鷺の停車場

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ショスタコーヴィチ:交響曲第6番・第15番

ショスタコーヴィチ交響曲第6番・第15番のCDを聴きました。

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第15番 イ長調 Op.141
  2. 交響曲第6番 ロ短調 Op.54

ジャナンドレア・ノセダ指揮ロンドン交響楽団
(録音:2019年10月31日[2]、2022年2月6・13日[1]  ロンドン、バービカン・ホール(ライヴ)

2016/17年シーズンからロンドン交響楽団の首席客演指揮者を務めているジャナンドレア・ノセダによるショスタコーヴィチ交響曲集の1枚。リリース順でいうと、第8番、第4番、第1番&第5番、第7番、第9番&第10番に続く第6弾になるようです。

 

第6番は、成功を収めた第5番の後、1939年に作曲された作品。

各楽章をごく簡単に紹介すると、次のような感じです。

第1楽章:Largo

ロ短調:4/4拍子。演奏時間は約18分0秒(スコアに記載されているメトロノーム記号どおりの速さで演奏した場合。以下も同様)。物思いに沈むような長大な楽章。

第2楽章:Allegro

ト長調:3/8拍子。演奏時間は約5分9秒。三部形式スケルツォ。軽やかで爽やかなクラリネットのメロディが印象的な楽章。

第3楽章:Presto

ロ短調-ロ長調:2/2拍子。演奏時間は約6分1秒。ロンド・ソナタ形式。弦楽器によるリズミックな主題に始まり、無骨な中間部を経て、主題の再現の後、コーダではロ長調に転じ、バカ騒ぎのように陽気に終わります。

 

一方、第15番は、ショスタコーヴィチの最後の交響曲で、1971年に作曲された作品。各楽章をごく簡単に紹介すると、次のような感じです。

第1楽章:Allegretto

イ長調:2/4拍子。演奏時間は約8分32秒。自由なソナタ形式。甲高いグロッケンの後、フルートによる主題で始まり、曲のところどころでロッシーニウィリアム・テル」序曲の引用が登場し、途中には、1小節に8連符(8分音符)、6連符、5連符が同時に奏されるリズムクラスターも出てきます。

第2楽章:Adagio-Largo-Adagio-Largo

ヘ短調:3/4拍子-4/4拍子。演奏時間は約10分44秒。金管楽器によるコラールの後に独奏チェロがモノローグを奏する形で始まり、中間部ではトロンボーンが荘重なメロディを奏する葬送行進曲風になり、主題が戻ってきた後、休みなく第3楽章に続きます。

第3楽章:Allegretto

ト短調:2/2拍子。演奏時間は約3分57秒。ユーモラスでグロテスクなスケルツォクラリネットの12音列的な主題に始まり、中間部では独奏ヴァイオリンによるメロディとなります。

第4楽章:Adegio-Allegretto-Adagio-Allegretto

イ短調-イ長調:4/4拍子-3/4拍子。演奏時間は約13分51秒。ワーグナーの「ニーベルンクの指輪」の「運命の動機」とジークフリートの葬送行進曲の引用で始まり、「トリスタンとイゾルデ前奏曲の冒頭を思わせる動機で主部に入ります。展開部はパッサカリアで、自身の交響曲第7番「レニングラード」第1楽章の「戦争の主題」を引用した主題が、最初の5回は低弦のピチカートで奏され、チェレスタとヴァイオリンに一度移った後、再び低弦に移り、クライマックスでは金管楽器で強奏されます。再び最初の主題が戻ってきて、最後は打楽器が静かに細かくリズムを刻み、消え入るように終わります。

 

さて、本盤の演奏は、バランスの取れた手堅い演奏という印象。ロンドン交響楽団の能力が十分に生かされ、歯切れのよいサウンドで、アンサンブルも緊密にまとまっていますが、もう一歩突き抜ける魅力があれば、という感じがしました。

 

手元にある他のCDも聴いてみました。

録音が新しい順に紹介します。まず交響曲第6番の方から。

 

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第5番 ニ短調 Op.47
  2. 交響曲第6番 ロ短調 Op.54

ルドルフ・バルシャイ指揮WDR交響楽団
(録音:1995年7月3・8日、1996年4月26日[1]、1995年10月17・20日[2]  ケルン、フィルハーモニー

バルシャイが1992年から2000年にかけてWDR(西部ドイツ放送)交響楽団(旧:ケルン放送交響楽団を振って録音した交響曲全集の1枚。

オーケストラの響きもあって、真面目で地味な印象を受けますが、意外と硬派な演奏で、奇を衒わず、誠実に向き合っているところは好感が持てます。

 

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第6番ロ短調 Op.54
  2. 交響曲第9番変ホ長調 Op.70

レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1985年10月[2]、1986年10月[2] ウィーン、ムジークフェラインザール)

バースタインの晩年、ドイチェ・グラモフォンで録音したショスタコーヴィチ交響曲のうちの1枚。この後、1988年にシカゴ交響楽団と第1番・第7番を録音しています。なお、音源が本盤と同じなのかはわかりませんが、本盤収録の2曲のライヴを同時期に収録したDVDもリリースされています。

この時期のバーンスタインの他の録音と同様、全体的に遅めのテンポで、特にもともとゆったりしたテンポの楽章である第1楽章は、丹念に歌い込まれた演奏になっています。テンポの速い第2・3楽章は、正直ちょっと腰が重い感じがしますが、独特の魅力を感じさせる演奏です。

 

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第6番 ロ短調 Op.54
  2. 交響曲第10番 ホ短調 Op.93

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー交響楽団
(録音:1972年1月27日[1]、1976年3月31日[2] レニングラードフィルハーモニー大ホール(ライヴ)

この曲を初演したコンビによる、1972年のライヴ録音。

以前、交響曲第10番のCDを紹介したときにも書きましたが、いくつかあるムラヴィンスキー交響曲第6番の録音の中でも、最も優れた演奏で、特に、たたみかけるような終楽章は圧倒的。個人的には、今なおベスト盤だと思います。

 

  1. ショスタコーヴィチ交響曲第6番ロ短調 Op.54
  2. ショスタコーヴィチ:「黄金時代」組曲 Op.22a
  3. ハチャトゥリアン交響曲第3番

レオポルド・ストコフスキー指揮シカゴ交響楽団
(録音:1968年2月20・21日 シカゴ、メディナ・テンプル)

ストコフスキーは初演の翌年の1940年にフィラデルフィア管弦楽団とこの曲のアメリカ初演を行い、同時期に同じコンビで録音も行っているようです。本盤はそれから28年後、ストコフスキー85歳の時の録音。

シカゴ響の高い演奏能力もあって、よくまとまった演奏。第1楽章は、中庸のテンポで運び、弛緩した感じもなく、意外といい演奏です。速いテンポの第2楽章・第3楽章は、かっちり構築された演奏ですが、やや遅めのテンポで音楽の推進力が不足している感じがします。

 

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第6番 ロ短調 Op.54
  2. 交響曲第10番 ホ短調 Op.93

キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1967年9月15日[1]、1973年9月24日[2] モスクワ)

コンドラシンが1962年から1975年にかけて、当時首席指揮者を務めていたモスクワ・フィルと録音した交響曲全集の1枚。

第1楽章はかなり速めのテンポで、スコアの指定と比べると、3/4ほどの時間で終わっていて、個人的には、落ち着きがない印象があって好みではありませんが、独特の魅力も感じます。速いテンポの第2楽章・第3楽章は、スピード感とキレ味のある演奏。全体に荒削りなところがありますが、作品に正面から組み合っている感じは好感が持てます。

 

  1. ショスタコーヴィチ交響曲第6番ロ短調 Op.54
  2. グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
  3. ムソルグスキー:モスクワ河の夜明け(歌劇「ホヴァンシチーナ」前奏曲
  4. リャードフ:バーバ・ヤーガ Op.56
  5. グラズノフ:歌劇「ライモンダ」第3幕への間奏曲(フラグメント第10番)
  6. モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
  7. シベリウス:「4つの伝説曲」よりトゥオネラの白鳥 Op.22-2
  8. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  9. ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
  10. ワーグナー:楽劇「ヴァルキューレ」よりヴァルキューレの騎行

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー管弦楽団
(録音:1965年2月21日[1-5]、2月23日[6,7,9,10]、2月28日[8] モスクワ音楽院大ホール(ライヴ)

先に紹介したライヴの7年前、1965年2月にモスクワで行われた演奏会のライヴ録音。

こちらも素晴らしい演奏。1972年のライヴと比べると、どの楽章もテンポが速く、本拠地ではなく、首都モスクワでの演奏会とあってか、勢い、高揚感という点で一歩優れている反面、演奏の細部の荒さが若干目立つ印象を受けます。

 

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第5番ニ短調 Op.47
  2. 交響曲第6番ロ短調 Op.54

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー管弦楽団
(録音:1946年11月4日[2]、1954年4月3日[1] レニングラード

初演から7年後、後には全く行われなくなったムラヴィンスキーのスタジオ録音の1枚。

リマスターで音質はかなり聴きやすくなっているものの、ダイナミックレンジの狭さをはじめ録音の古さは否めませんし、戦後すぐという時期もあってか、技術的にも、先に紹介した1965年盤、1972年盤よりだいぶ荒いです。演奏自体の良し悪しを云々するというより、資料的な意味で価値ある録音ということかもしれません。

 

紹介したCDの楽章ごとの演奏時間は、それぞれ次のようになっています。

 

・ノセダ        :Ⅰ17'42/Ⅱ6'37/Ⅲ7'30
バルシャイ      :Ⅰ18'50/Ⅱ5'47/Ⅲ7'01
バーンスタイン    :Ⅰ22'29/Ⅱ7'53/Ⅲ7'32
ムラヴィンスキー[1972] :Ⅰ16'02/Ⅱ5'33/Ⅲ6'46
ストコフスキー    :Ⅰ17'14/Ⅱ6'29/Ⅲ7'36
コンドラシン     :Ⅰ13'28/Ⅱ6'09/Ⅲ6'52
ムラヴィンスキー[1965] :Ⅰ15'00/Ⅱ5'29/Ⅲ6'41
ムラヴィンスキー[1946] :Ⅰ17'43/Ⅱ5'46/Ⅲ7'04

バルシャイ盤と、ムラヴィンスキーの1946年盤が、スコア指定のテンポに比較的忠実な演奏といえます。こうやって並べると、最も演奏時間が長いバーンスタイン盤と最も短いコンドラシン盤で、特に第1楽章に大きな差があることがわかります。

 

続いて、交響曲第15番のCDを。

ショスタコーヴィチ

  1. 交響曲第1番ヘ短調 Op.10
  2. 交響曲第15番イ長調 Op.141
  3. 交響曲第14番ト短調 Op.135「死者の歌」
  4. 室内交響曲 ハ短調 Op.110a(編曲:ルドルフ・バルシャイ

アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団、クリスティーネ・オポライス[Sop:3]、アレクサンドル・ツィムバリュク[Bas:3]
(録音:2018年2月[3]、11月[1]、2019年4月[2]、2020年1月[4] ボストン、シンフォニー・ホール(ライヴ)

現在進行中のネルソンスとボストン交響楽団によるショスターコーヴィチ交響曲全集の第5弾。ボストン響のサウンドと高い実力が生かされ、室内楽的な繊細さも感じさせる優れた演奏ですが、テンポ設定など解釈的には好みでないところもあり、まずまず、といった印象。個人的には併録されている第1番などの方が素晴らしい演奏に感じました。

 

ルドルフ・バルシャイ指揮WDR交響楽団
(録音:1998年6月15・20日  ケルン、フィルハーモニー

先の第6番と同様、バルシャイが1992年から2000年にかけてWDR(西部ドイツ放送)交響楽団(旧:ケルン放送交響楽団を振って録音した交響曲全集の1枚。

曲自体の技術的な難しさもあって、細部の詰めは甘く感じられる部分もありますが、テンポの設定も、スコア指定のテンポにかなり忠実で、先に紹介した第6番と同様、奇を衒わず誠実に向き合った演奏です。

 

Symphony 15

クルト・ザンデルリンク指揮クリーヴランド管弦楽団
(録音:1991年3月17・18日  クリーヴランド、セヴェランス・ホール)

1978年のベルリン交響楽団(現:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団との録音に続くザンデルリンク2回目の録音。

ゆったりめのテンポで運びながら、音楽が弛緩しないのがこの人の凄いところ。ロシア系の迫力や勢いとは対照的な演奏ですが、クリーヴランド管弦楽団の高い演奏能力も十分に発揮され、透明感ある響き、隙のないアンサンブル、見事なソロなど、完成度の高い演奏で、個人的にはこの曲のベスト盤です。

 

  1. ストラヴィンスキーバレエ音楽アゴン」
  2. ショスタコーヴィチ交響曲第15番イ長調 Op.141

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー交響楽団
(録音:1965年10月29日[1]、1976年5月26日[2] レニングラードフィルハーモニー大ホール(ライヴ)

ショスタコーヴィチが1975年に亡くなった翌年に行われた演奏会のライヴ録音。

ムラヴィンスキーの他のショスタコーヴィチ交響曲の録音と同様、硬質で独特の厳しい雰囲気が漂う演奏。

なお、併録の「アゴン」は、ストラヴィンスキー75歳の1957年に作曲された最後のバレエ音楽。それからわずか8年後、CDの解説によれば、本盤はソ連初演となる演奏会のライヴ録音。こうした同時代の(ソ連圏外の)作品を積極的に取り上げていたことも興味深いです。

 

紹介したCDの楽章ごとの演奏時間は、それぞれ次のようになっています。

・ノセダ     :Ⅰ8'31/Ⅱ16'03/Ⅲ4'28/Ⅳ15'57
・ネルソンス   :Ⅰ8'13/Ⅱ17'27/Ⅲ4'12/Ⅳ18'06
バルシャイ   :Ⅰ8'19/Ⅱ11'43/Ⅲ3'53/Ⅳ13'58
ザンデルリンク :Ⅰ8'43/Ⅱ16'20/Ⅲ5'07/Ⅳ20'21
ムラヴィンスキー:Ⅰ7'41/Ⅱ13'42/Ⅲ4'18/Ⅳ14'12

先に書いたように、スコア指定のテンポに最も忠実なのはバルシャイ盤。ムラヴィンスキー盤もそれに比較的近いですが、他の録音では、特に第2楽章・第4楽章で演奏時間がかなり長めになっていることがわかります。