鷺の停車場

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山田鐘人/アベツカサ「葬送のフリーレン」第3巻・第4巻

原作:山田鐘人・作画:アベツカサのマンガ「葬送のフリーレン」、第1巻・第2巻に続いて、第3巻と第4巻を紹介したいと思います。

この2巻に登場する、個別に名前などが付けられている登場人物は、次のとおりです。

  • フリーレン:千年以上生きるエルフで、勇者パーティーとして魔王を倒した魔法使い。ヒンメルとハイターの死後、フェルンを弟子に、シュタルクを前衛として、死者と会えるという北にあるエンデに向けて旅をしている。

  • フェルン:フリーレンの弟子として共に旅をする魔法使いで、ハイターに育てられた戦災孤児

  • シュタルク:フリーレンとフェルンと共に旅をすることになる戦士で、アイゼンの弟子。

  • ヒンメル:魔王を倒した勇者パーティーの勇者で、自称イケメンのナルシスト。
  • ハイター:魔王を倒した勇者パーティーの僧侶。ヒンメルの幼馴染で、フェルンの育ての親。酒好き。

  • アイゼン:魔王を倒した勇者パーティーの戦士。頑強なドワーフ族でパーティーの前衛を務めていた。シュタルクの師匠。

  • フランメ:1000年以上前に生きた、歴史において英雄と称される人間の大魔法使いで、フリーレンの師匠。

  • グラナト伯爵:北側諸国のグラナト領を治める領主。
  • アウラ:魔王直属の七崩賢のひとりで、“断頭台のアウラ”の異名を持つ魔族。

  • リュグナー:アウラ配下の“首切り役人”の筆頭格の魔族。

  • リーニエ:アウラ配下の“首切り役人”のひとりで、少女のような風貌の魔族。

  • ドラート:アウラ配下の“首切り役人”のひとり。魔力の糸で対象を斬る魔法を駆使する。

  • クラフト:フリーレンたちがシュヴェア山脈の麓の避難小屋で出会ったエルフのモンク(武道僧)。

  • 里長:剣の里の49代目の里長。

  • シュタルクの父:中央諸国のクレ地方の戦士の村で子どもたちを戦士として教育していたシュタルクの父。

  • シュトルツ:シュタルクの長兄。

  • ザイン:高度な治癒魔法を駆使する僧侶。僧侶なのに酒、たばこ、ギャンブルが好き。

  • 戦士ゴリラ:ザインの親友で、10年前に冒険者として旅立っていった。

  • ザインの兄:北側諸国アルト森林の村の教会の僧侶を務めるザインの兄。

  • オルデン卿:要塞都市フォーリヒの領主。

  • ヴィルト:オルデン卿の跡継ぎだった長男。魔族との戦いで戦死した。

  • ムート:オルデン卿の次男。
  • ガーベル:オルデン卿の執事。

  • フォル爺:400年以上もある村を守り続ける老戦士。フリーレン曰く「長寿友達」。

  • 頑固婆さん:ローア街道の村の高台に暮らす婆さん。

  • ユーベル:一級魔法使い試験の受験者の三級魔法使い。

  • ヴィアベル:一級魔法使い試験の受験者の二級魔法使い。北部魔法隊隊長。

  • デンケン:一級魔法使い試験の受験者の二級魔法使い。宮廷魔法使い。

  • ゲナウ:一級魔法使い試験の試験官を務める一級魔法使い。

 

各話のおおまかな内容、あらすじは次のとおりです。

第3巻

 

本巻は、週刊少年サンデーの2020年42号~第51号に掲載された計10話を収載しており、2020年12月に刊行されています。

第18話 不死の軍勢

フェルンとシュタルクに教会に運び込まれたグラナド伯爵は、グラナト家は勇者一行に恩がある。魔族の軍勢に襲われたときに撃退してもらった、そのときの相手もアウラだったと話す。

グラナド伯爵領に進軍を開始していた七崩賢の1人である大魔族・断頭台のアウラの前に姿を現したフリーレンは、引き返してくれるとありがたいんだけど、と言うが、アウラはそれを拒否し、引き連れた首無し兵団を操ってフリーレンに攻撃をしかける。

一方、グラナド伯爵はアウラが使う魔法「服従の天秤」について話す。それは、自身と相手の魔力を天秤にかけ、魔力が低い方を操り人形にするもので、絶大な魔力を持つアウラは、これにより多くの戦士を首無しの兵団に加えていた。

フリーレンはアウラの不死の軍勢と戦い、その魔力を解除していき、やっぱり、お前たち魔族は化け物だ、容赦なく殺せる、とつぶやく。

 

本話は、テレビアニメ版の第9話「断頭台のアウラ」の序盤で描かれた部分に対応しています。

第19話 急襲

グラナド伯爵を教会に残し、2人はリュグナーとリーニエを倒すために動き出すが、2人の服に付いていたリュグナーの血で追跡したリュグナーとリーニエが突然姿を現し、シュタルクはリーニエと、フェルンはリュグナーと1対1で戦うことを余儀なくされる。

血を操る魔法「バルテーリエ」を使うリュグナーは、自らの血を操ってフェルンの肩を貫き、壁に磔にするが、とどめは差さずに、フリーレンの居場所を聞き出そうとする。しかし、フェルンは隙を見て魔法の杖を拾い上げてリュグナーを攻撃して身体の自由を回復し、再び戦いとなる。

 

本話は、テレビアニメ版の第9話「断頭台のアウラ」の中盤で描かれた部分に対応しています。

第20話 師匠の技

フェルンと戦うリュグナーは、その反応速度に驚き、魔法を放つ速さに、徐々に追い込まれていく。

一方、模倣する魔法「エアファーゼン」を使うリーニエは、シュタルクの師匠アイゼンを模倣して戦い、シュタルクは大きなダメージを受けるが、アイゼンの言葉を思い出して諦めずに立ち上がる。相打ち覚悟で斧を振り上げ、動きは模倣だが重さのないリーニエの攻撃をものともせずリーニエの身体を切り裂き、撃破する。

一方のリュグナーは、リーニエが撃破されて、リーニエの方に意識を向けた一瞬の隙に、フェルンに魔法「ゾルトラーク」を打ち込まれ、身体を貫かれる。

 

本話は、テレビアニメ版の第9話「断頭台のアウラ」の終盤で描かれた部分に対応しています。

第21話 卑怯者

フェルンに身体を撃ち抜かれ身体が動かなくなったリュグナーは、絶大な魔力を持つアウラにフリーレンは勝てない、と言うが、フェルンは、フリーレンは決して正面から戦うことはしない、アウラを欺いて勝つ、と宣言する。その言葉に、どうしてフェルンに負けたのか思いをめぐらしたリュグナーは、フェルンが外に放出する魔力を制限していたことに気づき、フリーレンも同じか、卑怯な奴だ、魔法使いの風上にも置けない、と吐き捨てる。フェルンは、そんなことはフリーレン様が一番よくご存知だ、と言い、リュグナーにとどめを刺す。

フリーレンが幼いころ、フランメは魔王軍の将軍・玉座のバザルトの軍勢の襲撃で壊滅したエルフの集落を通りかかり、唯一の生き残りのフリーレンに声を掛け、自分の弟子にする。

フランメは、負傷から回復するのを待って、フリーレンの稽古を始める。最初の課題は、体外に放出する魔力を10分の1以下に抑えるというもので、フリーレンは難なくこなすが、フランメは、お前は一生かけて魔族を欺くんだ、と魔力を制限し続けるよう告げる。

リュグナーたちが死んだことを察知したアウラだが、ここであなたを仕留められれば十分、私の前でそんなに多くの魔力を消費して大丈夫なのかしら?と言うのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第10話「強い魔法使い」の前半で描かれた部分に対応しています。

第22話 服従の天秤

アウラは、自らが持つ「服従の天秤」を出し、「アゼリューゼ」と唱える。

かつて、フリーレンに問われ、フランメは、魔族の地位は魔力の量で決まるから、自らの尊厳を保つため、自らの魔力を誇示する、魔力を制限することなどできないのだと話していた。

フリーレンがフランメの弟子になって50年後、年老いたフランメはフリーレンに、お前に私の魔法を託して良かったと思っている、お前の長い寿命ならいつか魔王を倒すほどの高みにたどりつける、と答えた後、私が死んだら墓の周りを花畑いっぱいにしてほしいと頼み、私が一番好きな魔法は花畑を出す魔法だ、幼い頃に両親が教えてくれた魔法が好きになったきっかけだ、と語る。その魔法教えてよ、と言うフリーレンに、フランメはうなずき、歴史に名を残そうと思うなよ、地味に生きろ、お前が歴史に名を残すのは魔王をぶっ殺すときだ、と言い聞かせる。

フリーレンは、その教えを守り、フランメの墓の周りを花畑にし、各地をめぐり魔法を鍛錬してきた。年月が経ち、フリーレンが暮らす森に、ヒンメルたちがこの森に長く生きている魔法使いがいると聞いてやってくる。最初は追い返そうとしたフリーレンだったが、君は僕が出会ってきたどの魔法使いよりも強い、と言うヒンメルの言葉に、仲間に加わったのだった。

アウラが「アゼリューゼ」と唱え、フリーレンとアウラのそれぞれの魂が飛び出し、天秤の皿に向かっていく。アウラは、自分の勝利を確信してフリーレンの首を自らの剣で斬り落とそうと歩き出す。しかし、アウラとフリーレンの魂が天秤の皿に乗った後、フリーレンは、自分が魔力を制限していたことを明かす。動揺するアウラは、フリーレンに剣を向け、ふざけるな、私は500年以上生きた大魔族だ、と言い張るが、フリーレンが、お前の前にいるのは1000年以上生きた魔法使いだ、と言い返し、自身の魔力を一気に解放すると、服従の天秤は大きくフリーレンの魂に傾き、フリーレンは、アウラ、自害しろ、と告げて踵を返して歩き出し、剣はアウラの首を斬り落とす。

 

本話は、テレビアニメ版の第10話「強い魔法使い」の後半で描かれた部分に対応しています。

第23話 勝利と弔い

アウラとの戦いを終え、フリーレンが目の前に広がるアウラの死によって命を失った首なし戦士たちの亡骸の前で冥福を祈っていると、リュグナーたちとの戦いを終えたフェルンが歩み寄り、ともに祈りを捧げる。

そして、グラナト伯爵は、フリーレンに感謝の意を伝え、今日ほど誰かに感謝したことはない、と心の中でつぶやく。

屋敷に戻ったグラナト伯爵は、でき得る限りの褒美を取らせると言うが、魔法を集めるのが趣味のフリーレンは、偽物であることは百も承知で、グラナド伯爵家に代々伝わる大魔法使いフランメの魔導書を所望する。

街に出て歓待を受ける3人はしばらく街で過ごした後、旅立つが、見送るグラナト伯爵は、北側諸国の情勢がだいぶ悪く人の往来が制限されており、一級魔法使いの同行が必要だと話す。フェルンは旅に出る前に聖都で大陸魔法協会が認定する三級魔法使いの資格を取っていたが、フリーレンは、資格を持っていないことを明かす。グラナト伯爵は、北側諸国最大の魔法都市・オイサーストなら一級魔法使いの試験が受けられるが、シュヴェア山脈を越えたずっと先だと話し、グラナト家はこの恩を決して忘れない、よい旅を、と言って見送る。

出発して間もなく、雪が舞い始める。雪を見てフリーレンは、ここらへんの冬は厳しいから気を付けてね、魔王軍との戦いで最も多くの人を殺したのは北側諸国の冬だ、と語るが、雪は強さを増して吹雪となってしまう。

 

本話は、テレビアニメ版の第11話「北側諸国の冬」の前半で描かれた部分に対応しています。

第24話 エルフの願望

ヒンメルの死から28年後、北側諸国のデッケ地方にさしかかったフリーレンたちは、吹雪の中で道に迷い、シュタルクは疲労で眠ってしまう。フェルンがシュタルクを担いで引きずりながら吹雪の中を進み、フリーレンたちはシュヴェア山脈の麓にある避難小屋にたどり着く。フリーレンがその扉を開けると、上半身が裸の男がスクワットしていた。男がフリーレンがエルフであることに気づいて声を掛け、3人はその小屋に避難することになる。

その男は、モンク(武道僧)のクラフトと名乗り、シュヴェア山脈を越えてきたが、吹雪で火種を失い、スクワットで体を暖めて命をつないでいたと話す。フリーレンたちも冬が明けるまで小屋で過ごすことになる。

約半年が過ぎて冬が明けるころ、クラフトは、信仰心の篤いフェルンのために木を削ったペンダントを作ってフリーレンに託し、長寿の自分たちには、自分が成してきた偉業を知っている人は死に絶えた、だから死んだら天国で女神様に褒めてもらうのだ、自分の生きてきた軌跡が誰にも覚えられていないのはあまりにも酷だ、と女神を信仰している理由をフリーレンに語る。それは私たちの願望だ、と言うフリーレンに、お前の身の上を話せ、女神様の代わりに褒めてやる、と勧める。

その言葉に、フリーレンは、旅の途中、孤児院の設立資金を出したハイターは、きっと女神様も清く正しく生きた自分を褒めてくださるでしょう、と言い、フリーレンに、身の上を話してくれれば、代わりに褒めてあげますよ、と言ったことを思い出す。

それを思い出し、やめておく、もう褒めてもらったから、とフリーレンが答えると、クラフトは、いい友だちだな、大事にしろよ、と言う。そして、もう天国にいる、とのフリーレンの言葉に、ならいずれ会えるな、と答えるのだった。

そして、別れの時がやってくる。クラフトは、今生(こんじょう)の別れとは思わん、何百年後かにまたな、と言ってフリーレンたちとは反対方向に歩き出すのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第11話「北側諸国の冬」の後半で描かれた部分に対応しています。

第25話 剣の里

フリーレンは夢の中で、ヒンメルたちと魔王討伐に出発した頃の思い出を見る。行商人からお礼でもらった「勇者の剣」のレプリカを持っていたヒンメルは、同じ孤児院にいたハイターから、偽物の剣しか持っていないから偽物の勇者にしかなれないと言われ、じゃあ本物になってやろうと思ったのが勇者になったきっかけだと語り、いつか本物の勇者の剣を手に入れて魔王を打ち倒す、と宣言したのだった。

ヒンメルの死から29年後、北側諸国のシュヴェア山脈を雪が降る中進むフリーレンたち。フリーレンは疲れて眠ってしまいフェルンに背負われて進む。

そうして、フリーレンたちは剣の里に到着し、49代目の幼い里長が3人を出迎える。シュタルクはフェルンに、ここは「勇者の剣」を守っていた里だ、近くの聖域に女神様が授けたとされる「勇者の剣」が刺さっていた、80年前にヒンメルが抜くまでは、歴史上のどんな英雄たちが引き抜こうとしても微動だにしなかった、引き抜けるのはこの世界を滅ぼす大いなる災いを撃ち払う勇者のみと伝えられている、と説明する。

里長は、半世紀後にまた来てもらう約束だったのに困ります、と先々代の祖母の遺言を伝える。

翌日、魔物を討伐するフリーレンたちだったが、討伐を終えた後、シュタルクは、洞窟の奥の台座に「勇者の剣」が刺さったままになっていることに、こいつはどういうことだ、と疑問をフリーレンにぶつける。フリーレンは、ヒンメルはこの剣を抜けなかったんだ、と語り出す。その脳裏には、当時のことが浮かぶ。剣を抜けなかったヒンメルは、偽物の勇者でいいじゃないか、僕は魔王を倒して世界の平和を取り戻す、そうすれば偽物だろうが本物だろうが関係ない、と語ったのだった。フリーレンは、「勇者の剣」が抜けなくても魔王討伐を成し遂げたヒンメルを本物の勇者だと称え、伝説が生まれたのは、ヒンメルを英雄にしたがっている連中の仕業だ、「勇者の剣」が抜けなかったというカッコ悪いエピソードは英雄には不要だ、英雄というのはどうしても後世の連中が勝手に美化していく、そしてそのうち原型すらなくなってしまうんだ、と語る。

里長は、フリーレンならやってくれると信じていた、感謝、と祖母の遺言を伝え、今度は半世紀後に遅れないでください、と見送り、3人は剣の里を旅立つ。

 

本話は、テレビアニメ版の第12話「本物の勇者」の前半で描かれた部分に対応しています。

第26話 戦士への贈り物

ヒンメルの死から29年後、フリーレンたちは北側諸国のアペティート地方の町に到着する。宿でベッドに横になって魔導書を開くフリーレンは、不意に、今日はシュタルクの18歳の誕生日だとフェルンに話し、怪しげな液体が入った瓶を見せ、服だけ溶かす薬、男ってのはこういうのを渡しておけば喜ぶんだよと師匠が言ってた、と得意げな顔をする。フェルンはその瓶を取り上げて薬を頭から浴びせ、この下品な薬、買ったときに返品しろって言いましたよね、と冷たく言い放ち、シュタルクへのプレゼントを買いに出かけていく。服が溶けてしまい、代わりに何をシュタルクに上げようかとトランクの中を探すフリーレンは、これがあったか、と紙きれを手にする。

一方のフェルンは、どんなプレゼントが好みなのか直接本人に探りを入れようとシュタルクを探すが、シュタルクは街のあちこちで人助けをしていた。ようやくシュタルクを見つけたフェルンは、少し歩きませんか、とシュタルクを誘い、街を歩きながら、今日がシュタルクの誕生日だからプレゼントをと言うと、シュタルクは、死んだ故郷の家族からも師匠からも誕生日のプレゼントをもらったことがない、そういうものなんだと思っていた、単に家族に大事にされていなかったのだろう、と言う。

シュタルクには、幼い頃の思い出が蘇る。シュタルクの父はシュタルクを失敗作だと切り捨てるが、兄のシュトルツだけは、お前はきっと強くなる、と励ましていた。しかし、故郷が魔族に襲われたとき、自分だけが泣きながら家族を見捨てて逃げ出したのだった。それを話し、家族から祝ってもらえなくて当然かもな、自分は逃げてばかりの失敗作だ、と自分を卑下するシュタルクに、フェルンは、過去なんて関係ない、私が見てきたシュタルクは一度たりとも逃げていない、と励ます。その言葉に元気をもらったシュタルクは、フェルンと露店を回り、ブレスレットをプレゼントしてもらう。

2人が宿に戻ってくると、フリーレンは特大のハンバーグを作っていた。シュタルクは、誕生日といったらこれだ、アイゼンもプレゼントはくれなかったが誕生日のハンバーグは作ってくれた、と語ると、フリーレンは、ヒンメルたちとの旅の途中、アイゼンは、故郷の風習で、精一杯頑張った戦士を労う贈り物だ、とヒンメルたちの誕生日にハンバーグを焼いてくれたことを話す。その話を聞いたシュタルクは、兄のシュトルツが自分の誕生日に父親には内緒でハンバーグを作ってくれたこと、そして、故郷が魔族に襲われたとき、シュトルツはシュタルクに、お前は生きるんだ、と言って村から逃げさせたことを思い出す。

 

本話は、テレビアニメ版の第12話「本物の勇者」の後半で描かれた部分に対応しています。

第27話 平凡な村の僧侶

勇者ヒンメルの死から29年後、北側諸国のアルト森林に差し掛かり、薬草を集めていたフリーレンは、底なし沼にはまった男に出会う。男は、小さい頃に一緒に小さな冒険をいっぱいした親友がいた、大人になってそいつから冒険者にならないかと誘われた、あのときあの手を取っていたら何かが変わっていたのだろう、もう10年前の話だ、今でも後悔していると語るが、体が沈み始め、慌てて助けを求める。フリーレンは魔法で底なし沼から救い出す。

フリーレンたちは、その男と別れ、大きい街に向かおうとするが、シュタルクが毒蛇に噛まれてしまい、教会で診てもらおうと男の村に戻る。教会に顔を見せた僧侶の弟は、先に出会った男・ザインで、魔法で治癒すると、シュタルクはすっかり回復する。その高い治癒能力を見たフリーレンは、天性の才だと評価し、ザインの兄は、ザインの才は私の比ではない、かつてザインは冒険者になりたいと言っていた、どうかザインをこの村から連れ出してくれないかと頼む。

シュタルクとフェルンはそれに賛成するが、フリーレンはザインを誘うべきか考えあぐね、何が不満なのか聞かれて、同族嫌悪かな、と答える。シュタルクは、自分ひとりでも勧誘しに行くと言って、宿の建物の1階の居酒屋に入りびたっているザインを誘いに行き、ポーカーに興じていたザインから、俺に勝てたら仲間になってやるよ、と持ちかけられてそれに応じるが、ともにポーカーに敗れ、身ぐるみをはがされてパンツ一丁で放り出されてしまい、ザインは、仲間探しは他を当たれ、と誘いを断る。冒険者になりたいんでしょ、と誘うフリーレンに、昔の話だ、とザインは断るが、フリーレンは、私は今の話をしている、と迫り、私はザインのことが嫌いだ、だから意地でも仲間に誘うことにした、と宣言する。

 

本話は、テレビアニメ版の第13話「同族嫌悪」の前半で描かれた部分に対応しています。

第4巻

本巻は、週刊少年サンデーの2020年52号~2021年第11号に掲載された計10話を収載しており、2021年3月に刊行されています。

第28話 僧侶と後悔

フェルンはシュタルクとザインの服などを買い戻し、宿に戻ったフリーレンは、仲間にするかどうかは別にして、ザインは冒険者になるべきだ、たまには背中を押してみるのもいいと思ったと語る。

翌日から、収穫祭が行われる村に滞在し、毎日のようにザインを誘うフリーレンたち。その姿に、ザインは、3年後の収穫祭までには戻る、覚悟が決まらないならその時でいい、次の冒険は一緒に行こう、と言って旅立っていった親友を思い返すが、何で今さら、今ではもう眩しすぎると感じ、決意できずにいた。

苦戦するフリーレンたちは、ザインの兄に、ザインの好きな物が何か尋ねる。ザインの兄は、酒、煙草、ギャンブル、そして年上のお姉さんが好きだと語る。フリーレンは、自分が年上であることに気づいて、ザインに投げキッスをするが、かつてヒンメルを失神させる威力を発揮した作戦は失敗する。ザインは、俺は冒険者になるつもりはない、3年で戻ると言った親友は10年経っても戻ってこない、死んでいるに決まっていると再び拒む。フリーレンは、まだたったの10年、今会いに行かないと近い未来に後悔する、と説得を試みる。兄を置いてこの村を出て行くことはできないと言うザインに、ザインの兄は、そんなことを考えていたのか、と言ってザインを平手打ちし、お前はいつまで後悔し続けるつもりか、と言う。

その言葉で、ザインは冒険者になって親友を追いかけることを決意し、フリーレンたち一行に加わる。

 

本話は、テレビアニメ版の第13話「同族嫌悪」の後半で描かれた部分に対応しています。

第29話 理想の大人

ヒンメルの死から29年後、僧侶ザインを仲間に加え、北側諸国のラート地方の町に到着し、宿に入ったフリーレンたちだが、フェルンとシュタルクがケンカとなり、シュタルクは、もういい、師匠のところに帰る、と捨て台詞を吐いて出て行ってしまう。フェルンが自分の誕生日なのにシュタルクが何もプレゼントを用意していないことに腹を立てたのだと聞いたザインは、男っていうのは誕生日とか記念日とか細かいことは気にしない生き物、シュタルクが可哀そうだ、あの年頃の男子は女の子の言動に一喜一憂する、追いかけた方がいいと思うと助言する。

フリーレンにも背中を押されてシュタルクを探しに外に出たフェルンは、街の広場にあるヒンメルの銅像の前で落ち込んで座っているシュタルクを見つけるが、話しかける勇気が出ない。町を歩くと、ザインが店でフェルンへのプレゼントを選んでいた。ザインはフェルンにその店で買ったポシェットを贈り、早くシュタルクに謝って一緒にプレゼントを選んでこい、想いは言葉にしないと伝わらない、とアドバイスして去っていく。

再び街の広場に戻ったフェルンは、シュタルクに声を掛ける。フェルンが謝るより先にシュタルクが、本当は2人で選びに行きたかったが言い出せなかったと謝る。フェルンもシュタルクに謝り、2人は一緒にプレゼントを選び街を歩き始める。

それを建物の屋根の上から眺めていたフリーレンに、やってきたザインは、あんな風に衝突するのは若者の特権だと語り、フェルンはフリーレンじゃなく自分に相談しに来た、一体俺を誰と比べて誰と重ねているのか、ハイターのような偉大な僧侶と比べられちゃたまったもんじゃないと言うが、フリーレンは、全然偉大じゃない、酒飲みでよく二日酔いになっていた、ただのなまぐさ坊主だと言う。それを聞いたザインは、俺の記憶にあるハイターは自分と違って理想的な大人だったと語るが、フリーレンは、ハイターの晩年とのやりとりを思い出し、ちゃんと大人やれていると思うよ、と言ってザインの頭を撫でるのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第14話「若者の特権」の前半で描かれた部分に対応しています。

第30話 鏡蓮華

ヒンメルの死から29年後、北側諸国バンデ森林に入ったフリーレンたちは、先にある村で装飾品店を営んでいる商人の馬車に乗せてもらっていた。装飾品に興味はないかと話す商人に、フリーレンがフェルンを見ると、フェルンの左手首には、シュタルクからのプレゼントのブレスレットがあった。フリーレンは、同じデザインの指輪を持っている、前にヒンメルからもらった、と言ってトランクを開けて探し始めるが、指輪が見つかったその時、馬車が鳥の魔物に捕まり、指輪はその衝撃で見当たらなくなってしまう。フェルンの提案で、魔物を倒して、落下する馬車が地面に衝突する直前に、馬車を魔法で浮かせることを試みるが、馬車が壊れてしまい、その修理を終えるまでの間、森の中で過ごすことになる。

フェルンが身に付けているブレスレットが目に留まったザインは、その意匠は鏡蓮華、花言葉は久遠の愛情、この地方では恋人に贈るものだ、とシュタルクに話す。花言葉を知らなかったシュタルクは、買い直そうかとフェルンに言うが、フェルンは、これはシュタルクが一生懸命選んで私にくれたもの、二度とそんなことは言わないで、とそれを拒む。

馬車の修理が終わり、出発を翌朝に控えた夜、フリーレンが指輪を探していると、フェルンが声をかける。わけを聞いたフェルンは、見つかるまで出発を待ってもらおうと言い、今夜見つからなかったら諦めると言うフリーレンに、鏡蓮華の花言葉を伝え、きっと大事なもの、みんなで探そうと言って、他の一行にも声をかける。すると、商人は、もっと早く言ってくださればよかったのに、と言って、失くした装飾品を探す魔法をフリーレンに教える。

その魔法を使って指輪を探すと、森の中で指輪が見つかる。フリーレンは、ヒンメルがその指輪を買ってくれたときのことを思い出し、出発した馬車の中で、その指輪を、掌の上に乗せて見つめる。フェルンに、諦めなくて良かったですね、と言われたフリーレンは、そうかもね、と言うのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第14話「若者の特権」の後半で描かれた部分に対応しています。

第31話 混沌花

ヒンメルの死から29年後、北側諸国のラオブ丘陵を歩いて進むフリーレン一行。ザインはこのパーティには足りないものがある、色っぽい年上のお姉さんだ、と熱く語る。シュタルクはフリーレンがいるでしょ、と言うが、ザインは、いやだ、お姉さんじゃないもん、と辛そうな表情で訴える。

そうして次の村にやってくると、村人たちはみな眠っていた。村人を診たザインは呪いだと言う。フリーレンは、魔物や魔族が使う人を眠らせたり石にしたりする魔法の中で人類が解明できていない魔法を呪いと呼んでいる、人類の魔法技術では原理も解除方法も分からないが、呪いへの対処は昔から僧侶の生業、女神様の魔法は聖典に記されており聖典の所持者しか使えないと説明する。

村人を診て呪いの種類と発信源を調べたザインは、かなり特殊な呪いで解除には儀式が必要で道具も要る、呪いの発信源を叩いた方が早い、と言い、その魔物がいる森に向かうが、最初にシュタルクが、次いでフェルンも呪いの影響で眠ってしまう。フリーレンは2人を結界を張って隠し、ザインと先に進むが、魔物までもう少しというところで、フリーレンも、魔物が出たら起こして、ひとりで戦っちゃだめだよ、私が必ず倒すから、と言って眠ってしまう。

今使える魔法では5秒しか目覚めさせることができないザインは、フリーレンをおぶって魔物の近くまで運び、ひとりで混沌花の亜種の魔物に立ち向かい攻撃するが、その葉で防御し魔法は反射してしまう。ザインは、フリーレンの強力な魔法が乱反射すれば村も危ない、たった5秒では説明する時間もない、意思疎通できるほどの信頼関係も築けていない、とフリーレンを起こすべきか迷うが、幼い頃に会ったハイターが、冒険者には意思疎通も信頼関係も必要ないと思っている、特に仲間だったフリーレンはその点が拙かった、だから私は彼女の話を信じることにした、と話していたことを思い出し、フリーレンを起こす魔法を発動させる。すると、目覚めたフリーレンはすぐにコアに攻撃を命中させて魔物を倒す。

村に戻ったザインたちは、この御恩は忘れませんと村の領主から感謝される。村を出発し、フリーレンは今回生きて帰れたのはザインのおかげだとその頭を撫でるが、ザインは、あの村のお姉さん綺麗だったな、と言うのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第15話「厄介事の匂い」の前半で描かれた部分に対応しています。

第32話 オルデン家

ヒンメルの死から29年後、魔法都市オイサーストまでの中継地点である北側諸国の要塞都市フォーリヒの近くまでやってきたフリーレンたち。そこに突然、通りかかった馬車から下りてきた貴族が声を掛けて、シュタルクの全身をくまなくチェックし、いい体だ、容姿も悪くない、私の屋敷に来い、と連れていかれる。

屋敷に到着すると、オルデン郷はシュタルクに依頼がある、金なら出す、と言い、手持ちの路銀が底を尽きかけて金がほしいフリーレンたちは、話を聞くことにする。依頼とは、士気を下げないために、魔族との戦いで戦死した跡継ぎの長男ヴィルトの代役をシュタルクに務めてもらい、3か月後に開かれるこの地方の有力者が集まる社交会でヴィルトの健在を示す、というものだった。

それから、執事のガーベルに乗馬やダンスなどの作法を叩きこまれるシュタルク。オルデン卿はフェルンにも、社交会に年頃の男子がひとりで行くことなどあり得ると思うか?と言って作法の練習をさせる。

社交会の当日、ここ1か月は地獄だったと言うフェルンに、ヴィルトそっくりの姿になったシュタルクは、せっかく練習したんだし踊ろうぜ、とその手を取り、一緒に踊る。

社交会が終わった後、オルデン卿はシュタルクに、お前の戦士としての力量は素晴らしい、お前さえ良ければ…と言うが、シュタルクは、俺はあんたの息子の代わりじゃない、と断る。

翌日、フリーレンは報酬としてお金のほかに1冊もらえることになっていた魔導書を選ぶのに半日もかかり、立ち会うガーベルは困憊させる。シュタルクは、窓の外に、オルデン卿が次男のムートに稽古をつけているのを見て、跡継ぎには困らなそうだ、と言うのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第15話「厄介事の匂い」の後半で描かれた部分に対応しています。

第33話 フォル爺

ヒンメルの死から29年後、北側諸国のクラー地方にやってきたフリーレンたち一行は、死ぬ前にゆっくり話がしたいというフリーレンの希望で、400年以上村を守っているドワーフでフリーレンの「長寿友達」であるフォル爺を訪ねる。着いた村の入口に座っていたフォル爺は、シュタルクの油断を突いて一撃を与えて倒すほどの強さだった。

フリーレンがフォル爺と話している間、フェルンは魔法で収穫を手伝うが、村人は、フォル爺があんなに楽しそうに話しているのは初めて見た、耄碌して普段は会話すらままならない、昔から村を守ってくれているが、その理由もわからない、と話すのだった。

一週間が経とうという頃、フリーレンはフォル爺と夜道を歩きながら、とても楽しい時間だった、ヒンメルたちを知る機会をくれて今ではとても感謝している、と話す。ヒンメルは、かつてこの村を訪れたとき、ヒンメルという偉大な勇者の記憶も自分が未来に連れていってやろう、と語ったフォル爺に、そこまでしてもらう必要はない、僕たちの記憶はフリーレンが未来に連れていってくれる、と言ったのだった。

フォル爺は、私はもう妻の顔も声も眼差しも思い出せない、それでも大切な何かのためにこの村を守っていると語り、フリーレンは、フォル爺の記憶も私が未来に連れていく、と言うと、フォル爺は、人生の最後にお前に会えてよかったと話す。翌朝、フリーレンの旅立ちの日、フォル爺は、妻の夢を見た、フリーレンと昔話をしたおかげかもしれないと微笑むのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第16話「長寿友達」の前半で描かれた部分に対応しています。

第34話 英雄の像

ヒンメルの死から29年後、北側諸国のローア街道にやってきたフリーレンたち一行。ザインは、戦士ゴリラの行方を探して出会った人にペンダントの写真を見せて尋ねていた。あと1週間で魔法都市オイサーストに着こうかというところで、ザインの希望でいくつかの街道が分岐する村に立ち寄ることにする。その村で聞き込みをするザインは、村人から、近くに出た魔物を退治してもらった、その後どこに行ったかは、高台に住んでいる頑固婆さんと仲が良かったようなので聞いてみるといい、と情報を得る。

頑固婆さんを訪ねたザインたちは、そう簡単には教えられない、自分の依頼をいくつかこなしてもらう、と言われる。頑固婆さんの依頼をひとつずつ片付けていっても、頑固婆さんはなかなか心を開かないが、最後の依頼だと言って、石像磨きを依頼し、その場所に案内する。頑固婆さんは、はるか昔に世界を救ったとされる英雄様の石像だが、それ以上は名前もわからない、忘れられた英雄で、代々この村で管理していると言う。

その石像を見たフリーレンたちは、その1人がかつて避難小屋で一緒にひと冬を過ごしたクラフトと瓜二つなのに気付く。ザインは、子ども時代の戦士ゴリラが、同じモデルの石像を見せて、大昔の英雄だが誰も名前すら覚えていない、自分たちはこうはならない、忘れられないためには名前のインパクトが大事だ、今日から戦士ゴリラと名乗ると宣言したときのことを思い出す。

苦労して石像をきれいにしたザインたちに、頑固婆さんは、戦士ゴリラがよくザインのことを話していたと語り、戦士ゴリラがテューアに向かったことを教える。テューアはフリーレンたちが目指すオイサーストとは逆方向にある街だった。困ったザインは、どうしたもんかね、とこぼすのだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第16話「長寿友達」の後半で描かれた部分に対応しています。

第35話 旅立ちのきっかけ

ザインは単身テューアに向かうか悩むが、日も暮れてきたことから、結論は翌日に持ち越し、集落で小屋を借りて一晩泊まることにする。その夜、雪が降り出し、翌日には猛吹雪となっていた。村人からこの地方の寒波は1月は続くと聞き、一行は寒波が去るまで小屋で過ごすことになる。

そろそろ寒波も去ろうかというある日、ザインが酒場で酒を飲んでいると、フリーレンが、フェルンとシュタルクがたぶん喧嘩している、仲裁してよ、仲裁は僧侶の仕事なんだよ、とやってくる。ザインが小屋に戻ると、シュタルクは落ち込み、フェルンはムスッとしていた。ザインは1人ずつ隣の部屋に呼んで話を聞き、2人を仲直りさせる。

仲裁を終えた後、フリーレンと一緒に再び酒場に行ったザインは、テーブルを叩き、もう付き合っちゃえよ!と叫んで酒をあおる。フリーレンは、ザインはとても頑張っている、助かったと感謝する。ザインが、何で俺なんかにこんなに構ってくれるんだ、と尋ねると、フリーレンは、冒険に出ようとしないザインは魔王討伐に旅立つ前の自分とよく似ていて、頭に来た、だからこそきっかけを与えたかったんだろう、と答え、ヒンメルから魔王討伐に誘われたときのことを思い出す。

寒波が去った後、ザインは、俺はやっぱりゴリラを追いかける、後悔するつもりはない、じゃあ元気で、と言ってテューアに向かって歩き出し、フリーレンたちは、それを見送ってオイサーストに向けて歩き出す。ザインは、ひとり歩きながら、フリーレンたちとの旅路を思い出し、ひとりだとこんなに静かなんだな、とつぶやく。

 

本話は、テレビアニメ版の第17話「じゃあ元気で」の前半で描かれた部分に対応しています。

第36話 心の支え

ヒンメルの死から29年後、ザインと別れ、北側諸国のオッフェン群峰にやってきたフリーレンたち3人だったが、野営した森でフェルンが熱を出してしまう。フリーレンはザインが残した薬草について書いた手記を確認して、聖典を使って魔法で病気を判別し、ただの風邪だと判断し、フェルンを近くの住民の家で寝かせてもらう。フェルンの手を握るフリーレンは、小さい頃から風邪をひいた時に手を握ってあげると安心するんだ、と言うが、それを聞いたフェルンは、手を離し、恥ずかしいです、子ども扱いしないでください、と言って手を離す。

ヒンメルたちと前に薬草を採取した氷柱桜のある場所に向かうフリーレンに、シュタルクは、何でフェルンの手を握ったのか尋ねる。フリーレンは、辛そうだったから手を握っただけ、あれしか苦痛を和らげる方法は知らないから、と答え、シュタルクも、人には心の支えが必要、支えてもらって悪い気分になる奴はいないと話す。それを聞いたフリーレンは、自分が寝込んだとき、ヒンメルが、心の支えが必要なのは子どもだけじゃない、と手を握ってくれたことを思い出す。

氷柱桜の根に生えるキノコを採取して薬を調合したフリーレンは、それをフェルンに飲ませ、手を握って看病する。フェルンの体調が回復し、3人は魔法都市オイサーストに向けて歩き出す。

 

本話は、テレビアニメ版の第17話「じゃあ元気で」の後半で描かれた部分に対応しています。

第37話 一級試験

ヒンメルの死から29年後、ザインと別れて旅を続け、北側諸国のキュール地方までやってきたフリーレンたちは、丘の上から魔法都市オイサーストを一望し、さらに歩みを続ける。フリーレンは、どうせ一級魔法使いの資格を取ってもすぐ使えなくなっちゃう、フェルンが取ればいいじゃん、と言うが、フェルンは、一級魔法使いは魔法使いの中でも一握りの熟練した魔法使い、私なんかには無理、と尻込みする。シュタルクは、どうして北部高原に入るのに一級魔法使いの同行が必要なのか尋ねると、フリーレンは、昔から北部高原は狡猾な魔法を使う魔物が多いが、通行に熟練の魔法使いを要求するということは、北部高原では相当厄介なことが起こっているのだろうと語る。

馬車をつかまえてオイサーストに向かう一行。フリーレンは、魔法使いの強さを決めるのは魔力だけじゃない、技術や経験、扱う魔法やコントロール、努力や根性、そして才能、と言う。

オイサーストに着いたフリーレンたちは、魔法使い試験の受付で、試験は2か月後で、受験資格に5級以上の魔法使いの資格が必要だと聞き、今の魔法使いの資格を持っていないフリーレンは、三級魔法使いの資格を持っているフェルンに任せて出て行こうとするが、フェルンは自分だけでは無理です、と必死に引き止める。フリーレンは、首飾りのような「聖杖の証」を出して、これじゃ無理だよねと言うが、それを耳にした大陸魔法協会の者がそれを確認し、受験が認められる。

受付を出て、街を歩くフリーレンは、まさかまだこれを知っている人がいたなんて、と感想を漏らす。ヒンメルが、僕たちはその首飾りのことは知らないが、君が凄い魔法使いであることを知っている、それでいいじゃないか、と語ったことを思い出すと、フェルンも、私たちはフリーレンが凄い魔法使いであることを知っていますから、と励ますように言葉をかける。

試験が来るまでの間、フリーレンたちは、図書館で魔法使い試験について調べ、試験に備えて魔法の修行に励み、試験当日を迎える。

フリーレンやフェルンたち受験者の前で、第一次試験の試験官のゲナウが試験について説明し、57名の受験生は3人1組のパーティーに分けられる。フェルンのパートナーとなったのはユーベルとラントだった。

 

本話は、テレビアニメ版の第18話「一級魔法使い試験」の前半で描かれた部分に対応しています。

 

以上のように、この第3巻・第4巻では、テレビアニメ版の第9話から第18話の前半に対応する部分が描かれていますが、原作コミックを読んで、テレビアニメ版が原作となるこのコミックの内容にかなり忠実に描かれていることが改めて分かりました。

続きはまた改めて。