鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「消せない記憶」トークショー付上映

夕方、仕事帰りに下北沢に映画を観に行きました。


新宿、渋谷から近く、ライブハウス、劇場、古着店などが多くサブカルの聖地とも言われる人気のエリアですが、私自身は初めて来ました。


南西口の方に回ります。


映画館「シモキタ - エキマエ - シネマ K2」は、駅直結の商業施設「シモキタ エキウエ」に直結している「(tefu) lounge」(テフラウンジ)の2階にあります。


階段を上がって映画館へ。


この日の上映スケジュール。


観に来たのは「消せない記憶」(3月31日(金)公開)。


この日は、上映終了後にトークショーが行われることになっていました。


ロビーには、大きな展示もありました。


パンフレットに掲載されているプロダクションノートのようです。


スクリーンの入口。


スクリーン入口のポスターには、これまでの舞台挨拶などで来場された出演者などのサインがたくさん書かれていました。


スクリーンは69+2席。この日は、トークショー付きということで、ほぼ満席で、65人くらいは入っていたと思います。


(チラシの表裏)

 

2009年函館港イルミナシオン映画祭受賞シナリオ「記憶代理人」 を映画化した作品で、制作・監督・脚本・編集は園田新、音楽は中里正幸(Lucid And The Flowers)。


公式サイトのストーリーによれば、

 

あなたには大切にとっておきたい思い出はありますか?
現実と幻想の狭間に生まれた、記憶を巡るSFラブストーリー

舞台俳優・西潤一はミュージシャンの神崎優衣と路上パフォーマンスを通じて出会う。お互いの過去や秘密を語り惹かれ合うふたり。順調な表現活動も束の間、しばらくして西は自らの記憶力が低下していることに気が付く。そしてあるすれ違いをきっかけに、西は優衣の前から姿を消す。優衣は彼の行方を求め続けていくなかで、西のことを知るという"記憶代理人"が現れる——。

 

というあらすじ。

 

主な登場人物・キャストは、

  • 西 潤一【兵頭 功海】:舞台俳優。宅配会社で働いている。28歳。

  • 神崎 優衣【桃果】:花屋で働きながら、毎週水曜日にギター弾き語りの路上ライブを行っているストリートミュージシャン。23歳。

  • 雨宮 翠【山本 亜依】:演劇のプロデューサー。西を心配して気にかけている。29歳。

  • 記憶代理人【八木 拓海】:西が記憶を預けた不思議な男性。年齢不詳。

  • 丸山 泉【山形 美智子】:優衣が働く花屋の店長。35歳。

  • 濱田 学【志波 景介】:西が働く宅配会社の先輩。39歳。

  • 内藤 聡【光徳 瞬】:西を検査し、若年性認知症と診断した医師。55歳。

  • 三枝 奈緒【白石 優愛】:優衣が働く花屋の同僚。22歳。

  • 矢島 浩樹【篠田 諒】:優衣が働く花屋の同僚。29歳。

  • 宮沢 速雄【みやたに】:西が出演する予定だった舞台で監督を務める舞台演出家。42歳。

  • 坂東 宏【高川 裕也】:宅配会社での西の上司。50歳。

  • 是清監督【関 幸治】:西が出演する舞台で監督を務める舞台演出家。45歳。

  • 篠原 恭子【秋田 ようこ】:認知症患者が入居する施設の職員。30歳。

(注)登場人物の年齢は、2年前に行われた出演者オーディション開催の際に紹介されていたもの。

という感じ。

 

自身の備忘を兼ねて、ネタバレですが、より詳しめにあらすじを記すと、

 

優衣は、フラワーショップに勤めながら、毎週水曜日にはギター弾き語りの路上ライブを行っていた。ある日、優衣がいつも路上ライブを行っている場所に行くと、その場所である男性が一人芝居のパフォーマンスを行っていた。自分の場所が取られた優衣は抗議し、アンプで大音量を出して、耳を貸さずパフォーマンスを続ける男性を邪魔する。
その男性・西は、出演する演劇の演技の細部までこだわって、演出家の宮沢と対立し、西を推薦したプロデューサーの翠は、うまく立ち回るよう忠告する。一方、バイト先の運送会社では、記憶力の良さを発揮して抜け道を教えて先輩の濱田に感謝され、そのお礼に出演予定の舞台のチケットを買ってもらう。
後日、路上ライブから帰る途中、優衣はケンカの仲裁に入って怪我をして座り込んでいる西を見つけ、救急車を呼んで病院に連れていく。入院して舞台に出られなくなった西だったが、誰かが定期的に花を届けてくれる。それが誰か気になった西は、早起きをして、若い女性が花束をナースステーションに届けるのを目撃する。看護師に聞くと、その女性は救急車を呼んでくれた人で、花屋で働いているという。
退院した西は、その女性・優衣にお礼を言おうと、その花屋を訪れると、店頭にいた優衣は、何かお探しですか、と西に声を掛ける。西が病院に届けられていた花を指して、難の花かを聞くと、優衣はガーベラというキク科の花だと話し、色ごとの花言葉を説明する。西がガーベラを各色1本ずつ買うことにすると、優衣はその客が西であることに気づき、路上ライブはしないんですか、と尋ねる。それをきっかけに2人は仲良くなり、一緒に路上ライブを行い、デートをし、恋人の関係になっていく。
2人で海辺に行ったとき、優衣は、両親が芸能関係の仕事をしていた父の浪費癖が原因で離婚し、父は蒸発し、母はアル中になり、兄も家出して戻ってこなかった、自分は親戚に預けられたが居場所がなく、逃げるようにここに来たと打ち明ける。西はずっと一緒にいると約束し、優衣は西を抱きしめる。
しかし、その頃から、西はだんだん忘れっぽくなっていた。次に出演する予定の舞台の稽古ではセリフが抜け、優衣との記念日も忘れ、バイト先では会社に戻る道が分からなくなる。ついには、舞台の稽古の日を間違え、遅刻して駆け付けた稽古場では、監督に「初めまして」と挨拶する始末。心配する翠は、病院を予約して西に行かせる。
行った病院での検査の結果、医師は若年性認知症で間違いないこと、現時点では治す手立てがないことを告げ、進行を遅らせる治療をしていきましょう、と声を掛ける。西はやり場のない怒りを医師にぶつけるが、医師は、いっぺんに記憶がなくなるわけではないと言い、施設などに相談することを勧める。
西は、認知症患者が入所する施設を見学に行く。そこで西は、入所者の家族から、記憶を預かって、指定した日時に届けてくれる「記憶代理人」というのがあると知らされる。
そうして迎えた舞台の本番、優衣も見守る中、幕が上がって舞台に立った西は、セリフが全く出てこなくなり、動揺して舞台袖に逃げる。その夜、いつも路上ライブを行っている場所でヤケ酒を飲む西のところに、やっぱりここにいた、とギターを持った優衣がやって来て、隣に座り、西を慰めるかのようにギターを弾いて歌う。
さらに症状が悪化していく西に、最近おかしい、どうしたのかと問い質す優衣に、これ以上みじめになっていく自分を見てほしくない、別れようと話す。病気のことを打ち明けた西に翠は、優衣にはちゃんと話すべきだと言うが、西は聞き入れない。大きなミスを起こしてバイト先もクビになり、アパートの部屋も解約した西は、大事な話があると優衣に連絡し、路上ライブを行っていたいつもの場所で会う約束をするが、西はその場所を忘れてしまい、必死に探し回るがたどり着くことができない。
翌朝、タクシーに乗る西は、優衣が働く花屋の前で車をいったん止める。窓を開けて優衣が働く様子を見た西は、涙しながら、再び車を走らせる。そして西が訪れたのは「記憶代理人」だった。保管期間は2年間で、その間に届け先の指定がなければ、記録は消去されると説明され、西は記憶をその男に預ける。
翌日、優衣は、西のアパートを訪ねるが、既に西が出て行ったことを知らされる。バイト先や舞台の稽古場に行っても誰も行き先を知らなかった。
本当の自分を見つけてくれた西を諦められない優衣は、西の行き先を突き止めるため街頭で探し人のビラ配りを始める。それに遭遇した翠は、西は優衣を別れることを選んだ、探すのはやめた方がいいと忠告するが、優衣は自分の西への思いを話し、探し続けると話す。そして2年後、優衣に、「西潤一記憶上映会」との案内状が届く。
その会場に行くと、西の視点からの優衣との思い出の映像が流れる。映像が終了すると、記憶代理人が姿を現し、西は記憶を預けたが、取りに来ないまま保管期間の2年が過ぎたこと、西はもう預けたことすら覚えていないかもしれないことを話し、この記憶をどうするかは、優衣が決めるべきだと言う。
そして、記憶代理人から居場所を聞いた優衣は、西が入所している施設を訪れる。案内する篠原は、西がこの施設で働きながら、特別に入所が認められていること、この日は非番なのでじっくり話ができると優衣に話す。西と対面した優衣は、「はじめまして」と挨拶する西にガーベラの花束を差し出し、最初に花屋で出会ったときと同じようにガーベラについて説明するが、西の記憶は戻らない。
そして、優衣は、記憶代理人から取り戻した西の記憶を映写して西に見せながら、ギターを弾いて歌を歌う。すると、西の中で何かの記憶が蘇り、西の目から涙がこぼれるのだった。

というもの。

うまく作られたストーリーを丁寧に描いたいい作品でした。美しい映像、心に沁みる音楽も印象的。俳優陣も、優衣役の桃果をはじめ、若手俳優の瑞々しい演技がとても印象的でした。上映が終了する前に観に来ることができて、本当に良かったです。

 

上映終了後、園田新監督の司会進行で、雨宮翠役の山本亜依さん、西が働く宅配会社の同僚・濱田学役の志波景介さん、優衣が働く花屋の同僚・三枝奈緒役の白石優愛さん、舞台演出家・宮沢速雄役のみやたにさん、認知症施設の職員・篠原恭子役の秋田ようこさん、音楽の中里正幸さんが登壇して、約30分ほどのトークショー

チケットを取ったときの映画館のサイトには、終了時期未定とありましたが、この映画館での上映はこの日で終了とのこと。園田監督のお話によれば、このトークショーは、9週間上映したこの映画館での上映終了日という区切りを迎えるに当たり、開催されたものだそうです。ちなみに、もともとは、医師・内藤聡役の光徳瞬さんも登壇予定でしたが、台風2号の接近による飛行機の欠航で、急きょ不参加となりました。

みなさん、既に舞台挨拶などのイベントを複数回されているようで、この日で(この映画館では)上映終了ということもあり、これまで上映が続いたことへの感謝のコメントなどが多く、作品自体やその撮影時の話があまり聞けなかったのは個人的にはちょっと残念な気もしましたが、それぞれのご発言から、この作品への思いを感じることができました。山本亜衣さんは、最後のコメント時には涙を浮かべておられました。


(終了時のフォトセッションでの写真)

以上3枚とも、左から、園田新監督、山本亜依さん、志波景介さん、白石優愛さん、みやたにさん、秋田ようこさん、音楽の中里正幸さん。

なお、本作は、封切上映のこの映画館を含め、これまで上映された4館は6月7日(水)までにすべて上映が終了してしまいました。今後、全国であと2館で上映される予定だそうですが、もっと広がってほしい優れた作品だと思います。