鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部 女神の化身Ⅹ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第五部「女神の化身Ⅹ」を読みました。

ローゼマインの後見人だったフェルディナンドが結婚のためアーレンスバッハに旅立った後を描く第5部の第10巻で、2023年1月に刊行されています。第9巻に続いて読んでみました。

 

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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深夜の貴族院
ローゼマインはフェルディナンド、ダンケルフェルガーの騎士と共に、アダルジーザの離宮の制圧に向かった。
その中で中央騎士団の造反やジェルヴァージオの行方不明が判明し、一行は貴族院図書館へ―—
やがて全勢力が講堂に集結。
「女神の化身」の大暴走、「魔王」の暗躍、「王の剣」の戦い!

王族、中央、ランツェナーヴェ、エアヴェルミーンの思惑が交錯しながら、「中央の戦い」は怒涛の終結を迎える!

大増書き下ろし100ページ超の閑話集、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻の本編は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた14節からなっています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

プロローグ

自分が次期ツェント*1だと信じて疑わないディートリンデ*2は、ラオブルート*3の手引きで、アルステーデ*4たちとアダルジーザの離宮*5に滞在していた。シュタープ*6の取り込みを終えたレオンツィオ*7に上機嫌でシュタープの使い方を教えるディートリンデだったが、その日々は真夜中に破られる。

夜の貴族院

ローゼマイン*8は、フェルディナンド*9やアーレンスバッハ*10の騎士たちと転移陣で貴族院*11に向かう。ダンケルフェルガー*12の騎士たちと合流した一同は、ランツェナーヴェ*13の者やディートリンデがいるアダルジーザの離宮に向かう。

アダルジーザの離宮

魔法陣によって、隠れているアダルジーザの離宮が姿を現す。アウブ*14・ダンケルフェルガーを先頭に騎士たちが離宮に突入し、ローゼマインは捕らえられた捕虜の監視に当たる。レオンツィオやディートリンデ、アルステーデたちは捕らえられるが、ジェルヴァージオ*15の姿が見当たらない。フェルディナンドの尋問に、アルステーデはランツェナーヴェの者たちにシュタープを与える際、中央騎士団の騎士団長がお願いし、王族が協力したと話す。

協力者

そこにアウブ・ダンケルフェルガーからのオルドナンツ*16が届き、王宮で中央騎士団の同士討ちが起こって、ダンケルフェルガーに救援要請があったため、そちらに向かうと連絡が入る。フェルディナンドは、残る者たちの役割分担を指示し、アルステーデを連れて、離宮に残っているダンケルフェルガーの騎士たちと合流する。
ハイスヒッツェ*17から王宮で何が起こっているのかを聞き、フェルディナンドは戦力の分散が目的ではないかと推測し、ローゼマインは連絡が取れないソランジュ*18の救出をお願いする。

アルステーデの話

フェルディナンドは、図書館に行く前に、アルステーデの尋問を行う。アルステーデは、離宮の鍵をラオブルートが持っていること、ゲオルギーネ*19とディートリンデに頼まれてシュタープを得たいと願うランツェナーヴェの王族をアーレンスバッハの貴族として登録したこと、ディートリンデがグルトリスハイト*20を、ランツェナーヴェの王族がシュタープを得るために離宮に移動したこと、シュタープを得るためにラオブルートが手を打っていて、アナスタージウス*21ヒルデブラント*22がイマヌエル*23を連れて貴族院にやってきたこと、アナスタージウスが出て行った後、ラオブルートがヒルデブラントを唆して扉を開けさせたこと、ジェルヴァージオが既にユルゲンシュミット*24の王族であることなどを話す。
話を聞いてフェルディナンドは、ラオブルートの狙いは、ヒルデブラントがシュタープを採りに行っている間に中央神殿に保管されていたジェルヴァージオのメダルをその場に移し、ジェルヴァージオをユルゲンシュミットの傍系王族に戻すことだったと推測する。アルステーデはそれに頷き、ジェルヴァージオが正式にツェントになったら褒賞を中央神殿に贈る約束になっていたこと、さらに、ディートリンデとジェルヴァージオが祠巡り*25をしていたことを話す。

ソランジュの救出

祠巡りが終わったジェルヴァージオは図書館に行くはずだと気付いたローゼマインは、ソランジュが心配でいてもたってもいられなくなるが、フェルディナンドが冷静に諭し、まず図書館の様子を確認するためにコルネリウス*26とアンゲリカ*27を向かわせる。その間に王族と傍系王族の違いについて調べると、直系王族とは異なり、地下書庫の更に奥には行けないことがわかる。コルネリウスから図書館が施錠されていると報告を受け、フェルディナンドはローゼマインを連れて図書館に向かう。ローゼマインがシュバルツとヴァイス*28に声を掛けて裏口を開けてもらい、倒れていたソランジュを発見する。
起き上がったソランジュは、ラオブルートがグルトリスハイトを得ようとしている傍系王族のジェルヴァージオを連れてきて、地下書庫の鍵を出すよう脅したこと、ラオブルートとジェルヴァージオは地下書庫に行ったが、おそらくグルトリスハイトは入手できずに出て行ったことを話す。シュバルツとヴァイスは、ジェルヴァージオがローゼマインと同じく「じじさま」のところに行ったと話す。フェルディナンドとローゼマインは、ジェルヴァージオが行ったであろう始まりの庭に行くことにする。

始まりの庭への道

フェルディナンドの指示で、ローゼマインは大量に魔力を使ってライデンシャフトの槍*29を落とし、フェルディナンドは剣を振り抜いて魔力の塊を放つが、始まりの庭に飛び込むことができない。ローゼマインは、せめて外からジェルヴァージオの邪魔ができないかと考え、ライデンシャフトの槍を闇の神具であるマントに変え、魔力を吸収していく。魔力の吸収を終えた後、フェルディナンド、最奥の間に入るために、王族であるアナスタージウスにオルドナンツを送る。

ツェントの責任

フェルディナンドはさらにトラオクヴァール*30にもオルドナンツを送る。不機嫌そうなフェルディナンドは、国の命運がかかっている時に王として当然の行動もしないのならツェント失格だとローゼマインに語る。ローゼマインはツェントを少し擁護するが、側近の裏切りなど珍しくないというフェルディナンドに、窮屈で大変だと思っていた自分の環境が、実は危険から遠ざけるために丁寧に整えられていたものであることを知らされ、理解できていなかった自分にがっかりする。
フェルディナンドたちが、合流したシュトラール*31エックハルト*32から、中央騎士団の騎士たちが講堂に入っていったことなど報告を受けた後、トラオクヴァールからの返事が届くが、それは、真のツェントを望む、と礎を守るために戦うつもりがないことを伝えるものだった。怒りで魔力が漏れるフェルディナンドは、ツェント失格だと言い放ち、ジェルヴァージオの排除に向かう。
そこに合流したアナスタージウスは、フェルディナンドたちの動きが反逆罪に問われる可能性があると警告するが、ローゼマインたちは、トラオクヴァールが守るために戦うつもりがないこと、ジェルヴァージオがツェントとなった場合にはエグランティー*33たちがどうなるかわからないことを話すと、アナスタージウスは代わりに自分が動く、と講堂に飛び込む。

講堂の戦い

ローゼマインは、講堂の扉の前で、怪我をして出てくる騎士たちを癒すが、講堂の中からものすごい爆発音が聞こえる。講堂に入ったローゼマインは、魔法陣を起動させて騎士たちに癒しを与えていく。
そこに、講堂の祭壇に始まりの庭につながる出入口が開く。ジェルヴァージオが出てくると考えたラオブルートは、真のツェントのジェルヴァージオがお戻りになる!と言い、一部で熱狂的な喝采が上がる。ローゼマインは珍しいことではないと言って熱狂を冷まそうとする。怒るラオブルートは攻撃するが、ローゼマインはシュツェーリアの盾を出して防ぎ、祝詞を唱えて対抗するが、祭壇の方から妙な圧力を感じる。

始まりの庭から戻った者

祭壇に開いた出入口からジェルヴァージオが姿を現す。グリトリスハイト、と唱えて聖典を出したジェルヴァージオに、ラオブルートは感極まった声を上げる。
ローゼマインは、フェルディナンドの指示どおりに、自分もグリトリスハイトと唱えてメスティオノーラの書を出し、祝詞を唱えて祝福を重ね掛けしていく。その間に、フェルディナンドはジェルヴァージオがいる祭壇に上がり、一対一でジェルヴァージオに立ち向かう。ジェルヴァージオが銀色の筒を出したのを見て、即死毒だと思ったローゼマインは、ヴァッシェン*34を起動させる。

祭壇上の戦い

講堂内の水が収まった後、マグダレーナ*35を連れたアウブ・ダンケルフェルガーを先頭にダンケルフェルガーの騎士たちが講堂に入って加勢する。
祭壇上で、ローゼマインとフェルディナンドはジェルヴァージオと相対する。フェルディナンドが剣を振り下ろし、魔力の塊が飛び出して神像に当たると、神像の神具から光の柱が立ち上がり、眩しさにローゼマインは目を閉じる。

始まりの庭にて

ローゼマインが目を開けると、そこは始まりの庭で、エアヴァルミーン*36が姿を現していた。エアヴァルミーンは、ユルゲンシュミットが間近に迫っているとフェルディナンドに怒りを向け、ジェルヴァージオに礎を染めさせようとする。
ローゼマインは闇のマントを広げてエアヴァルミーンの魔力を吸収し、魔力が溢れそうになって光の柱を立てると、自分によく似た容貌の女性が現れ、体を借りる、と言って図書館を出す。ローゼマインが喜んで本を読んでいると、フェルディナンドの呼びかけで元の世界に戻る。

ツェントレース

ローゼマインが目を覚ますと、フェルディナンドはローゼマインの様子を確認し、女神が少し精神的に干渉し、深く影響を受けているようだと話す。ローゼマインに降臨したメスティオノーラ*37によって、命の奪い合いは禁止され、戦いの雰囲気はなくなっていた。
エアヴァルミーンは、ユルゲンシュミットの崩壊を食い止めるため、ツェント候補が競い合って礎を染めることになった、魔力の満ちていない国境門を満たし、この始まりの庭に戻ってくる速さを競うことになったと告げる。ジェルヴァージオは、ランツェナーヴェの王族が、シュタープを得て強大な力を行使する権力者としてランツェナーヴェに君臨したい者と、ユルゲンシュミットの貴族として永住した者の2つに割れている、ユルゲンシュミットにおける安住の地を確かなものにするために、ツェントになると話す。
ツェントレースが始まり、ローゼマインは自分に割り当てられたクラッセンブルク*38の国境門に向かう転移陣を完成させ移動する。

魔王の暗躍

ラッセンブルクの国境門に着いたローゼマインが魔力を注いでいると、そこにフェルディナンドが現れる。フェルディナンドは、ジェルヴァージオがツェントになるのを阻止する、ローゼマインの発案でジェルヴァージオが英知を授かるのを邪魔したせいで、ジェルヴァージオが得たメスティオノーラの書はかなり不完全だと語り、魔力供給を終えたら貴族院に戻ってエーレンフェスト寮で休息するよう指示し、中央の戦いにおけるエーレンフェストの関与を示すためだと話す。
フェルディナンドは国境門ではなく貴族院に戻っていき、ローゼマインはクラッセンブルクの国境門の魔力供給を終えた後、フェルディナンドに割り当てられていたハウフレッツェ*39の国境門の魔力供給を行い、転移陣で貴族院に戻る。コルネリウスに連絡すると、アンゲリカに銀色の布*40を掛けられ、抱き上げて運ばれ、寮に入った後、そうしなければ女神の御力に溢れるローゼマインを他領の者に気付かれずに連れてくることができなかったと理由を説明される。クラリッサ*41は、まさに女神の化身、と涙を流しながら跪く。
レオノーレ*42は、祭壇にいた3人の姿が一斉に消えた後、ラオブルートはマグダレーナやアウブ・ダンケルフェルガーと対峙して敗れたこと、ハルトムート*43が突然ローゼマインの魔力が女神によって塗り替えられたと涙を流し始めたこと、フェルディナンドから様々な指示があり、今はハルトムートを連れてアナスタージウスと共に中央神殿に向かっていることなどを報告する。

暗躍の報告

休息を取り、目覚めたローゼマインは、リヒャルダ*44に言葉を掛けられ、ブリュンヒルデ*45とベルティルデ*46の手伝いで着替える。ブリュンヒルデは、女神の御力で、ローゼマインを直視するためには強い意志が必要で、近づくほと畏れ多いという感覚が強くなると話す。
着替えを終え、フェルディナンドと会ったローゼマインは、ジェルヴァージオを邪魔して時間を稼ぎ、中央神殿で神殿長の聖典とその鍵、ランツェナーヴェに移動した者のメダルを回収して、ジェルヴァージオのメダルは破棄させ、ジェルヴァージオはシュタープを失ったこと、捕らえられた者の扱いは2日後の王族との話し合い次第であることなどを聞かされ、新しいツェントを連れて始まりの庭に戻るために奉納舞を練習するよう指示される。ジルヴェスター*47、フロレンツィア*48シャルロッテ*49、フェルディナンドと夕食をとるローゼマインは、そのやり取りを聞いて、エーレンフェスト*50での日常生活が戻ってきた気分になって、自然と頬が緩む。

エピローグ

貴族院のダンケルフェルガーの寮で後方支援に当たっていたジークリンデ*51は、戦いが勝利に終わったことを知らせるオルドナンツが届き安堵する。戦いは、長期戦にはならないとのアウブ・ダンケルフェルガーである夫のヴェルデクラフの予想からずいぶんかけ離れたものになっていた。最も遅く戻ってきたヴェルデクラフをジークリンデは側近たちと出迎え、ハンネローネ*52が戦いを通じて成長したこと、クラッセンブルクから国境門が光ったことについて問い合わせがあったことなどを報告する。
ヴェルデクラフは、フェルディナンドからローゼマインにメスティオノーラが降臨して魔力枯渇によるユルゲンシュミット崩壊を防ぐために国境門を次期ツェント候補の魔力で満たすことになったと聞かされたこと、戦いに参加しなかった領地は落ち着くまで貴族院の立ち入り禁止が王族から通達されたこと、それにはフェルディナンドの思惑が大きく働いていること、2日後にエーレンフェストのお茶会室で今回の戦いに関係した者と王族との話し合いが行われることを話す。
ジークリンデはフェルディナンドに主導権を握られていることを指摘すると、ヴェルデクラフは、フェルディナンドがグルトリスハイトを持っている可能性を示唆し、次期ツェントがどうなるかはフェルディナンド次第であること、マグダレーナによるとトラオクヴァールにトルーク*53が使われれていたらしいことを話し、ユルゲンシュミットの今後を思うなら、必要なのはグルトリスハイトを得た正当なツェントだと言う。戦いの前とはずいぶん前提条件が変わってしまったと思ったジークリンデは、今回の戦いでジギスヴァルド*54が完全に外れていたことに気づく。そして、眠気が襲ってきたヴェルデクラフに休息を促す。

 

ここまでが本編。その後に「中央の戦い」と題して、次の5編の閑話が収載されています。

イマヌエル 帰還した傍系王族

イマヌエルのもとに、ラオブルートから祈念式の申請を王宮にするよう命ずる手紙が届き、カーティス*55がその内容を検分する。カーティスが使えていたレリギオン*56は、古の神事を蘇らせることに関心が低く、新たなツェント候補の帰還に非協力的だったために、ラオブルートの持つ毒によって殺され、協力を申し出たイマヌエルが神殿長に就いていた。イマヌエルは、ランツェナーヴェに移動した者のメダルが保管されている神殿長でなければ入れない保管室に入り、ジェルヴァージオのメダルを取り出す。イマヌエルは、中央神殿の神殿長に相応しいローゼマインを王族に奪われては困ると、ラオブルートと手を組み、成功の暁にはローゼマインを中央神殿に入れようとしていた。
祈念式の申請をしたイマヌエルに貴族院の立ち入り許可が出て、王宮の集合場所に行くと、アナスタージウスとヒルデブラントがいた。ラオブルートも同行して貴族院の講堂に向かい、ヒルデブラントが最奥の間につながる扉を開け、騎士たちが監視する中で、青色神官たちを使って祈念式の準備を行うが、アナスタージウスが貴族院の他の場所を確認するために去ると、ラオブルートはツェントからシュタープを得る許可が出たとヒルデブラントに話す。喜ぶヒルデブラントは祭壇の横に穴を開けて始まりの庭に入っていく。その隙に、イマヌエルは保管室から取り出したメダルをラオブルートに出し、騎士になりすましたジェルヴァージオとメダルの本人確認を行う。
神殿に戻ってそのメダルの登録を変更して傍系王族の保管場所に移したイマヌエルに、翌日の夕方、ラオブルートから戴冠の儀式の準備をするよう伝える手紙が届く。ローゼマインを神殿長にし、古の神事を蘇らせることができるとイマヌエルは昂ぶりに震える。

アナスタージウス 王族の立場

深夜、アナスタージウスにラルフリーダ*57から王宮でマグダレーナが戦闘中と知らせるオルドナンツが届く。かつての政変で当時の第三王子の娘だったときに真夜中に襲撃されて自分以外の家族が殺された過去があるエグランティーヌは、その恐怖が蘇って悲鳴を上げて震えるが、アナスタージウスは抱きしめて落ち着かせる。すぐに戦えるよう身支度を調えたところで、ラルフリーダから再びオルドナンツが届き、王宮内の襲撃はラオブルートによるもので中央騎士団同士の戦いになっていることを知らせる。それを聞いて守備の見直しを話し合っているうちに、フェルディナンドからランツェナーヴェからの侵略者に礎を奪われることを防ぐために最奥の間に来るようオルドナンツが届く。王宮の襲撃は陽動で、真の狙いは貴族院と考えたアナスタージウスは、貴族院の最奥の間に向かう。
講堂に飛び込んだアナスタージウスは、ラオブルートに魔石を渡したのはヒルデブラントだと聞かされ、ラオブルートへの怒りが湧き上がる。私の主はジェルヴァージオと言うラオブルートに、平静さを失い、劣勢となるアナスタージウスだったが、ローゼマインが講堂に入ってきて、戦いの流れが変わる。さらにアウブ・ダンケルフェルガーとマグダレーナも加勢し、王宮の制圧が完了したことに、アナスタージウスは胸を撫で下ろし、ジェルヴァージオを捕らえようと祭壇に上がろうとするが、ラオブルートと同じように透明の壁に弾かれる。ローゼマインやフェルディナンドが容易に越えた壁に阻まれ、アナスタージウスは王族という立場が崩れていくのを感じる。

マグダレーナ 裏切り者の討伐

貴族院で不審者が発見され、ラオブルートの助言により封鎖された王宮で、マグダレーナはトラオクヴァールの命令で離宮への連絡を担当するが、自分の離宮警備体制とトラオクヴァールの護衛について考え、自分がトラオクヴァールを守ればいいのではないかと考え、許しを得て自分の護衛騎士たちにトラオクヴァールを守らせることにする。自分も半武装状態で備えるマグダレーナだったが、王宮への侵入者を発見し、ダンケルフェルガーに救援を要請する。ジークリンデからの連絡で、ダンケルフェルガーが貴族院で戦闘中と知ったマグダレーナは、敵はラオブルートだと気付く。
フェルディナンドからのオルドナンツに真のツェントを望むと返事を吹き込むトラオクヴァールから、嗅ぎ慣れない甘い匂いがしたのに気付いたマグダレーナ。護衛騎士はトルークだと指摘し、マグダレーナは、中央騎士団にトルークを持ち込んだのもラオブルートで、これまでラオブルートによって正しい情報がねじ曲げられてきたのだと気付き、アウブ・ダンケルフェルガーと合流してラオブルートを討つ。

ジェルヴァージオ 女神の降臨

エアヴァルミーンによって光と知識の奔流を受けるジェルヴァージオだったが、流れ込んでくる知識を受け入れるのに苦労し、さらに、途中で不意に英知の光が途切れてしまう。メスティオノーラの書は手に入れたが、記述にあちこちに穴がある上に後ろの方は全く空白になっていた。エアヴァルミーンは、他のツェント候補はマインとクインタ*58だが、2人は一つの書を分け合っている状態だと話し、魔力枯渇を避けるため、礎の魔術を満たすようジェルヴァージオに命ずる。
講堂の祭壇に戻り、メスティオノーラの書を出したジェルヴァージオは、ローゼマインが同じようにメスティオノーラの書を出して祝福を与えるのを見て、ローゼマインを危険視する。祭壇上に現れたフェルディナンドが攻撃するのをいなしながら、ローゼマインとフェルディナンドのどちらを残すのが有利かを考えるジェルヴァージオだが、予想がつかないことをするローゼマインに薄気味悪さを感じる。
魔力攻撃が神像に吸い込まれ、その神具から光の柱が立つと、ジェルヴァージオたちは始まりの庭にいた。エアヴァルミーンの攻撃からフェルディナンドを庇って飛び込んだローゼマインが黒いマントで魔力を吸収し、その手から光の柱が立ち上がると、上空から光が降り注ぎ、ローゼマインを包んでいく。するとメスティオノーラがローゼマインに降臨する。メスティオノーラはエアヴァルミーンに神力を分け与え、命を奪う行為を禁止する。フェルディナンドは、国境門に魔力を満たすことを提案し、メスティオノーラとエアヴァルミーンが乗り気になり、それで次期ツェントを決めることになる。メスティオノーラは、ローゼマインの読書に対する執着より深く心の内に入り込んでいる記憶への繋がりを切ったと言い、消える。
ローゼマインの意識が戻り、ジェルヴァージオはギレッセンマイアー*59の国境門に魔力供給をすることになる。ローゼマインは一瞬にして転移陣を完成させ、クラッセンブルクの国境門に転移していく。ジェルヴァージオが転移陣を描くのに手間取っているうちに、先に転移陣を完成させたフェルディナンドの妨害を受ける。
遅れてギレッセンマイアーの国境門に転移し、魔力供給を始めたジェルヴァージオだったが、突然、メスティオノーラの書が消え、シュタープも消えてしまっていた。予想もしていない事態に声が震えるジェルヴァージオは、これもフェルディナンドによる妨害ではないかと考え、壁に怒りを叩きつけるが、どれだけ叫んでも、シュタープがジェルヴァージオの手に戻ることはなかった。

フェルディナンド 負けられない戦い

祭壇の上でジェルヴァージオと対峙するフェルディナンドは、ユルゲンシュミットの誰よりもおそらく魔力量が多く、魔力量も魔力を扱う技量も今の自分では敵わない、正面から戦って勝てる相手ではないと感じる。どこか隙がないか考えるフェルディナンドは、国境門での魔力供給で競うことを提案し、転移陣を描くジェルヴァージオを妨害し、ローゼマインが魔力供給を行うクラッセンブルクの国境門に向かい、ローゼマインの動きを限定するために魔力供給を終えたらエーレンフェスト寮で休息するよう指示する。
貴族院に戻ったフェルディナンドは、次々と指示を出し、合流したアナスタージウスを連れて中央神殿に向かいながら、アナスタージウスに戦いに参加しなかった領地に落ち着くまで貴族院への立ち入りを禁止する通達を出してもらう。中央神殿に着いたフェルディナンドは、鍵がなければ入れない部屋に逃げ込んだイマヌエルを捕らえようと、カーティスを使って部屋から出させて捕らえ、ハルトムートに尋問させる。
カーティスに案内させてメダルの保管場所に向かい、メダルと神殿長王の聖典とその鍵を出させ、ハルトムートには新たなツェントの就任式と奉納舞の神事についてカーティスと話し合いをするように指示する。
ギレッセンマイアーの国境門が光っていると問合せがあったと聞いたフェルディナンドは、アナスタージウスを急かしてジェルヴァージオのメダルを破棄させる。そのメダルの変化から、ジェルヴァージオがまだ領地内にいること、すなわちシュタープを失い国境門に閉じ込められたことがわかり、フェルディナンドは自分たちの勝利を宣言する。これでアーレンスバッハの礎の魔術が奪われることも、ローゼマインが褒賞として中央神殿に入れられることも、ディートリンデたちが救済されることも、自分が魔石としてランツェナーヴェに送られることも阻止できたと勝利感に浸るフェルディナンドだったが、自分の望む未来をつかむために、王族との話し合いをどう動かすかに頭を切り替える。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「超箱入り娘」「こんぽううんぱん」「安眠休息」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

本巻で、それぞれ違う思惑を持ったゲオルギーネ、ディートリンデ、ジェルヴァージオたちとの戦いは、無事に勝利に終わりました。著者のあとがきにも移動が多いと記されていますが、前巻以上に動きの激しい展開で、一読しただけではストーリーがうまく頭に入ってきませんでした。

次巻では、エピローグなどで示されているように、戦いに関係した者と王族との話し合い、いわば戦後処理をどうするかを決める会談が行われるわけですが、最後の閑話「ジェルヴァージオ 女神の降臨」や「フェルディナンド 最後の戦い」で描かれているフェルディナンドの言葉からすると、フェルディナンドは、グルトリスハイトを持つ自分やローゼマインがツェントになるのではなく、メスティオノーラの化身のようになったローゼマインから今の王族に魔術具であるグルトリスハイトを授けて新たなツェントに任命して、神事の祈りを復活させること、将来的にはメスティオノーラの書を受け取れる者を増やすことを目指していることが伺えます。

巻末に掲載されている続巻の宣伝によると、5月に刊行された「女神の化身Ⅺ」と本年冬に発売予定の「女神の化身Ⅻ」で、本編シリーズは完結する模様です。これまでの展開から、おそらく、フェルディナンドが目指している方向に沿った形になっていくのだろうと推測しますが、残り2巻でどのように着地していくのか、楽しみに待ちたいと思います。

*1:中央の王

*2:アーレンスバッハの領主一族で、ヴィルフリートの従姉

*3:中央騎士団の騎士団長

*4:ゲオルギーネの娘で、ディートリンデの姉の上級貴族

*5:ランツェナーヴェからユルゲンシュミットのツェントに献上された最初の姫・アダルジーザが賜った離宮で、貴族院にある。ランツェナーヴェから献上される姫達はこの離宮に入っていた。

*6:自分の魔力を効率よく使うための道具

*7:ランツェナーヴェの使者で、ランツェナーヴェの王だったキアッフレードの孫

*8:主人公。エーレンフェストの領主候補生4年生で神殿長。1年後に王族の養女となることが決まっている。フェルディナンド救出の際にアーレンスバッハの礎を魔力で奪ったため、アウブ・アーレンスバッハの地位にある。

*9:エーレンフェストの領主・ジルヴェスターの異母弟でエーレンフェストの元神官長。主人公・ローゼマインの後見人だったが、王命により、アーレンスバッハの領主候補生ディートリンデの婚約者となった

*10:順位6位の大領地

*11:貴族達が大人になる前に通う学校だが、ユルゲンシュミットの聖地でもある

*12:順位2位の大領地

*13:ユルゲンシュミットの隣国

*14:各領の領主

*15:ランツェナーヴェの王

*16:通信用の魔術具

*17:ダンケルフェルガーの上級騎士

*18:貴族院の図書館の司書の中級貴族

*19:アーレンスバッハの第一夫人でジルヴェスターの姉

*20:本来はツェントになるために必要とされる古の聖典

*21:中央の第二王子

*22:中央の第三王子

*23:中央神殿の神殿長

*24:エーレンフェスト、アーレンスバッハ、ダンケルフェルガーなどが属する国

*25:グルトリスハイトを手に入れるために必要となる手順の一つ

*26:貴族としてのローゼマインの兄で、側近の上級護衛騎士

*27:ローゼマインの側近の中級護衛騎士

*28:いずれも貴族院図書館の魔術具で、魔力を供給したローゼマインが主になっている

*29:神具の槍

*30:現在のツェント

*31:元アーレンスバッハの騎士団長で、フェルディナンドの上級護衛騎士

*32:貴族としてのローゼマインの兄で、フェルディナンドに名を捧げた上級護衛騎士

*33:アナスタージウスの第一夫人。クラッセンブルクの元領主一族

*34:洗浄の魔術

*35:トラオクヴァールの第三夫人で、ヒルデブラントの母。アウブ・ダンケルフェルガーの妹

*36:始まりの庭の白い木で、元神様

*37:英知の女神

*38:順位1位の大領地

*39:順位5位の中領地

*40:ランツェナーヴェで使われる魔力を通さない布

*41:ローゼマインに心酔しているダンケルフェルガー出身の上級文官で、ハルトムートの婚約者

*42:ローゼマインの側近の上級護衛騎士。コルネリウスの婚約者

*43:ローゼマインに名を捧げた側近の上級文官で神官長

*44:ジルヴェスターの上級側仕えで、ローゼマインの元筆頭側仕え

*45:ローゼマインの元側近の上級側仕えで、ジルヴェスターの第二夫人として婚約した

*46:ローゼマインの側近の上級側仕え見習い1年生で、ブリュンヒルデの妹

*47:エーレンフェストの領主で、ローゼマインの養父

*48:ジルヴェスターの第一夫人で、貴族としてのローゼマインの養母

*49:ジルヴェスターの娘の領主候補生3年生で、ローゼマインの義妹

*50:主人公のローゼマインたちが暮らす順位8位の中領地

*51:アウブ・ダンケルフェルガーの第一夫人

*52:ローゼマインの図書委員仲間で、ダンケルフェルガーの領主候補生4年生。ジークリンデの娘

*53:匂いを嗅ぐと幻覚症状や陶酔感をもたらす植物

*54:中央の第一王子で、次期王

*55:神殿長に仕える側仕え

*56:中央神殿の前神殿長

*57:トラオクヴァールの第一夫人でアナスタージウスの母

*58:アダルジーザの離宮にいた頃のフェルディナンドの幼名

*59:順位4位の中領地