週末の夕方、MOVIX柏の葉に行きました。
16時すぎの時間帯ですが、ロビーのお客さんは少なめでした。
この日の上映スケジュールの一部。この時間には既に上映が終了していたものも含めて、計27作品・29種類の上映が行われていました。
観るのは「マンガ家、堀マモル」(8月30日(金)公開)。全国71館とやや小規模での公開です。
上映は125+2席のシアター5。お客さんは他には2人しかいませんでした。あまり広く宣伝されていない作品ではありますが、公開初週の週末としては、寂しい入りです。
(チラシの表裏)
シンガーソングライターのsetaの原作を実写映画化した作品で、監督は榊原有佑・武桜子・野田麗未、脚本は林青維。
主な登場人物・キャストは、次のとおりです。
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堀 マモル【山下 幸輝】:新人賞を獲って以来、描きたいことがわからなくなりスランプ中のマンガ家。アパートに突如現れた3人の幽霊たちの話をマンガにしていくことになる。
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佐倉 春【桃果】:マモルの幼馴染で、二人でマンガ家になる夢を追っていたが・・
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小森 海【宇陽 大輝】:マモルの前に現れた小学生の幽霊。女で一つで苦労して育ててくれた母親に「寂しい」と伝えられずにいる。
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山本 樹【斎藤 汰鷹】:マモルの前に現れた中学生の幽霊。周りになじめず殻に閉じこもっていた自分に、教師の羽車があるチャンスを与えてくれたことに対し、素直にお礼を言えずにいる。
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落合 愛【竹原 千代】:マモルの前に現れた高校生の幽霊。同じ夢を追っていた親友に、突然夢をあきらめると言われてしまうが、本心を聞くことができずにいる。
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林 光太郎【岡部 たかし】:マモルの担当編集者。本心ではマモルの才能に期待をしているものの、中途半端なマモルの姿勢に業を煮やしている。
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佐倉 さら【坂井 真紀】:春の母。娘とともに夢を追っていたマモルに、大切にしまっていたあるものを渡す。
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羽車 杏悟【三浦 貴大】:樹の担任教師。周りになじめない樹を心配し、樹が得意な絵を本人に内緒でコンクールに提出する。
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堀 マリコ【占部 房子】:マモルの母。朝から晩までマモルを育てるために必死に働いていた。
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倉田 隆【竹中 直人】:マモルの学校の教師。マモルを課外学習に引率する。
公式サイトのストーリーによれば、
新人賞を獲って以来、スランプに陥った漫画家・堀マモル。
苦悩するマモルの部屋に突如、幽霊の海・樹・愛が現れ、「漫画を描かせてあげる」と言う。
小学生の海は、自分のために忙しく働く母に「寂しい」と伝えられなかったことを、中学生の樹は、周りにうまくなじめず孤独を感じていた自分を思ってくれた教師へ素直になれなかったことを語り、マンガの中で想いを果たした二人は成仏する。
残る高校生の愛は、一緒に夢をかなえようと誓った友へ伝えられなかったことを語るが、その話はマモルの、心の奥底にしまっていた扉を開けるものだった。
マンガを描きながらマモルは、大切なひと・春との別れや果たせなかった約束…
マモルが忘れたふりをしていた過去と向き合い始めるー
・・・というあらすじ。
新人賞を受賞したものの、それ以降は編集者にダメ出しされ続けていたマンガ家・堀マモルが、なぜか現れた男子小学生、男子中学生、女子高生の3人の幽霊が「マンガを描かせてあげる」と言ってそれぞれの思い出を語り出し、それをマンガに描いていく中で、蓋をしてきた自分の過去と向き合っていく、という物語。なぜ幽霊が突然現れて自分の過去を語り出すのかなど、スッと腑に落ちない設定もありましたし、マモルと春との物語にフォーカスするのなら3人の幽霊はいなくても良かったかもしれませんが、それぞれのエピソードが丁寧に描かれ、物語が進んでいくについて、幽霊が語ったエピソードがマモルの過去にリンクして、伏線が回収されていく展開が良く、じんわり心が温まる作品でした。
以下はネタバレになりますが、備忘も兼ねて、より詳しめにあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)
アパートの自室で、電気が消えてしまっても、ローソクに火を灯してなおもマンガを描くマモルだったが、担当の編集者(林光太郎)は、マモルがいない、と酷評し、煮え切らない態度のマモルに、それで描く気あるの?いい作家は自分を表現するものだ、そろそろうちも面倒見切れない、と厳しい言葉を投げる。
その帰り、春の実家を訪れ、春の遺影を前に手を合わせるマモル。春の母親(佐倉さら)に、前日の三回忌に行けなかったことを謝り、香典を渡す。マンガは順調?と尋ねられるが、いつも怒られてばかりで、と言葉を濁す。母親はマモルに春が残したラフスケッチなどが掛かれたノートなどを渡す。そんなとき、突然部屋の電気が消え、カーテンの外に人がいる気配を感じたマモルはカーテンを開けるが、誰もいなかった。帰り際、玄関に置いてあったチャリティーイベント「キャンドルナイトin鶴島川」のチラシが目に留まったマモルに、母親はそのチラシを渡し、行ってみたら?と勧める。
帰宅したマモルの前に、男子小学生(小森海)、男子中学生(山本樹)、女子高校生(落合愛)の3人の幽霊が姿を現す。3人は、新人賞を取ったのにこんなので終わっちゃうの?春に聞いてみたら?などと言いつつも、でも何を描くか本当は分かっているんでしょ?僕たちのマンガを描かせてあげる、と話す。
まず、男子小学生が話し始める。僕は毎日が楽しかった、母は昔漫画家を目指していた、母は忙しい人だったが、寂しくはなかった、運動会でリレーの選手に選ばれたが、母は来られなかった、でも楽しかったと話し、これで僕の話は終わり、と話し終える。話を聞きながらそのエピソードをマンガに描いていくマモルが、忙しいのは君の気持ちとは関係ない、腹の底を見たい、と本心を話すよう促すと、男子小学生は、楽しかったのは本当、でも誰かといればもっと早く走れたかな、寂しかった、母に来てほしかった、と本心を明かす。マモルはそれをマンガに描いていく。描き終えると、すっかり朝になっていた。他の2人は、あの子はマンガの中で言いたいことが言えて成仏したんだと話す。
描き上げた原稿は、編集者から好評を得て、こうした短編をいくつか描いて、全体がつながるように構成していけるか?と電話で伝えられる。
次に、男子中学生が、空気を読むのが苦手で団体行動が苦手だった、と話し始める。彼は、担任(倉田隆)の引率で出かけた課外学習で木のコブのようになっている部分が猿の顔のように見えることに興味を持って、それをじっと見ているうちに、同じグループの生徒たちから置いていかれてしまう。猿について調べるために図書室で図鑑を見せてもらうが、対応してくれた先生(羽車杏悟)の優しい対応に、味方だと思った彼は、再び図書室を訪れた際、その先生に自分が描いたマンガを見せると、先生は素敵ですね、と褒めてくれ、彼は課外学習で見た猿に見える木を描いた絵を先生にあげる。ある昼休み、屋上につながる階段にひとり座って昼を食べる彼のもとにその先生がやってきて、絵画コンクールの案内を手渡し、自分だけの世界に完結しないで外の世界に行くのもいいことだ、と応募を勧めるが、彼は、順位を付けられるのは嫌、とそれを断る。しかし、後になって、担任教師から、そのコンクールで自分が入賞したことを聞かされる。先生が勝手に応募したことに文句を言いに行くと、先生は、彼が描いた猿の絵になぞらえて、大人になったときに木から下りられない猿になってほしくない、と話すが、彼は、僕はそれでいいです、と言い切り、先生は勝手に応募したことを謝罪する。先生はもともとその学期いっぱいで退職することになっていて、その数日後、退職していく。荷物を車に積み込む先生を教室のベランダから眺める彼は、クラスメイトから突然、お前の絵を見た、スゲかった、と話しかけられる。
そこまで話を聞いたマモルは、このままでいいの?言えなかった思いは心の中に残っちゃうよ、と本心を伝えることを促す。すると、彼はベランダから駆け出し、放送部員が放課後の放送をしていた放送室に行き、マイクを借りて、酷いことを言ってごめんなさい、本当にお世話になりました、そしてありがとう、と先生への思いを伝える。
マモルがそのエピソードをマンガに描き上げると、再び朝になっており、男子中学生は成仏して姿を消していた。そのマンガを見た編集者は目を細めるのだった。
眠っているマモルのそばに、春が姿を現すが、マモルが目を覚ますとその姿はなかった。
マモルは、春の母親に勧められた「キャンドルナイトin鶴島川」に行ってみる。そこで、女子高校生から話を聞く。ハルはどんな存在だった?と聞くと、彼女は、ハルはよく入院していたと言って、ハルがストーリーを考えて自分が絵を描いていたことを話す。進路面談でマンガ家を目指していることを話して、担任からそれで食べていくのは難しいと諭されたが、ハルと一緒ならできると話すと、ハルは、就職しようと思っていることを明かす。彼女は、ずっと一緒にやろうと言ってたじゃないか、と言うが、ハルはそれは中学生の時の話、と言い、彼女は自分の気持ちを押し殺し、ハルへ感謝の言葉を伝える。
そこまで話を聞いたマモルは、まだ原稿になっていない、と本心を伝えることを促すと、彼女はハルのストーリーによるマンガのラフスケッチを原稿に描き始め、完成したマンガをハルに見せ、ハルのことを忘れない、ずっと応援している、と思いを伝える。
しかし、彼女はマモルに、そんなことをしてももう遅い、ハルはもう死んだ、自分たちはマモルの記憶が作り出したキャラクター、まだ何か隠していることがあるじゃない?と言う。
そんなとき、編集者から、マモルが描いた短編がウェブに掲載してもらえることになったと電話が入る。マモルは、すぐに行くので掲載は待ってほしいと言って、慌てて部屋を出て行く。すると、原稿が残されたマモルの部屋に、春が姿を現し、原稿を手に取る。
編集部に向かったマモルは、2年間ずっと悩んできた、と新人賞を取ったマンガは春のストーリーによるものだったことを打ち明ける。編集者は、嘘は分かっていた、今回の短編にはお前のハラワタがあった、マンガ家堀マモルはこれから、俺たちが作れるものを作るのが罪滅ぼしだと励まし、でももう作れるものがなくなっちゃいました、と弱音を吐くマモルに、まあ一回ゆっくり休め、と言葉を掛ける。
マモルの部屋で原稿を見る春に、マモルとの思い出が去来する。小学生のときのある出来事をきっかけにマモルと親しくなり、マモルが描くマンガのストーリーを作って渡してきた春だったが、入院がちで、自宅で寝込んでしまったときには、正直嫌だ、疲れた、明日も明後日も、ずっとマモルとマンガを描いていたい、と母親に本音を漏らすのだった。マモルの進路面談の様子を廊下からのぞき見した春は、その帰り、自分の気持ちを押し殺して、就職しようと思っている、ごめん、でもずっと応援しているから、と告げたのだった。そして、春は、「とある漫画家とわたし」と題して、マモルへの自分の思いを綴ったのだった。
マモルが部屋に帰ってくると、春は姿を消していたが、部屋の様子から、春が来たのだと直感したマモルは、声だけ、顔だけでもいいから出てきて、俺は馬鹿だからもうどうしたらいいか分からない、と言葉を漏らすのだった。
翌日、マモルは自分の実家に久しぶりに帰省する。マモルが突然顔を出したことに、何かを察した一人暮らしの母親(堀マリコ)は、どうしてマンガ家を辞めようと思ったの?と尋ねる。マモルが逆に、昔マンガ家を目指していたのにどうして辞めたのか尋ねると、母親は、マンガ家より大きなものが見つかったから諦められた、ありがとね、とマモルに伝え、辞めるなら、どうして辞めるのか、何をするのかを明確にするようアドバイスする。
実家を出たマモルは、帰る途中で、突然何かを思いついたように、春の実家を訪ね、春の母親に、謝らないといけないことがある、と切り出し、春が考えた話で勝手にマンガを描いて新人賞を取ったことを謝るが、母親は、春はそんなこと気にしてない、と言い、「とある漫画家とわたし」と題して春が記したノートを手渡す。そこには、小学生のときに出会ってからのマモルとの関係、そして、一緒にマンガを描きたいという春の本心が綴られていた。読み終えたマモルがそれを返すと、その続きが読みたかった、と母親は話し、それを聞いたマモルは、僕が描きます、と宣言するのだった。
春が作ってくれた話をマンガにして、新人賞に応募したマモルは、出版社から送られてきた受賞作が掲載された漫画誌を手に、受賞したことを知らせようと春の家を訪ね、ドアホンを押すが返事はなく、春の携帯電話に電話しても応答がなかった。何度か電話をかけて出たのは春の母親で、マモルは、嗚咽しながら話す母親から春がその日の朝に亡くなったことを知らされる。信じられず呆然とするマモルに、男子小学生の幽霊が現れ、春に会いに行こう、と小学生時代の春の前にマモルを連れていく。
小学生、中学生、そして高校生の春に会ったマモルは、春に自分の思いを伝える。マモルは、過去のことは描いちゃったと言うが、春は、マモルの物語は続いていく、描くことはなくならないよ、と励まし、マモルが一人でマンガを描き続けられるよう願う。マモルは一緒にいてくれてありがとう、と感謝の思いを伝えるのだった。
そして日が経ち、電気がつくようになったマモルの部屋。そこに編集者から電話がかかってきて、マモルが描いた原稿のタイトルにダメ出しをする。そのタイトルは「マンガ家、堀マモル」だった。
(ここまで)
なお、上で記したあらすじの中で( )内で記載した登場人物の氏名は、公式サイトで紹介されている名前ですが、映画本編の中では、特に名前に触れられることはなく描かれています。