鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「放課後アングラーライフ」

先日、新宿に行きました。


世間的には平日の10時過ぎですが、かなりの人ごみです。


この日やってきたのは、EJアニメシアター新宿。この映画館に来たのは、コロナ禍前の2019年夏に来て以来です。


この日の上映スケジュール。


観に来たのは「放課後アングラーライフ」(4月29日(土)公開)。2020年の夏に観てなかなか良かった「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫監督の作品ということで、以前から気になっていたのですが、なかなか行く機会が作れないでいましたが、そうしているうちに、6月1日で上映終了になると知って、来てみることにしました。


シネマ1とありますが、この映画館のスクリーンはこの一つのみです。300席とけっこう大きめのスクリーン。中に入ると、お客さんは私を含めて3人のみでした。


(チラシの表裏)

第26回スニーカー大賞優秀賞を受賞した井上かえるさんの「女子高生の放課後アングラーライフ」を原作に実写映画化した作品だそうで、友人関係をうまく築けず、自分の殻に閉じこもっていたひとりの転校生が、仲間たちと真剣に向き合うことで自分とも向き合い、未来に向けて一歩踏み出すまでを描いた物語で、監督・脚本は城定秀夫。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

クラスメイトからイジメの標的にされていた追川めざし(十味)は、父の転勤にともない関西の港町に引っ越してきた。新しい学校では友達を作らない―—そう誓っためざしだったが、”メザシ”という名前に運命を感じたクラスメイトの椎羅(まるぴ)によって、彼女が会長を務める海釣り同好会「アングラ女子会」に無理やり入会させられてしまう。釣りはおろか、釣り竿さえ触ったことのないめざしは戸惑うものの、クール系女子・凪(森ふた葉)や勝ち気な性格の明里(平井珠生)ら個性的なメンバーと行動をともにするうちに、釣りの面白さや仲間と一緒にいることの喜びを感じ始めるが……。

 

というあらすじ。

主な登場人物は、

  • 追川 めざし【十味(#2i2)】:父の転勤で東京の高校から関西の港町の高校に転校してきた女子高生。東京の高校ではいじめられていた。父と母と三人暮らし。

  • 白木須 椎羅【まるぴ】:転校してきためざしと同じクラスになった海釣り同好会の「アングラ女子会」の会長。転校してきためざしの名前に運命的なものを感じ、めざしを「アングラ女子会」に引き込む。

  • 汐見 凪【森 ふた葉】:転校してきためざしと同じクラスになった海釣り同好会の「アングラ女子会」のメンバー。クール系女子。家は飲食店を営んでいる。

  • 間詰 明里【平井 珠生】:「アングラ女子会」の副会長。勝ち気な性格だが、椎羅に恋している。

  • 山神 三平【宇野 祥平】:椎羅たちを車で海に連れていってくれる面倒見のいい農家のおじさん。椎羅の母に惚れている。

  • 椎羅の母【西村 知美】:10年前に夫を亡くし、女手ひとつで白木須釣具店を営んでいる。

  • めざしの父【カトウ シンスケ】:気ままで自由なお父さん。

  • 西川先生【三遊亭遊子】:めざし、椎羅、凪のクラスの担任の英語教師。

  • たい焼き屋のおばちゃん【藤田 朋子】:

  • めざしの母【中山 忍】:空気を読まないマイペースなお母さん。

というあたり。

 

自分自身の備忘を兼ねて、もう少し詳しめにあらすじを記すと、

 

東京の高校でのお昼休み時のいじめの光景を夢に見て、ごめんなさい、ごめんなさい、と寝言を言うめざしが目覚めると、父の運転で引越し先に向かう車の中だった。
転校を控え、めざしは、再び標的とならないために、目立たない、依頼は断らない、
放課後はすぐ帰る、友達は作らない、などの目標を立てる。
転校しためざしは、椎羅、凪と同じクラスになる。さっそく、授業中に椎羅から丸めた紙を投げ込まれる。それを開くと、放課後に話があるとの呼出しで、めざしはやってしまったと後悔する。そして、放課後の屋上、警戒するめざしに、名前に運命を感じた椎羅は、非公認の同好会「アングラ女子同好会」に誘う。めざしは、自分が立てた目標に「依頼は断らない」があったことを思い出し、2人の勢いに流されて、放課後、椎羅・凪に付いて白木須釣具店を営む椎羅の家に向かう。椎羅はめざしに自分のお下がりの竿・リールなどの釣りセットを渡し、3人は海に釣りに行く。堤防で釣りをしていると、A組の明里が大声を上げてやってきて、一緒に誘われなかったことに文句を言うが、椎羅から予備の釣り道具を借りて一緒に釣りをする。
その帰り、4人はたい焼き屋でアイスを食べる。明里はめざしと椎羅が互いのアイスを一口ずつ交換するのを見て、間接キス、と内心心穏やかでない。椎羅はめざしに前の高校のときの写真を見たいと言うが、心機一転しようとスマホを変えて残ってないとめざしは弁解し、凪もそれをフォローする。
4人は一緒にカラオケにも行き、歓迎する3人に、少しずつめざしはアングラの活動を楽しいと思うようになる。
そして日曜日、4人は山神の車に乗って、海にカサゴを釣りに行く。山神はは一番大きいのを釣った人に名人の称号を与えると言い、16時半頃に迎えにくると去っていく。釣りをする間、凪はめざしに、前の高校のアカウントを見つけたことを話し、無理する必要ないとアドバイスする。そして、めざしは偶然にも一番大きな魚を釣り上げ、名人の名を与えられ、商品に山神からスイカをもらう。
釣りの後、山神は4人を飲食店を営む凪の家に送る。定休日で自由に使える料理店の厨房で4人は釣った魚などを調理し、夕食を作る。
いんげん豆の筋を取りながら、明里はめざしに、椎羅をどう思うか執拗に尋ね、恋愛感情でないことを確かめ、椎羅がめざしを気にかけていることに不満を漏らす。夕食ができ上がり、4人は一緒に夕食を食べ、目標を聞かれためざしは、マグロを釣りたいと話す。食後、4人は、めざしが賞品としてもらったスイカを食べる。
期末試験が終わって夏休みに入り、4人はキス釣りに行くことにする。その前日、キス釣りの仕掛けを買いに白木須釣具店に行っためざしは、椎羅に練習しようと堤防に連れていかれる。椎羅は毒のあるオニカサゴを釣り上げると、刺されたと突然言ってその場に座り込み、めざしに毒を吸い出してほしいと頼む。めざしは慌てて刺されたという場所を見るが、そこには傷はなく、椎羅はドッキリだったことを白状する。しかし、それがきっかけで、めざしは前の高校でのいじめがフラッシュバックしてしまう。
翌日、めざしはキス釣りには行けず、スマホの電源も切って、家で宿題をする。そのころ、3人は漁港でめざしが来ないことに戸惑っていた。明里は直接話した方がいいと言うが、椎羅はまだ気持ちの整理がついてないと言い、凪はしばらく時間を置いた方がいいとアドバイスする。
その後もめざしは3人との連絡を絶っていたが、夕方散歩に出た際に、ばったり明里と出会い、たい焼き屋の前でジュースを飲みながら一緒に話す。明里は、めざしと椎羅の関係は快く思っていないが、もうめざしは仲間、椎羅とちゃんと話してほしいと話す。
一方、椎羅は砂浜で、願掛けのキスの77匹釣りに挑戦していた。夏の暑い日差しの中、キスを釣り続ける椎羅だったが、熱中症になりかけて病院に運ばれる。久しぶりにスマホを開いためざしは、椎羅が病院に運ばれたことを知り、自転車に乗って慌てて病院に駆けつける。
病室に行くと、凪と明里もいた。びっくりさせたことを謝る椎羅に、めざしは、自分が前の高校でいじめれていたこと、何か失敗をしていじめれらるようになるのではないかと3人が怖かったことなど、自分の心境を涙ながらに打ち明ける。
椎羅が退院した後、4人は山神の車で港に送ってもらい、椎羅の母の知り合いの漁師に舟を出してもらって、海釣りに出る。めざしが漁船にあった双眼鏡を借りて港の方を見ると、山神が椎羅の母に改まって何かを話し、その反応に飛び上がって喜び、そして椎羅の母を抱きしめる様子が目に入り、椎羅は何が見えるのか興味を示すが、めざしはそれをはぐらかす。そこで椎羅の竿に当たりがあり、竿に向かう椎羅は食べかけのドーナツをあげる、と明里に渡す。明里は、それを口にして涙する。そのとき、めざしの竿に当たりがある。めざしは大慌てでリールを巻き、大物(たぶんマグロ)を引き上げる。

 

・・・という感じ。

 

ストーリーの展開としては、起承転結がしっかりとした青春映画ですが、めざしが前の高校でのいじめで受けたトラウマのリアルな描写と、ゆるく、優しい時間が流れる釣りの描写とが交錯して、テンポよく、強いストレスを感じさせることなく、いじめで傷ついためざしの心の再生が描かれ、心地よい余韻が残りました。周囲のベテランの支えもあったのかもしれませんが、めざしを演じた十味も良かったですし、他の3人の力の抜けたノリのいい演技も印象的でした。


終映後、ロビーの中を改めて見ると、城定監督や出演者がサインしたポスターが飾られていました。

先に書いたように、この映画館での上映は6月1日(木)で終了、他の上映館も5館で上映を終了しており、現在上映しているのは横浜の1館のみ、今後上映予定があるのは全国で2館ということのようです。傑作というほどではないですが、もう少し広がってもいい作品のように思います。