鷺の停車場

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橘由華「聖女の魔力は万能です 5」

橘由華「聖女の魔力は万能です 5」を読みました。

繰り返しになりますが、2016年4月から小説投稿サイト「小説家になろう」に連載が始まり、2017年2月にカドカワBOOKSから単行本として刊行が始まった作品で、テレビアニメ版が2021年4月からの2021年春クールに第1期、2023年10月からの2023年秋クールに第2期が放送されています。

第5巻の本巻は、2019年5月刊行の第4巻から9ヶ月後の2020年2月に刊行されています。

 

背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。 

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 日本での知識を活用し、様々な商品開発をしてきたセイは、ついに自作の商品を取り扱う店を持つことに。視察のために港町に向かうと、予期せず探し求めていた食材と出会ってしまう! 米や味噌、懐かしい味との再会にセイの料理欲も大爆発! 商品を取り扱う貿易船の人達とも仲良くなり、長旅の助けになる保存食を作ったり、お料理スキルを存分に発揮しちゃいますっ。そんななか、魔道師団師団長ユーリが、セイの料理には特殊な効果があると気づき……?

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前巻と同様に、本書の冒頭、前巻までのあらすじを紹介するページの前に、主なキャラクターを紹介するページが挿入されています。そこで紹介されている登場人物は、次のとおりです。

  • セイ:異世界に聖女として召喚されたOL・小鳥遊聖(たかなし せい)。治療や魔物の浄化で大活躍し、各所から崇められるようになってしまったのが最近の悩み。料理や化粧品の開発が息抜き

  • アルベルト・ホーク:第三騎士団の団長。ちまたでは”氷の騎士様”と呼ばれているほどクールらしいが、セイの前では……?

  • レオンハルト:クラウスナー領の傭兵団を取りまとめるリーダー。優秀な薬師の腕をもつセイを気に入っている <なお、本巻では登場しません>

  • ユーリ・ドレヴェス:宮廷魔導師団の師団長。魔法や魔力の研究になると目の色が変わる。今は、セイの魔力に興味津々

  • ヨハン・ヴァルデック:薬用植物研究所の所長。セイの面倒をよく見てくれる。アルベルトとは幼なじみらしい

  • アイラ:セイと同じく異世界に召喚された高校生・御園愛良(みその あいら)。魔導師団で魔法の勉強をしている

  • ジュード:薬用植物研究所の研究員で、セイの教育係。面倒見がよく、人懐っこい。よくセイの料理をつまみ食いしにくる

  • エアハルト・ホーク:宮廷魔導師団の副師団長で、アルベルトの兄。口数は少ないが常識人。ユーリにいつも振り回されている

  • エリザベス・アシュレイ:図書館で友達になった侯爵令嬢。セイのことをよく慕ってくれている

このほかに、この第5巻で登場する、個別に名前などが付与されているキャラクターとしては、次の人たちがいます。

  • コリンナ:クラウスナー領専属の薬師。

  • マリー:王宮でセイの世話をしてくれる侍女。

  • フランツ:セイが開発した商品を取り扱う商会の会長となった白髪に深い青色の瞳の紳士。特務師団出身者。

  • オスカー・ドゥンケル:セイが開発した商品を取り扱う商会で会長を補佐する橙色の髪に緑色の瞳の男性。実は現役の特務師団員。

  • セイラン:セイが港町モルゲンハーフェンで出会ったザイデラから来た船の船長。

  • 国王:スランタニア王国の国王のジークフリート・スランタニア。

  • 宰相:スランタニア王国の宰相のドミニク・ゴルツ。

  • レイン・スランタニア:スランタニア王国の第二王子で、国王の次男。

本編は、主人公・セイの視点から描かれる5章と、その間に挿入されるセイ以外の者の視点から描かれる「舞台裏」と題する閑話で構成され、本編の後に、書き下ろし短編が収載されています。各章の概要・主なあらすじは、次のようなもの。

第一幕 商会

クラウスナー領から王都に戻って3か月が経ち、季節は、セイがこの世界に来てから2度目となる夏に徐々に向かっていた。王都に戻ってからも、王宮からの要請であちこち魔物の討伐に向かって黒い沼を浄化し、現在見つかっている黒い沼は全て浄化したことで、セイは時間の余裕ができていた。
そんな折に、クラウスナー領から大量の薬草が届き、その中には市場にはめったに出回らない薬草の種もあった。同封されていたコリンナからの手紙には、森の再生への感謝が記されていた。セイは、【聖女の術】を使った薬草の栽培を試すだけでなく、薬草を使って新しい化粧品も作ってみることにする。
所長・ヨハンに呼び出されたセイは、所長室でフランツとオスカーを紹介される。所長は、セイが考案した化粧品は所長が紹介した商会を通して売っていたが、売り上げが大きくなり過ぎて色々と問題が出たため、セイが作った化粧品などの商品を売るための新しい商会を立ち上げることにしたこと、セイは今まで通り何か思いついたときに物を作るだけでよく、その他の商会の仕事はフランツたちが行うことを説明し、セイもそれを了解する。
1月後、王都に新しい商会が開店する。セイはその賑わう様子を少し離れた場所から窺う。オスカーは帰りに最近できた人気の喫茶店に寄ってみることを勧め、セイは、警護に同行していた団長・アルベルトとその店を訪れる。そのお勧めの飲み物はコーヒーだった。知っている飲み物が出てきたことにセイは驚くが、淹れ方が違うのか、日本で飲んでいたものと味が違っていた。セイは、コーヒーを淹れる道具を用意して自分で淹れようと、コーヒー豆を買って王宮に戻る。

本章は、テレビアニメ第2期のEpisode 1「商会」の終盤部分までにほぼ対応しています。

第二幕 外国の品

王宮に戻ったセイは、研究所の実験道具を作ってくれている製作所で道具を作ってもらい、コーヒーを淹れて研究員たちにも飲んでもらったことで、研究所内でコーヒーが流行り、所長もコーヒーにハマっていた。
コーヒーを見つけてから、故郷の味への熱が高まったセイは、米も入手したいと考え、ジュードたちに相談するが、みんな聞いたことがないという。所長の勧めでフランツに手紙で尋ねると、東にある港町・モルゲンハーフェンに東方の国からの輸入品が荷揚げされるので、もしかしたら米もあるかもしれないと返答が来る。
所長の勧めで、セイは少し長めの休暇を取ってモルゲンハーフェンに行くことにする。ジュードと一緒に、商家の御一行という態を装い、護衛の第三騎士団の騎士も同行して馬車で出発したセイが町に到着すると、別件でモルゲンハーフェンに来ていたオスカーが出迎える。
宿に入り、その部屋の広さに固まるセイだったが、オスカーから食料品を載せた船がちょうど到着したと聞いて喜び、翌日の朝市を見に行くことにする。
翌日、茶色い髪のウイッグを被り、眼鏡をかけて変装して市場に向かったセイは、喜々として品物を見て回るが、米は見当たらない。そんなとき、前日に船着場で起きた事故で下敷きになった部下のため回復魔法を使える魔道師を探していた黒髪の男性に出会う。セイは、自分が治してしまうと噂になると思いとどまるが、後ろ髪が引かれるセイは、鞄に入れていた自分が作った上級ポーションを取り出して、男性に差し出す。
翌日、宿の食堂で朝食をとっていると、前日の男性が喜色満面でやってくる。ザイデラ国から来たセイランという名のその男性は、ポーションで部下がすっかり回復したことに礼を言い、あれほどの効果のある物を無償でもらうわけにはいかない、と代金を払うことを申し出る。その性能故に市販しておらず、値が付けられず困っていると、オスカーが助け舟を出し、積荷を見せてもらい、ほしい物があれば安く譲ってもらうことで話が付く。
積荷が運び込まれた倉庫で、セイは唐辛子、山椒、八角などとともに、米を見つけ、歓喜の声をあげる。セイランは、ザイデラの一部の地域で米が主食になっていることを話し、セイの買いっぷりを見たオスカーはさっそく商談を始める。船員の少年が持ってきてくれたスープを口にしたセイは、懐かしい味に涙があふれそうになる。それは味噌汁だった。

本章は、テレビアニメ第2期のEpisode 1「商会」の終盤部分から、Episode 2「異国」の中盤部分あたりまでにほぼ対応しています。

舞台裏

国王の執務室をセイとの顔合わせを終えたオスカーが訪ねる。オスカーは現役の特務師団員で、フランツは既に引退した元特務師団員だった。王宮は、元の商会を取り込もうとする貴族が出てきたため、新たな商会を立ち上げ、貴族から不満が出ないようにセイに商会のオーナーになってもらい、情報の統制のために従業員は全て王宮が選んだ者とし、護衛も紛れ込ませることにしたのだった。

テレビアニメ(第2期)では、本章に対応する部分は描かれておらず、カットされているようです。

第三幕 外国の料理

米を見つけたセイは、王都に帰るまでまだ日があるため、手に入れた香辛料などを使って料理を作ろうとしてジュードから止められるが、セイランの誘いで、セイランの船の料理人が振る舞う料理を食べさせてもらえることになる。ジュードやオスカーたちとセイランたちが泊っている宿を訪れたセイは、厨房で料理人たちが料理する様子を見学させてもらい、出された料理に舌鼓を打つ。
長い航海に耐えうる保存食は決まりきったものだけだと船上生活の話を聞かされたセイは、自分が知っている保存食を作ってみることにする。翌日、市場で材料を入手したセイは、日本での知識を使って、キャベツでザワークラウトを作ってあげ、お茶をごちそうになり、宿に戻る。

テレビアニメ(第2期)では、本章に対応する部分は描かれておらず、カットされているようです。

第四幕 和食

モルゲンハーフェンから戻って1週間が経ち、休暇中にたまっていた研究所の仕事が一段落したセイは、和食を作る。慣れない鍋でご飯を炊き、小魚の干物で出汁を取って味噌汁を作ったセイは、それを口にして、感慨に浸る。
数日後、アイラたちも招いたセイは、酢の代わりにワインビネガーを使い、牛蒡、ニンジン、白身魚の干物、錦糸卵でちらし寿司を作ってごちそうするが、その翌日、話を聞きつけてやってきたユーリに同じ料理を食べさせてほしいとせがまれたセイは、料理の効果を調査するのに協力してもらうことにする。
3日後、セイはやってきた宮廷魔道師団のトップ5にちらし寿司を試食してもらう。食べ終わったユーリたちが魔法を発動させると、魔法攻撃力や命中率が上がっていることがわかる。

本章は、テレビアニメ第2期のEpisode 2「異国」の後半部分にほぼ対応しています。

舞台裏

セイから渡されたポーションの高い効果に、セイランは、セイの実家の商会を探そうと考える。セイランの雇い主が優秀な薬師を探しており、今回の件を報告すればポーションの作製者に興味を持つのは間違いなく、報告する前に少しでも情報を手に入れようと考えたからだったが、セイが裕福な商家の娘を装っていたため、その情報収集は困難を極め、セイランは失意のままスランタニア王国を後にする。
一方、薬用植物研究所のヨハンを訪ねたアルベルトは、ヨハンから、モタモタしているとセイを掻っ攫われるぞ、と発破をかけられる。

本章は、テレビアニメ第2期のEpisode 2「異国」の最後の部分にほぼ対応しています。

第五幕 お披露目

所長室に呼ばれたセイは、王宮から来た文官から、お披露目会を王家主催の舞踏会と同日に開くことになったと知らされる。数日後、アルベルトが舞踏会でエスコートさせてくれないかと申し出て、セイの鼓動は高鳴る。
お披露目会の当日、前日から王宮に泊まり込んだセイは、マリーたち気合の入った侍女に支度を調えられ、豪華なローブ姿で会場に向かい、緊張しながらも、滞りなくお披露目会を終える。
セイが部屋に戻って休んでいると、セイの晴れ姿を間近で見たいとリズと一緒に第二王子のレインが訪ねてくる。
ドレスに着替えたセイを、アルベルトが迎えに来る。セイはその姿に見惚れるが、アルベルトも綺麗なセイの姿に見惚れる。アルベルトのエスコートで舞踏会に参加したセイは、周囲の注目を浴びる中、2人で踊る。苦手なダンスに緊張するセイをアルベルトがリードし、無事に踊り終える。踊り終えたセイにヨハンが声をかけ、隙あらばセイと踊ろうと狙う周囲からセイを守るため、ヨハンはセイと踊り、その後セイは、アルベルトに呼ばれてやってきたユーリとエアハルトと踊り、何とか舞踏会を乗り切る。
お披露目会が終わり、落ち着いた日々が戻ったセイだったが、ある日、王宮から文官がやってきて、所長とともに王宮に来るよう告げられる。

本章は、テレビアニメ第2期のEpisode 3「式典」にほぼ対応する部分になっています。

 

以上の本編の後に、書き下ろし短編が3編収載されています。

 

書き下ろし 1

休みの日、セイはアイラと約束をして研究所の厨房でお菓子作りをする。料理人にオーブンの火加減を調整してもらい、パウンドケーキとクッキーを焼く。
作ったお菓子を、セイはアルベルトに、アイラはユーリとエアハルトにお裾分けするが、アイラにまたクッキーを作ってほしいとお願いするユーリは、アイラのアイデアを聞いて火属性魔法を用いる箱型のオーブンを開発してしまう。

書き下ろし 2

セイは、クラウスナー領で見つけた古代小麦にあるというHP回復の効果を調査するため、第三騎士団の騎士達を募って古代小麦で作ったパスタを食べてもらう。そうして調査を継続した結果、古代小麦を使った料理にHPの自然回復量増加の効果が追加されることがわかる。

書き下ろし 3

クラウスナー領から王都に戻って1ヶ月が経ったある日、王宮の文官が研究所にやってくる。魔物の討伐要請と聞いて、黒い沼が見つかったのかと思ったセイだったが、地位の高い貴族から、権威付けのために出陣を要望され、断り切れなかったことを説明される。どうせ行くなら名産品を堪能しようと考えたセイは、滞在中に名産品の豚のベーコンを使ってカルボナーラを作り、討伐から戻った後にその話を聞いたヨハンは、定期的に豚肉を仕入れることにする。

 

(ここまで)

 

以上のとおり、この第5巻からが、テレビアニメの第2期に当たる部分となっています。

 

この続きも、さらに読み進めてみようと思います。