金曜日の朝、TOHOシネマズ流山おおたかの森に行きました。
朝9時前ですが、ロビーにはけっこうお客さんがいました。
この日の上映スケジュール。この日は合計25作品・28種類の上映が行われていました。
観るのは、「きみの色」(8月30日(金)公開)。全国273館と大規模な公開です。
上映は、125+2席のスクリーン4。お客さんは15人くらいでした。
(チラシの表裏)
(チラシの中見開き)
(別バージョンのチラシ)
山田尚子監督によるオリジナル長編アニメで、その他の主要スタッフは、脚本:吉田玲子、音楽:牛尾憲輔、キャラクターデザイン・作画監督:小島崇史、キャラクターデザイン原案:ダイスケリチャード、制作・プロデュース:サイエンスSARU など。
公式サイトで紹介されている主な登場人物・キャストは、次の2人です。
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日暮 トツ子【鈴川 紗由】:全寮制の学校に通う女子高校生。子供のころから人が「色」で見えるが、唯一自分自身の「色」だけは見えない。担当はピアノ。
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作永 きみ【高石 あかり】:トツ子と同じ学校に通っていたが、突然中退。同居する祖母に辞めたことを言えず、毎日学校に行くふりをしながら古本屋でアルバイトをしている。担当はボーカルとギター。
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影平 ルイ【木戸 大聖】:離島に住む、音楽が好きで物静かな男の子。母親に家業の病院を継ぐことを強く期待され、好きな音楽の道に進みたい本心を隠している。担当はテルミン・オルガン。
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百道 さく【やす子】:トツ子のルームメイトで”森の三姉妹”の一人。大らかで心が強い。食いしん坊。
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七窪 しほ【悠木 碧】:トツ子のルームメイトで”森の三姉妹”の一人。明るくておっとり。ちょっぴり変わったものが好き。
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八鹿 スミカ【寿 美菜子】:トツ子のルームメイトで”森の三姉妹”の一人。友達思いのギャル。モノマネが上手い。
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作永 紫乃【戸田 恵子】:きみと二人で暮らす祖母。きみが退学したことをまだ知らない。
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シスター日吉子【新垣 結衣】:トツ子が通う学校のシスター。同校の卒業生でもあり生徒たちにとってや良き相談相手。
公式サイトのストーリーによれば、
わたしが惹かれるのは あなたの「色」
高校生のトツ子は、人が「色」で見える。嬉しい色、楽しい色、穏やかな色。そして、自分の好きな色。
そんなある日、同じ学校に通っていいた美しい色を放つ少女・きみと、音楽好きの少年・ルイと古書店で出会う。
周りに合わせ過ぎたり、ひとりで傷ついたり、自分を偽ったり―—。
勝手に退学したことを、家族に打ち明けられないきみ。母親からの将来の期待に反して、隠れて音楽活動をしているルイ。そして、自分の色だけは見ることができないトツ子。それぞれが誰にも言えない悩みを抱えていた。
よかったらバンドに、入りませんか?
バンドの練習場所は離島の古教会。音楽で心を通わせていく三人のあいだに、友情とほのかの恋のような感情が生まれ始める。
わたしたちの色、わたしたちの音
やがて訪れる学園祭、初めてのライブ。観客の前で見せた三人の「色」とは。
・・・というあらすじ。
山田尚子監督のこれまでの作品と同じく高校生を主人公に、10代後半特有の繊細な心の揺れ動きを美しく描いた作品。淡い水彩画を感じさせるような画調で、しぐさに語らせる描写、足だけを映すシーンなど、山田監督に特徴的な語り口は健在で、心温まる青春物語でしたが、それぞれの登場人物の心の葛藤、陰の部分があまり描かれないので、物語としての彫りは浅い印象も受けました。
ただ、この点については、ネット配信されているインタビュー記事で、憎しみや裏切りといった人間の嫌な部分に踏み込まないのは監督のポリシーなのか?との質問に対して、「時間がもったいない気がするんです。悩みとか苦しみとか気まずい思いとか叱られたこととか、そういったことはみなさんすでに経験されているわけじゃないですか。だから、そういうものは描かなくても経験値で補填できるわけだし、わざわざ嫌な思いをフラッシュ・バックさせる必要もない。それよりも、それをどう乗り越えたかを描く方が大事だと思うし、なにより、人が好きなものと出合ってなにか大切な感情が生まれた、その瞬間、「作用」ですよね。その動きの方がずっとロマンチックだと思っていて、私はそれが描きたいので、つらい、しんどいシーンに時間を割いている余裕はないんです」と山田監督自身が語っています。
なので、これは監督自身の意図的な選択の結果なのだろうと思いますが、私には、そうした要素がにじみ出る部分があった方が、観る人にもっと刺さったのではないかという気がしました。
以下はネタバレになりますが、備忘も兼ねて、より詳しめにあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)
長崎のキリスト教系の全寮制女子高・虹光女子高等学校に通う日暮トツ子。小さい頃から、人の色が見えるトツ子は、もし自分の色が見えるならどんな色なんだろう?と思っていた。
そんなトツ子は学校で見かけた作永きみの綺麗な青色に惹かれる。そして、体育の授業できみのクラスと一緒にドッヂボールをすることになったトツ子は、きみにボールをぶつけられて倒れてしまうが、心配して駆け付けたきみを見て、キラキラしていると見惚れる。しかし、その次の体育の授業では、きみはいなかった。気になったトツ子がきみのクラスメイトに尋ねると、きみが学校を辞めたと聞かされる。
生徒がきみを本屋で見たと話すのを耳にしたトツ子は、市内の本屋を巡ってみるが、きみは見つからない。一方、学校を辞めたことを同居する祖母に言い出せないきみは、制服を着て家を出て、古書店「しろねこ堂」に着くと、着替えて店番をしながら、ギターを練習するのだった。
学校帰りに再び本屋巡りをするトツ子は、1匹の白猫に出会う。その白猫を後を付いて路地を入っていくと、「しろねこ堂」の前に連れていかれる。トツ子がその店に入ると、きみがギターを弾きながら、トツ子が聞いたことのある歌を歌っていた。それは高校の聖歌隊が歌っていたグレゴリオ聖歌の「アヴェ・マリア」だった。きみはトツ子に気が付くが、緊張でうまく話せないトツ子はごまかすように近くにあったピアノ小品集の本を手に取りそれを買う。そこに、店に来ていた男子高校生のルイが、バンドをやっているんですか?ときみに話しかける。トツ子は思わず、バンドメンバー募集中なので入りませんか?と声を掛け、3人でバンドを始めることになる。
ルイが住む離島に船で向かうトツ子ときみ。島に着くと、出迎えたルイは古い教会に連れて行く。今は使われていない教会で、掃除をする代わりに内緒で使わせてもらっているのだという。ルイがテルミン(空間中の両手の位置で電波を制御して音程と音量を操作する電子楽器)を弾くと、きみもそれに合わせてギターを弾く。練習後、岸壁で3人でアイスを食べた後、船で帰るトツ子ときみ。トツ子は、あまりピアノは上手じゃないと打ち明けると、きみは、ギターは就職して出て行った兄が置いていったもので、自分も始めたばかりだと話す。
次の練習で、ルイはオリジナルの曲をやってみたいと提案し、きみも興味を示す。トツ子はきみの色のを音にしたいと考え、電子ピアノを叩いてメロディを作り、それをスマホで録音してルイときみに送る。
「しろねこ堂」の店番をしながらギターを弾いて曲作りをするきみ。そこに予備校帰りのルイがやってくる。きみは、自分が作る曲はあまり明るい曲じゃないかも、とルイに話す。
学校内の教会にたたずみトツ子。そこにシスター日吉子がやってきて、トツ子の隣に座る。トツ子は、曲を作っていることを話すと、日吉子は、きっとその曲があなたを守ってくれる、と話し、トツ子は自分がバンドを組んでいることを打ち明ける。
寮でトツ子と同室のさく・しほ・スミカは、楽しそうに日光への修学旅行の話をするが、乗り物酔いしやすいトツ子は、いろは坂をバスで通ることを想像して気が重くなる。一方、きみの祖母はパート先の蕎麦屋で、きみと同じ高校の生徒が修学旅行の話をしているのを耳にする。
「しろねこ堂」にトツコが顔を出すと、きみは浮かない顔をしていた。何かあった?と尋ねると、きみは学校を辞めたことを祖母に言い出せないでいることを明かし、高校の修学旅行の間は家出しようかな、と口にする。迎えた修学旅行の日、トツコは熱を出したフリをして修学旅行をサボり、きみを寮の自室に招き入れる。2人は楽しく過ごすが、シスターにきみを連れ込んだことがバレてしまい、トツ子は校長から1か月の反省文と奉仕活動を課せられるが、日吉子は、きみにも償う機会を、と同じ内容を課すよう校長に掛け合う。
自宅に帰省したトツ子は、母親に修学旅行をサボったことを謝る。一方、きみが「しろねこ堂」でギターの弦を張り替えていると、日吉子が店にやってくる。日吉子は、古書を1冊購入した後、心の内を歌にしたらどうでしょう、と話し、高校の学園祭「バレンタイン祭」のチラシを渡し、バンドで出てみないかと誘う。
1か月の奉仕活動が終わり、久しぶりに離島に向かった2人。ルイは久しぶりの再会を喜び、トツ子が作ったメロディにさらにフレーズを加えたデモ音源を2人に聞かせる。きみの色はすてきすぎた、と思うトツ子。
クリスマスがやってきて、3人はジングルベルを歌った後、一緒に練習し、クリスマスパーティを開く。しかし、雪が降り出して、長崎に帰る船が欠航になってしまい、トツ子は寮に帰れなくなってしまう。トツ子が学校に電話をすると、日吉子は、合宿です、とトツ子が後ろめたくならないよう言葉を掛ける。
練習場所の古い教会で1晩を過ごすことになったトツ子ときみ。ルイもそれに付き合って、ローソクに火を灯し、語り合う。ルイは、代々離島で医者をしている家の後を継ぐことを期待されており、音楽をしていることを母親には内緒にしていることを明かす。きみは、家から出て祖母に育ててもらっているが、期待に応えられず逃げたと明かす。トツ子は人の色が見えるが秘密にしていることを明かす。ルイは、僕らは好きと秘密を共有している、と言う。ラジオを流すと、「ジゼル」の音楽が流れてくる。小さい頃バレエを習っていたトツ子は、この曲で踊るのが夢だったと話すと、ルイはテルミンでその音楽を奏で始め、トツ子はその音楽に合わせて踊る。
翌日、ルイは母親に、きみは祖母に、それぞれ隠していたことを打ち明け、学園祭のライブを聴きに来てほしいと話す。
迎えた「バレンタイン祭」の日、初めは辞めた学校の学園祭でステージに上がることに戸惑うきみだったが、ステージで3曲を披露し、大盛況に終わる。
中庭で「ジゼル」を踊るトツ子。踊りながら上げた手を見ると、綺麗な赤色が見え、こんな色だったんだ、と思う。
そして、ルイが船で島を出る日、2人は見送りには行かず、近くの岸壁でたたずんでいたが、出港の汽笛が聞こえると、きみは突堤を走り、その先端で「ガンバレー!」とルイに向かって叫び、追いついたトツ子も一緒に叫ぶ。その姿が目に入ったルイは、出港時に投げられた紙テープを空に投げる。空を舞う紙テープは太陽と重なり、美しく輝くのだった。
(ここまで)