は幽閉中)派の子供たちが仲間外れにされないよう気を配るが、子供部屋の雰囲気は予想以上に良く、ヴィルフリート(ジルヴェスターの長男のエーレンフェストの領主候補生4年生で、ローゼマインの義兄。ローゼマインの婚約者だったが、ローゼマインの中央行きにより婚約解消が決まっている)シャルロッテ(ジルヴェスターの娘のエーレンフェストの領主候補生3年生で、ローゼマインの義妹)は安堵し、メルヒオール(ジルヴェスターの次男で、ローゼマインの義弟。ローゼマインの成人後は神殿長職を引き継ぐことになっている)は喜ぶ。
ローゼマインは、リーゼレータ(ローゼマインの側近の中級側仕え)ブリュンヒルデ(ローゼマインの側近だった上級側仕え見習い6年生。ジルヴェスターの第二夫人として婚約し、貴族院でだけローゼマインの側近を務める)、グレーティア(ローゼマインに名を捧げた側近の中級側仕え見習い5年生)たちと貴族院に向かい、ベルティルデ(上級側仕え見習い1年生で、ブリュンヒルデの妹)を1年だけ側近として召し上げることを決める。講義で使うための素材を収集するため外に出たローゼマインは、上空に選別の魔法陣が浮かんでいることに気づく。

親睦会(四年)

進級式が終わり、親睦会でローゼマインたちは、王族のヒルデブラント(中央の第三王子)や、ジャンシアーヌ(順位1位の大領地・クラッセンブルクの領主候補生1年生)、ハンネローネ(ローゼマインの図書委員仲間で、順位2位の大領地・ダンケルフェルガーの領主候補生4年生)、オルトヴィーン(順位3位の大領地・ドレヴァンヒェルの領主候補生4年生)たち他領の貴族と挨拶を交わす。寮に戻ったローゼマインは、クラッセンブルクとの共同研究で行う奉納式について、ハルトムート(ローゼマインに名を捧げた側近の上級文官で神官長)、ヴィルフリート、シャルロッテたちを打ち合わせを行う。

初週の講義

貴族院での講義が始まり、ローゼマインは順調に合格を重ねていく。エグランティー(中央の第二王子・アナスタージウスの第一夫人で貴族院の教師。順位1位の大領地・クラッセンブルクの元領主一族)の講義の後、ローゼマインはエグランティーヌに奉納式で何かが起こるかもしれないと伝える。

貴族院の奉納式

奉納式を翌日に控え、クラッセンブルクから共同研究について話がしたいと申し出が入り、ローゼマインたちは、奉納式の当日、顔合わせの場を設けて打ち合わせる。儀式を見届けたいとイマヌエル(中央神殿の神官長)がやってくるが、中央神殿の青色神官には魔力が足りず危険だと断り、奉納式を行う。集まった魔力を分けてもらい、オルタンシア貴族院の図書館の司書。クラッセンブルクから中央に移った上級貴族で、中央の騎士団長・ラオブルートの妻)が不在で魔力が不足する図書館に運ぶ途中、ローゼマインは選別の魔法陣が強い光を放っていることに気づく。図書館に行くと、シュバルツとヴァイス(図書館の管理を手伝う魔術具)が「じじさま」への魔力供給を求められ、2階の閲覧室の奥にあるメスティオノーラ(英知の女神)の像が手にしているグルトリスハイト(本来はツェントになるために必要とされる古の聖典の魔石に手を触れると、ローゼマインの脳裏に魔法陣がくっきりと浮かび、目を開けると真っ暗な空間で1人で立っていた。

じじさまとの対面

ローゼマインが床に手を触れると、魔力の線が延び広がっていくと、巨大図書館の風景になっていく。ローゼマインは狂喜して本棚に触れようとするが、触れることができず落胆する。そこに金色のシュミル(貴族に人気の可愛らしい魔獣)が現れ、ここは来訪者の望みを映す場所だと答え、ローゼマインを7つの魔石が付いた扉に連れていく。資格があれば開く、と言われ、ローゼマインが扉に触れると、扉が開く。ローゼマインが騎獣に乗って扉の中を進むと、始まりの庭貴族院で学生たちがシュタープ(自分の魔力を効率よく使うための道具)を得るための魔石を手に入れる場所)に出る。すると、大木がゆっくりと人の姿に変わり、其方、ずいぶんと器が縮んでいるではないか、と語り、育成の神・アーンヴァックスに頼んでローゼマインを成長させる。急激に成長する身体に、ローゼマインは衣装を脱ぎ、靴下を切り裂いたりして何とか対応する。シュタープを出して祈りを捧げよ、との言葉に、ローゼマインがシュタープを出すと、7つの石板が現れ、光の柱に変化する。ローゼマインは、言われるがままにその場に跪き、祈りを捧げる。

メスティオノーラの書

すると、ローゼマインを取り囲む7つの光が空に上がっていき、その直後、光とともに知識の奔流が流し込まれてくる。抗うな、すべて受け入れよ、との言葉に、流れ込んでくる知識をできるだけ多く受け入れようと受け止める。その途中、ローゼマインはシュバルツとヴァイスが「じじさま」と呼んでいたその人が命の神と土の女神をくっつけた元命の眷属神・エアヴェルミーンだとわかる。神話や神殿関係の知識の後には、歴代ツェント(中央の王)にまつわる知識が流れ込んでくるが、なぜか穴あきになった状態で流れ込んでくる。知識の奔流が終わり、ローゼマインが穴だらけ知識であることに不満を漏らすと、エアヴェルミーンは、以前の記憶と合わせればほぼ全て手に入れているであろうと語り、以前に正規ではないやり方で侵入してきた者について話す。ローゼマインは、それがフェルディナンドであること、そしてその本来の名がクインタであることを知る。エアヴェルミーンは、フェルディナンドを殺し、その魔石から全ての知識を得れば、完全無欠の知識を持つツェントとなれると語り、大木に戻っていく。

帰ってきたわたし

ローゼマインが始まりの庭を出ると、王族でなければ開けることができない、講堂の奥の最奥の間にある祭壇の上だった。時間がわからないローゼマインは、リーゼレータに王族に連絡して開けてもらうようオルドナンツ(通信用の魔術具)を飛ばす。待っている間、シュタープをメスティオノーラの書に変形させ、流れ込んだ知識を読むローゼマインは、ゲオルギーネ(アーレンスバッハの第一夫人でジルヴェスターの姉)がどうやってエーレンフェストを襲撃しようとしているのかに気づく。そうしているうちに、礼拝堂の扉が開き、ジギスヴァルト(中央の第一王子)ヒルデブラント、そしてローゼマインの側近たちが入ってくる。ローゼマインはゲオルギーネの襲撃について早くジルヴェスター(エーレンフェストの領主で、ローゼマインの養父)に伝えなければと、許しを得て寮に戻ると、コルネリウス(貴族としてのローゼマインの兄で、側近の上級護衛騎士)やリーゼレータから、季節1つ分が過ぎ卒業式も終わっていること、不在の間、ハルトムートが毎日うっとりした顔で今日もローゼマイン様が成長されていると実況していたこと、ローゼマインは臥せっていることにして貴族院を終えたことなどを聞かされる。翌日、エーレンフェストに戻ると、出迎えたボニファティウス(ジルヴェスターの伯父・カルステッドの父で、貴族としてのローゼマインの祖父)、ジルヴェスター、フロレンツィア(ジルヴェスターの第一夫人で、貴族としてのローゼマインの養母)たちは、ローゼマインの急激な成長ぶりに驚く。

礎の魔術

領主執務室に到着したローゼマインはジルヴェスターに、各領地の礎は神殿の礼拝室の真下にあること、神殿長が継承する聖典の鍵こそが神殿から礎に向かうための扉を開けられる鍵であること、ゲオルギーネが神殿側の入口を狙っていると考えられることを話し、対策をとることを促す。ジルヴェスターは、ローゼマインの情報に感謝し、フェルディナンドが本館に居室を得る前に勝負をかけてくるだろう、春の祈念式の時期が一番怪しい、と語る。

聖典の鍵

ローゼマインは急いで神殿に戻り、フラン(神殿でのローゼマインの筆頭側仕え)聖典の鍵を出してもらい、ダームエル(ローゼマインの側近の下級護衛騎士)とアンゲリカ(ローゼマインの側近の中級護衛騎士でリーゼレータの姉)には、下町の門を回って銀の布(ランツェナーヴェで作られている魔力を通さない布)をまとっている者がいないか注意するよう兵士たちに伝えるよう指示する。隠し部屋で聖典の鍵を確認すると、それはエーレンフェストの鍵ではなく、アーレンスバッハの鍵にすり替えられていた。ローゼマインはエーレンフェストの鍵はとっくにゲオルギーネの手に渡っている、ゲオルギーネはアウブ(各領の領主)・エーレンフェストになることではなく、エーレンフェストを壊すことを狙っているのではないかと考える。

採寸と焦燥

城に戻ったローゼマインは、オティーリエ(ローゼマインの筆頭側仕え)やリーゼレータたちと全て作り直しが必要になった衣装のデザインなどについて話し合う。翌日、鍵のことを早くジルヴェスターに伝えなければという焦燥感に包まれたまま、ローゼマイン、フロレンツィア、シャルロッテ、エルヴィーラ(エーレンフェストの騎士団長・カルステッドの第一夫人で、コルネリウスの母。貴族としてのローゼマインの母で、印刷関係事業を文官として取り仕切っている)ブリュンヒルデの専属針子を集めて、一斉に春と夏の衣装の注文を行い、トゥーリ(マイン(ローゼマインが貴族になる前の本来の名前)の姉で、ローゼマインの専属の髪飾り職人)もやってくる。採寸やデザインの決定は一日仕事となり、ローゼマインはぐったりする。

守る方法

夕食後、ようやくジルヴェスターに面会できたローゼマインが鍵がすり替えられていたことを伝えると、ジルヴェスターは、アーレンスバッハの鍵がここにあればいくらでも罪を被せられると話す。ローゼマインは早めに王の養女となり、ツェントになれれば、色々な手を打てると提案するが、ジルヴェスターは、ツェントの力はユルゲンシュミット全体を守るためにある、エーレンフェストを守るためにツェントになるのは違うと諭し、後先を考えずに潰すだけならすぐにでもできるが、どのように迎え撃つか考えるのが建設的だと、対応策を話し合う。

戦いの準備

ジルヴェスターとの話を終えたローゼマインは、戦いに備えて魔術具などの準備に取り組む。メスティオノーラの書を出して調べるため隠し部屋に入ったローゼマインは、たまたまフェルディナンドから以前贈られた魔術具の皮袋の中にクインタ、すなわちフェルディナンドの名捧げの石が入っているのを見つける。さらに準備を進め、最終的には、ローゼマインは3カ所ある神殿の門を守るため戦闘特化型のシュミルの魔術具を3体作る。

カミルの洗礼式

そうしているうちに、冬の成人式が終わり、春の洗礼式がやってくる。ローゼマインは、エーレンフェストの神殿長として最後の儀式を執り行う。ローゼマインは、洗礼式に参加するカミル(マインの弟)の姿を見つけ、いつもより多めの祝福を贈る。退場するために開かれた門のところに、ギュンター(マインの父で、門の兵長、エーファ(マインの母で、ローゼマインの専属の染色職人)、トゥーリ、ルッツ(マインの幼なじみで、トゥーリの婚約者)の姿を見つけたローゼマインは最後の触れ合いに悲しい気持ちになる。礼拝室を出ると、コルネリウスが、エーレンフェストの防衛について領主一族の話し合いが行われると知らせる。

防衛についての話し合い

城に戻ったローゼマインは、領主一族の話し合いに参加する。ジルヴェスターは、ゲオルギーネはフェルディナンドが婚姻して本格的に領主一族として動けるようになるまでに事を起こす可能性が高いと話し、攻め込まれてきた時の守備の配置を打ち合わせ、ローゼマインは祈念式の最中に襲撃があった場合に祈念式に出ている兄妹たちの穴埋めをすることになるが、打ち合わせの最中、突然頭にローゼマインを呼ぶフェルディナンドの声が響いてくる。

目にした危機

ローゼマインの目の前の景色が代わり、毒を飲まされ胸元を押さえて咳き込みながら床に膝をつくフェルディナンド、顔色を変えて駆け寄るレティーツィアの姿が映る。そこにディートリンデが現れ、レオンツィオと一緒にグルトリスハイトを手に入れてツェントになる、と豪語し、フェルディナンドに手枷をはめて体の自由を奪い、魔力が枯渇するまで供給の魔法陣に魔力を注ぎ込ませるようにして去っていく。そこまで見たところで、ローゼマインの視界は再び領主一族の会議の場に戻る。

誘惑

ローゼマインは、早く助けに行きたい気持ちを抑えて自分が見た光景をジルヴェスターたちに説明する。ボニファティウスは諦めるよう説得を図るが、諦めるつもりはないローゼマインは、事を起こすには立派な建前が必要とのジルヴェスターの言葉に、アーレンスバッハはランツェナーヴェと通じてツェントの座を奪おうとしているという名目を考え、十分な戦力がないまま向かわせるわけにはいかないとの言葉に、アウブ・ダンケルフェルガーに連絡を取る許可を求めて、ダンケルフェルガーを礎を賭けたディッター(騎士が騎獣に乗って戦う競技。通常は模擬戦)に誘い、ディッター好きのアウブ・ダンケルフェルガーは誘惑に負けてディッターに参加すると宣言する。

シュタイフェリーゼより速く

ローゼマインは、自分が最速でアーレンスバッハの礎を押さえるまでの間、アーレンスバッハの騎士団を攪乱するようアウブ・ダンケルフェルガーにお願いし、準備が整い次第攻撃を開始すると告げ、アーレンスバッハと戦う上での注意点を話す。アウブ・ダンケルフェルガーは、礎を手に入れるだけなら簡単だが、手に入れた後の礎の扱いは簡単ではない、下手をするとエーレンフェスト共々倒れる、と警告するが、ローゼマインは引く意志がないことを告げ、疾風の女神シュタイフェリーゼより速くアーレンスバッハの礎を奪うと宣言する。アウブ・ダンケルフェルガーとの話し合いを終えると、フェルディナンドの側近としてアーレンスバッハに同行していたユストクス(フェルディナンドの側仕え兼文官)エックハルト(フェルディナンドの上級護衛騎士で、コルネリウスの兄)貴族院の寮に来てアウブとの面会を求めていると知らせが入る。ローゼマインは2人の無事を確認したい気持ちを抑えて、戦いの準備に専念することを決める。

エピローグ

アーレンスバッハの国境門にランツェナーヴェの船が姿を見せ、ディートリンデは喜々として国境門を開ける。アーレンスバッハの貴族たちは王族とランツェナーヴェの面会を成功させると意気込むディートリンデに振り回される。そんな中、レティーツィアは筆頭側仕えのロスヴィータが姿を見せなくなり、呼吸が苦しくなるような不安に襲われ、ロスヴィータを捜すために本館に出たいとフェルディナンドへの面会依頼を出すが、5日後まで待たされることになる。面会の日、レティーツィアが領主執務室に向かう途中、お茶を楽しむレオンツィオとディートリンデに遭遇し、レオンツィオはレティーツィアに銀の筒を渡す。しかし、面会したフェルディナンドは、ロスヴィータは諦めた方が良いと繰り返す。諦められないレティーツィアはふとしたはずみで銀の筒を開けてしまうと、白い粉が飛び出す。それは毒だった。苦しむフェルディナンド。レティーツィアが領主執務室に入るとディートリンデとレオンツィオが現れる。レオンツィオが銀の筒を開けて白い粉を出すと、レティーツィアの側近たちは魔石となって床に転がり、レティーツィアは捕らえられてしまう。ロスヴィータも魔石に変えられてしまい、ディートリンデの高笑いが響く中、レティーツィアの意識は暗転する。

 

さらに、番外編の短編が3編収められています。

閑話 ローゼマインの失踪と帰還

中央の第一王子であるジギスヴァルドの視点から、ローゼマインの失踪から帰還までを描いたエピソード。

お姉様が不在の貴族院

シャルロッテの視点から、ローゼマインが忽然と姿を消して不在となった間の貴族院での日々を描いたエピソード。

各々の望み

レオンツィオの視点から、エピローグの後のランツェナーヴェの者たちの反応を描いたエピソード。ユルゲンシュミットの政変が原因でランツェナーヴェの姫が滞在する離宮が閉ざされ、魔石が手に入れられなくなって10年ほどが経ち、レオンツィオは、離宮を再開させるようツェントと交渉する糸口を探し、ゲオルギーネやディートリンデと接触を図っていた。ランツェナーヴェの館にディートリンデを訪れると、案内された転移陣の間に、ラオブルート(中央の騎士団長で、オルタンシアの夫)が姿を現す。港からやってきたランツェナーヴェの王・ジェルヴァ―ジオは、ラオブルートと親し気に言葉を交わす。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「気遣い」「いろいろ考えちゃう」「人妻エスコート」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

前巻とは打って変わって物語は大きく展開します。ローゼマインは育成の神・アーンヴァックスによって身体が成長し、「じじさま」ことエアヴェルミーンによってメスティオノーラの書の知識を付与され、それによって、ゲオルギーネの企みに気がつき、フェルディナンドの緊急事態に、ゲオルギーネとの戦いを決意するに至ります。次巻では、いよいよ決戦を迎えることになるのでしょう。

これまでの展開からして、最後は大団円を迎えるのだろうと思いますが、この先も様々な出来事が起こりそうです。次巻以降も楽しみにしています。