テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ
(録音:2018年7月31日~8月8日 ウィーン、コンツェルトハウス 大ホール)
紹介するまでもありませんが、次の4楽章で構成されています。
- 第1楽章:Poco sostenuto - Vivace イ長調:4/4拍子-6/8拍子。
- 第2楽章:Allegretto イ短調:2/4拍子。
- 第3楽章:Presto - Presto meno assai ヘ長調:3/4拍子。
- 第4楽章:Allegro con brio イ長調:2/4拍子。
さて、本盤は、ピッチはモダン楽器のオーケストラと同じようですが、古楽器オーケストラ風の奏法、アーティキュレーションを取り入れたメリハリの効いた個性的な演奏。2番ヴァイオリンやヴィオラの内声部がよく存在感を主張しているのも独特で、武骨な印象も受けますが、何回が聴くとクセになって他の演奏が物足りなく思えるところもありました。独自の解釈が加えられている部分も多く、楽譜には必ずしも忠実でないかもしれませんが、とても印象に残る刺激的な演奏でした。
手元にある他のCDも聴いてみました。
録音が新しい順に紹介します。
小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ
(録音:2017年8月25・27日[1]、2016年8月18・22日[2] キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)(ライヴ))
小澤征爾は1993年から2002年にかけて、サイトウ・キネン・オーケストラとベートーヴェンの交響曲全集を録音しており、第7番はその初期の1993年に録音していますが、本盤はその23年後の80歳のときのライヴ録音。1993年の録音では、全てリピートを行っていたようですが、本盤では第3楽章と第4楽章のリピートはカットされています。ガンなどで手術を受け、活動休止からの復帰後でしたので、体力面を考慮してのことだったのだろうと思います。
オーケストラの能力の高さは感じますが、個人的にはまずまずといった感じの演奏です。
リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(録音:2008年5月[2]、2009年5月[1,3,4] ライプツィヒ、ゲヴァントハウス)
2007年から2009年にかけて録音された、このコンビによるベートーヴェン交響曲全集からの1枚。伝統的なモダンオーケストラによるベートーヴェン交響曲の演奏とは一線を画して、スコア指定のメトロノーム記号にほぼ沿ったかなり速いテンポ、メリハリの付いたアーティキュレーション、ダイナミクスなど、古楽器オーケストラによる演奏スタイルを取り入れた演奏。違和感を感じる人も多いのだろうと思いますが、個人的にはけっこう好きです。
オトマール・スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ
(録音:1983年8月~9月[1]、1981年8月[2] 東ベルリン、キリスト教会)
1980年から1983年にかけて録音された、このコンビによる交響曲全集からの1枚。冷戦時代の旧東ドイツにおける録音ということもあってか、良くも悪くも、録音された年代以上に、重厚なドイツの伝統様式を受け継いだ昔ながらのスタイルを感じさせる演奏です。
カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1974年3・4月[1]、1975年11月・1976年1月[2]、ウィーン)
クライバーの録音としては初期のもの。かつてはこの曲のベスト盤と言われることもあった名盤。若さと勢いを感じさせる優れた演奏ですが、今になって聴くと、ドライブする指揮にオーケストラが必死に食いついているようなところもあって、細部はあまり整っていないところもあります。それがこの演奏のいいところでもあるのですが。
カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1971年9月 ウィーン、ムジークフェラインザール)
ベームが晩年の1970年から1972年にかけて、このコンビで録音したベートーヴェン交響曲全集からの1枚。今となっては古いスタイルということかもしれませんが、当時における最も正統的な演奏といっていいだろうと思います。全体的にテンポは遅めで、腰の重さは感じますが、ケレン味のない引き締まった造形の演奏で、弦楽器をはじめ当時のウィーンフィルの美しい響きもあり、今なお魅力を感じさせる演奏。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
(録音:1964年10月[1]、1959年10月[2]、1963年4月[3] クリーヴランド)
ステレオ録音初期の1957年から1964年にかけて、このコンビで録音されたベートーヴェン交響曲全集からの1枚。録音年代は古いですが、引き締まって透明感のあるクリアなサウンド、折り目正しい端整な演奏で、今なお独自の魅力を感じさせる演奏だと思います。
カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1958年4月[1]・12月[2] ベルリン、イエス・キリスト教会)
先に紹介したウィーン・フィルとの交響曲全集の13年前、ステレオ録音初期のベルリン・フィルとの録音。比較的ゆったりしたテンポで、後のウィーン・フィルとの録音よりもむしろ遅いくらいですが、はつらつとした活気を感じます。録音年代の割には意外と聴きやすい音で、ベルリン・フィルも、今のような洗練されたインターナショナルなオーケストラとは違い、ドイツっぽさが感じられるところは個人的には好感が持てます。
紹介したCDの楽章ごとの演奏時間は、それぞれ次のようになっています。
・クルレンツィス:Ⅰ13'55○/Ⅱ8'14/Ⅲ8'33○/Ⅳ9'19○
・小澤 :Ⅰ14'51○/Ⅱ8'32/Ⅲ7'24×/Ⅳ7'41×(拍手を除くと7'14くらい)
・シャイー :Ⅰ13'23○/Ⅱ7'50/Ⅲ8'11○/Ⅳ8'48○
・スウィトナー :Ⅰ15'48○/Ⅱ8'47/Ⅲ9'59○/Ⅳ9'08○
・クライバー :Ⅰ13'37○/Ⅱ8'08/Ⅲ8'14○/Ⅳ8'39○
・ベーム(1971):Ⅰ12'18×/Ⅱ9'54/Ⅲ8'28×/Ⅳ7'14×
・セル :Ⅰ11'52×/Ⅱ7'34/Ⅲ7'18×/Ⅳ7'19×
・ベーム(1958):Ⅰ12'58×/Ⅱ10'10/Ⅲ8'22×/Ⅳ7'21×
○はスコア指定のリピート(繰り返し)を全て行っている演奏、×はその一部or全部を省略している演奏です。このように並べてみても、シャイーとクライバーのテンポの速さが際立っていることがわかります。