鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

内藤騎之介「異世界のんびり農家 01」

内藤騎之介さんの小説「異世界のんびり農家 01」を読みました。

2023年1月から3月までの2023冬クールに全12話が放送されたテレビアニメ版がけっこう気に入ったので、原作も読んでみることにしました。

2016年12月から「小説家になろう」サイトに連載され、2017年10月からKADOKAWAより書籍版の刊行が始まったライトノベル

 

出版元の公式サイトには、次のような紹介文が掲載されています。 

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異世界で掘って伐って耕して! 自由気ままな農家生活!

闘病の末に命を落とした青年・火楽(ヒラク)は、神様によって蘇生され、若返って異世界に転移した。
第二の人生、のんびり農業を楽しむために!

神様に授けられた『万能農具』を手に、自由気ままに異世界を切り拓く!
そこに天使や吸血鬼、エルフに竜まで現れて……。
あっという間に村になり、気付けば俺が村長に!?

スローライフ・農業ファンタジー、ここに開幕!

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主な登場人物は、次のようなもの。

  • ラク〔街尾 火楽(まちお ひらく)〕:39歳で命を落としたが、神様の計らいで異世界に転移し、授けられた『万能農具』を使って農業を始める。

  • クロ/ユキ:ヒラクに助けてもらい、そのまま定住する。ヒラクは大きな犬だと思っているが、インフェルノウルフと呼ばれる狼。その子供は、ヒラクによってクロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンと名付けられる。

  • ザブトン:巨大なクモで、デーモンスパイダー。尻から出す糸で布だけでなく服を作る。ジャガイモが好き。

  • ルールーシー=ルー:身体のサイズを自由に変化できる吸血鬼。森でヒラクと出会い、ヒラクから熱烈なプロポーズを受け、妻として一緒に暮らすようになる。ルーと呼ばれる。

  • ティア:「殲滅天使」と呼ばれる天使族。ルーを追って森に訪れ、ルーの誘いでヒラクの妻として一緒に暮らすようになる。

  • リア/リゼ/リタ/リコット/リース/リーフ/リリ:ハイエルフの一族で、全員が姉妹や従姉妹同士。長く死の森の中を放浪していたが、ティアの誘いでヒラクたちと一緒に住むようになる。建築に長けており、村で大工や畑の収穫、森での狩りなどを担う。

  • ラファ/ラーサ/ララーシャ/ラル/ラミ:リアたちの後にクロの子供たちに追い立てられてヒラクたちのもとにやってきたハイエルフの一族。こちらも全員が姉妹や従姉妹同士。

  • フローラ=サクトゥ:ルーの従姉妹の吸血鬼で、フローラと呼ばれる。ルーを探してヒラクたちの元にたどり着く。薬造りが得意。

  • アン:フローラが連れてきた鬼人族のメイド長。村では家事やヒラクたちの世話を担う。

  • グランマリア/クーデル/コローネ:ティアが連れてきた部下の天使族。「皆殺し天使」との異名を持つ。村の周囲のパトロールを担う。

  • ダガ:ティアがグランマリアたちとともに連れてきたリザードマンのリーダー。見分けがつかないヒラクの求めで、ダガだけ右腕にスカーフを巻いている。村で力仕事を担う。

  • ビーゼル:魔王国の四天王の一人。ヒラクの村を調べるために訪問するが、圧倒的戦力を秘めた者たちが住人として集まっていることに驚く。

  • ドライム:門番竜と呼ばれる竜。人間の姿になると長髪の紳士。食べ物と酒に惹かれて、大樹の村へ入り浸るようになる。

  • ガルフ:ヒラクたちのいる森の東の山の中にあるハウリン村の住人の獣人族でハウリン村の戦士たちのリーダー。大樹の村に挨拶と交易を求めて訪れる。

  • セナ:獣人族の娘。ハウリン村村長の娘で、ハウリン村から大樹の村への移住者の代表。

  • ラムリアス:鬼人族メイドの一人。セナたち移住者の世話役を務める。

  • ドノバン/ウィルコックス/クロッス:良い酒があると聞いて大樹の村にやってきたエルダードワーフ。酒を作る技術を持ち、大樹の村に定住して酒造りを担う。

  • ルフレート:ヒラクとルーの間に生まれた息子。

  • グッチ:ドライムの従者。

  • グラッファルーン:ドライムの妻の龍。夫の浮気を疑い、娘とともに村を襲撃しようとするが、ヒラクに撃退される。

  • ラスティスムーン:ドライムとグラッファルーンの娘の竜で、ラスティと呼ばれる。グラッファルーンの命令で大樹の村に住むことになり、外交担当を担う。

  • フラウレム=クローム:ビーゼルの娘の魔族。父の命で大樹の村の監視役として村へ移住する。フラウと呼ばれる。

  • マイケル=ゴロウン:南の港町・シャシャートのゴロウン商会の会頭を務める商人。村の御用商人となる。

というあたり。

本作は、5章で構成され、それぞれの章は、序章を除いてさらに細かい節に分かれています。それぞれの章のあらすじ、概要は次のような感じです。

 

序章 よくある異世界転移

ブラック企業で体を酷使し、30代は病気と闘い、39歳で命を落とした街尾火楽は、神様と対面する。異世界に転移して第二の人生を楽しんでほしいと言う神様に、火楽は、病気にならない体で、できれば人の少ない場所で農業をしたいと願い、『健康な肉体』と『万能農具』を授かると、若返って森の中に立っていた。

一章 異世界生活の始まり

1 異世界

まずクワの形の『万能農具』で地面を耕してみたヒラクは、『万能農具』を使っている間は疲れないことに気づく。『万能農具』を変形させて、大木の幹に穴を開けて寝床を作り、井戸を掘り、コップやお皿などの食器を作る。

2 万能農具

翌日、ヒラクは火を起こした後、大木の周囲の地面を耕し、木を切って木材を確保し、襲ってきた兎のような動物を倒してその肉を焼くが、調味料がなく、血生臭い肉を我慢して食べる。

3 トイレ

次にヒラクはトイレを作って完成させる。

4 食料確保

木の幹に作った寝床に扉を付け、周囲に柵を構築したヒラクは、翌日、柵の外側に堀を作り、耕した場所に夜通しクワを振るって畑を作っていく。

5 ご都合主義と出会い

翌日、畑に行ってみると、種を蒔いていないのに、畑の畝から小さな芽が出ているのを見て驚く。神様に感謝するヒラクは、木を彫って転移前に出会った神様と農業の神様の像を作り、社を作って祀る。さらに、畑を囲うように柵と堀を作る。そんな中、畑の方で犬らしい声を聞いたヒラクが行ってみると、怪我だらけの真っ黒な大きい犬が二匹いた。犬は農家の味方、と思ったヒラクは、警戒を解いて二匹を柵の内側へ招く。

6 犬たち

ラクは猪の肉を二匹に与え、収穫物を保管するための倉を作るが、メスの犬が産気づき、できたばかりの倉に誘導する。

7 犬たちとの生活

翌朝、倉では真っ黒な子犬四匹が生まれていた。犬たちはヒラクになついて畑を守るようになる。ヒラクは、倉を犬小屋にし、新しい倉を建設する。

8 犬たちの名前

ラクは、親犬にクロとユキ、子犬にクロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンと名前をつける。畑の作物は成長し、畝を作っている時に想像していた作物ができていることが分かる。

9 犬?

子犬が生まれて30日が経ち、子犬たちの額から角が伸び始めていた。畑の作物はスクスク育ち、ヒラクは6日かけて収穫する。収穫を終えたヒラクは調理道具を作る。

閑話 クロ

クロの視点から、ヒラクと暮らすことになるまでの経緯を描いた閑話。グラップラーベアに傷つけられたクロとユキは、出会ったヒラクが持っていた『万能農具』に強い恐怖を感じるが、警戒を解いたヒラクに、もはや逆らおうという気は起きず、一緒に暮らすようになったのだ。ただ、ヒラクはクロたちを犬扱いするが、実はインフェルノウルフという種族だった。

10 再確認

収穫を終えた畑を耕し直すヒラクは、畑の一部をリンゴやナシなどの果実系にし、さらに、稲やアブラナ、サトウキビなども作ることにする。そして森を耕しながら探索を行うが、新しいものは見つからない。

11 川

探索を続けて5日ほど経って、ヒラクは川を見つけ、その上流に滝を見つける。ヒラクは滝と寝床を道でつなぐためクワを振るい、15日ほどかけて道を開通させる。さらに、水路を引こうと、まずは堀の外に大きなため池を作り、土を固めて水路を作ることにする。

12 水路作り開始

ラクは水路作りを始めるが、10日かけても500mほどしか進まない。そうしているうちに、作物の収穫を迎える、水路作りは中断して収穫を行った後、再び水路作りを再開するが、気温が下がってきたことに気づき、冬に備えて畑作りに向かう。

13 冬の準備と新しい住人

冬に備えた準備に取りかかったヒラクは、肉や草を集める。衣服を用意しようと、兎と猪の毛皮をなめそうとするが、うまくいかず諦める。
そんな中、黒い座布団のような大きな蜘蛛に遭遇する。蜘蛛は自分の尻から糸を出し、前足で器用にキラキラした布を織る。服を作ってもらえると考えたヒラクは、共に暮らすことにする。ヒラクは好物のジャガイモを与え、蜘蛛にファーストインパクトから、ザブトンと名前をつける。ザブトンは布を作るだけでなく服を仕立て、さらに、毛皮のなめしていい感じの服にしてくれる。

14 ザブトン

ザブトンは元寝床の大きな木の上に住み、異変があった際には木を鳴らして知らせてくれるようになる。

二章 同居人

1 冬到来

本格的な冬がやってくる。ザブトンは木の上にこもり、ヒラクも寝床にこもる。寝床にこもるようになって90日ほど経って、春の訪れを実感し、久しぶりに姿を見せたザブトンは、結構な数の小さな蜘蛛を生んでいた。

2 春が来た

ラクは活動を再開し、まず畑を作り、柵や堀などをチェックした後、水路作りを再開する。

3 クロイチたちの旅立ち

すっかり暖かくなったある日、クロイチたちクロとユキの子供は、パートナーを探すため旅立つ。それから60日ほど経って、水路は半分くらいの長さまで完成する。そして、旅だったクロとユキの子供たちは、パートナーを連れて帰ってくる。

4 クロイチたちのパートナー

ラクは、クロイチたちのパートナーに、アリス、イリス、ウノ、エリスと名前を付け、さらに子供がが増えることも考えて犬たちのための小屋を作り、犬エリアを整備する。

5 畑を拡張

食い扶持が増えたので、ヒラクはさらに畑を拡張し、これまでの畑は主に実験用として使うことにする。そうしているうちに、犬たちの出産ラッシュが始まる。ヒラクは魚が食べたくなって川に釣りに行くが、取れた魚は泥臭く、不味かった。

6 冬の備えと全裸少女?

再び肌寒さを感じるようになり、ヒラクは再び冬に向けた準備を始める。そんな中、ザブトンの知らせで異変があった場所に向かうと、中学生ぐらいの銀髪で美貌な全裸の少女が目に入る。クロたちが襲い掛かると、その体はさらに小さくなり、小学生のようになる。「助けて」との言葉に、ヒラクは少女の前に出る。

7 野蛮?

すると、少女はヒラクの首筋に噛み付き、血を吸う。少女の姿は急速に成長し、傷だらけの体も一気に回復するが、クロたちが再び少女に襲い掛かると、再び少女の体が小さくなる。ヒラクは吸血鬼の少女に再び自分の血を吸わせ、少女は大学生くらいの体になるが、ヒラクは神様にもらった『健康な肉体』のおかげでダメージを感じない。奥さんがほしいと思っていたヒラクは、彼女を自分の家に招くことにする。

8 ルー

吸血鬼の少女の名前は、ルールーシー=ルーといい、ヒラクはルーと呼ぶようになる。一緒に住むようになったルーは、塩が取れる土の層があることをヒラクに教え、魔法の灯りをともす。冬が到来し、ヒラクは春まで色々と励む。

9 冬が短く春が来た

春が到来し、ヒラクは畑を作り、果実エリアを新たに作る。ザブトンの子供たちはパートナー探しに旅立り、少し経って、クロイチたちの子供がパートナー探しに出かける。ヒラクは戻ってくるであろう子供たちのために、犬エリアに小屋を増設する。

閑話 ルー

ルーの視点から、ヒラクとの出会いを描いた閑話。吸血鬼で、親しい人からは吸血姫(ヴァンパイアプリンセス)と呼ばれるルーだったが、インフェルノウルフに囲まれるピンチを迎えていた。それなりに強いルーだが、10頭以上のインフェルノウルフに囲まれ、さらにデーモンスパイダーに見張られ、一瞬の隙に逃げようとしたものの失敗し、死を覚悟したところに人間・ヒラクが現れる。ルーはヒラクに家に招かれ、熱烈なプロポーズを受け、ヒラクを旦那様と呼ぶようになる。

10 翼のある女性

クロイチの子供たちがそろそろ帰ってくるころ、ザブトンが異変を知らせる。ヒラクたちが駆け付けると、金髪の可愛らしい顔立ちの天使が、クロたちにいたぶられていた。ヒラクは止めに入り、かつて同じ目に遭ったルーは、あの時は悪かった、ここでの争いはやめようと話し、天使もそれを受け入れる。彼女は天使族のティアと名乗り、貴族の面子をつぶし、賞金が懸かっているルーを追いかけてきたと話す。ティアはルーの誘いで、一緒に暮らすようになる。

11 同居人がさらに増える

同居するようになって、ティアとルーは急速に仲良くなる。ティアが所用で出かけている間に、クロイチの子供たちがパートナーを連れて戻ってくる。そして、ティアが7人の戦装束の女性を連れて戻ってくる。

12 ハイエルフ

女性たちは、リア、リース、リリ、リーフ、リコット、リゼ、リタと名乗る。定住できる場所を探して放浪してきたハイエルフの7人は、ここに住むことを懇願し、ティアとルーの勧めもあり、ヒラクはそれを許可する。ヒラクは7人のための小屋を建てることにするが、ハイエルフの7人は力もあって器用で、ヒラクはその建設の工夫を学ぶ。

閑話 リア

リアの視点からヒラクの村にやってくるまでを描いた閑話。住んでいた村を戦いで追われ、死の森に逃げ込んで流浪するハイエルフの一族。最初は30人以上いた一族も7人に減っていた。そこに、ルーを追って死の森にやってきたティアが訪れる。
その1カ月後、再びやってきたティアの定住場所を提供できる可能性があるとの話に、リアは覚悟を決めてその誘いに乗ることにする。ヒラクの家に案内され、死の森の真ん中に家と畑がある異様な光景にリアは驚き、定住をお願いする。

13 エルフに対する認識

一緒に暮らし始めて、火を使って、肉を食べるリアたちに、ヒラクは自分の中にあったエルフ像を放棄する。リアたちは炉作り、収穫、水路作りなどで大きな戦力となる。ヒラクは畑をさらに拡張し、実験で植えていた果実はみんなに好評を博する。

14 異世界物のお約束 リバーシとチェス

冬を迎え、ヒラクは娯楽のためにリバーシやチェスを作ると、住民たちにウケる。

15 スライムが来た春

春が訪れ、後回しにしてきたトイレの地下の排泄物を溜める場所の清掃に、スライムを使う案が出され、ティアが17匹のスライムを捕まえてくる。

16 クロたちの求婚とキノコ

水路を作りながら、食事に魚を使えないかと考えるヒラクに、リアたちが綺麗な水の中に何日か入れれば泥臭さがなくなると教えてくれる。クロの子孫たちはパートナーを探して旅立っていくが、その少し前に、ヒラクはクロたちの求婚の光景を目撃する。そして、ヒラクは木に『万能農具』で何かすれば、木が菌床になりキノコが作れるのではないかと考え、実験してみる。

17 新しい住人と水路の完成と風呂

ある日、ザブトンの子供の糸で縛られた大きな蜂が住民に加わる。蜂の巣用の小屋を作ると、10日ほどで大きな丸い巣ができる。そんな中、ようやく水路が完成し、ヒラクは前々から希望してた風呂を作り、使い方を住民たちに実演して説明する。

18 風呂の周辺整備とハイエルフ追加

風呂小屋が完成し、さらに堀や柵など周辺整備を行っているうちに、クロの子供たちが帰還してくる。そして、クロの子供たちに誘導されて、ラファ、ラーサ、ララーシャ、ラル、ラミの5人のハイエルフが住民に加わる。ラファたちの住居を作った後、ヒラクたちの新居作りとなる。リアたちに組み立てを任せていると、大きな家ができていた。

19 マイホーム

新しい家は、玄関を入ってすぐ大きなホールが、1階にはヒラクのプライベートルームやキッチンと食堂が用意され、2階には個室が並び、キッチンの地下には食料庫とするための地下室も作られていた。

20 建築ラッシュと周辺事情?

その後も建設ラッシュは進み、作業小屋、乾燥小屋、燻製小屋が完成する。収穫の時期を迎え、調味料系の作物が収穫される。
再び冬が訪れ、ヒラクは味噌や醤油、牛製品や卵もほしいと思う。ふと思ったヒラクがルーにここは誰かの領地なのか尋ねると、誰かの領地というわけではないが、魔王の勢力圏に入ると教えられる。

三章 外が騒がしい

1 ワイバーンに襲われた春

春になったある日、全長20メートルほどのワイバーンが突然村を襲ってくる。静かな怒りを感じたヒラクの手に、『万能農具』が槍の形となって現れる。ヒラクはそれを全力で投げつけてワイバーンを仕留め、その肉で宴会を開く。
ラクワイバーンを倒したことに、ルーとティアは自分たちが最初にヒラクでなくクロと敵対したことを運が良かったと思い、魔王の城や南の山に住む竜(ドラゴン)には激震が走る。

2 酒が欲しい

宴会をして、酒が欲しいと思ったヒラクは、ブドウでワインを作ろうと、ワイン用のブドウ畑を作り、ララーシャたちと樽を作る。

3 ため池の改良と神様に感謝

ザブトンの子供たちが旅立った後、ヒラクはため池や排水路の水路を改良する。クロたちのパートナー探しの時期がやって来るが、子孫が増え、ほとんどは旅立たず、現在いる者たちでほとんどカップリングが成立する。ヒラクは、森の中を放浪するハイエルフたちに移住を誘うためリーフ、ラーサたちを派遣し、移住者を受け入れるための建物作りを進める。収穫したブドウでワイン作りに挑戦し、穀物や根野菜なども収穫する。

4 エルフ追加

ラクは増えた犬たちのために犬エリアを拡張し、犬たちのための長屋を作る。そんな中、派遣していたリーフたちがハイエルフの女性42人を連れて戻ってくる。予想外の多さに、家の建築を急いで行う。

5 フローラと鬼人族メイドと牛

春の終わり、ルーの関係者らしい女性が姿を現す。クロたちにボコボコにされたその女性は、いなくなったルーを探してやってきたルーの従姉妹のフローラだった。10日ほどしてフローラは移住の準備のために一度戻っていき、冬前になって、20人の鬼人族のメイドと牛4頭を連れて再びやってくる。

6 ティアが出掛けて冬が来る

フローラとそのメイドである鬼人族が増えたことで、勢力的に自分が弱くなったと考えたティアは、自分も従者を連れてこようと、冬を目前に旅立っていく。
冬が到来し、ヒラクはアンたち鬼人族メイドに料理の仕方などを教える。家事をアンたちに任せられるようになり、ヒラクは小物作り、ルーとフローラは薬の研究に打ち込む。

7 三人の天使を追加 鶏を持ったリザードマンもいますよ

春の訪れとともに、ティアがグランマリア、クーデル、コローネの鎧を着込んだ3人の天使族、ダガをリーダーとする15人のリザードマン、40羽の鶏を連れて戻ってくる。ヒラクはティアの勧めで3人の天使族に森の見回りを担当してもらうことにする。
そして、ヒラクは、各種族の代表を集めて、この場所の名前を付けようと相談し、ザブトンの提案で「大樹の村」と決める。

8 酒の完成と来客(魔王の使い)

ワインが完成し、試飲会がそのまま宴会となる。ワインは村人から好評を博し、ブドウ畑を増やすことになる。牛と鶏を飼育することになったことで、牛乳と卵が使えるようになり、ヒラクはプリンを作る。
そんな折、初めての来客でビーゼルと名乗る魔王の使いがやってくる。この場所との関係について話し合いたいと言うビーゼルに、ここでの生活を認めてもらえれば収穫物の1割を税として納める、冬の前に取りに来てほしいとヒラクとしては強気に提案し、ビーゼルが意表を突かれたように驚くが、交渉はまとまる。
魔王の城に戻ったビーゼルは、恐るべき戦力が揃っているのに、自分たちの下に付くと提案されて断れなかったと報告する。

9 来客竜(ドラゴン)

さらに、全長30メートルを超えるドライムと名乗る巨大な竜が従者とともに訪れてくる。南の山に巣があり、近所といえば近所なので挨拶に来たというドライムは、宴会で酒と食事の美味しさに舌鼓を打つ。
来客が続いたことを受けて、ヒラクは来客用の宿を建て、村人たちと相談して出迎えの体制を整える。

10 来客獣人族

その次には獣人族の一行がこの村と友好を結びたいと訪れる。手土産も用意していない一行に、ルーやティアたちは警戒するが、一応歓迎の宴を開くと、代表のガルフは、東の山の中にある人口500人ほどのハウリン村から来たことなどを話す。

11 ハウリン村

ガルフたちの来訪が偽りなく友好目的であったことが分かり、ヒラクはガルフの求めに応じて友好を結び、交易の市に参加することを決める。食器などの銀製品、ガラス製品、鍋などの鉄製品などを取り扱っているが、山の中腹にいるた食料確保に苦労しているハウリン村からは、食べ物を希望され、畑を16面×16面の256面とそれまでの4倍に拡張する。

12 役割の再確認

村の人口が増え、ヒラクはそれぞれの役割を再確認する。リアたちハイエルフは大工や畑の収穫、森での狩りなどを、アンたち鬼人族メイドは料理、掃除、宿の管理などを、ダガたちリザードマンは力仕事や鶏と牛の世話を、クロたちは村の中や外の見回り、狩人として肉の確保を、ザブトンたちは生地や服を作る村の縫製担当を、グランマリアたたち3人の天使族は周辺の警戒を、ルー、ティアとフローラはヒラクの秘書的な役割と研究活動を行っている。
そんなころ、ルー懐妊のニュースが届き、村はお祭り騒ぎとなり、卵で増えるリザードマンの5人の女性は産卵する。

13 交易という名の物々交換市

秋になり、ハウリン村と交易という名の物々交換市に参加する日がやってくる。竜になったドライムに果実や穀物などを運搬してもらいティアたちが市に参加し、全て交換して戻ってくる。

14 酒を飲みながらの報告会と新しい住人

村では報告会という名の宴会が開かれる。宴会がお開きとなった後、ティアから、村長から何人か移住できないかと打診され、検討すると返答したと報告される。最大で女性22人と聞き、ヒラクは若い男性を2人以上加えてくれることを条件に全員引き受けることにする。10日ほど経って、女性22人と、幼稚園児くらいの男児3人がやってくる。ヒラクは鬼人族のラムリアスを移住者の世話役にする。

15 獣人族と交易成果

やってきた獣人族の女性は村長の娘で代表者のセナが高校生くらい、他の女性は小学生から中学生くらいの感じだった。ヒラクは移住者のために新しく建物を建て、移住者たちの慣れ具合を確認する。
一方、交易の成果として得た、鉄製の調理器具、銀製の食器、ガラス製の瓶、山刀、斧、蝋燭、針、毛糸、毛皮、小物類を分配する。

終章 村です

1 税金を持って行かれる

冬前になって、ビーゼルが税の徴収にやってくる。荷物を運ぶ間、軽い食事をしながらヒラクは情報収集に努めると、ビーゼルは人間との戦争が膠着状態にあると話す。魔王の城に戻ったビーゼルは、村にイリーガルデーモンスパイダーがいたことを報告する。

2 森での騒動

冬直前、村からかなり離れた森の中で、大きな爆音が上がる。熊の魔獣グラップラーベアと蛇の魔獣ブラッディバイパーが冬眠前の食糧確保ため戦っていた。どちらも食べられると聞いたヒラクは、グランマリアに現場に連れていってもらい、『万能農具』で2匹の首を狩って簡単に仕留め、食料として村に持ち帰ることにする。グランマリアは2匹を簡単に倒すヒラクの強さに驚く。そんなころ、リザードマンの卵が孵化する。

3 冬の間に周辺地理の勉強

冬が到来し、ヒラクは小物づくりなどの内職のほか、周辺地理の勉強に励む。村は大きな盆地の中央、『死の森』と呼ばれる森の中にあり、その南側の山脈はドライムが巣を作り『竜の山』と呼ばれ、さらに南に進むと『鉄の森』と呼ばれる森があり、さらに南に進むと海があるという。『死の森』の西側の山脈を越えたところに魔王の城と街があり、勢力圏の西側にある人間の国「フルハルト王国」と戦争中。『死の森』の東の山にはハウリン村があり、その山の向こう側には人間が住む「タロッテ村」があるらしい。ルーはフルハルト王国の北にある「ガルバルト王国」から、ティアはそのさらに北側から来たという。
そんな中、良い酒があると聞いて1人のドワーフが酒造りの技術があるとやってきて、定住することになる。

4 エルダードワーフ

やってきたエルダードワーフのドノバンは、大麦やトウモロコシで酒を作ると、畑を広げることを要望する。
春になり、ヒラクは畑を16面×32面の512面と倍に拡張し、他の村人もそれぞれの作業を行う。いつのまにか、ドノバンを追ってウィルコックス、クロッスの2人のエルダードワーフもやってきて、酒造りのため定住することになっていた。
そんな中、ヒラクは、自分に何かあった時や『万能農具』が使えなくなった時のことを考えて、普通の道具を使った農業をしなければと考え、少しずつ試し始めていた。

5 料理と飲み物事情

ドライムや村人は酒や料理を褒めるが、ヒラクは前の世界の記憶から、料理は何か一味足りず、酒は熟成が甘いと考えていた。料理に関しては、アンたちに研究をしてもらう一方で、マヨネーズを完成させる。酒に関しては、熟成させる前に飲まれてしまうため、酒用のブドウ畑を増やす。
エルダードワーフが入ってきたため、男性専用風呂の建築希望が出て、新しく風呂を作る。そして、懐妊していたルーが健康な男の子を生む。

6 息子誕生と襲来

男の子は、ルーの命名でアルフレートと名付けられる。
そんなある日、ザブトンの警報が鳴り響く。空を見ると、飛行物が村に向かって来ていた。そこに、竜の姿のドライムが現れて体当たりし、さらに、ドライムと同じくらいか少し大きい白い竜が飛んでくる。ヒラクがその竜に槍を投げ、再び槍を投げようとしたところで、ドライムの従者グッチに止められる。それは、ドライムの娘ラスティスムーンと妻グラッファルーンだった。3人はヒラクに事情を話し謝る。ドライムは、村に入り浸っていたことで、娘に浮気を疑われたのだった。そして、グラッファルーンは、ラスティスムーンに村にあるドライムの家に住むよう命じる。

7 ラスティ

村に住むようになったラスティスムーンは、ラスティと呼ばれ、村に馴染む。ヒラクはラスティにいろいろ仕事をさせてみたが、お客のお出迎えや交渉ができることがわかり、外交担当にすることを決める。また、ラスティが支配下に置いている小型のワイバーンを使って、魔王の城やハウリン村、ドライムとの連絡が密になる。
作物の買い付けという名目でラスティたちが暴れた件について探りを入れに来たビーゼルは、作物の買い付けについてラスティと交渉して魔王の城に帰った後、すぐに家に戻る。

閑話 フラウレム

ビーゼルの娘フラウレムの視点から、「大樹の村」に住むことになった経緯を描いた閑話。魔王国の王都グライゼンで王姫の友人として活動してきたフラウレムは、成績優秀、武術にも秀で、見た目も美人と自負し、求婚が殺到していたそんな中、フラウレムは突然、ビーゼルの命令で「大樹の村」に行くことになる。
村に行ったフラウレムは、最初に魔王国で知らない者はいない要注意竜のラスティに出会って着替える破目になり、森ゲリラ、マンイーターと恐れられるハイエルフの集団、一匹でも街を滅ぼす凶悪狼のインフェルノウルフの群れに遭遇して二度目の着替えをすることになり、デーモンスパイダーで三度目の着替えをすることになる。
その後も、インフェルノウルフですら近付けないと言われる蜜蜂グノーシスビーの巣、殲滅天使ティア、グランマリアたち皆殺し天使、吸血鬼のルールーシーとフローラたちに遭遇し、ラスティがトップだと勘違いしたフラウレムは、通りかかったヒラクに命令口調でラスティのもとに連れていくよう指示する。それが村長のヒラクだと知って、フラウレムは貴族の娘である私は死んだ、村長の忠実な下僕でありたいと願う。

8 ビーゼルの娘とスライム

ビーゼルの娘が村に住むことになり、最初は心配するヒラクだったが、ラスティと仲良くなっているようで安心する。
ティアが連れてきた17匹のスライムは、いつの間にか数が増え、村の中を自由に移動するようになっていたが、そのうちの1匹は、保存用の酒樽に潜り込んで中のワインを飲み干す事件が起きる。村人は激怒して村で初めての裁判が行われ、有罪となるが、フラウレムの一言で無罪放免となり、酒の倉の管理を厳重にすることになる。
次第にフラウレムと仲良くなり、フラウと呼ぶようになったヒラクは、フラウとラスティの会話から、村以外での食事や酒についていろいろなことを知る。

9 ワイバーン通信と港町のマイケルさん

小型ワイバーンで1週間に1度連絡を取るようになっていたハウリン村では、食料を完全に大樹の村に依存するという話も出てくるが、ヒラクは大樹の村に鉄器が生き渡った後に困るのではないかと忠告する。
そんな折、海産物を求めるヒラクの呟きを聞いたフラウの提案で、南の港町シャシャートとの取引に向かうことになる。戻ってきた竜の姿のラスティは、自分の使用人となる悪魔族のブルガとステファノ、さらに、シャシャートのゴロウン商会の会頭マイケルを連れてきていた。マイケルはこれからも友好的な取引を行いたいので挨拶に来たと話す。

10 商談?

翌日の昼前、ヒラクはルー、ティア、フラウとともに、マイケルと商談をする。マイケルはここに来た目的を説明し、あわよくばこの村の御用商人の地位を手に入れたいと話す。商談の結果、取引用に置いておいた作物は全て現金化され、その他の物も売れ、ヒラクは、山羊や馬、昆布などを要望する。

閑話 マイケル

マイケルの視点から、大樹の村と取引することになった経緯を描いた閑話。シャシャートの街を代表する商人の一人であるマイケルは、突然の来客に、最初は居留守を使おうかと考えるが、嫌な予感がして出迎えると、クローム伯爵の娘フラウレムだった。リザードマンとラスティを見て、下手な対応は死に直結すると恐れながら持ってきた作物を見たマイケルは、商機だと直感し、ラスティの背中に乗って村にやってきたのだった。

11 キノコと畑拡張

キノコを収穫するヒラクは、地面を掘ってみるとトリュフが育っていた。村人たちの前に出すと、村人総出で増産を勧められる。マイケルの手配で山羊と馬が手に入り、牛エリアを拡張して牧場エリアにし、マイケルから入手した昆布やエビ、カニを楽しむ。

12 食文化

ラクは薬草が村人に使われていることを知って、薬草畑を作る。ドワーフの酒造りは順調に進んでおり、ドワーフの数も8人に増えていた。そして、増えた食材を使って、バターやチーズ、豆腐、カマボコ、ゼリーなどを作り、育てた香辛料を使ってカレーに挑戦し、パンの研究に取り組む。そんな折、ティアの妊娠が判明する。

13 代官と娯楽

魔王の城では、ビーゼルが魔王に呼び出されていた。娘が寂しがっていると、フラウを「大樹の村」に行かせた理由を問う魔王に、ビーゼルは代官として派遣したと答え、ヒラクに魔王国側へのポーズとして、フラウを代官として認めてもらうようお願いする。何か裏があるのではと勘繰るヒラクに、ビーゼルは任命権を村長に渡すと契約書を作って押し切って帰っていく。
基本的に休まない村人たちを見て、働き過ぎではないかと考えたヒラクは、自分が率先して休まなければと、娯楽道具を作ってみる。ボールやブーメランは今一つだったが、ゴルフは鬼人族たちにウケる。

閑話 木

村の名前の由来となった大樹の視点?から、ヒラクがやってきてから村が発展していく様子を描いた閑話。

閑話 神

神の視点から、ヒラク異世界への転移の経緯とその後の顛末を描いた閑話。綺麗な魂のヒラクを間違えて転生させ、苦行の人生を歩ませてしまった神は、39歳で死んだヒラク異世界に転移させ、ヒラクの望みを聞いて『健康な肉体』と『万能農具』を授け、人が少ない場所に転移させる。しかし、転移させた場所は危険生物だらけの「死の森」で、『万能農具』は普通の人間だとちょっと使っただけで精神が消耗して倒れてしまう代物だった。しかし、『健康な肉体』のおかげで、精神を消耗しても即座に回復し、『万能農具』を使い放題になっていた。結果オーライとなり、神はヒラクを陰ながら応援する。

(ここまで)

 

著者のあとがきにもあるとおり、ドラマチックな起伏はなく、まったり、のんびりした空気感で進んでいく物語は、逆に新鮮な感じです。主人公の青年のもとに女性が次々と集まってきて、ある種のハーレム状態になるという設定は、作者の願望が色濃く投影されているのだろうと思いますが・・・。

深みや奥行きはありませんが、気負わず楽しく読むことができました。続巻も続けて読んでみたいと思います。