鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「とべない風船」

世間的には平日の午前、MOVIX柏の葉に行きました。


ちょうど9時ごろの時間帯、上映が始まったスクリーンも多かったのか、ロビーの人はまばらでした。


この日の上映スケジュールの一部。この日は24作品・25種類の上映でした。


この日観たのは、「とべない風船」(1月6日(金)公開)。今後上映館も増えるようですが、全国公開時の上映館は全国17館のみとかなり小規模での公開、千葉県内での上映館はここだけです。なお、作品の舞台となった広島県では、昨年の12月1日(木)から順次5つの映画館で地域先行上映が行われたようが、全国公開の前日の1月5日(木)までで上映は終了したようです。

この映画館、以前は、このような小規模公開の作品が上映されることはほとんどなかったような印象がありますが、先日観た「ケイコ 目を澄ませて」、「そばかす」もそうですが、上映館が少ない作品の上映が増えているのは、個人的には嬉しく思います。


上映は103+2席と比較的小さめのシアター1。お客さんは5~6人という感じでした。


広島県だけで100名以上が亡くなり、1万4,000戸以上の住宅に被害をもたらした平成30年7月豪雨をテーマに、家族を土砂崩れで失った男と夢だった仕事に挫折した女の交流を描いたオリジナルストーリーで、監督・脚本は、広島を拠点にCMディレクターをしている宮川博至で、初の長編映画とのこと。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

心は晴れないのに、空は憎らしいほど青かった。

多島美が連なる瀬戸内海の故郷を舞台に恋人でも家族でもない二人の永遠に晴れそうにない心の行方—。

陽光あふれる瀬戸内海の小さな島。数年前の豪雨災害で妻子を失って以来、自ら孤立している漁師の憲二(東出昌大)は、疎遠の父(小林薫)に会うために来島した凛子(三浦透子)に出会う。凛子もまた、夢だった教師の仕事で挫折を味わい、進むべき道を見失っていた。
凛子は島の生活に心身を癒されていくが、憲二の過去を知って胸を痛める。最初は互いに心を閉ざしていた二人は、あたたかくてお節介な島の人々に見守られ、少しずつ打ち解けていく……。

甚大な自然災害によって、あるいは人間関係の小さな綻びによってもたらされる喪失を抱えながら、私たちはどのように生きていくのか—。悲しい出来事が起きたその場所で暮らし続けるとはどういうことなのか—。
豪雨災害からの復興が進む瀬戸内海の島を舞台に、恋人でも家族でもない一組の男女のぎこちなくもやさしい交流を通して、傷ついた心の癒しと再生を描く。

 

・・・というあらすじ。

公式サイトで紹介されている主要登場人物は、

  • 村田 憲二【東出 昌大】:豪雨災害で妻子を失い孤独に生きる島の漁師。

  • 小島 凛子【三浦 透子】:疎遠の父に会うため島にやって来た元教師。仕事がうまくいかずうつとなり教師を辞めたが、友人から教職に戻らないかと誘われ、迷っている。

  • 小島 繁三【小林 薫】:故郷の島で教師引退後の人生を静かに送る凛子の父。

  • 平野 マキ【浅田 美代子】:島民の憩いの場である居酒屋「四季の味 ひらの」を明るく切り盛りする女将。

  • 小島 さわ【原 日出子】:凛子の母。病気で数年前に亡くなった。

  • 中村 宇志【堀部 圭亮】:憲二の義父。娘・幸を失ったやり場のない憤りを時々憲二にぶつける。

  • 高野 潤【笠原 秀幸】:憲二の漁師仲間。凛子と仲良くなりたいと思っているが、空回りする。

  • 大島 咲【有香】:島の小学生。憲二を慕っている。

  • 鉄平【中川 晴樹】:島の漁師。親戚の誘いで漁師を辞めて大阪に出ることになる。

  • 組合長(宮坂 悟)【柿 辰丸】:憲二たちが入っている下蒲刈町漁業協同組合の組合長。

  • 大島 涼香【根矢 涼香】:咲の母。咲とその兄の2人の子どもがいる。

  • デク【遠山 雄】:島の漁師。

  • 村田 幸【なかむら さち】:憲二の妻。豪雨による土砂崩れで、息子・コウタとともに命を落とした。

というもの。(それぞれの登場人物の本名や説明は、一部加筆しました)

 

多少ネタばれになりますが、記憶の範囲でもう少し詳しめに紹介すると、

凛子は、教師を辞めた後に働いていた派遣が契約切れとなり、父・繁三が暮らす島にやってくる。
父と島で暮らし始めた凛子は、憲二が魚の差し入れに遠慮なく家に入ってくることに驚く。しかし、島での生活を続ける中で、憲二の過去を知った凛子は、憲二に好感を抱き、次第に話をするようになる。
そんな中、繁三が自宅で突然倒れ、たまたま訪れた憲二は、漁船で島を出て病院に繁三を運ぶ。入院した繁三は凛子に、教師として働く上でのアドバイスを語り、凛子はもっと早く聞いておけばよかったと涙する。繁三は、手術のため凛子が住む東京に出ることを決め、凛子も教職に戻ることを決心する。
繁三を東京の病院に転院させ、家の片付けのために島に戻った凛子は、憲二とともに潤たちが開くビーチパーティに参加するが、突然降り出した雨に、憲二のトラウマがうずき、憲二は妻子を失った土砂崩れがあった場所に駆け出し、凛子はその後を追う。憲二は花が手向けられた現場に跪き、次第に2人の記憶がおぼろげになってきていることを嘆き悲しむ。
それを境に、憲二は家に引き籠って漁にも出なくなる。凛子は憲二の家を訪問し、開かない玄関の外から、自分は憲二の言葉で勇気をもらった、亡くなった家族のためにも心配してくれている人たちに向き合うべきだと言葉をかけ、去っていく。
そうして凛子が島を離れる日がやってくる。憲二が見送りに来ないことに咲は母親の車で憲二の家に行き、なんでバイバイしないのかと責め、憲二は扉を開ける。その頃、船上の凛子は、島から空に上っていく黄色い風船を見て、安堵する。憲二の家で咲が凛子と繁三の帰りを待っているというメッセージを込めて、風船を空に飛ばしたのだった。

 

・・・という感じ(記憶違いの部分もあるかもしれません)。

心に沁みるいい映画でした。個々のシーンのカメラアングルの切り替えなどは、映画というよりテレビドラマのような雰囲気がありましたが、経緯はそれぞれ違いますが、心に傷を負った凛子と憲二が、互いの交流の中で再生していく姿が、瀬戸内海の美しい風景の中に描かれていました。主演の東出昌大も、寡黙で、ある意味泥臭い役を好演していましたし、三浦透子の佇まいも良かったと思います。